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2014年8月18日月曜日

書評 『スルーされない技術』(石田章洋、かんき出版、2014)-「スルーされる人」 と 「スルーされない人」 の違いとは?


「スルーする」という表現がよく使われるようになったのはいつからか記憶にありませんが、「スルされた」ときの残念感はなんともいえないものがありますよね。

逆に「スルーする側」に立って考えてみると、多忙なときはスルーしがちですが、それはなにも悪気があってのことではありません物事には優先順位というものがあるし、みな忙しいのです。つまらないことにこだわって時間を浪費したくないし、精神的な疲労感はできるだけ避けたいから。

『スルーされない技術』(石田章洋、かんき出版、2014)は、これは使える技術です。「スルーされる人」 と 「スルーされない人」を対比させながら、「スルーされない人」になるためのコミュニケーション・スキルを教えてくれる本です。

とくに組織内でのコミュニケーション能力に不足しがちな人に読んでもらいたい本です。相手が誰であれ「人の心をつかんで離さない」ためのエッセンスを、フリーの放送作家としての30年の経験から抽出したものです。

そのエッセンスとは、「相手の心を一瞬でつかむ」、「つかんだら離さない」、「次回も観たい」(=会いたい)と思わせる3原則。テレビ番組そのものがそうですし、その企画を通すと言うことじたいが、この原則をはずれては成り立たないわけですからね。

著者は、スルーされる人に共通していることは、「コトバの温度が低い人」だといいます。テレビ業界ではよくそういうらしいのですが、言い換えれば「発言に熱が感じられない人」ということでしょう。つまり、なにがいいたいのだかよくわからない、なにを伝えたいのかよくわからないということです。

著者は、コトバは「手段」であって「目的」ではないと明言しています。コトバは「目的」を達成するための「手段」なのである、と。手段と目的は混同してはいけません。これはコミュニケーションの基本です。

本書の基本的なメッセージは、スルーされないためには「戦略」が必要であり、そのためにはさまざまな「戦術」があるということ、です。本書は、その「戦術」を「型」として簡潔に整理しているものです。

具体的なアドバイスは「目次」をみていただきたいと思いますが、サラっと読めるなかに、「これはなんだ?」というリアクションを誘発するであろうフレーズで「フック」をつくるなど、この本じたいが「スルーされない」構成になっています。

面白くて役に立つ実用書として、多くの人に勧めたいと思う次第です。



PS. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。






目 次

まえがき
第1章 「スルーされる人」と「されない人」の違いとは?
 伝わらないのは説明不足だからだと思っているあなたへ
  Q 一度に多くのことを伝えようとしていませんか?
 他人に バカ だと思われたくないあなたへ
  Q 相手の理解度に合わせて話していますか?
 観た映画や読んだ本をつい批評しがちなあなたへ
  Q ネガティブな言葉を使っていませんか?
 自分に 劣等感 を持っているあなたへ
  Q つい自分を飾ろうとしていませんか?
 自分自身の言葉にこだわっているあなたへ
  Q 名言のチカラを活用して話していますか?
 お世辞が嫌いなので他人をほめることがないあなたへ
  Q 絶対にスルーされない言葉を知っていますか?
 column 「SAVE THE CAT の法則」
第2章 スルーされない つかみ のルール
 つかみのルール1 リード から始める
 つかみのルール2 そこはかとない不安を煽って始める
 つかみのルール3 訴求ポイント で始める
 つかみのルール4 共感を得て始める
 つかみのルール5 サプライズで始める
 つかみのルール6 「サイレント」から始める
 つかみのルール7 謎 で始める
 つかみのルール8 相手の名前を呼んで始める
 column 「話すとは 放す ことである」
第3章 つかんで 離さない ためのルール
 引き寄せテクニック1 わかりやすく例えて引き寄せる
 引き寄せテクニック2 イメージが広がるように伝える
 引き寄せテクニック3 描写して伝える
 引き寄せテクニック4 レトリックを駆使して伝える
 引き寄せテクニック5 ストーリーを意識して伝える
 引き寄せテクニック6 ザイガニック効果を利用する
 引き寄せテクニック7  フック をかけ続ける
 使える(かもしれない) 例え 集
第4章 また会いたいと思わせる話の締めくくり方
 まとめ方のコツ1 トークや共感をもう一度レビューしてから、話を締める
 まとめ方のコツ2 「宿題」を出して、話を締めくくる
 まとめ方のコツ3 出発点に戻って話を締めくくる
 まとめ方のコツ4 「次の機会を楽しみに」させる
 まとめ方のコツ5 最後を「笑い」で締めくくる
第5章 明日から使える 伝え型
 スルーされない伝え型1 共感してもらえる型
 スルーされない伝え型2 謝って許してもらう型
 スルーされない伝え型3 時系列を超えたストーリーの型
 スルーされない伝え型4 伝えたいテーマにフォーカスさせる型
 スルーされない伝え型5 王道の伝え型
 スルーされない伝え型6 説明・説得する話の型
 スルーされない伝え型7 ナナヘソナスの法則
 column 人を感動させるストーリーの定石は「神話の法則」
あとがき に代えて -私はこうして「伝え方」を学んできました-



著者プロフィール

石田章洋(いしだ・あきひろ)
放送作家。日本脚本家連盟員・日本放送作家協会会員。1963年生まれ。岡山県出身。プランナー&ライターズオフィス、株式会社フォーチュンソワーズ代表取締役。日本大学在学中に三遊亭円楽(当時は楽太郎)に弟子入り。落語家になるも数年後、放送作家に転身。以来、30年近くにわたり、各キー局のバラエティ番組・情報番組・クイズ番組・報道番組など、あらゆるジャンルのテレビ番組で企画・構成を担当。構成を手がけた「世界ふしぎ発見!~エディ・タウンゼント 青コーナーの履歴書」は第45回コロンバス国際フィルム&ビデオ・フェスティバルで優秀作品賞を受賞するなど番組の企画・構成に関して高い評価を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

書評 『スーパー速書きメソッド』(石田章洋、 マイナビ新書、2014)-ビジネスパーソンに不可欠な文書コミュニケーション術
・・同じ著者による「書くコミュニケーション術」

『伝え方が9割』(佐々木圭一、ダイヤモンド社、2013)-コトバのチカラだけで人を動かすには

書評 『言葉にして伝える技術-ソムリエの表現力-』(田崎真也、祥伝社新書、2010)

「人生に成功したければ、言葉を勉強したまえ」 (片岡義男)





(2012年7月3日発売の拙著です)








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2014年7月1日火曜日

書評 『日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか?』(熊崎敬、文春文庫、2014)-日本サッカーの病理を「反面教師」にして企業経営に即して考えてみることをすすめたい


FIFAワールドカップ2014ブラジル大会、すでに決勝トーナメントのステージに入っていますが、そこには日本の姿はまったくありません。一次リーグを最下位で敗退したためです。

日本代表チームの問題の「惨敗」については、いろいろ思うことのある人も少なくないのでないでしょうか。

過ぎたことは仕方ない、負けにこだわっていては敗北主義に支配されてしまう、また4年後があるからがんばってもらえばそれでいいじゃないか。そんな感想もあるでしょう。ある意味では楽観論でありますが、しかしながら健忘症になってしまう恐れがないとはいえません。


日本サッカーの「病理」について考える

わたしは、今回の「惨敗」はいままでのサッカー日本代表の悪い面が集中的に顕在化したのではないかという印象をぬぐいさることができません。

今回のワールドカップではアジア勢はすべて敗退し、中南米とヨーロッパのチームだけが勝ち残りました。こういう風に言うと、日本ではまだまだサッカーが「文化」として定着していないからという指摘がかならずでてきますが、「文化論」の話はあまりしたくありません。

問題点は、端的にいって「個」と「組織」の問題ではないでしょうか。

ここでいう組織とは目的をもって結成された人間集団のこと。サッカーでいえば「チーム」のことをさしています。とりあえずフロントのことは脇においておきます。

個々の選手をとってみれば、「個」としてヨーロッパのプロリーグでも活躍している日本人選手も少なくないのに、なぜかれらが日本代表チームという「組織」になると、その強みを発揮することができないのか?

日本人選手もヨーロッパのチームではそのポジションとしての「役割期待」を果たしているからこそ評価されているわけですが、日本代表チームになると、「試合で勝つ」というチームのレゾンデートル(=存在意義)が徹底していないのではないか、という疑問を感じてしまいます。

「勝つ」ということには二つの意味があります。文字どおり点差をつけて勝つということと、たとえ引き分けであっても負けない、ということです。このことについては、Winning is NOT everything, but Losing is Nothing ! という記事で過去に書いたことがあります。

どんな手段をとっても、負けなければいつかは勝つことができる勝つための一瞬のチャンスを見逃さず、カウンターで突破してシュートする。これはデフェンス重視のヨーロッパサッカーに見られる思想でもあります。


日本サッカーの病理を「反面教師」にして考えてみる

日本代表チームの「惨敗」のあと、『日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか?』(熊崎敬、文春文庫、2014)という本が出版されていることを知りました。文庫オリジナルだそうです。

この本を読むと、問題は「個」と「組織」だけではなく、もっと根が深いものであることがわかってきます。

帯には「2014年ブラジルワールドカップ直前 サッカーの見方が劇的に変わる本!」とあります。わたしはこの本は、「惨敗」後のいまこそ読むべき本だと思います。

帯のウラにはこうあります。

●テレビに向かって「なぜ撃たないか?!」と叫んだことのある人
●過去のワールドカップにおける日本代表の戦いぶりに不満な人
「自分たちのサッカー」という言葉が嫌いな人
サッカーは結果がすべて、と考えている人
●日本における育成年代のコーチングに疑問を感じている人
●サッカーというスポーツの本質を知りたい
→ 本書はそんな人たちのために書いた本です


わたしはすべてについて同意するわけではありませんが、すくなくともこの箇条書きの上から3つにかんしては全面的に同感です。

サッカーに限らず、シュートを撃たなければ、つまり点を取らなければ試合には勝てないという当たり前の事実がなぜなおざりにされているのか? こんなこと小学生でもわかることですね。

試合に勝つという「目標」があって、そのために戦略があり、こまかい戦術がある。目的と手段の関係は企業業経営でも同じです。

どうやら日本サッカーは、戦術を重視しすぎて、肝心要の目標や戦略がどこかへ行ってしまい、本来は「手段」であるはずの戦術が自己目的化してしまっているようです。著者の熊崎氏は「手段の目的化」と表現してますが、これもまた日本企業においてよく観察されるものです。

「型」として戦術を徹底させることは初期段階としては必要なことですが、実際の試合というものは戦術どおりの試合展開などそう簡単には実現しないもの。対戦相手という敵とのからみで、瞬間瞬間に局面が複雑に展開する状況のなかで、いかに臨機応変に判断し動くかが、中級以上にもとめられるものです。

「自分たちのサッカー」という表現は、相撲とりがよくクチにする「自分の相撲を取る」という表現を想起させるので不快に思ってきました。「自分たちのサッカー」では何を意味しているのか第三者に説明することはできません。ある種の思考停止状態です。

「自分たちのサッカー」をさせてもらえなかったという釈明ほどふざけたものはないのではないでしょうか? 会社でこんなセリフを吐いたら、間違いなくイエローカードです。「なぜ勝てなかったのか自分で考えろ!」という叱責されるのが当たり前です。

