「個」と「組織」それぞれの能力を向上し、「個」と「組織」のよりよい関係を築くために
                                    

NHK World (英語版 視聴料フリー!)

NHK World (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると、海外向け英語放送が24時間が流れるサイトにつながります。

Channel NewsAsia International (英語版 視聴料フリー!)

Channel NewsAsia International (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックするとシンガポールからの英語ニュースが24時間流れるサイトにつながります。

Al Jazeera English: Live Stream (英語版 視聴料フリー!)

Al Jazeera English: Live Stream (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると中東カタールからの英語ニュースが24時間流れるサイトにつながります。

Bloomberg TV (英語版 視聴料フリー!)

Bloomberg TV (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると、24時間ビジネス経済情報が英語で流れるサイトにつながります。

「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!(姉妹編ブログ)

「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!(姉妹編ブログ)
「専門知識」×「雑学」がビジネス思考の「引き出し」幅を拡げる! 最新投稿は画像をクリック!

MVVの3文字で、個人と組織にブレない軸とブランドをつくる!

MVVの3文字で、個人と組織にブレない軸とブランドをつくる!
このブログの執筆者が運営している facebookページです。

「日本型リーダーシップ」の基本は山本五十六にあり!

「日本型リーダーシップ」の基本は山本五十六にあり!
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」 には続きがあった!





東南アジア・ビジネスは背景をよく知ってから!

■■■■ 「ミャンマー再遊記」 全8回+α ■■■■
 総目次はここをクリック!
■■■■ 「三度目のミャンマー、三度目の正直」 全10回+α ■■■■
 総目次はここをクリック!
■■■■ 「タイのあれこれ」 全26回+番外編 (随時増補中) ■■■■
 総目次はここをクリック!



会社ウェブサイトは
 http://kensatoken.com です。

ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。   


  

2011年7月29日金曜日

書評 『アイデアを形にして伝える技術』(原尻淳一、講談社現代新書、2011)


マーケティング・プランナーが書いた、アナログのフィールドワークからデジタルなアウトプットをするための「知的生産の技術」

 梅棹忠夫のロングセラー『知的生産の技術』を踏襲している本書は、アナログのフィールドワークの手法をウェブ時代のデジタルに活かすため、インプットとアウトプットの両方を網羅的にわかりやすく解説した本である。

 著者のベースにある思想はいうまでもなく梅棹忠夫の『知的生産の技術』であるが、著者に大いなるインスピレーションを与えたのは、大学時代に垣間見ることのできた鶴見良行の「知的生産の工房」である。

 鶴見良行とは、東南アジア、とくに「海のアジア」を庶民目線によってフィールドワークによって調べ上げて、『バナナと日本人』や『ナマコの眼』などの名著を、つぎからつぎへと世に出してきた研究者のことだ。

 梅棹忠夫や鶴見良行といった先人たちの「フィールドワークから知的生産物を量産する技術」をウェブ時代に発展させたのが本書の特色である。いわばアナログ技術をデジタル化する技術といってもいいだろうか。

 本書は大きくわけて、第1部 インプット編と第2部 アウトプット編の二部構成になっているが、いうまでもなく読者にとっての読みどころは後者のアウトプット編にある。具体的にいえば、レポートや企画書の書き方だ。本書じたいの企画案が掲載されているのは面白い(P.169)。本という形での「知的生産」を考えている人にも、役に立つだろう

 本書は、ビジネス書として分類するのは狭すぎるというべきだろう。なによりも、よくあるビジネス書とは異なり、発想の源はビジネス以外の世界にもひろく求めており、実例も豊富に紹介されている。仕事のうえで、なんらかの知的生産をしなければならない人にとっての知的読み物にもなっている。

 ただし、「アイデアを形にする」といっても、ここで語られているのは主にソフトとしての企画そのものについてである。いわゆる狭い意味での「知的生産」である。製品やデザインなどの「形にする技術」のことではない。目に見えるプロトタイプ(=試作品)をつくる必要のある「ものづくり」そのものについては別の本を参考にしたほうがいい。ここでは、もっぱら目に見えないソフトについて語っている。

 アイデアの作り方と伝え方にかんして書かれたアウトプット志向の本として、とくに30歳台前半までの若い人にすすめたいと思う。 


<初出情報>

■bk1書評「マーケティング・プランナーが書いた、アナログのフィールドワークからデジタルなアウトプットをするための「知的生産の技術」」投稿掲載(2011年7月23日)
■amazon書評「マーケティング・プランナーが書いた、アナログのフィールドワークからデジタルなアウトプットをするための「知的生産の技術」」投稿掲載(2011年7月23日)





目 次

第1部 インプットの技術
 第1章 「現場の情報」力
 第2章 情報を集める技術・読む技術
 第3章 データベース構築とアイデア発想

第2部 アウトプットの技術
 第4章 型の効用
 第5章 わかりやすく自分らしい文章術
 第6章 企画書を書く
 第7章 伝わるプレゼンテーション


著者プロフィール

原尻淳一(はらじり・じゅんいち)

