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2014年5月11日日曜日

書評 『1億人のための統計解析-エクセルを最強の武器にする-』(西内啓、日経BP社、2014)-ビジネスパーソンなら誰もが使えるはずのエクセルでデータ分析が可能となる


「1億人のための」というタイトルは、「日本国民のための」という意味と同じでしょう。数字を使ったほうが印象に残るのは言うまでもありません。もちろん、エクセルを日常的に使用する日本人が、そんなに多くはいるはずがない明らかではありますが。

それはさておき、表計算ソフトの「エクセル」がここまで普及している以上、それを使わないという手はない。この点は著者の考えにはまったく賛成です。

パソコンでプログラムを組んだ時代から始まり、「MSマルチプラン」、そして「ロータス123」を経て「エクセル」がビジネス界のデファクトになるとは、20年前には考えもしませんでしたが、1981年生まれの著者には当たり前の世界のようですね。

統計解析ソフトには SPSS などがあり MBAコースでも使用が推奨されますが、本書はエクセルの関数だけでもデータ分析はここまでできますよと示した好例です。あらたなソフトウェアを購入する必要もないので実際的だといっていいでしょう。

データサイエンティストではなく、目指しているわけでないビジンスパーソン向けに、エクセルをつかったデータ分析のやり方を解説した本書は、エクセル初心者のみならず、エクセルは習熟していると思っている人も読んでみる価値はあります。

というのも、恥ずかしながらわたくしも、本書の第4章「上級編」で紹介されている高度な機能は使っていないからです。


「相関関係」と「因果関係」はイコールではない

著者は別の記事のなかですが、「「少しでも絶対的ではないこと」について言及しようと思えば、現状、統計学以外に記述したり議論したりする方法が人類にはない」、といってます。そう言い切っても問題ないでしょう。

統計学はある特定の事象とその他の事象とのあいだの「相関関係」をあきらかにするものです。

相関関係は因果関係とはイコールでありません。ここらへんがわかっていないビジネスパーソンが少なくないのは困ったことです。一般国民まで含めたら、さらにひどい状態と言わねばなりません。

ビジネスパーソンは学者でない以上、因果関係の究明に時間をかけ過ぎても意味はないのです。個人的にメカニズム分析に関心があるとしても、「時間」という絶対的な「制約条件」のもとにおいては、個々のビジネスパーソンにできることは限られます。

むしろ、ビジネスパーソンにとって意味があるのは、相関関係があるとわかった結果に価値があるのかどうかです。ビジネスにとっての「価値」とは、それがカネになるのかどうかということです。当たり前の結果がでてきたとしても、その発見に価値はありません。つぎのアクションにつながる発見でないと意味はないのです。

「だからどうした?」という突っ込みを上司や経営者から招かないために、カネと時間を費やすことは避けなければなりません。ビジネスパーソンであれば、自分の「時間あたりコスト」を意識すべきなのは当然のことです。

あらためて、「時はカネなり」(Time is Money)という格言を想起する必要がありますね。統計学によるデータ解析もまたそのために取り組まなければなりません。



ビジネスの現場における「仮説」の意味

いま「時間という制約条件」について触れましたが、著者は「仮説」思考のワナにとらわれないことが大事だと強調しています。基本的に賛成です。

『私たちはすでに膨大なデータを持っている。それをどう扱っていいか分からないだけなのだ。そういう時代に、仮説を考えてから解析するということは「膨大なデータの一部だけしか見ない」ということでもある』

著者は医療統計の世界の出身のようなので、「仮説」というと厳密なものを想定しているのでしょう。医療の世界もビジネスの世界と同様、「経験に基づいた勘やセンス」で診断する世界から、EBM(エビデンス・ベースト・メディスン)という定量的なデータ分析をもとにした診断の世界に移行しつつあるのが現状です。

とはいえ、ビジネスパーソンが一般的にクチにする「仮説」というのは、せいぜい「当たりをつける」くらいの意味に過ぎません。科学者が科学研究におけるほど厳密な意味で使っているわけではないのです。「あたりをつけた」裏付けをデータ分析で行うという姿勢が重要でしょう。

だから、試行錯誤しながらデータ分析を進めていくという意味であれば、「仮説は立てるな」という著者の発言にそれほどこだわる必要はないといっていいでしょう。ビジネスならある程度まで臨機応変に修正も可能ですが、治療方法や新薬開発における間違いは人の生死にもつながりかねない、文字通り致命的なものとなるのです。その違いは大きいのです。

「第1章 統計解析で課題を解決するためのフレームワーク」で、「価値ある分析を行うための3つのポイント」を、「アウトカム」「解析単位」「説明変数」の3つで説明しています。

「アウトカム」: データからわかった時に最もうれしい変数。利益に直結するものとしての売り上げ、在庫コストなど
「解析単位」: アウトカムを構成している単位。着目すべき分析対象のこと。望ましい顧客、商品、従業員など
「説明変数」: 「解析単位」の違いを生み出す「特徴」のこと。年齢、性別などの属性や、来店履歴や行動特性など

「アウトカム」が決まれば「解析手法」は自動的に決まるというのはまさにその通りです。「当たりをつける」ということはそういう意味でもあります。やみくもに分析を欠けるのでなく、分解しながら絞り込みを行うことができるわけです。