著者は、サッカージャーナリストとして、20年以上にわたって世界中で観察してきた体験から、サッカーというスポーツの本質から考えると、日本人はあまりにもマニュアル思考になりすぎていること、リアル世界の物事をコンピュータゲーム的に捉えすぎていること、自分のコトバや発想にとらわれてしまう傾向など指摘しています。

「個」と「組織」にかんしても、ブラジルサッカーのチーム設計が「一対一」の二人組ペアから組み立てていることも指摘しています。これは組織力で個の弱さをカバーするという発想(・・思い込み?)の強すぎる日本サッカーとは真逆の思想というべきでしょう。

「型」志向や「コトダマ」思考の負の側面がもろにでていると言い換えてもいいかもしれません。「型」や「コトダマ」はうまくポジティブに使えば大きな効果を発揮するのですが、とらわれて思考停止状態に陥ってしまう危険と隣り合わせです。

わたしはこの本を読みながら、著者が日本サッカーの病理として指摘していることは、そっくりそのまま日本企業にも当てはまるのではないかという気持ちにさせられました。

その意味では、日本サッカーを「反面教師」として、企業経営を振り返るためのビジネス書として読む価値があるといっていいかもしれません。あえてこのブログで取り上げたのはそのためです。

サッカーが好きでもそうではなくても、いろんなことを考えさせられる「本質論」に迫った本だと言えるでしょう。おすすめです。





目 次 

第1章 日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか?
第2章 日本のスタジアムで考えたこと
第3章 世界のスタジアムで考えたこと
第4章 サッカーの本質を知っている男たち
あとがきにかえて なんのためにシュートを撃つのか?

著者プロフィール

熊崎敬(くまざき・たかし)
昭和46(1971)年、岐阜県出身。明治大学卒業後、「サッカーダイジェスト」「Sports Graphic Number」編集部を経て、フリーランスに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


PS 2014FIFAワールドカップ ブラジル大会の決勝戦にみるドイツの強さ

決勝戦のドイツ対アルゼンチンは延長戦の後半でドイツが1点先取して優勝。ドイツにはアルゼンチンのメッシのようなスーパー選手はいなくても、組織力の高さで今回の代表チームのなあkではピカイチであったことが証明された。だが、「組織力」とはいっても日本とは段違いである。ドイツは個々の選手の技量も士気も高く、あくまでも「個を基盤とした組織力」である点が強く印象に残った。現在ドイツのプロリーグででプレイする日本人選手も多いこともあり、日本に求められているのは、ふたたびドイツを模範にすべきではないかとも思うのだが・・ (2014年7月14日 記す)



<ブログ内関連記事>

「FIFAワールドカップ2014」における日本の「惨敗」-「個」の力がまだまだ弱く「組織力」に統合されていないのが日本の現実

Winning is NOT everything, but losing is NOTHING ! (勝てばいいいというものではない、だけど負けたらおしまいだ)

コトダマ(きょうのコトバ)-言霊には良い面もあれば悪い面もある

「希望的観測」-「希望」 より 「勇気」 が重要な理由

「サッカー日本代表チーム」を「プロジェクト・チーム」として考えてみる

日体大の『集団行動』は、「自律型個人」と「自律型組織」のインタラクティブな関係を教えてくれる好例

書評 『「言語技術」が日本のサッカーを変える』(田嶋幸三、光文社新書、2007)-「論理力」と「言語力」こそ、いま最も日本人に必要なスキル

合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋
・・「すきもなく たたきつめたる敵の太刀(たち) みなうち捨てて 踏み込みて斬れ」、「敵多勢(たぜい) 我を囲みて攻むるとも  一人の敵と思い戦え」、「敵の太刀(たち) 弱くなさむと思いなば まづ踏み込みて 敵を斬るべし」 ⇒まずは「一対一」がすべての基本。この組み合わせがすべての基盤となることは、サッカーという西欧由来の近代スポーツ導入以前に日本人の「常識」であったはずだ!




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2014年6月12日木曜日

書評 『全員で稼ぐ組織-JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書-』(森田直行、日経BP、2014)-世界に広がり始めた「日本発の経営管理システム」の仕組みを確立した本人が解説


「アメーバ経営とは京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長がつくり出した、経営哲学をベースにしたトータルな経営管理システムです」。これは、京セラ自身による「アメーバ経営」の定義です。

この簡潔な定義に「アメーバ経営」のエッセンスが見事に表現されているといっていいでしょう。すなわち「経営哲学」と「経営管理システム」の2つです。本書では随所で、この哲学(あるいは理念)と仕組みの2つが両輪となって、はじめて「アメーバ経営」が意味をもつことが強調されています。

「アメーバ」とは5人から10人くらいの小集団のこと。このアメーバを一単位として、あたかも会社のように採算意識をもって自主的に自律的に活動し、その他のアメーバとともに日々協同していけば、おのずから全社目標も達成されていくという経営システムです。

全社の数値目標が、末端の小集団までブレイクダウンされ、しかもすべてが連動しているので実現が可能となるわけです。経営数字が全社の従業員にオープンになっているという点も大きな意味をもっています。

経営者であれば、経営目標達成のための最適な経営手法は気になるものです。どうやったら売り上げを上げることができるか、どうやったら利益を上げることができるか、そのためにはどうやったら従業員のやる気を引き出すことができるのか。

そういう観点から、「失われた20年」の日本では、いわゆる「成果主義」システムが大流行したことがありました。ところが多くの会社では成果主義はうまく機能しなかったようです。

わたしは「成果主義」そのものが悪いとは考えていません。企業はそれぞれ考えもバックグラウンドも違いますし、業種業態によっても大きな違いがあるからです。成果主義がうまく機能している会社もあれば、そうでない会社もあります。

とはいえ、実際問題として、成果主義がうまく機能しなかった日本企業が多いことはたしかなことですし、一方ではアメーバ経営を導入して成功している会社が多いことも否定できません。

さらに、成果主義で破竹の勢いで快進撃していたといわれる中国企業においてすら、成果主義が機能不全に陥っているケースがすくなくないという事実には興味深いものを感じます。本書でもそういった中国企業の事例について取り上げられています。

こういった事実からわかるのは、すべての従業員がスーパースターになって稼ぎまくることができるわけがないし、そうなる必要もないということです。成果主義の前提が成り立たないケースが多いという事実です。

わたしは、本書を読みながら、「アメーバ経営」とは、一握りのスーパースターに依存するのではなく、「ごくごくフツーの平凡な人たちから自発性と自律性を引き出し、そのパワーを結集して非凡な組織をつくりあげるものだ」と思いました。わたしならこんな定義をしてみたくなります。


「全員経営」をたんなるスローガンにしない「仕組み×理念」

本書のタイトルに注目してみましょう。『全員で稼ぐ組織』とありますね。

「全員で」まではよくあるフレーズですが、「稼ぐ」という点が大事です。企業組織である以上、適正利益をあげてサステイナブルに存続し続けることが顧客にとっても、従業員にとっても、その他ステークホールダー全体にとっても重要です。

「全員経営」をスローガンやかけ声倒れに終わらせない仕組みがアメーバ経営にあるわけです。

付加価値をベースに考えること、しかもすべて金額ベースで考えること。管理会計の仕組みとしてここまでは考える人も少なくないと思いますが、時間意識を導入していることもきわめて大きな意味をもっています。同じ仕事をするにも、どれだけの時間(工数)がかかったかがわかれば、生産性向上についての意識が向かうからです。しかも数字ですべてが表現されるわけです。

さらにいえば、細かい話ですが、付加価値の計算に人件費を加えない(!)という点に、アメーバ経営がじつに非凡な経営管理システムであることを感じさせます。詳しくは本書を読んで確認していただきたいと思います。

しかし、いくら仕組みがしっかりしていても経営システムがうまく回るわけではありません。ここで暴騰に引用した定義に戻るわけです。「経営管理システム」は、「経営哲学」と両輪になることによって、はじめてうまく機能するのです。

小集団と小集団のあいだに発生するコンフリクト(葛藤)を最小限にするために、稲盛哲学の根底にある「利他の精神」という理念が生きてくるわけです。ビジネス関係者は、「制度に魂を入れる」という表現をよくつかいますが、まさに理念こそ魂」なのです。しかも生きた理念であってこそ、経営システムが生きてくるわけです。

「人生・仕事の結果」とは「考え方×熱意×能力」だという稲盛氏の「人生の方程式」が本書にも出てきます。これは「個」の心構えを説いたものですが、アメーバ経営を自薦する会社では、自分たちで立てた目標数字を達成するために、ゲーム感覚さえ感じている小集団もあるようです。

スーパースターではなく、ごくごくフツーの人たちのやる気を引き出している点に、仕組みと理念が混在一体化した姿を見ることができるのではないでしょうか。


JAL再生の舞台裏のストーリー

本書の副題には『JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書』とあります。「アメーバ経営」については、聞きかじりで名前くらいは知っていても、「JAL再生」という事実がなければ、これほど注目が集まることもなかったのではないでしょうか。

わたしにとっても、「JAL再生」について、「アメーバ経営」の仕組みつくりを行い伝道師として活動した著者自身が語るのを読むのはじつに興味深いものがありました。

とくにアメーバ経営の「部門別採算制度」をもとにした「組織再設計」のくだりはさらっと書かれていますが、じつに理にかなった組織改革が行われていることがわかります。ポイントは採算部門を明確にし、サポート部門の役割を明確にすることにあるわけですが、この点は熟読する価値があるといえます。

JALのような歴史ある大企業で、しかもアメーバ経営が得意としてきた中小製造業でなくサービス業においても応用可能なことが実証されたことは、本書の出版元である日経BP社が取り上げていることからもわかるように、日本のビジネスパーソンの多くの目を開いたことでしょう。

世の中には数々の経営手法がありますが、アメーバ経営がそれらと一線を画すのは、導入することにより意思決定の仕組みや組織、事業の構造だけでなく、目に見えない企業文化や働く人々の人生観、価値観までが変わっていくところにあります。

「はじめに」から引用しましたが、これが自画自賛ではないことが、本書を通読すれば納得されるのではないかと思います。

「経営哲学」と「経営管理システム」が両輪としてかけ算となった「アメーバ経営」は、先にふれたように中国企業にも導入が始まっているだけでなく、世界に広がりつつあるようです。

バブル崩壊後、自信を喪失した日本企業は20年以上にわたって先進的なアメリカの経営手法の導入にチャレンジしてきましたが、そろそろ「日本発の経営管理システム」に注目すべきときがきているのかもしれません。

かつて戦前の日本には、GE(=ゼネラル・エレクトリック)と同時代に独自の考えから「事業部制」を導入した松下幸之助がいましたし、戦後の日本にも、アメリカから学んだ統計的生産管理手法を独自の思考によって、ジャストインタイムという哲学にまで鍛え上げ、世界的な経営手法に育て上げたトヨタの大野耐一による「カンバン」システムなどもあります。

稲盛和夫氏が考案し実践してきた「アメーバ経営」もまた、そうなっていくのかもしれません。もちろんシステムである以上、実際に導入して機能させるには、そうとうな覚悟が必要であることは言うまでもありませんが。