マーケティング・プランナー。1972年、埼玉県生まれ。龍谷大学大学院経済学研究科修士課程修了。大手広告代理店でブランドマーケティングのプランニングを7年間行う。大手レコード会社でアーティストや映画のマーケティング・宣伝プランニングを担当。現在、株式会社ブルームコンセプト取締役。龍谷大学社会科学研究所客員研究員。同大学非常勤講師。マーケティング研究協会講師。ISIS編集学校師範代(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第7回放送-シリコンバレーで働く 4人のゲストに聞く、創造性にまつわる 7つの質問
・・アイデアを発想し、それをプロトタイプ(試作品)としてハードというカタチあるものに変えるイノベーションの方法について

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)

書評 『知的生産な生き方-京大・鎌田流 ロールモデルを求めて-』(鎌田浩毅、東洋経済新報社、2009)

書評 『知の現場』(久恒啓一=監修、知的生産の技術研究会編、東洋経済新報社、2009)

書評 『達人に学ぶ「知的生産の技術」』(知的生産の技術研究会編著、NTT出版、2010)





Clip to Evernote




    
      

2011年7月27日水曜日

「サービス産業アジア進出支援セミナー-アジア市場はこう狙え!タイ・ベトナムの先行事例から学ぶ-」 (JETRO)が、2011年8月25日(東京)開催(入場無料)


 2011年8月25日(木)に「サービス産業アジア進出支援セミナー-アジア市場はこう狙え!タイ・ベトナムの先行事例から学ぶ-」(JETRO)が開催されます。入場無料です。

 東南アジア、とくにタイやベトナムに現地進出を考えておられるサービス産業の方は、ぜひ最新の「現地進出」や「現地経営」について知る機会として活用されることを推奨いたします。

 上掲の写真は、タイ王国バンコクの ISETAN(伊勢丹)内の和食チェーン大戸屋。今回のセミナーでは、タイに進出した大戸屋の事例が紹介されます。

 以下に、JETRO によるセミナーの紹介文を転載いたします。


◇◇--------------------------◇◇
「サービス産業アジア進出支援セミナー-アジア市場はこう狙え!タイ・ベトナムの先行事例から学ぶ-」
◇◇--------------------------◇◇

 世界経済におけるサービス産業の重要性が高まりつつある中、アジア地域のサービス支出も1998年から2008年までの10年間で約1.6倍に増え、今後一層の増加が予想されています(経済産業省発行「通商白書2010」より)。
 中でもASEAN各国においての経済発展は目覚しいものがあり、小売業の近代化が加速し、欧米等先進諸国に本拠を有する企業が数多く進出しています。

 本セミナーでは拡大するアジア新興市場の「外食・流通・小売」等のサービス産業の進出状況を概観すると同時に、タイ、ベトナムに進出している日系企業の方をお招きし、進出の経緯や現地での取り組みや今後の事業展開をご紹介いただきます。

 是非、この機会にご参加ください。

日時
<大阪会場>
2011年8月24日(水曜) 15時00分~17時45分
<東京会場>
2011年8月25日(木曜) 15時00分~17時45分


場所
<大阪会場>
ヒルトン大阪 4階「金の間」(大阪府大阪市北区梅田1-8-8)
<東京会場>
ジェトロ(東京本部) 5階 ABCD会議室(港区赤坂1-12-32 アーク森ビル)


プログラム(両会場共通)
15:00~15:25 「サービス産業の海外進出の現状」
 ジェトロ進出企業支援・知的財産部 サービス産業支援課長 北川 浩伸
15:25~16:25 「タイでの進出企業実例」
 株式会社大戸屋 常務取締役経営企画部長 濵田 寛明氏
 株式会社大戸屋 取締役海外事業本部長 高田 知典氏
16:25~16:35 (休憩)
16:35~17:35 「ベトナムでの進出企業実例」
 ミニストップ株式会社 常務取締役事業戦略本部長 前田 昭彦氏
17:35~17:45 ジェトロサービス産業(流通・小売・外食等)海外進出支援ミッション(バンコク・ホーチミン)のご案内、閉会

※都合により内容は変更になることがあります。あらかじめご了承ください。

主催: ジェトロ
参加費(両会場共通): 無料
定員: 各会場100名程度 ※定員になり次第、締め切ります。
お申し込み方法
http://www.jetro.go.jp/events/seminar/20110713176-eventを参照
お申し込み締め切り(両会場共通):2011年8月19日(金)
-----------------------------



<関連サイト>

サービス産業アジア進出支援セミナー-アジア市場はこう狙え!タイ・ベトナムの先行事例から学ぶ-(JETRO イベント情報 セミナー・講演会)

JETRO Global Eye 世界は今
・・VODでみる世界経済トピックス オフィシャル・チャンネル)

“アジアの舌”を攻略せよ(NHK クローズアップ現代) 
・・6月20日)放送。なぜタイのバンコクでは成功し、中国では失敗するのか、日本の外食産業の現地進出の最新事情。動画でタイのバンコクに進出したカレーのチェーン店 COCO壱 の事例をみることができる。

大戸屋、アジア展開加速:流通セントラルと FC契約(NNA 2011年7月29日)


<ブログ内関連記事>

なぜ「経営現地化」が必要か?-欧米の多国籍企業の歴史に学ぶ




Clip to Evernote



  

