『シゴトの渋滞学』(西成活裕、新潮文庫、2013)の初版単行本は2010年に出版されています。文庫化によって、数学者が数式をつかわずに書いた読みやすくて役に立つ本として最出発することになりました。
ビジネス書というジャンルに分類されるのかどうかわかりませんが、こういう本こそほんとうに役に立つ本だと思います。著者は東大先端科学技術センター教授。専門は非線形動力学、渋滞学。スキンヘッドの先生ですね。
「渋滞学」というのは「流れ」の科学から導き出されたもので、ネーミングじたいが著者によるもの。こういう普段つかいの日本語だとパッと直観的に理解できるのがいいですね。
交通渋滞(traffic jam)をどう解消するかという実践的な研究から始まって、この本では「仕事の渋滞」をどう解消するかにまで及んでいて、すごく役に立ちます。キモは適正な車間距離をキープすること。個人レベル、部内レベル、社内レベルの三本立て。
「譲り合う社会」こそが集団全体の利益を最大にしてくれる(P.117)ということが、道徳的にではなく、数学的に証明される(!)ことが指摘されています。これはいいかえれば、「利他の精神」がなぜ重要なのかにもつながってきます。
といっても、数式はいっさいでてこないのでご安心を(^^)/
こういった知見がちりばめられているのも、この本が実用性のさらに上までカバーしているすぐれた特色です。「人の役に立つ」ための仕事の仕方など、いろんなヒントにも満ち満ちています。
著者が超極貧の理系大学院生生活を経て、渋滞学にたどりつくまでのライフストーリーも読ませます。文体も「ですます調」で、語りかけるような感じで読みやすいですね。
今月の新刊なので、まだ書店で平積み状態だと思います。一冊購入して通勤電車のなかで読んでみるのもいいかもしれませんよ。
目 次
はじめに
1 個人の渋滞、解消します!
2 部内の渋滞、解消します!
3 社内の渋滞、解消します!
おわりに
著者プロフィール
西成活裕(にしなり・かつひろ)
1967(昭和42)年、東京生れ。東京大学先端科学技術研究センター教授。東京大学卒。修士及び博士課程は航空宇宙工学を修了、専門は非線形動力学、渋滞学。ドイツのケルン大学理論物理学研究所客員教授などを経て現在に至る。2007(平成19)年、『渋滞学』で講談社科学出版賞、日経BP・BizTech図書賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
<関連サイト>
「渋滞学」の権威、西成活裕東大教授が伝授!目からウロコの“究極”の渋滞回避術 (日経トレンディネット 2009年05月01日)
<ブログ内関連記事>
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