稲盛氏のもとでアメーバ経営の仕組みと情報システムの確立・推進を担当し、現在は伝道師としてその普及活動を推進している著者による本書は、構成がしっかりした、じつに読みやすい「教科書」です。

経営者だけでなく、ぜひ多くのビジネスパーソンの皆さまに一読をお勧めししたいと思います。



PS. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。





目 次 

はじめに
第1章 アメーバ経営とはどんな経営手法なのか?
 社員全員が経営に携わるために
 あなたの会社では、誰が利益を生み出しているのか
 社内売買によりアメーバの独立採算管理を実現
 管理会計と財務会計の関係
 論語とそろばんは一致しなければならない
 一対一の対応でダブルチェック
 創業3年目に突き当たった壁
 全員経営を生み出す時間当り採算
 世界中から注目を集めwるアメーバ経営
 アメーバ経営導入のメリット
 アメーバ経営導入の基本的な考え方
 アメーバに「収入」と「支出」の責任を持たせる
 社内売買価格はマーケットプライスをもとに決まる
 サービス業にも社内売買の考えを適用
 マスタープランは必達目標
 会議では数字の確認にとどまらず本人の決意を聞く
 アメーバ組織運営の心得とは
 アメーバ経営を支える「フィロソフィ教育」
 リーダーとしてのあるべき姿
第2章 JAL再生
 JAL再建を打診される
 仕組みだけではなく魂を入れる
 私がJALに着任して感じたこと
 まずは社員の意識改革から着手
 京セラ流コンパで社内を一つに
 経営理念の刷新とJALフィロソフィの誕生
 更生計画を着実に実行する
 稲盛さんを激怒させた会議での発言
 意識が変わると、現場が変わる
 年間で800億円のコスト削減に成功
 部門別採算制度導入のための組織改革に着手
 利益責任を一手に負う新部署を創設
 1便ごとのコストと各サービスの単価を設定
 予約状況を見ながら最適な機材に変更
 パイロットも航路の工夫で燃費を追求
 アメーバ経営が本領を発揮した東日本大震災
 関連会社は本体依存から脱却
 アメーバ経営で生きている会社になった
第3章 導入事例に学ぶアメーバ経営
  ●ケーススタディ01 荻野工業-筋肉質の経営体質でリーマン・ショックを乗り切る
第4章 アメーバ経営は業界の枠を超える
 患者増でも経営環境は厳しくなる医療業界
 赤字病院に導入、1年目から黒字化に成功
  ●ケーススタディ02 社会医療法人天神会-職種の壁を越え、医療の質と採算を両立
 介護業界でも導入企業が増加中
  ●ケーススタディ03 ケアサービス-デイサービスで驚異的な稼働率98.4%を実現
第5章 世界に広がるアメーバ経営
 7社の中国企業がアメーバ経営を導入
 成果主義は企業を壊していく
 中国のスーパーマーケットにJAL方式導入
 リーダーシップを発揮しやすくする「人柄のよさ」
 アジアを中心に世界へ
おわりに
謝辞
付録① 早わかりアメーバ経営
付録② アメーバ用語集



著者プロフィール
  
森田直行(もりた・なおゆき)
KCCSマネジメントコンサルティング(KCMC)会長。1942年、福岡県生まれ。鹿児島大学卒業後、1967年、京都セラミック(現・京セラ)に入社。アメーバ経営の仕組みと情報システムの確立・推進を担当。1995年、社内ベンチャーとして始めた事業をベースに京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)を設立、社長に就任(現相談役)。2006年、京セラ代表取締役副会長。2010年、経営破綻したJALグループの再建に参画、副社長として稲盛和夫京セラ名誉会長とともに部門別採算制度の導入による経営改革を実行し、再建に貢献した。2012年、中国に京瓷阿美巴管理顧問(上海)有限公司を設立し、董事長に就任。アメーバ経営の伝道に日々心血を注いでいる。






<関連サイト>

勝算なき戦いの始まり-JALを再生させた「アメーバ経営」(その1) (森田直行、日経ビジネスオンライン、2014年5月29日)
・・「JAL再生の原動力になった「アメーバ経営」は、もともと京セラの経営手法なので製造業のイメージが強いのですが、実は、導入企業の業種はバラエティに富んでおり、数年では医療・介護といった業界でも導入が進んでいるなど、あらゆる業種で活用が可能です。このコラムでは、JALの経営改革がどのように行われたのかをあらためて振り返りつつ、「フィロソフィ」と「アメーバ経営」の要点を紹介します。」

売り上げ未達、されど経費は予算通りの矛盾 JALを再生させた「アメーバ経営」(その2) (森田直行、、日経ビジネスオンライン、2014年6月5日)

稲盛さんを激怒させた会議での発言 JALを再生させた「アメーバ経営」(その3) (森田直行、日経ビジネスオンライン、2014年6月12日)

勝ち負けがすぐわかる、だから工夫が始まる JALを再生させた「アメーバ経営」(その4) (森田直行、日経ビジネスオンライン、2014年6月19日)

書籍『全員で稼ぐ組織』が紀伊國屋書店新宿本店、丸善丸の内本店、丸善日本橋店で売り上げランキング1位を獲得(京セラ公式サイト、2014年6月10日)

京セラ、不思議な会社の深層競争力は「アメーバ経営」を支える倫理と論理の両輪文 (Business Journal、2014年8月6日)

"新・経営の神様" 稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」 日本を「幸せに導く」方法とは(現代ビジネス、2016年8月24日)

(2016年8月27日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

稲盛和夫氏と「稲盛哲学」関連

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか?
・・中国では民間企業の経営者のあいだだけではなく、一般読者にも浸透しつつある稲盛和夫氏の教え

書評 『「利他」-人は人のために生きる-』(瀬戸内寂聴・稲盛和夫、小学館文庫、2014 単行本 2012)-智慧に充ち満ちた二人のエルダーによる対談型法話
・・「「第5章 人はなぜ「働く」のか-誰かのために尽くすことが心を高める-(利他の実践)」では、JALの再建が「意識改革」によって実現し、持続可能なものとなっていること、稲盛氏の考えが提携先のアメリカン航空(AA)にも伝播していることが、稲盛氏自身の肉声によって語られている」

書評 『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる-自分、人、会社-全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィー』(原 英次郎、ダイヤモンド社、2013)-メンバーの一人ひとりが「当事者意識」を持つことができれば組織は変わる ・・経済記者が書いたJAL再建についてのドキュメント

『週刊ダイヤモンド』の「特集 稲盛経営解剖」(2013年6月22日号)-これは要保存版の濃い内容の特集


稲盛和夫氏の「経営哲学」を実践する経営者たち

書評 『道なき道を行け』(藤田浩之、小学館、2013)-アメリカで「仁義と理念」で研究開発型製造業を経営する骨太の経営者からの熱いメッセージ
・・稲盛フィロソフィー信奉者によるアメリカでの経営実践の最新報告

書評 『俺のイタリアン、俺のフレンチ-ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方-』(坂本孝、商業界、2013)-ビジネスモデル×哲学(理念)を参入障壁にブルーオーシャンをつくりだす
・・稲盛和夫氏の弟子である経営者の最新の挑戦の中間報告書


フツーの人の自発性と自律性を引き出す仕組み

日体大の『集団行動』は、「自律型個人」と「自律型組織」のインタラクティブな関係を教えてくれる好例

PDCA (きょうのコトバ)






(2012年7月3日発売の拙著です)






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2014年6月9日月曜日

書評 『スーパー速書きメソッド』(石田章洋、 マイナビ新書、2014)-ビジネスパーソンに不可欠な文書コミュニケーション術


文書を作成するのに時間がかかる、書くのが得意ではないのでついつい億劫になりがちだ・・・。

ビジネスパーソンである以上、そんなことは言ってられません。著者の言うとおり、かつてよりはるかに文章を書く機会が増えているからです。わたし自身は文章を書くことを職業にしてきたわけではありませんが、著者の言うことには全面的に同感です。

しかも、口頭のコミュニケーションとは違って、文書のコミュニケーションは、いったん送付や提出してしまったものは修正が難しいという問題があります。メールの文章がまさにその典型ですね。文言だけでなく、数字もまたエビデンス(=証拠)として残ってしまうからです。

だからこそ、ビジネス文書作成にあたっては、構成がしっかりとしていて簡潔明瞭、理路整然であることが求められるのです。

本書は、いまを生きるビジネスパーソン向けの文章作成術です。ビジネスパーソンは 文章の専門家ではないので、100点とる必要はないのです。言うべきことが誤解なく伝わること、これができていれば十分に合格です。

もちろん、ビジネスパーソンだけではありません。なんらかの形で仕事についている人に必要な文章を書くためのメソッドが、きわめて簡潔に過不足なくまとめられています。

短文の作成方法から始まって、定型的なビジネス文章作成の方法論を説明し、最終的にはレポートなどの長文の作成術までカバーしているという用意周到な構成。文章作成レベルが高いと思っている人も、最初から「自分チェック」の意味で読むと得るものがかならずあるはずです。

ビジネス文書作成は、たんなる文書作成とは違います。ビジネス文書がコミュニケーションである以上、さまざまなビジネスシーンにおいて、つぎのアクションにつながるものなくては効果的だとはいえません。意味が明瞭でも、読んでもらう相手のことを考慮に入れておかねばなりません。

その点、本書は説得力のある内容といってよいでしょう。著者は文章作成のプロフィールというだけでなく、仕事人として組織の内外で企画を通してきたプロだからです。

わたし自身、ふだんは無意識に実践していることを、かゆいとこまで明確に文字にして整理していただいたという感想です。当たり前のことを論理的に説明するというのは、意外と難しいものだからです。

その意味では、部下の文章作成を指導する立場にある上司の方々にもお勧めしたい一冊です。



PS. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。





目 次

はじめに
第1章 一文を速く書き、伝わる文にする秘訣
第2章 伝わる文章を速く作る秘訣
第3章 穴埋めで速い! 伝わる「定番」フレーム
第4章 あなただけのオリジナルフレームを作るテクニック
第5章 3分で文書を仕上げるための小ネタ・テクニック
第6章 速く書くための環境を整える!
第7章 レポートなどの「長文」を速く書く方法
付録 巻末資料
  思わず使ってしまいがちな「重ね言葉」の代表的な例
 ビジネスシーンで使われがちなカタカナ語と日本語変換例
 ビジネスシーンで使えることわざ・慣用句・四字熟語
 敬語(尊敬語・謙譲語・丁寧語)の言い換え

著者プロフィール

石田章洋(いしだ・あきひろ)
 1963年岡山県生まれ。構成作家&プランナー。日本脚本家連盟員・日本放送協会会員。ライター&プランナーズオフィス、株式会社フォーチュンソワーズ代表取締役社長。25年にわたり各キー局の情報番組・報道番組などを中心に構成を担当。最近の主な担当番組は「世界ふしぎ発見!(TBS)」「情報プレゼンター・とくダネ! (フジテレビ)」「BSフジLIVEプライムニュース」など。構成を手がけた「世界ふしぎ発見! エディ・タウンゼント 青コーナーの履歴書」は-第45回コロンバス国際フィルム&ビデオ・フェスティバルで優秀作品賞を受賞するなど、番組の企画・構成・制作に関して高い評価を受けている。大手電機メーカーや大手化粧品会社の広報・マーケティングのコンサルティングを行うなどビジネスシーンでも活躍している。