   

2011年7月25日月曜日

「NHKスペシャル「なでしこ​ジャパン 世界一への道」 (2011年7月25日) を見ながら考えたこと



 本日(7月25日)、22時から放送された「NHKスペシャル「なでしこ​ジャパン 世界一への道」を見ました。

 女子サッカー・ワールドカップ2011年大会での、日本女子サッカーチーム・なでしこジャパンが世界一となった試合は、わたしも早起きして最後まで見ましたが、ほんとうにハラハラドキドキ、もうダメだと思えばまた追いつくという、ほんとうに死闘とさえいえるようなすごい試合でした。

 世界一になった感動は、まだ多くの日本人に余韻を残しているようです。代表選手たちはすでにそれぞれの所属チームに戻って、国内リーグ戦に専念しておいるようですが。 

 感動に浸ることはいとしても、ただそれに終わってしまうだけでなく、世界​一の座をつかんだ理由(わけ)を知りたいと思うからです。そして、それを​自分なりに整理しておきたいものだと思ったからです。

 最後まであきらめない精神力がつかんだ勝利。多くの人がそこまではクチにしています。マスコミもまたそのことばかり繰り返しています。

 ではなぜ、そういった強い精神力がうまれて、ほとん絶望的といってもよい状況のなかでも発揮されたのか? そこを知りたいし、また自分なりに整理しておきたいものです。たんに精神力に還元してしまったのでは、スポーツにはよくありがちな「悪しき精神主義」に堕してしまう恐れすらあるといっても言い過ぎではないでしょう。

 まずは、番組内容を紹介しておきましょう。

<番組内容解説>
120分の激闘の末にPK戦で王者・アメリカを倒し、世界一に輝いた女子サッカー日本代表・「なでしこジャパン」。世界が絶賛した華麗なパスサッカーは選手たち自身が議論を繰り返して作り上げてきた信頼関係に支えられたものだった。相次いだスポンサーの撤退、シドニー五輪の出場を逃した後の人気低迷、そして北京五輪でのベストフォー進出…。「結果を出さなければ、女子サッカーは忘れられる」という危機感を胸に成長してきたなでしこジャパン。その軌跡は、度重なるピンチに耐え、栄冠をつかんだアメリカとの激闘に重なる。日本代表、そしてアメリカのワンバク選手らへの単独インタビューでたどる決勝戦120分間のドラマを縦軸に、世界一の座をつかむまでの選手たちの秘話を織り込みながら、なでしこジャパン成長の軌跡を見つめる。


 この番組をみてわたしが思ったのは以下のようなことです。

 女子サッカーが置かれた環境を打破しなくてはならないと​いう、ハングリーといってもいいいような強い危機感

 この状況を打破するのだという「使​命感」(ミッション)の共有。そのためには世界一になるという「ビジョン」の共有。そして、チームとして目標を達成するのだという「価値観」(バリュー)の共有。

 これは、決勝戦のまえに選手全員でみた、日本女子サッカー苦難の歴史というビデオによって、さらにつよく共有されたようです。歴史の共有をつじた危機感の共有、使命感の共有ですね。

 歴史を振り返ることは、現在をしっかりとみつめ、未来への創造にそのまま直結することです。先人がつくってきた歴史があるからこそ、いまここに自分たちがいるのだということ確認し、しかも自分たちが歴史を作るのだというつよい意識をもつこと。そしてその意識を共有すること。

 女子サッカーという競技スポーツを取り巻く「外部環境」の劣悪さ。シドニー・オリンピックに出場できなかったため、結果を出せなかったためにスポンサーも離れ、はげしい逆風が吹いた歴史。

 選手ひとりひとりも金銭的にラクではないにもかかわらず、心の底から好きだからこそ続けられたサッカー。苦しいことはもちろんあるが、それらいっさいを含めて「楽しむというマインドセット」がモチベーションをささえてきたこと。

 しかし現状を打破するためには、勝たなければならない、結果を出さなければならない。

 究極の目標として設定したワールドカップ世界一についても、上層部が設定したものではなく、メンバーのひとりひとりが自らの心の底から実感してうまれてきたもの。これによって、はじめて「必ず結果をだすという強い意思」が生まれ、そしてチームで共有されることになる。

 もちろん、チームスポーツは、だれか突出したレベルの選手がひとりいたからといって成立するものではない。代表選手というものは、個人レベルでの高いスキルがあるのが前提で、しかも仲間意識と、助け合いの精神によって成り立つもの。外国でプレイする選手も多くいて、高いレベルの個​人技と良好なコミュニケーションに支えられたチームワー​ク。

 年齢やポジションや個人技能に関係なく、真剣に議論しあうコミュニケーション基盤がふだんからつくられていることによって、真に結束力のつよいチームとなる。

 選手の提案を受け入れる監督の柔軟性も大きい。監督の「横から目線」でコミュニケーションを活発になっていることで、萎縮することなく自分らしさを発揮することができる環境。このなかで、選手自身が「自分で考え、自分で判断し、自分で動く」ことが当たり前のようにできていること。


 かつて世界一となったのは「東洋の魔女」とよばれた女子バレーボール日本代表チームでした。

 高度成長時代まっただなかにおいては、大松博文(だいまつ・ひろふみ)監督の「黙って俺についてこい」というスパルタ式特訓の指導法は、いまではまったく通用しません。時代環境がまったく異なるのです。それでも世界一は実現できたわけです。結果を出したのです。

 「自分を殺して滅私奉公」ではなく、チームの一員として「自分らしさを出してチームに貢献する」ことであるわけなのですね。

 それにしても、「苦しいときはわたしの背中を見なさい」という澤穂希キャプテンのコトバ、あまりにもカッコよすぎて、しびれてしまいますね。

 こんなセリフをさらっと言ってのけて、しかもまったく不自然な感じを与えるような人間になりたい、こんな気持ちにさせらるのは、わたしだけではないでしょう。


 以上、なでしこジャパンが世界一になった理由(わけ)をコトバにするとこんな感じかもしれませんが、コト​バだけが上滑りしないよう、さらにじっくりと考えてみた​いと思った一時間番組でした。



<ブログ内関連記事>

女子サッカー・ワールドカップで 「なでしこジャパン」 がついに世界一に!(2011年7月18日) 

書評 『なでしこ力(ぢから)-さあ、一緒に世界一になろう!-』(佐々木則夫、講談社、2011)
・・監督の目からみたなでしこジャパン

「サッカー日本代表チーム」を「プロジェクト・チーム」として考えてみる




Clip to Evernote




            

2011年7月21日木曜日

「経営理念以外、聖域なし」-松下電器(当時)の「中村改革」


 一昨日(2011年7月19日)に「放送大学」の 『企業戦略と企業文化』 第15回 「最高経営責任者」をみたら、面白い内容の授業をやっていました。

 講師は、横浜国立大学名​誉教授・吉森 賢(よしまる・まさる)氏、かつてフランスのビジネススクール(経営大学院) INSEAD(インシアード)で教鞭をとっていた先生です。

 番組は、2008年度製作のものなので、経営マターとしては古いかなとも思いましたが、かえって忘れがちな重要な事例が取り上げられていました。

 ​取り上げていたのは、2001年から2006年にかけての、松下電器産業(​現在はパナソニック)における、いわゆる「中村改革」です。

 重要なポイントは、変革の指揮をとった最高経営責任者の中村氏が、創業者の松下幸之助の創った「経営理念以外、聖域なし」の態度で企業変革に取り組んだことです。「経営理念」というものが、いかに重要なものであるかを示した事例として、現在でも振り返る必要があるでしょう。

 松下電器産業は、現在は企業ブランドをパナソニックに統​一、企業名もパナソニックとし、"経営の神様" とよばれていた松下幸之助に由来する松下の名を取り去り​ました。しかし、いまもなお「経営理念」は、そのまま堅​持しています。http://panasonic.co.jp/com​pany/philosophy/principle/ 

 創業者の精神は堅持しつつ、あたらしい時代にあわせて、みずからを大変革する。2000年代前半の「中村改革」は、日本企業が実行した企業変革としては、歴史に残る大改革であったといっても過言ではないでしょう。

 吉森教授も指摘していましたが、日産自動車の「ゴーン改革」は、内部昇進ではない、外部からきた最高経営責任者がおこなった、しがらみなき大改革。

 一方、、松下電器の「中村改革」は、内部から昇進した最高経営責任者が行った、しがらみのなかで行った大改革

 どちらも、従業員の立場からみれば似たようなものだったかもしれませんが、最高経営責任者の立場からみれば、実に対照的なものだったといえましょう。

 ときには、すでに「歴史」となった企業変革を振り返ってみることの大切さも感じたものでありました。


<関連サイト>

企業戦略と企業文化('08) シラバス(放送大学) 
・・講師は、横浜国立大学名​誉教授・吉森 賢(よしまる・まさる)

パナソニック(旧 松下電器)の「経営理念」・・パナソニック社ウェブサイト









Clip to Evernote





               
   

2011年7月16日土曜日

The Greatest Salesman In the World (『地上最強の商人』) -英語の原書をさがしてよむとアタマを使った節約になる!


 『地上最強の商人』(オグ・マンディーノ著)という本があります。日本経済新聞に広告がよくでているので目にしている人も多いでしょう。

 日本経営合理化協会から日本語訳が出版されて、京セラ創業者の稲盛和夫さんなどによる絶讃のコトバが紹介されていますが、なんと1万円(!)を越える高額本です。

 広告にでるたびに気にはなるものの、中身を読んだことがないという人も多いのではないでしょうか。

 ネットであるブログの記事(?)を読んでいたら、原本のタイトルが The Greatest Salesman In the World であることを知って、amazon で検索してみたら、出てくるは出てくるは。しかも、とても1万円なんて高額本ではありません。

 さまざまなエディションのなかから、Gift Edition の古本を購入してみたら、送料250円をふくめてもたったの477円。アタマをつかえば9,500円は節約できるという実例です。

 さっそく読んでみたら、これがなかなか面白い内容。なるほど日本でもビジネス界のセレブが推奨してきただけの内容がある本だとわかりました。2001年のギフト・エディションの表紙に書かれているのは、1,400万部突破のロングセラーとあります。1968年にはじめて出版されてから43年、じつに息の長いロングセラーですね。