<ブログ内関連記事>

『伝え方が9割』(佐々木圭一、ダイヤモンド社、2013)-コトバのチカラだけで人を動かすには

書評 『言葉にして伝える技術-ソムリエの表現力-』(田崎真也、祥伝社新書、2010)

「人生に成功したければ、言葉を勉強したまえ」 (片岡義男)






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2014年6月3日火曜日

書評 『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか-爆発的な成長を遂げた驚異の逆張り戦略-』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー、長谷川圭訳、日経BP社、2013)-タイの 「ローカル製品」 を 「グローバルブランド」に育て上げたストーリー


「レッドブル」は日本でもすっかり有名になったエナジードリンクですね。本書はそのレッドブルが世界商品に成長した過程を描いたビジネスノンフィクションです。

どれだけの人が気がついているか知りませんが、じつはレッドブルを販売しているのはオーストリア企業です。オーストラリアではなくオーストリア。豪州ではなく欧州。

しかもモーツァルトの生まれ故郷ザルツブルクの近くに本社を置いています。

エナジードリンクとモーツァルトはフツーはぜんぜん結びつきませんが、なぜオーストリアでしかもザルツブルクなのか? それはレッドブルを「世界商品」に成長させ、「世界ブランド」にしたのがこの近くで生まれ育ったオーストリア人だからです。

しかもその創業経営者はクロアチア系オーストリア人のマーケッター。クロアチア系というのは、クロアチアがハプスブルク帝国の一部であった時代の名残ですね。

マスコミ嫌いで、プライベートライフを大事にする姿勢を貫いているためほとんど露出がありません。本書もまたインタビュー取材ができなかったので、すでに雑誌などのマスコミに発表されている記事をもとに、関係者を取材して本にしたものです。ですからちょっと物足りない感じがなくもありませんが・・。


ビジネスのヒントは日本から、製品はタイのローカル商品から

創業経営者のマテシッツ氏は、もともとは英蘭系の食品コングリマリットのユニリバーでマーケッターとして成功したビジネスマン。英語には堪能だということです。戦後タイプの欧州人なのでしょう。

自分でビジネスをやりたいと考えていたときに出会った雑誌記事の長者番付で、日本の大正製薬のことを知ります。日本では圧倒的に有名なリポビタンDというスタミナドリンクで財産を築いたということが強く印象に残ったようです。

そんなときユニリバーのフランチャイザーであった華人系タイ企業で出会ったのがレッドブル。そうです、レッドブルはもともとタイのスタミナドリンクなのです。

このブログでもすでに書いてますが、タイの「ローカル製品から、「グローバル製品」として脱皮させたのはタイ人ではなく、なんとオーストリア人の企業家だったのです。

(これがタイの「レッドブル」=「クラティンデーン」 筆者撮影)

日本で缶入りの「レッドブル」を飲んだことのある人なら、タイで「レッドブル」(=クラティンデーン:赤い牛)を飲むと、日本で売っている缶入りのレッドブルは、すでに別物になっていることに気がつくはずです。成分を改良し、味も洗練された普遍的(=ユニバーサル)なものに改造されているからです。

(Made in Austria の文字に注目! 筆者撮影)

これは「ローカル製品のグローバル化」と言えるでしょう。分野は違いますが、武道としての柔道が日本人によってではなく、主に欧州人によって Judo として全世界に普及していったプロセスと似ているかもしれません。

タイのレッドブルに惚れ込んだ創業経営者のマテシッツ氏は、タイのユーウィッタヤー家からレッドブルのアジア地域外での販売ライセンスを取得し、合弁でレッドブル・マーケティング社を設立。これはちょうどいまから30年前の1984年のことだったようです。

タイとの合弁は、創業経営者が49%でタイ側が51%(・・会社が49%で個人が2%)のようですが、本社はオーストリアで登記しているようなので、タイの法律に従ったわけではなさそうです。

タイ側としてはレッドブルの世界的成功は評価しており、とくにクチを出さないのだとか。タイ側のパートナーはすでに死去して息子が事業承継してますが、とくに問題は起こってないようです。創業経営者のマテシッツ氏のたぐいまれなる手腕に満足しているということでしょう。

ただし、タイ側パートナーの孫が引き起こした事件は、タイでは大きなスキャンダルになってましたが・・・


地元オーストリアにこだわる姿勢

オーストリア企業で世界ブランドといえば、本書でも触れられていますが、日本でも有名なクリスタル製品のスワロフスキーくらいしか思いつきません。

そのオーストリアで、この四半世紀で急成長したのがレッドブル。じつはわたしもレッドブルがオーストリア企業だということには長く気がついてませんでした。オーヅトリアはドイツ語圏ですが、ドイツやスイスと比べると、あまりビジネスという点では話題になることがないからでもあります。

オーストリア企業であるという以外のきわだった特徴はそれだけではありません。

創業経営者がマスコミへの露出を嫌っているだけでなく、非上場に徹し、しかも無借金経営。本体はマーケティングとブランド・マネジメントに特化して、製造部門はもたずに完全に地元メーカーにアウトーソシング。ファブレスというビジネスモデルといってもいいでしょう。

税金の高いオーストリアで納税し、地元で雇用をつくりだし、地域経済を重視する姿勢は、グローバル企業に大成長した現在でもかたくなに変えることはないようです。郷土愛、地域愛が根底にあるのでしょう。

(ドイツ語版のカバーは創業経営者と本社ビル)

マーケティングとブランド・マネジメントに特化していても、広告宣伝は代理店まかせにせず、事業としてのスポーツビジネスとスポーツマーケティングをつうじてシナジー効果を狙うという姿勢。

そもそも創業経営者自身が大のモータースポーツ好きであるだけでなく、スポーツのもつ特性がエナジードリンクの商品特性にフィットし、ブランド育成に多大な効果をもっていることをマーケッターとして熟知しているからなのでしょう。

マーケティングとブランド・マネジメントに特化するという姿勢は、スイスのグローバル企業ネスレにも共通するものがありますね。

そもそもマーケティング(marketing)もブランドマネジメントも英語圏のアメリカで発展したものですが、欧州では伝統的に重視されてきたブランドを中核に置くという姿勢とあいまって、レッドブルというブランドとして花開いたのでありましょう。

あらたにブランドを立ち上げて成長させるのは、そう簡単なことではありません。しかし、レッドブルのケースにおいては、元ネタも発想も自分で考え出したものではありませんし、先進国や地元から生まれたものでもありません

本書では強調されてませんが、わたしとしては、レッドブルはタイで生まれたスタミナドリンクであり、それを世界ブランドに育て上げたのがオーストリア企業であることに、日本企業はもっと注目してほしいと思います。

それはローカル商品をグローバル化し、しかも新規進出先ではローカルマーケットにあわせてローカライズするという循環。そのエッセンスには学ぶべきものが多いといっていいと思います。





目 次

序章 レッドブルとは何者か?
PARTⅠ  52億本への道

第1章 市場を創造する
 きっかけは日本のリポビタンD
 タイのエナジードリンクにほれ込む
 オーストリアに本拠を置く
 同級生と斬新なCMをつくる
 ハンガリーから世界への第一歩
 ライバルたちはまだ甘く見ていた
第2章 世界市場を制圧せよ
 レッドブル、アメリカへ
 世界の頂上に行く道
 レッドブル・コーラの失敗
 ミスが許されるのは一度だけ 
 まるで宗教?
第3章 「販売禁止」を逆手に取る
 飲みすぎると死亡する?
 砂糖たっぷりのエスプレッソ
 医者は警告する
第4章 男と男の握手に価値がある 
 契約書はいらない
 欧州生産にこだわる
 頭の痛いデポジット制に秘策で対応
 商標が命
第5章 銀行にだけは借金するな
 姿を現さない株主
 飲料ではなくエキサイティングな体験を売る
 儲けた金だけを投資する
第6章 すべてがマーケティングだ
 オリジナルだからこそ価値がある
 ポストモダンの"聖水"
 代理店に丸投げせずイベントを自社開催
第7章スポーツの一部になる
 アスリートは「家族」
 「新しいスポーツ」を育成する
 黄金の三分率
 スポーツを一方的に利用しない/ドーピング医師を雇う
PART II スポーツ・マーケティング

第8章 ファンに抵抗されてもサッカークラブを買収
 「伝統を破壊した」と抗議される
 監督のクビ切り問題
 トレーニング施設には金をかける
 ニューヨーク・レッドブルズ
 ドイツ・ブンデスリーガ参戦
 ブラジルとガーナに育成施設をつくる
第9章  F1王者になる
 ジャガーを飲み込んだブル
 スクーデリア・トロ・ロッソ
 ベッテルの快進撃
 ミスコンテスト?
 オーストリアのサーキットの復活
 ナスカー参入の失敗
 ラリーとオートバイにも進出
 若手ドライバーの育成
第10章 氷の上のブル
 レッドブル・ザルツブルグ
 ヨーロッパ制覇へ
 NHLチーム買収の失敗
第11章 メディア嫌いによるメディアへの進出
 取材対応の"アメとムチ"
 レッドブルの先進的なデジタルTV
 ローカル放送局の買収
 遅れに遅れたTV放送のリニューアル
 レッドブルの出版社
 オーストリアの生活雑誌
第12章 グルメ・ブランドの創設
 由緒正しい飲み物
 最高級フィンガーフード
 アフリカンテイストなカフェ
PART III  レッドブル帝国の正体

第13章 叩き上げの億万長者
 計算しづらい資産
 レッドブルグループの構成
第14章 オーストリアに喜んで税金を払う
 豊かな自然の中にある本社
 イベント開催スペースも自前
 飛行機のコレクション
 レッドブル・エアレース
 絶好調のF1
 世界各地でサッカーに参入
 メディア企業の買収
 自社内に広告代理店をつくる
 アフロカフェ
第15章 レッドブルのもう一つの顔
 マテシッツ個人のビジネス
 レストランの運営
 不動産ビジネス
 フェルテンドルフの飛行場
 建設会社のブル・バウ
 地域暖房ネットワーク
 すべてが成功プロジェクトではない
PART IV 創業者の横顔

第16章 創業者マテシッツの華麗なる人脈
 F1貴族の仲間たち
 サッカー界の「皇帝」
 政治家のつながり
 レッドブルを彩るアーティスト
 グルメ仲間たち
 マテシッツの右腕は誰?
第17章 ブルと呼ばれる男
 華やかなウィーンの街で学ぶ
 ブルの息子
 型破りだけど保守的な性格
 空飛ぶスポーツマン
 女性関係は派手だが…
 慈善家としての一面
終章 ブルのこれから


<関連サイト>

レッドブル・ジャパン 公式サイト

wikipedia の項目「レッドブル」には、「世界商品」としての開発事情についての解説がある

オーストリアに学ぶ「地方・中小企業主義」-「都会で大企業勤務」以外に広がる選択肢!(東洋経済新報オンライン、2014年12月8日)


<ブログ内関連記事>

「レッドブル」-タイが本家本元の 「ローカル製品」 が 「グローバル製品」 として生まれ変わった!
・・現在でもタイ側は51%を所有するパートナー

タイのあれこれ (26) タイ好きなら絶対に必携のサブカル写真集 Very Thai
・・タイ人が好きなスタミナドリンクという飲料カテゴリーについても一章とりあげられている。ちなみに、朝鮮人参のふるさとである韓国でもスタミナドリンク人気は高いのだが、本書には韓国の事情がまったく出てこないのが不思議


ローカリゼーション

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・「ローカリゼーション」にかんする必読書

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として・・日本語と音楽の関係について

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!

ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の「日本語吹き替え版」は「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)!

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


スポーツ

「近代スポーツ」からみた英国と英連邦-スポーツを広い文脈のなかで捉えてみよう!


オーストリア

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)-ドラッカー自身による「メイキング・オブ・知の巨人ドラッカー」
・・オーストリア出身でアメリカに移民して成功した有名人はドラッカーとアーノルド・シュワルツネガーの二人

書評 『向う岸からの世界史-一つの四八年革命史論-』(良知力、ちくま学芸文庫、1993 単行本初版 1978)-「社会史」研究における記念碑的名著
・・「ウィーンはゲルマン民族とスラヴ民族の接点という、地政学的な特徴をもった都市なのである。ゲルマン民族を頂点にいただきながら、ゲルマン民族とスラヴ民族が中層から下層をなす重層構造をもった都市である。これは現在のオーストリアでも変わらない」

(2014年8月21日 情報追加)




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2014年6月2日月曜日

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


グローバル企業ネスレ日本法人で、初の生え抜きCEOとなった著者の第二弾。

前著 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013) がみずからの死生観=人生観を語った、かなりパーソナルな内容であったのに対し、本書は実際のネスレ日本のビジネスと経営に即して持論を展開した本格的なビジネス書です。かなり内容豊富で、しかも濃いといっていいでしょう。

帯には、「思いついたことの98パーセントは実行せよ!」などのキャッチコピーが書かれていますが、それだけなら並のビジネス書と同じで、あえて読むまでのこともないという気にさせられます。

本書が類書と異なるのは、きわめて日本的な教育を受けてきた著者であるにもかかわらず、グローバル企業のなかでもまれることによって培われた、実践をつうじた本質的な思考が展開されていることにあります。

現役の経営者が書いた経営書だけに、テーマは経営全般にわたりますが、ネスレというグローバル企業が、マーケティングとブランド・マネジメントをビジネスの根幹に据えた会社であり、すべてはそこに集約されることを説得力ある筆致で描いていることにあるでしょう。

著者は、ネスレはブランドを以下の三段階でマネジメントしていると書いています。

① コーポレート・ブランド(=企業ブランド)
② カテゴリー・ブランド
③ プロダクト・ブランド(=製品ブランド)

カテゴリーブランドとは、ネスカフェやキットカットといった製品群ごとに束ねたものであり、その傘下に製品ブランドが含まれるわけですが、BEM( Business Executive Manager)として、ブランド全般について損益責任をもって経営する体制になっているとのこと。

このため、ネスカフェやキットカットは消費者に知られていても、ネスレという企業ブランドと結びついていないといった問題もあるようです。しかし、著者が言うように、直接カネを生み出すのはカテゴリーブランドと製品ブランドであって、企業ブランド強化にチカラを入れすぎても意味はないのです。日本企業のブランドマネジメントに対する痛烈な批判rと受け取るべきでしょう。

このように著者の思考は合理的でロジカルですが、次のローカリゼーションにかんする発言もまた、かなり本質をついたものです。

日本人は、これまで受けてきた教育のせいで、グローバルな視点を日本風にローカライズ(地域化)する能力に欠けている。本質的な部分を論理的に把握できないため、日本独自の戦略やアイデアが生まれてこないのだ。(P.58)

著者は、この点を本書全体をつかって具体的に述べた本だと言ってもいいかもしれません。

日本人として、日本市場というローカルマーケットを熟知したうえで、グローバル企業のロジックをローカルで展開するとはどういうことかグローバル全体のなかでローカルマーケットを経営するとはどういうことかを考え抜いているからこそ生まれてきた考えでしょう。

著者の立ち位置は、グローバル展開を考えている日本企業の大半とは真逆のものですが、海外進出先という海外のローカルマーケットで、いかに日本本社のロジックを普遍的なレベルまで高めたうえで、ローカルに即して経営していくかについてヒントを得ることができるかもしれません。

もしかしたら、日本企業に比べて、ネスレは特殊な感覚を持っているかもしれない。クライシスが起こって当たり前というなかでマーケットヘッドに求められるのは、クライシス(危機)をいかにしてオポチュニティ(機会)に変えるかということになる。・・(中略)・・ つまり「Crisis is Opportunity.」なのだ。このことは、スイス本社から常に言われてきた。私が入社した30年前から聞かされていたので、ネスレとして筋金入りのカルチャーなのである。(P.254)

国内市場が小さくて、たとえ危険な地域であろうと海外市場を開拓していかなければ生き残れないというスイスの制約条件から生まれたネスレもまた、濃厚なスイス的を持ち合わせているということでしょう。

一方で、ネスレ日本法人は、日本の国内市場でしかビジネスを行うことは許されていないという絶対的な「制約条件」があるからこそ、縮小する市場のなかでもビジネスチャンスを発見し、徹底的にマーケットを深掘りし、成功を収めてきたわけです。

つねに変化しつづける市場環境、消費者意識、そして従業員意識。みずからの成功体験すら、環境変化のなかでは否定していかなくては、絶対的な「制約条件」のもとでは生き残っていけないのです。

経営トップの仕事とは、ゲームのルールを変えることにある、変革こそが経営者のやりがいであるといいう著者の姿勢はまさにそのとおりです。そうでなければ、本社にとってもローカルの経営トップ交代の意味はありません。

経営者あるいは経営者になりたい人、欧州系グローバル企業の日本法人とはどういうものか知りたい人だけでなく、ネスレという欧州系のグローバル会社について、日本法人という「窓」から覗いてみることのできる内容にもなっています。

「Think Globally, Act Locally」(グローバルに思考し、ローカルに行動する)を地でいった、実践と思考に基づいた本。読み応えのある本書は、ぜひ読んでいただきたいと思います。





目 次

序章 史上初、生え抜き日本人社長に就任
 ●グローバル人材の条件は「祖国を捨てること」
 ●史上初の生え抜き日本人社長に就任
 ●副社長就任も異例の人事だった
 ●変革こそが、経営者のやりがい
第1章 マーケティングは経営そのものである-戦後モデルの終焉で求められるプロの経営-
 ●日本以上に日本的経営の外資系企業
 ●過去の成功体験より未来を語る
 ●国家と企業が抱える問題の共通点
 ●旧来の成長モデルに縛られてはいけない
 ●脱却のカギは「プロの経営者」を育てること
 ●マーケティングは経営そのものである
 ●プロの経営者に必要なリーダーシップとは
 ●ゲームのルールを変えて、道を拓く
 ●ニッポン株式会社のルールを変えるのは人事から
 ●基本戦略をローカライズしているか
第2章 売れない商品を売ってこそ一人前-現場が教えてくれたイノベーションの真髄-
 ●42歳で他界した父と祖父
 ●嫌なことは、自分で変えなさい 試練を迎えた大学受験
 ●実力で評価される企業を選択
 ●外資系企業ネスレは日本的経営だった
 ●売れない商品を売ってこそ一人前
 ●思いついたことの98パーセントは実行する
 ●試験合格で得た本社への切符
第3章 撤退という決断を下すとき-ネスレに受け継がれる、他社を思いやる経営-
 ●過酷なアメリカ生活のスタート
 ●「Silent is Stupid」
 ●日本に粉ミルクを導入せよ
 ●撤退という決断は辛くても、正しかった
第4章 批評の前に自分のアイデアを実行せよ-「キットカット」で実践した「Think Globally, Act Locally.」-
 ●日本人にとってのキットカット・ブレイクとは何か
 ●九州支店の1本の電話から始まった
 ●全国の受験生の不安に寄り添うプロジェクト
 ●受験生のお守りとなった「キットカット」
 ●「キットカット」は主役にならなくていい
 ●ブランドは広告ではなくニュースで作られる
 ●「ありがとう」と言ってもらえるブランドを目指す
 ●批評する前にまずは実行せよ
第5章 ゲームのルールを変えろ-変革を起こすリーダーに必要なこと-
 ●人口減少のなかでも必ずチャンスはある
 ●システムで飲ませる新モデルを構築
 ●「価値共創」で揺るぎないモデルへ
 ●直属で招集した50人のプロジェクトメンバー
 ●強力なトップダウンでゲームのルールを変える
 ●変革には最悪のケースを想定した準備が必要
 ●あらゆる最終責任はリーダーが負う
 ●間接部門もゲームのルールを変えられる
第6章 採用・育成・評価で会社は決まる-ストーリーを共有、ただしコンセンサスは必要ない-
 ●イノベーションを起こす人材を集めるために
 ●究極のトレーニングによる人材育成
 ●社員の能力は人事次第で開花する
 ●労働組合もコンサルタントになる
 ●残業が減らないネックは管理職にあった
 ●変革にコンセンサスは必要ない
第7章 危機のあるところに機会がある-義務を糧に遂げる成長-
 ●変わりつつあるネスレのブランド戦略
 ●マーケティング発想のブランド戦略へ
 ●東日本大震災で発揮されたリスクマネジメント
 ●世界規模の危機に学んだBCP
 ●危機のあるところに機会がある
 ●これからの企業が負うべき責任と義務
 ●利益を上げることに堂々と胸を張れ
終章 本物のリーダーはリーダーをつくる
 ●仕組みで育てるリーダーシップ
 ●次世代リーダーへの期待
あとがき


著者プロフィール  
高岡浩三(たかおか・こうぞう)ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO。1983年、神戸大学経営学部卒。同年、ネスレ日本株式会社入社(営業本部東京支店)。各種ブランドマネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリー株式会社マーケティング本部長として「キットカット」受験生応援キャンペーンを成功させる。2005年、ネスレコンフェクショナリー株式会社代表取締役社長に就任。2010年、ネスレ日本株式会社代表取締役副社長飲料事業本部長として新しいネスカフェ・ビジネスモデルを提案・構築。利益率の低い日本の食品業界において、新しいビジネスモデルを追求しながら超高収益企業の土台をつくる。同年11月、ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEOに就任。 現在、経済同友会幹事、医療・福祉ビジネス委員会副委員長。日本インスタントコーヒー協会会長。共著書に、『逆算力』(日経BP社)がある。






<関連サイト>

【ネスレ日本】 M&Aに頼らず貫く収益成長と利益率改善 強みへの集中戦略 (ダイヤモンドオンライン 、2014年4月4日)
・・グローバル企業の日本ローカル拠点は、日本国外でのビジネスは御法度。その制約条件下での成長は称賛に値する

ネスレを世界一にした「連邦経営」 100年間の計略 (日経産業新聞、2014年8月5日



<ブログ内関連記事>

書評 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013)-人生は有限だと感じることは究極の逆算思考である


ロジカル経営のための基礎

書評 『無印良品の「あれ」は決して安くないのになぜ飛ぶように売れるのか?』(江上隆夫、SBクリエイティブ、2014)-徹底的に「コンセプト」にこだわることがビジネス成功のカギ
・・ロジカル経営のために必要かことはコンセプト抽出作業と共通点がある


スイスとグローバル企業

「小国」スイスは「小国」日本のモデルとなりうるか?-スイスについて考えるために

書評  『ブランド王国スイスの秘密』(磯山友幸、日経BP社、2006)
・・ビジネスパーソンにとっては「ブランド王国スイス」という捉え方が面白い

書評 『民間防衛-あらゆる危険から身をまもる-』(スイス政府編、原書房編集部訳、原書房、1970、新装版1995、新装版2003)
・・スイスといえば、いまでは「国民皆兵」は日本人の常識になったことと思う。スイス人の家庭には、一家に一冊備え付けなのが、この本と銃器一式!