 基本的にこれは自己啓発本。英語では inspirational というカテゴリーに分類されています。個人のやる気を inspire するという意味ですね。つまるところ(自己)啓発。

 設定は、おそらくイエス・キリストが生まれる前のパレスチナ。ダマスカスやパルミラ、エルサレムやベスレヘムといった地名にピンとくるのは、キリスト教徒や新約聖書、あるいは中近東古代史を熟知されている方でしょう。
 
 この本は一言で言ってしまえば寓話です。年老いた成功した商人(=地上最強の商人)が引退し、つぎの後継者が現るのをまって、自分が受け継いだ「成功の知恵」を継承していくというもの。物語のパターンとしては、老賢者が青二才の若者に秘伝を伝授するという、自己啓発書ではよくあるものですね。というよりも、わたしはこの分野はくわしくありませんが、この『地上最強の商人』もある意味では、原型のひとつとなっているのでしょう。

 『地上最強の商人』においては、老賢者は成功した地上最強の商人、かれ自身もまた若き日に老賢者(=地上最強の商人)から教えを受けた人という設定。つまり、順繰り順繰りで秘伝としての知恵が伝承されていく。

 そに知恵は、この寓話では10巻の巻物となっています。日本でいえば、宮本武蔵の『五輪書』か、いわゆる「虎の巻」といったところでしょうか。この巻物を伝授するに値する若者が出現したとき、渡されることになるというものです。

 第8章から第17章までが、そえぞれ巻物の一巻一巻に該当しています。

 書かれている内容は、虚心坦懐に読めば、江戸時代いらいの商人の実践倫理にも近いので、日本人が読んでもそれほど違和感がありません。儒教の孟子が説く「惻隠(そくいん)の情」や、禅仏教で説く「いまここで」の教えなど。実践倫理にかんしては、洋の東西をこえて共通しているといってよいのかもしれません。

 また、日本のビジネス研修でもよく使用される『てんびんの詩(うた)』という、近江商人を描いたビデオ作品も思い出します。本書には「三方よし」は登場しませんが、「利益の50%は貧しい人たちに分け与えよ」という教えは、「地上最強」というよりも「地上最高」のセールスマンであるべきことを教えています。常日頃から施しを行っていれば、タイムラグがありながらも、回り回って自分に戻ってくるという利益のループ構造。

 このうえにさらに、生活習慣となるまでに反復して繰り返すこと(a habit in living)や、感情をコントロールすることや、他の誰でも唯一無二の「自分」を強調すること、明日でも昨日でもなく「今日が最後の日」と思え(I will live this day as if it is my last.)など、重要な教訓が散りばめられています。

 ただし、すばらしい教えが書かれた10巻の巻物を読んだあとの最後の18章は、キリスト教徒ではない日本人にとっては、とってつけたような内容で、別の物語にしたほうがいいのではと、正直いって思います。サウロが回心してパウロになったなど。原始キリスト教の知識があれば、それなりに楽しめるでしょうが。ネタバレになってはいけないので、詳細は省略します。

 日本語訳は先にも書いたように、一万円を越える高額本なので中身を見たことがありませんが、英語の原文で読んだ限りでは、上記のような感想をもちました。日本語版として出すなら、設定も変えて、翻訳ではなく翻案としたほうがいいのでは、というのがわたしの感想です。

 英語の原文で読んでみて思ったのは、日本語訳で「商人」となっている単語が salesman(セールスマン)となっていることです。 salesman と merchant とほぼ同じ意味でつかっていますが、1968年の出版であり、読者対象のセールスマン(・・現在なら salesperson:セールスパーソンとすべき)に向けて書かれた本であることがよくわかります。しかも、コミッション制のセールスです。こういうところは、著者はうまいなと思います。日本語訳がそうなっているかは知りません。

 英語については、時代設定を新約聖書時代のパレスチナに設定している関係からか、やや古風な表現を意図的に使っているようで、高校程度の英語能力でも、慣れないと読みにくいかも。King James Version(欽定訳聖書)の文体でしょう。Thou(汝)などの人称表現や、lest などのやや古風な構文。また、sir ではなく sire など。

 こういうことを踏まえたうえで、英語の原文で読むのであれば、大幅に節約もできるのでオススメする次第です。
 
 もちろん、大枚一万円を「自己投資」することが「成功への近道」だと説かれるのであれば、もちろんわたしとしても、意義申したてすることはいたしません。

 中身がわかればそえでいいという合理主義に徹するか、自己投資と割り切って、上製本を手元に置いて繰り返し読み込むか。これはマインドの問題だといっていいでしょう。





<関連サイト>

オグ・マンディーノ・・wikipedia(日本語版)の記述。
・・最初の著書である『地上最強の商人』(1968年)出版までに人生はこれを参照。ただし、Introduction に書かれていることに同じ。人生においてさまざまな苦労を経験しながらも、保険のセールスマンとして成功し、ついには最初の志(こころざし)を失わずに著者になったエピソードじたいが、自己啓発本の著者にはふさわしい内容。




PS なんと角川文庫から格安版が出版

2014年11月に山川紘矢&山川 亜希子の訳で角川文庫から出版されました。消費税込みで、なんと562円! スピリチュアアル系の自己啓発書の翻訳で有名な翻訳者によるものなので、訳文にはとくに問題はないと思われます。もはや、大枚払ってありがたがる必要もなくなったということですね。(2015年2月7日 記す)





<ブログ内関連記事>

Two in One, Three in One ・・・ All in One ! -英語本は耳で聴くのが一石二鳥の勉強法

福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いまから140年前に出版された「自己啓発書」の大ベストセラーだ!