コーポレートブランドと製品ブランド(プロダクトブランド)

「正露丸」は超ロングセラーの製品ブランドだ!
・・コーポレートブランドと製品ブランドが異なる例

製品ブランドの転売-ヴィックス・ヴェポラップの持ち主は変わり続ける
・・・・コーポレートブランドと製品ブランドが異なる例正露丸の場合は、ブランドの担い手としての所有者に変更はないが、ヴェポラッブは二転三転。製品ブランドの生命力は会社の生命よりも長い(!)ということがある

ゼスプリ(Zespri)というニュージーランドのキウイフルーツの統一ブランド-「ブランド連想」について

大学ブランドというプライベート・ブランド(PB)商品について-玉川学園の「抹茶アイス」は新製品!

「泉屋のクッキー」-老舗(ブランド)には歴史(ヒストリー)=物語(ストーリー)がある

「ポルシェのトラクター」 を見たことがありますか?

「ブルータス、お前もか!」-立派な「クレド」もきちんと実践されなければ「ブランド毀損」(きそん)につながる






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2014年5月15日木曜日

書評 『世界の経営学者はいま何を考えているのか-知られざるビジネスの知のフロンティア-』(入山章栄、英治出版、2012)-「社会科学」としての「経営学」の有効性と限界を知った上でマネジメント書を読む


出版当時、アメリカのビジネススクールでアシスタント・プロフェッサー(准教授)の職にあった著者が書いた本です。著者は現在は日本に戻っています。

積ん読状態だったこの本は、買ってから一年以上たてからやっと読みましたが、思ってた以上にこの本は面白い。ただし、読者によって面白さの意味は違うと思います。

わたしはまず、「ドラッカーなんて誰も読まない!?  ポーターはもう通用しない!?」という帯のキャッチコピーにまず引きつけられました。


■ドラッカーに言及する「経営学者」が英語圏にはいない理由

というのも、すでにこのブログでも、2011年5月11日水曜日付けの記事で ドラッカーは時代遅れ?-物事はときには斜めから見ることも必要 と題して書いてます(・・本書が出版された2012年11月の一年半以上前です!)。ここにエビデンス(証拠)として提示致します。

わたしはちょうど 1990年から2年間、米国の大学院で M.B.A.(経営学修士号)コースにいましたが、その2年のあいだ、ドラッカーの「ド」の字も聞いたことがありませんでした。

その理由は、現実のビジネスにおいても時代遅れになっているからという側面が大きいから。大前研一氏の発言を引いてありますのでご参照いただきたいと思います。

ドラッカーは「マネジメント」という概念をつくった先駆者の一人ですが、本人はあくまでも自分のことを「社会生態学者」と規定しており、「経営学者」とは名乗っていませんでした。その本質においてドラッカーは「思想家」というべきでしょう。

『ビジョナリー・カンパニー』(日経BP社、1995)で有名なジム・コリンズはドラッカーの後継者であることを自他ともに認めていますが、現在では大学の世界からは完全に足を洗って著述家になっています。

本書の記述によれば、ドラッカーに言及する人はアメリカの「経営学者」にはまったくいないのです。ドラッカーは「思想家」としては現在でも重要ですが、最先端の経営にはもはや応用不可能である、といってもいいでしょう。

いわゆる「日本的経営」の形成に、ドラッカー経営学が与えた思想的な意味合いが大きかったことは否定できません。むしろ大いに意味があったというべきでしょう。ドラッカー経営思想が米国よりも、ここ日本においてこそ定着したことは否定できない事実です。ドラッカー自身も浮世絵の収集家でしたので、日本訪問が楽しみだったようです。

ドラッカーはマネジメントという概念をはじめて体系化した古典として読まれていくでしょうが、「経営学者にとっての経営学ではない」(!)という認識は、知っていてけっして損ではないはずです。ドラッカー命の方々も、いずらに反発するのは無意味だといえましょう。


扱うテーマはあまりにも広すぎるのだが・・・

本書がカバーする範囲が広いのは、著者がいう「世界の経営学」においては最先端の研究テーマからトピックを網羅的に取り上げているからです。

日本人読者にも関心の高いと思われる競争戦略、イノベーション、組織学習、ソーシャル・ネットワーク、M&A、グローバル経営、国際起業、リアル・オプション、コーポレートベンチャー投資などのトピックスを取り上げ、英語の学術論文の裏付けのある議論を行っています。

わたし的には、やや総花的に過ぎるかなという印象をもちますが、最先端の研究テーマが何であるかを知るには、ちょうどいいかもしれません。もっと深掘りしてほしいテーマもありますし、全体の構成としては「理論編」と「テーマ別トピックス」に分離したほうがよかったのではないかとも思いますが。

基本的には、経営の現場では「常識」として語られている話題です。それを実証研究によって裏付けをするというのが「経営学」の役割であるということが本書を読むと理解できます。

とはいえ、「経営学」という学問は、あくまでも「跡付け」に過ぎない、という印象をぬぐい去ることができません。それがわたしの正直な感想です。「裏付け」はあくまでも「跡付け」という形でしかありえないのであり、ビジネスの「現場」とはスピード感がまったく違います。

ただし、ビジネスの現場においては試行錯誤(・・いわゆる Leaning by Doing: 失敗と成功体験から学ぶ) が可能ですが、ビジネスパーソンには過った前提に基づいた思い込みや予見といったものがつきまとうことも否定できません。そのため、意志決定を過ることが後を絶たないのも事実。

かならずしも因果関係は明らかではなくても、事象と事象のあいだに相関関係があれば実行してしてしまうというのが経営の実践の場での行動ですが、ビッグデータ時代はこれがさらに加速しています。

その意味では、経験の浅いビジネスパーソンにとっては本書は有用な読み物であるといっていいでしょう。すでにビジネスとマネジメントを現場で実践している人にとっては、「まあ、そんなもんか」と受け取る程度でよいのではないか、と思うわけです。トピックとしては知的関心をそそるものもありますが。

おなじ経営学者が書いた論文であっても、一般ビジネスパーソン向けに経営雑誌に発表される「雑誌論文」と、専門誌に査読を経て投稿される「学術論文」とは違うということです。

後者の「学術論文」は、一般のビジンスパーソンが読むことはあまりないので、「学術論文」として取り上げられたテーマを知ることができるという点に本書の意義があります。


「経営学」は「社会科学」である-ベースは経済学・心理学・社会学

本書で強調されているのは、「経営学」は「社会科学」であるということです。

ただし、英語圏でいう「社会科学」(ソーシャル・サイエンス)は、日本でいう「社会科学」とは異なり、あくまでも「科学」であり、統計学をもちいた実証研究が中心で、理論志向の強い「学問」であるということです。

経営コンサルタントや経営評論家やジャーナリストがビジネス書と経営書で書いたり、テレビや講演でしゃべっている内容と違うのもあたりまえなのです。「経営学」はあくまでも「学問研究」であるというのはそういうことです。

本書を読むうえで気をつけなくてはいけないのは、タイトルにもなっている「世界の経営学」とは、英文論文の世界で展開されている「経営学」だということです。日本語で執筆された論文のなかで展開されている「日本の経営学」ではないということです。後者は、いわばローカルな世界ということですが、日本人が英文で発表した論文は「世界の経営学」というカテゴリーのなかに分類されることになります。

わかりやすくするために、やや図式的に描いてますが、ローカルな「日本の経営学」が事例研究を中心とした記述的なものが多いのに対し、グローバルな「世界の経営学」は統計分析で実証したエビデンス・ベースのものが多いということになります。すくなくとも事例研究中心のアプローチは「世界の経営学」では主流ではないということのようですね。

先にも書きましたが、わたしがアメリカのMBAコースで学んだ1990年初頭においても、英語圏でいう「経営学」とは基本的にそういうものでした。授業ではHBS(ハーバード・ビジネススクール)作成のケース(=事例研究)が使用されていましたが、テキストのほかに大量に読まされる論文は、まさに本書で取り上げられているようなものばかりでありました。

経営学のディシプリン(・・専門学科)は、① 経済学、② 心理学、③ 社会学 の3つのいずれかあると本書には書かれています。経営学にはそれ自身の理論体系はないのです。実践の学である以上、それは当然というべきかもしれません。実践としての政治と学問としての政治学の関係も似たようなものでしょう。

会計学や貿易論など実務をベースにした「商学」が長い歴史をもっているのに対して、「経営学」はあたらしい学問であるということです。社会学じたい、まだまだ歴史のあたらしい学問ですが、経営学はそれに劣らずあたらしいということです。

著者も「第6章 「両利きの経営」」で指摘していますが、経済学、心理学、社会学という3つのディシプリン以外の周辺諸科学にも目を向けるべきだと思います。「深さ×幅の広さ」が大事なことは、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』で述べていることと同じです。

ビジネスパーソンにもっとも必要なものは、狭くて深い「専門知識」と広くて浅い「雑学」。これが、ビジネスマンとして25年以上やってきた私の実感です。「専門知識」と「雑学」のふたつが両輪になってこそ、ビジネスだけでなく人生もまた豊かになるのです。

これは、拙著の「まえがき」の最初の一文です。「学問としての経営学」でいえば、「専門」とは3つのディシプリンのいずれかであり、「雑学」とは「専門」以外の森羅万象となるわけです。後者の「雑学」の幅の広さがテーマ選定にあたってモノをいうことは言うまでもありません。


本書で指摘されている理論的側面について

わたしが面白いと思ったテーマは以下の3つです。すなわち、「トランザクション・メモリー」と「見せかけの因果関係」、それから「経営理論とは何か」というテーマです。

読む人によって、興味の対象が異なるでしょうが、多くの人と同様に「トランザクション・メモリー」はひじょうに面白い議論だと思います。

「トランザクション・メモリー」は、第5章で取り上げられていますが、組織に「記憶」があるという文言はオカルト的ではないか(?)といいう印象をもちます。なぜなら、「記憶」はあくまでも個体のものであり、個人個人の「記憶」が集合的になっているということに過ぎません。

組織は生物学のアナロジー(比喩)で語ることはできますが、組織じたいには意志はない。そう見えるだけの話であって、あたかも組織に意志があるように見るのはオカルト的で危険な発想でしょう。あくまでもアナロジーと捉えるべきです。組織そのものにはDNAなどありません。社会学や社会心理学の立場からはあり得ない話です。

1980年代後半には、ビジネス界ではすでに「ノウハウ(know-how)よりもノウフー(know-who)だ」と言われていたことであり、「情報を知っている誰か(who)を知っていること」が重要だという発想そのものには、とくに新規性はないのです。いまどきの若い読者はそんなことはまったく知らないでしょうが。

これにくらべると、第6章で取り上げられている「見せかけの因果関係」のほうが、はるかに重要な問題です。ここでは詳しい説明は省略しますが、「内生性」(endogeneity)についての議論はきわめて重要です。ただし、英語圏では常識となっている、ヒュームの因果関係の議論についての言及がまったくないのは不思議に思いますが。

そして、第15章で取り上げられている「経営理論とはなにか?」という議論は、ビジネスには直接関係ないかもしれませんが、経営学も含めた「社会科学」の「理論」の意味を考えるうえで不可欠な議論です。ここでは、かの有名な哲学者カール・ポパーの「反証可能性」の議論が紹介されています。

このほか、概念レベルの理論と実証は別物であること、経済学の数学とは異なる「自然言語」を使用する経営学の意味、論理学と科学哲学をベースにしたトレーニングの必要など、著者の意見にはまったく賛成です。

経営学という学問が自然科学と異なるのは、経営現象はつねに現実の方が理論に先行するという点。学問が可能なのは、現実を理論的に位置づけることに限定されるのです。

後付けの学問である「経営学」の有効性と限界を知った上で、本書を読むことは意味あることです。ビジネス書ではなく、たまにはこういったマネジメント書を読んでアタマを整理するする必要があるのはそのためなのです。






目 次

この本を手にされた方へ

PARTⅠ これが世界の経営学
 第1章 経営学についての三つの勘違い
 第2章 経営学は居酒屋トークと何が違うのか
 第3章 なぜ経営学には教科書がないのか

PARTⅡ 世界の経営学の知のフロンティア
 第4章 ポーターの戦略だけでは、もう通用しない
 第5章 組織の記憶力を高めるにはどうすればよいのか
 第6章 「見せかけの経営効果」にだまされないためには
 第7章 イノベーションに求められる「両利きの経営」とは
 第8章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(1)
 第9章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(2)
 第10章 日本人は本当に集団主義なのか、それはビジネスにはプラスなのか
 第11章 アントレプレナーシップ活動が国際化しつつあるのはなぜか
 第12章 不確実性の時代に事業計画はどう立てるべきか
 第13章 なぜ経営者は買収額を払い過ぎてしまうのか
 第14章 事業会社のベンチャー投資に求められることは何か
 第15章 リソース・ベースト・ビューは経営理論といえるのか

PARTⅢ 経営学に未来はあるか
 第16章 経営学は本当に役に立つのか
 第17章 それでも経営学は進化しつづける

この本を読んでくださった方へ


著者プロフィール

入山章栄(いりやま・あきえ)
1996年慶應義塾大学経済学部卒業。1998年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年よりニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサーに就任し、現在に至る。専門は経営戦略論および国際経営論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

勉強もスポーツも、基礎から学ぶとつまらない 最先端を理解した気分になることが成長の糧に(気鋭の経営学者がいま伝えたいこと 第1回) (入山章栄×琴坂将広、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー、2014年8月29日)

「ぶっちゃけ、経済学は経営学を下に見ている」 なぜ経営学と経済学の議論は噛み合わないのか(気鋭の経営学者がいま伝えたいこと 第2回)  (入山章栄×琴坂将広、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー、2014年9月1日)

現代版「ナッシュ均衡」は発掘できるのか 評価軸の明確化で生まれる可能性とリスク(気鋭の経営学者がいま伝えたいこと 第3回) (入山章栄×琴坂将広、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー、2014年9月3日)

日本の経営学が海外に劣っているわけではない 良し悪しではなく、それぞれの違いを理解する (気鋭の経営学者がいま伝えたいこと 最終回)  (入山章栄×琴坂将広、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー、2014年9月 日)



<ブログ内関連記事>

書評 『ヤバい経営学-世界のビジネスで行われている不都合な真実-』(フリーク・ヴァーミューレン、本木隆一郎/山形佳史訳、東洋経済新報社、2013)-これがビジネス世界の「現実」というものだ

「君臨する企業の法則:日本への教訓-マイケル・クスマノ MITスローンスクール教授)講演会のお知らせ(2012年1月17日:無料 事前予約

人生の選択肢を考えるために、マックス・ウェーバーの『職業としての学問』と『職業としての政治』は、できれば社会人になる前に読んでおきたい名著
・・「実践」としての政治と「学問」としての政治学は、まったく別物である

ドラッカーは時代遅れ?-物事はときには斜めから見ることも必要

『「経済人」の終わり』(ドラッカー、原著 1939)は、「近代」の行き詰まりが生み出した「全体主義の起源」を「社会生態学」の立場から分析した社会科学の古典
・・ドラッカーは「思想家」として読むべきなのだ

レビュー 『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』(アップリンク、2010)-ドラッカー自身の肉声による思想と全体像

月刊誌 「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2013年11月号の 「特集 そして、「理系」が世界を支配する。」は必読!-数学を中心とした「文理融合」の時代なのだ
・・因果関係よりも相関関係を重視するのが統計学の世界

書評 『1億人のための統計解析-エクセルを最強の武器にする-』(西内啓、日経BP社、2014)-ビジネスパーソンなら誰もが使えるはずのエクセルでデータ分析が可能となる

(2015年12月27日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)





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2014年5月11日日曜日

書評 『1億人のための統計解析-エクセルを最強の武器にする-』(西内啓、日経BP社、2014)-ビジネスパーソンなら誰もが使えるはずのエクセルでデータ分析が可能となる


「1億人のための」というタイトルは、「日本国民のための」という意味と同じでしょう。数字を使ったほうが印象に残るのは言うまでもありません。もちろん、エクセルを日常的に使用する日本人が、そんなに多くはいるはずがない明らかではありますが。

それはさておき、表計算ソフトの「エクセル」がここまで普及している以上、それを使わないという手はない。この点は著者の考えにはまったく賛成です。

パソコンでプログラムを組んだ時代から始まり、「MSマルチプラン」、そして「ロータス123」を経て「エクセル」がビジネス界のデファクトになるとは、20年前には考えもしませんでしたが、1981年生まれの著者には当たり前の世界のようですね。

統計解析ソフトには SPSS などがあり MBAコースでも使用が推奨されますが、本書はエクセルの関数だけでもデータ分析はここまでできますよと示した好例です。あらたなソフトウェアを購入する必要もないので実際的だといっていいでしょう。

データサイエンティストではなく、目指しているわけでないビジンスパーソン向けに、エクセルをつかったデータ分析のやり方を解説した本書は、エクセル初心者のみならず、エクセルは習熟していると思っている人も読んでみる価値はあります。

というのも、恥ずかしながらわたくしも、本書の第4章「上級編」で紹介されている高度な機能は使っていないからです。


「相関関係」と「因果関係」はイコールではない

著者は別の記事のなかですが、「「少しでも絶対的ではないこと」について言及しようと思えば、現状、統計学以外に記述したり議論したりする方法が人類にはない」、といってます。そう言い切っても問題ないでしょう。

統計学はある特定の事象とその他の事象とのあいだの「相関関係」をあきらかにするものです。

相関関係は因果関係とはイコールでありません。ここらへんがわかっていないビジネスパーソンが少なくないのは困ったことです。一般国民まで含めたら、さらにひどい状態と言わねばなりません。

ビジネスパーソンは学者でない以上、因果関係の究明に時間をかけ過ぎても意味はないのです。個人的にメカニズム分析に関心があるとしても、「時間」という絶対的な「制約条件」のもとにおいては、個々のビジネスパーソンにできることは限られます。

むしろ、ビジネスパーソンにとって意味があるのは、相関関係があるとわかった結果に価値があるのかどうかです。ビジネスにとっての「価値」とは、それがカネになるのかどうかということです。当たり前の結果がでてきたとしても、その発見に価値はありません。つぎのアクションにつながる発見でないと意味はないのです。

「だからどうした?」という突っ込みを上司や経営者から招かないために、カネと時間を費やすことは避けなければなりません。ビジネスパーソンであれば、自分の「時間あたりコスト」を意識すべきなのは当然のことです。

あらためて、「時はカネなり」(Time is Money)という格言を想起する必要がありますね。統計学によるデータ解析もまたそのために取り組まなければなりません。



ビジネスの現場における「仮説」の意味

いま「時間という制約条件」について触れましたが、著者は「仮説」思考のワナにとらわれないことが大事だと強調しています。基本的に賛成です。

『私たちはすでに膨大なデータを持っている。それをどう扱っていいか分からないだけなのだ。そういう時代に、仮説を考えてから解析するということは「膨大なデータの一部だけしか見ない」ということでもある』

著者は医療統計の世界の出身のようなので、「仮説」というと厳密なものを想定しているのでしょう。医療の世界もビジネスの世界と同様、「経験に基づいた勘やセンス」で診断する世界から、EBM(エビデンス・ベースト・メディスン)という定量的なデータ分析をもとにした診断の世界に移行しつつあるのが現状です。

とはいえ、ビジネスパーソンが一般的にクチにする「仮説」というのは、せいぜい「当たりをつける」くらいの意味に過ぎません。科学者が科学研究におけるほど厳密な意味で使っているわけではないのです。「あたりをつけた」裏付けをデータ分析で行うという姿勢が重要でしょう。

だから、試行錯誤しながらデータ分析を進めていくという意味であれば、「仮説は立てるな」という著者の発言にそれほどこだわる必要はないといっていいでしょう。ビジネスならある程度まで臨機応変に修正も可能ですが、治療方法や新薬開発における間違いは人の生死にもつながりかねない、文字通り致命的なものとなるのです。その違いは大きいのです。

「第1章 統計解析で課題を解決するためのフレームワーク」で、「価値ある分析を行うための3つのポイント」を、「アウトカム」「解析単位」「説明変数」の3つで説明しています。

「アウトカム」: データからわかった時に最もうれしい変数。利益に直結するものとしての売り上げ、在庫コストなど
「解析単位」: アウトカムを構成している単位。着目すべき分析対象のこと。望ましい顧客、商品、従業員など
「説明変数」: 「解析単位」の違いを生み出す「特徴」のこと。年齢、性別などの属性や、来店履歴や行動特性など

「アウトカム」が決まれば「解析手法」は自動的に決まるというのはまさにその通りです。「当たりをつける」ということはそういう意味でもあります。やみくもに分析を欠けるのでなく、分解しながら絞り込みを行うことができるわけです。

ビジネパーソンなら、「アウトカム」ではなく「結果」とか「ゴール」というコトバで代替してもいいでしょう。こういう結果がほしから、こういうデータ解析を行う、ということですね。

「あたりのつけ方」は、試行錯誤で身につけるしかありません。そのために、みすから手を動かして、本書に取り得あげられている case に取り組んでみるといいでしょう。

2ある種の「常識」を働かせるも必要であることがわかるはずです。これは統計学というよりも、ビジネスパーソンとしての経験がものをいう世界です。いわゆる「仮説検証」のマインドセットで養われるものですね。

「アウトカム」「解析単位」「説明変数」という3つを意識してデータ分析すれば、ビジネスにおいては問題なく活用可能です。


まずはエクセルでデータ分析ができるまで習熟する

中堅中小企業であってもデータ分析のもとづいた経営が不可欠になりつつあります。

あらたなソフトウェアの導入をともなわず、エクセルをつかったデータ分析でどこまでできるか、データサイエンティストではないビジネスパーソンも知っておくことに意味があります。そのために本書を活用してみればいいのです。

そのうえで、データ分析は外部にアウトソーシングするか、あるいは自社に各種のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入しても遅くはないでしょう。統計データ分析の意味がわかっているかいないかでは、同じ分析結果をみても意味合いが大きく異なります。

ソフトウェアを導入する前に、データ分析するというマインドセットとスキルを社員が身につける必要があることは言うまでもありません。エクセルを使わない会社もビジネスパーソンも、まずいないはずですから。



PS. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。






目 次

はじめに

第1章 統計解析で課題を解決するためのフレームワーク
 解析の正しい進め方-価値ある分析を行うための3つのポイント
 利益に直結するものを決める-アウトカム
 着目すべき分析対象を決める-解析単位
 違いを生み出す「特徴」を洗い出す-説明変数
 解析手法は自動的に決まる-質的なデータと量的なデータ
 必ず3つのポイントを意識して解析を進める

第2章 仕事で使う統計解析 【初級編】
 case1: 和食レストランチェーンの売上を増やすには?
  分析1: 顧客の性別や家族構成は、売上に影響するか?
  分析2: 来店回数と利用金額の間にはどんな関係があるか?
  分析3: 重回帰分析を行うためにダミー変数の準備をする
  分析4: 売上に影響を与えている、複数の要因を洗い出す
  報告: 売上を向上させるために、どんな手を打つべきか?