『自助論』(Self Help)の著者サミュエル・スマイルズ生誕200年!(2012年12月23日)-いまから140年前の明治4年(1872年)に『西国立志編』として出版された自己啓発書の大ベストセラー


(2020年5月28日発売の拙著です) (2019年4月27日発売の拙著です) (2017年5月18日発売の拙著です) (2012年7月3日発売の拙著です) ツイート Clip to Evernote  ケン・マネジメントのウェブサイトは http://kensatoken.com です。 ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com  にどうぞ。 お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。 禁無断転載! end

2011年7月14日木曜日

ビジネスにおけるコトバの運用能力について

           
 米国社会、特にビジネス社会でコミュニケーションがいかに必須のスキルであることか!

 このことについては、わたしが拙いコトバを書きつらねるよりも、作家・片岡義男のエッセイ「人生に成功したければ、言葉を勉強したまえ」 からの引用に語らせた方がいいでしょう。

 「人生に成功をおさめるためにぜったいに欠かせない最大の条件は言葉に習熟することだ、という伝統的な考え方が、アメリカにはある。この考え方は、いまでもつづいている。

 たとえば、ハーバード大学のビジネス・スクール(経営大学院)を出た人というと、アメリカではエリートになる可能性がもっとも高い人たちのうちに入るのだが、ハーバード・ビジネス・スクールで学んだことがあなたにあたえたさまざまな影響のなかで、最大のそしてもっとも大切なものはなにだと思うかと、友人たちにきいてみると、ほぼ全員が、『自分の考えていることを他人にむかって明晰に表現する能力の基礎をしっかりと身につけたことだ』とこたえてくれる。

 ハーバード・ビジネススクールにかぎらず、東部の名門でしっかりと猛勉強をしてきたアメリカ人の友人たちも、大学の勉強ぜんたいをとおして自分が得た最大のものは、言葉を使う能力を高度に身につけ、大学を出てからもずっと勉強をつづけていくための強固な土台をそれによって自分のものにしたことだ、とこたえてくれる。

 出世したり成功をおさめたり、トップにたつエリートになったりしたければ、アメリカで生きる場合まず最初にやらなくてはいけないのは、言葉の勉強なのだ。

 いろんな分野でトップの位置にある人たち、あるいはトップにむけて確実にのぼっていきつつある人たちと知り合ってまず最初にぼくが関心するのは、自分の考えていることを外にむけて表現するときの言語使用能力の次元がきわめて高くて深く、しかもそのことの基礎が非常にちゃんとしているということだ。

 アメリカはたいへんな階層社会だが、トップに近ければ近いほど言語使用能力が高度な次元のものになっていく。そして、主として街角で知り合う低い階層の人たちは、気の毒になってしまうほどに幼稚な、次元の低い言語能力しか持ってないことが、すぐに、そして、はっきりと、わかる。

 中間的な階層の人たち、あるいは中の下くらいの階層の人たちのなかには、もっと上へのぼっていきたいのになかなかのぼっていけず、鬱屈した思いを自分の内部にじっと閉じこめているような人たちが多いが、彼らも、これでは上昇はまず無理だなと思えるような言葉の使い方をしている。

 アメリカ社会はいろんな文化からの移民で構成されている。ことなった歴史や文化の背景をもった人たちを自分の国のなかに受け入れることに関して、一般的に言ってアメリカは非常に寛容的だが、言葉の使い方の習熟度を高めないことには、アメリカのほんとうの内部には絶対に入っていけない。英語が話せなくてもアメリカ市民として一生食っていくことはできるけれども、それはただ単にそれだけのことであり、アメリカの核心に接近することはできない。・・以下略・・

(出典)「人生に成功したければ、言葉を勉強したまえ」(片岡義男)in 『ブックストアで待ち合わせ』(新潮文庫、1987 単行本初版 1983)


 「自分の考えていることを他人にむかって明晰に表現する能力」、まさにこれだといってよいでしょう!

 アメリカのビジネス社会でコミュニケーション能力が特に重視されるのは、上記の理由によるのです。コミュニケーション能力には、話す能力と書く能力の双方が含まれる。前者はプレゼンテーション、後者は論文だけでなく社内メモ、レターなどが含まれます。

 なお、この文章の初出は雑誌『ポパイ』に連載されたものだと「文庫本のためのあとがき」にあります。アメリカの本について語ったエッセイです。

 現在からみれば、まだまだアメリカ文明が輝いていた頃の文章だが、ここに書かれていることは、40年ちかくたった現在でもまったく色あせていないといってよいでしょう。



<ブログ内関連記事>

書評 『言葉でたたかう技術-日本的美質と雄弁力-』(加藤恭子、文藝春秋社、2010)
・・アメリカのエリート教育

書評 『小泉進次郎の話す力』(佐藤綾子、幻冬舎、2010)
・・スピーチ

書評 『思いが伝わる、心が動くスピーチの教科書-感動をつくる7つのプロセス-』(佐々木繁範、ダイヤモンド社、2012)-よいスピーチは事前の準備がカギ!