第3章 仕事で使う統計解析 【実践編】
 case2: 事務機器販売の営業戦略を立てる 【営業部門編】
  分析1: 受注単位になっている売上記録を、スタッフ単位に集計し直す
  分析2: 売上、採用時試験、ストレスチェックのデータを結合する
  分析3: 売上に影響する、スタッフごとの特徴を明らかにする
  報告: 成果を上げているのは、どんなスタッフか?
 case3: 情シスの手助けなしで、顧客行動の分析を行う 【マーケティング・EC部門】
  分析: ページ種別ごとのアクセス回数を、重回帰分析にかける
  報告: :どんな行動を取るユーザーの売上が大きいのか?
 case4: 画像処理機器の販売台数を予測する 【調達部門】
  分析1: 月ごとの特徴と過去の出荷台数を説明変数にする
  分析2: 月ごとのダミー変数と出荷台数で重回帰分析を行う
  分析3: 将来の出荷台数を予測する
  報告: どのくらいの在庫バッファを用意すれば、機会損失のリスクを抑えられるか?

第4章 【上級編】 進化したエクセル環境を活用して解析を効率化・高度化する
 進化した活用術 1: データ結合を効率化する
 進化した活用術 2: データマイニング機能を使った重回帰分析
 進化した活用術 3: 質的なアウトカムの分析を行うナイーブベイズ分類
 進化した活用術 4: アウトカムに影響を与えているパターンを分析する
 進化した活用術 5: 時系列分析をスピーディに行う
 進化した活用術 6: 分析結果のビジュアライゼーション

本書のまとめ
おわりに


著者プロフィール  

西内 啓(にしうち・ひろむ)
1981年生まれ。東京大学医学部卒(生物統計学専攻)。東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバード がん研究センター客員研究員を経て、現在はデータに基いて社会にイノベーションを起こすための様々なプロジェクトにおいて調査、分析、システム開発および戦略立案をコンサルティングする。著書に『コトラーが教えてくれたこと』(ぱる出版)、『サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な「答え」が出ている』(マイナビ新書)、『世界一やさしくわかる医療統計』(秀和システム)、『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

『1億人のための統計解析 』出版社の日経BP社のサイト

なぜ、統計学が最強の学問なのか? 『統計学が最強の学問である』ビジネス書大賞2014「大賞」受賞記念記事 (西内 啓、ダイヤモンドオンライン、2014年4月25日)


「1億人のための統計解析」(「日経ビジネスオンライン」の連載コラム)

仮説は最初に立てるな! (西内 啓、日経ビジネスオンライン、2014年3年25日)

分析の前に決めるべき3つのこと (西内 啓、日経ビジネスオンライン、2014年4年1日)

「顧客満足度」と「購買頻度」、どちらを上げる?  (西内 啓、日経ビジネスオンライン、2014年4年8日)

ソフトバンク時価総額2位の秘訣はデータ重視 マーケティング本部・岩本嘉子課長に聞く (西内 啓、日経ビジネスオンライン、2014年5月7日)



<ブログ内関連記事>

月刊誌 「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2013年11月号の 「特集 そして、「理系」が世界を支配する。」は必読!-数学を中心とした「文理融合」の時代なのだ
・・因果関係よりも相関関係を重視するのが統計学の世界

映画 『マネーボール』 をみてきた-これはビジネスパーソンにとって見所の多い作品だ!
・・「メジャーリーグ球団のひとつ、カリフォルニア州北部にフランチャイズのあるオークランド・アスレティクス(Oakland Athletics)の GM(=ゼネラル・マネージャー)として球団経営に数字とロジックを持ち込んで、劇的な V字回復を果たした44歳の中年男の実話(ture story)に基づいた映画」

書評 『シゴトの渋滞学』(西成活裕、新潮文庫、2013)-数学者が数式をつかわずに書いた読みやすくて役に立つ実用書

「オックスフォード白熱教室」 (NHK・Eテレ)が面白い!-楽しみながら公開講座で数学を学んでみよう

書評 『コンピュータが仕事を奪う』(新井紀子、日本経済新聞出版社、2010)-現代社会になぜ数学が不可欠かを説明してくれる本
・・そういう時代に弱者とならないためにも、統計学の知識の習得と活用は現代人の「教養」となる

ビジネスパーソンに「教養」は絶対に不可欠!-歴史・哲学・宗教の素養は自分でものを考えるための基礎の基礎




(2012年7月3日発売の拙著です)





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2014年5月7日水曜日

ディエン・ビエン・フー要塞陥落(1954年5月7日)から60年-ヴォー・グエンザップ将軍のゲリラ戦に学ぶ


本日は、ディエン・ビエン・フー要塞陥落(1954年5月7日)から60年

「第一次インドシナ戦争」でフランスが大敗を喫した戦いです。この日から約5ヶ月後に、フランスはベトナムから完全に撤退することになったわけです。

ディエン・ビエン・フーはラオス国境に近い山岳地帯。フランス軍は「外人部隊」が中心だったようですが、かなり過酷な戦いであったようですね。3万人の将兵のうち2千人以上が戦死し、1万人が捕虜となった、と。

(Aがディエン・ビエン・フー ラオス国境に近い その東がハノイ)


この『人民の戦争・人民の軍隊-ヴェトナム人民軍の戦略・戦術-』(中公文庫BIBLIO、2002)という本は、ディエン・ビエン・フー要塞陥落に導いた「赤いナポレオン」と呼ばれたベトミンヴォー・グエン・ザップ将軍の著書。

第5章が「ディエン・ビエン・フー」にあてられてます。第6章「勝利への道」と内容的には重なります。



(ディエン・ビエン・フーの攻略 『人民の戦争・人民の軍隊』より)


「強ければかわし 弱ければ攻める」というフレーズは、まさにゲリラ戦の神髄。「小」がいかにして圧倒的な「大」を倒すかというテーマは、ビジネスにも示唆するところがきわめて大でありますね。

ベトナム戦争というと、どうしてもアメリカという連想でしょうが、植民地の支配者として君臨してきたフランスが撤退したあとに本格的に介入したのがアメリカでした。本格的な介入を決めたのがケネディ大統領であったことはアタマのなかにいれておきたいもの。

グエン・ザップ将軍は昨年92歳で亡くなりました。ゲリラ戦の指導者というとチェ・ゲバラが有名ですが、アジア人としては毛沢東とともにヴォー・グエン・ザップの名前も記憶しておきたいものです。

戦略・戦術というものは、イデオロギーとは関係なく考え抜けば応用可能。つまらないビジネス書より戦争もののほうが面白いのはそのためですね。




目 次

第1章 人民の戦争・人民の軍隊
第2章 党は武装蜂起の準備と一九四五年八月の総蜂起を成功裏に指導した
第3章 党はフランス帝国主義者とアメリカ帝国主義者との長期抵抗戦争を成功へと導く
第4章 党は人民の革命軍の建設を成功裏に指導した

第5章 ディエン・ビエン・フー 
 1. 1953年冬季・1954年春季における軍事概況の要約
 2. 戦略の指導
 3. ディエン・ビエン・フーにおける作戦指導
 4. 戦術上の諸問題
 5. 軍の指揮
 6. 前線役務に従事する人民
 7. 解放戦争とはディエン・ビエン・フーにおける戦い
第6章 勝利への道 
 1. 1953年夏季における軍事概況
 2. 敵のあらたな陰謀「ナヴァール計画」
 3. 1953年冬季・1954年春季における計画と軍事概況
 4. 歴史的ディエン・ビエン・フー作戦
注釈
訳者あとがき
地図
解説 神浦元彰


著者プロフィール  

ヴォー・グエン・ザップ(Võ Nguyên Giáp)
1911~2013。ヴェトナム北部の広平省に生まれる。1926、27年フエ市内の学校ストライキに参加する過程で反仏運動に加わる。32年頃からハノイのリセでフランス史の講師。40年6月ファム・バン・ドンと雲南に脱出、昆明でホー・チ・ミンに出会う。44年に武装宣伝解放軍を作り、ヴェトナム人民軍の基礎を創設。八月革命後のインドシナ戦争においては、同軍最高司令官としてディエン・ビエン・フー作戦など数々の戦いを指揮。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに加筆)。

翻訳者プロフィール

真保潤一郎
1923年東京生まれ。42年、陸軍士官学校卒。従軍、抑留、追放を経て、専修大学経済学部、法学部卒。出版社勤務後、高崎経済大学、大東文化大学を経て、一橋大学社会学博士、高崎経済大学名誉教授。現在、長崎国際大学教授 (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)

三宅蕗子
東京生まれ。外資系企業に勤務後、群馬女子短期大学助教授を経て教授(2001年退職)。青山学院大学大学院経営学修士。東洋大学大学院社会学研究科博士課程中退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




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Winning is NOT everything, but losing is NOTHING ! (勝てばいいいというものではない、だけど負けたらおしまいだ)
・・「勝たなくてもいい、負けなければいいのだ」というベトコンの戦略方針

ベトナムのカトリック教会

Vietnam - Tahiti - Paris (ベトナム - タヒチ - パリ)

シハヌーク前カンボジア国王逝去 享年89歳(2012年10月15日)-そしてまた東南アジアの歴史の生き証人が一人去った
・・ベトナムにラオスとカンボジアを加えた三カ国が「仏領インドシナ」と呼ばれていたフランスの植民地であった。このなかではベトナムがフランスにとってはいちばん儲かる存在であった

『東南アジア紀行 上下』(梅棹忠夫、中公文庫、1979 単行本初版 1964) は、"移動図書館" 実行の成果!-梅棹式 "アタマの引き出し" の作り方の実践でもある
・・「ベトナム人は勤勉で、エネルギッシュである。勤勉という点では、わたしの見たかぎりでの東南アジアの諸民族の中では、ベトナム人が一ばんである」(第15章)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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