書評 『「言語技術」が日本のサッカーを変える』(田嶋幸三、光文社新書、2007)

書評 『外国語を身につけるための日本語レッスン』(三森ゆりか、白水社、2003)

書評 『言葉にして伝える技術-ソムリエの表現力-』(田崎真也、祥伝社新書、2010)






Clip to Evernote




    

2011年7月9日土曜日

書評 『知識は捨てる!』(川井かおる、日経BP社、2​009)


 つねに「情報」にさらされつづけている現代人、ときにはみずから​の意思で「情報」を遮断して、「情報断食」を実行することも大事​でしょう。

 おすすめ本は、『知識は捨てる!』(川井かおる、日経BP社、2​009)。あふれる情報にふりまわされないよう、ときには情報機​器はいっさい閉じて「情報断食」を行って意識的に飢餓感をつくり​だす。

 脳科学的にいえば、知識というものは、寝ているあいだに整理されて定着するも​の。これを意識的に実行するわけですね。

 いま流行りの「断捨離」と似たコンセプトですね。禅によるシンプルライフの薦めでもありますので、むしろほんらいの日本人の生き方を思い出そうという内容でもあるといっていいでしょう。

 重要なのはデータよりも情報、情報よりも知識、そしてもっとも大事なのは知識ではなく智慧。そのためにもっとも大事なのは二次情報や三次情報ではなく、自分というフィルターから得た一次情報。

 五感をフルにはたらかせて接する一次情報の​重要性を、しっかりと認識したいものですね。「知識社会」だからこそ、「知識偏重」の妄執からは解放されたいもの。何がほんとうに重要な情報や知識であるのかは、智慧がなければ班別することはできません。

 「断食」はココロにもカラダにも効く!



目 次

情報断食とは、何か?
第1捨 今すぐ捨てたい知識
 知識偏重-だるまの絵を書く機転
 執着-過去・未来より今
 相対評価-唯一無二の自由人たれ
 数値崇拝-「もっともっと」は本当に幸せか?
 先入観-ありのままの事実を受け容れる
 「言葉」-自分を活かす言葉だけを残す
 見栄-自然体は素晴らしい
 否定語-自己肯定の達人に
 情報断食で心を目覚めさせる

第2捨 知識を捨て智慧を掘り起こす
 呼吸を強く意識する
 心で納得して動く
 見えないところを活力源に
 頭と心の均衡を維持する
 捨てて捨てて腹に落とす
 心の声に耳を傾ける
 つながりを取り戻す
 対症療法から抜け出す
 このように書いてきた私は?


著者プロフィール

川井かおる(かわい・かおる)

元郵政大学校教官。1962年生まれ。東京理科大学第一部応用数学科卒業。大手民間企業に勤務後、旧郵政省入省。郵政研究所などを経て、郵政大学校の教官として、企業教育に携わる。企業、大学、自治体などで講演実績多数。特定非営利活動法人ヒューマンサイエンス研究所理事・公認講師(自己拡大プログラム、個性別目標達成支援)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)






<ブログ内関連記事>

成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日)体験記 (総目次)
・・携帯電話もパソコンも情報機器はいっさい持ち込めない「断食参籠修行」三泊四日の記録。「断食」はカラダにもココロにも効く!




Clip to Evernote




    

2011年7月7日木曜日

「フィリピン投資セミナー」 (国際機関日本アセアンセンター)が、2011年7月28日に開催(入場無料)



 「フィリピン投資セミナー」が、来る7月28日(木)に開催されることになりました。

 カトリック国で若年人口の多いフィリピン(The Philippines)は、東南アジアのその他諸国とは違って、レベルの高い英語が製造現場でも通じるのが大きなアドバンテージになっています。つまり経営トップとワーカーが直にコミュニケーションがとれるのです。

 また「地の利のよさ」からアジア開発銀行(ADB)の本店が置かれていることも、製造業のロジスティクスの観点からいっても無視できない特性だといいってよいかもしれません(下図を参照)。

 フィリピンに現地進出を考えておられる方は、ぜひ最新の「投資情報」を知る機会として活用されることを推奨いたします。

 以下に、国際機関日本アセアンセンターによるセミナーの紹介文を転載いたします。


◇◇--------------------------◇◇
「フィリピン投資セミナー」のご案内 
◇◇--------------------------◇◇

日本アセアンセンターは、日比経済委員会および駐日フィリピン大使館との共催でフィリピン投資セミナーを開催いたします。

本セミナーではシンソン公共事業道路大臣、デリマ経済区庁(PEZA)長官の基調講演のほか、PEZAを活用した日系企業の事例を紹介する予定です。

日時:2011年7月28日(木) 13:00-16:00
場所:東京商工会議所ビル7階「国際会議場」
参加費:無料
定員:200名
お問合わせ:日比経済委員会事務局(電話:03-3283-7867)


詳細はこちらです。
http://www.asean.or.jp/ja/invest/about/eventinfo/2011/2011-10.html/file

お申込みはこちらです。
http://www.jcci.or.jp/international/2011seminar-p1.html

お申込み締切り 2011年7月19日(火)


皆様のご参加を心よりお待ちしております。

-----------------------------





<ブログ内関連記事>

フィリピン(Philippines)とポーランド(Poland)、この「2つのP」には2つ以上の共通点がある!




Clip to Evernote


  

   
         

2011年7月6日水曜日

【アタマの引き出し】のつくりかたワークショップ (2011年7月5日 19時 東京八重洲) を開催しました


 昨日(7月5日)は、 【アタマの引き出し】のつくりかたワークショップ を東京・八重洲で予定通り開催いたしました。

 ワークショップというものは、参加者のみなさんと一体になってつくりあげる「ライブ公演」のようなもの。おかげさまで、参加した皆様にとっても、たいへん充実した「体験」になったのではないかと思います。

 全員に参加してもらったのは 2種類のワーク。「対面型のロールプレイイング」と「全員参加の連想ゲーム」。個人の「学び」とちがって集団での「学び」には、いわば集合知とでもよぶべきものが実現するものです。「人の振り見て我が振り直せ」とはややネガティブな表現ですが、他者からいいとこどりすると考えれば、集団での「学び」の本質をついたものだといってもいいでしょう。

 この点については、ブログに書いた記事 ダイアローグ(=対話)を重視した「ソクラテス・メソッド」の本質は、一対一の対話経験を集団のなかで学びを共有するファシリテーションにある を参照していただけると幸いです。

 初対面での最初の3分が勝負だと、心理学ではよくいわれていますね。初対面では、自分のアタマをフル回転して「引き出し」を駆使し、いかに相手から話を「引き出す」か

 世の中が複雑化し、趣味や価値観が多様化する現在、営業担当者もかつてのように、昨夜のナイター(・・プロ野球のことです)やゴルフの話題で、すべてが間に合うなんてことはありえません。どんな人とのあいだにも「共通点」を即座に発見し、「共感」するポイントを見つけるワザが必要とされるのです。

 こういった「中身のある雑談」は、偶然の出会いが死命を決することすらある現代世界においては、営業担当者に限らず、必須のスキルやマインドセットといってもいいでしょう。

 「アタマの引き出し」とは、通常は「引き出し」といっています。『大辞泉』によれば以下のように書かれています。

ひき‐だし【引(き)出し/▽抽き出し】
1. 引き出すこと。「預金の―」
2.(「抽斗」とも書く)机・たんすなどに取り付けて、抜き差しができるようにした箱。
3. 臨機応変に活用できる、隠れ持った多様な知識や豊かな経験のたとえ。「―が多く、どんな役でもこなせる俳優」

 「アタマの引き出し」はいうまでもなく「3.」の意味のことですね。「2.」のタンスの引き出しが比喩的に私用されたものでしょう。

 「アタマの引き出し」つくりは、エッセンスだけを抽出すると以下のようになるでしょうか?

●観察するクセをつける
●すぐに検索して調べるクセをつける
●アウトプットすることで、再生された記憶があらたに再編集された記憶として定着する
●違いよりも共通性に注目してアウトプットする

 もちろん、これだけでは抽象的で理解しにくいでしょうし、「引き出し」つくりには、高速道はありません。

 朝起きたら顔を洗うのと同じくらいまでに、無意識に実行してしまう「生活習慣」にしてしまうことが必要です。

 これまでブログにも何度か書いていますが、昔ながらの格言にもあるように 「三日三月三年」(みっか・みつき・さんねん) たった段階で、効果が目に見えるものになってくるといっていいでしょうしょう。

 なにごとも「継続はチカラなり」。地道にコツコツと。しかし、日々の取り組みが、三ヶ月後、三年後には大きな差となって現れてくるのは間違いありません。

 日本では昨年2010年あたりから、ようやく「ハーバード白熱教室」のサンデル教授の授業が注目されたことがキッカケになって「参加型でダイアローグ重視のワークショップ」に関心が集まるようになってきましたが、まだまだワークショップが定着したとはいえない状況です。

 次回のワークショップは、遠くないうちに開催する予定ですので、その際はぜひ御参加をご検討ください。



<関連サイト>

【アタマの引き出し】のつくりかたワークショップ(2011年7月5日実施)


<ブログ内関連記事>

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ


*以下は、姉妹編の「「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!」にアップした記事です。ご参考まで。

【アタマの引き出し】のつくりかたワークショップ を開催します (2011年7月5日 19時 東京八重洲)

「ハーバード白熱教室」(NHK ETV)・・・自分のアタマでものを考えさせるための授業とは

ダイアローグ(=対話)を重視した「ソクラテス・メソッド」の本質は、一対一の対話経験を集団のなかで学びを共有するファシリテーションにある

「◆未来をつくるブック・ダイアログ◆『国をつくるという仕事』 西水美恵子さんとの対話」に参加してきた-ファシリテーションについて

「三日三月三年」(みっか・みつき・さんねん)




Clip to Evernote