ビジネパーソンなら、「アウトカム」ではなく「結果」とか「ゴール」というコトバで代替してもいいでしょう。こういう結果がほしから、こういうデータ解析を行う、ということですね。

「あたりのつけ方」は、試行錯誤で身につけるしかありません。そのために、みすから手を動かして、本書に取り得あげられている case に取り組んでみるといいでしょう。

2ある種の「常識」を働かせるも必要であることがわかるはずです。これは統計学というよりも、ビジネスパーソンとしての経験がものをいう世界です。いわゆる「仮説検証」のマインドセットで養われるものですね。

「アウトカム」「解析単位」「説明変数」という3つを意識してデータ分析すれば、ビジネスにおいては問題なく活用可能です。


まずはエクセルでデータ分析ができるまで習熟する

中堅中小企業であってもデータ分析のもとづいた経営が不可欠になりつつあります。

あらたなソフトウェアの導入をともなわず、エクセルをつかったデータ分析でどこまでできるか、データサイエンティストではないビジネスパーソンも知っておくことに意味があります。そのために本書を活用してみればいいのです。

そのうえで、データ分析は外部にアウトソーシングするか、あるいは自社に各種のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入しても遅くはないでしょう。統計データ分析の意味がわかっているかいないかでは、同じ分析結果をみても意味合いが大きく異なります。

ソフトウェアを導入する前に、データ分析するというマインドセットとスキルを社員が身につける必要があることは言うまでもありません。エクセルを使わない会社もビジネスパーソンも、まずいないはずですから。



PS. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。






目 次

はじめに

第1章 統計解析で課題を解決するためのフレームワーク
 解析の正しい進め方-価値ある分析を行うための3つのポイント
 利益に直結するものを決める-アウトカム
 着目すべき分析対象を決める-解析単位
 違いを生み出す「特徴」を洗い出す-説明変数
 解析手法は自動的に決まる-質的なデータと量的なデータ
 必ず3つのポイントを意識して解析を進める

第2章 仕事で使う統計解析 【初級編】
 case1: 和食レストランチェーンの売上を増やすには?
  分析1: 顧客の性別や家族構成は、売上に影響するか?
  分析2: 来店回数と利用金額の間にはどんな関係があるか?
  分析3: 重回帰分析を行うためにダミー変数の準備をする
  分析4: 売上に影響を与えている、複数の要因を洗い出す
  報告: 売上を向上させるために、どんな手を打つべきか?

第3章 仕事で使う統計解析 【実践編】
 case2: 事務機器販売の営業戦略を立てる 【営業部門編】
  分析1: 受注単位になっている売上記録を、スタッフ単位に集計し直す
  分析2: 売上、採用時試験、ストレスチェックのデータを結合する
  分析3: 売上に影響する、スタッフごとの特徴を明らかにする
  報告: 成果を上げているのは、どんなスタッフか?
 case3: 情シスの手助けなしで、顧客行動の分析を行う 【マーケティング・EC部門】
  分析: ページ種別ごとのアクセス回数を、重回帰分析にかける
  報告: :どんな行動を取るユーザーの売上が大きいのか?
 case4: 画像処理機器の販売台数を予測する 【調達部門】
  分析1: 月ごとの特徴と過去の出荷台数を説明変数にする
  分析2: 月ごとのダミー変数と出荷台数で重回帰分析を行う
  分析3: 将来の出荷台数を予測する
  報告: どのくらいの在庫バッファを用意すれば、機会損失のリスクを抑えられるか?

第4章 【上級編】 進化したエクセル環境を活用して解析を効率化・高度化する
 進化した活用術 1: データ結合を効率化する
 進化した活用術 2: データマイニング機能を使った重回帰分析
 進化した活用術 3: 質的なアウトカムの分析を行うナイーブベイズ分類
 進化した活用術 4: アウトカムに影響を与えているパターンを分析する
 進化した活用術 5: 時系列分析をスピーディに行う
 進化した活用術 6: 分析結果のビジュアライゼーション

本書のまとめ
おわりに


著者プロフィール  

西内 啓(にしうち・ひろむ)
1981年生まれ。東京大学医学部卒(生物統計学専攻)。東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバード がん研究センター客員研究員を経て、現在はデータに基いて社会にイノベーションを起こすための様々なプロジェクトにおいて調査、分析、システム開発および戦略立案をコンサルティングする。著書に『コトラーが教えてくれたこと』(ぱる出版)、『サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な「答え」が出ている』(マイナビ新書)、『世界一やさしくわかる医療統計』(秀和システム)、『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

『1億人のための統計解析 』出版社の日経BP社のサイト

なぜ、統計学が最強の学問なのか? 『統計学が最強の学問である』ビジネス書大賞2014「大賞」受賞記念記事 (西内 啓、ダイヤモンドオンライン、2014年4月25日)


「1億人のための統計解析」(「日経ビジネスオンライン」の連載コラム)

仮説は最初に立てるな! (西内 啓、日経ビジネスオンライン、2014年3年25日)

分析の前に決めるべき3つのこと (西内 啓、日経ビジネスオンライン、2014年4年1日)

「顧客満足度」と「購買頻度」、どちらを上げる?  (西内 啓、日経ビジネスオンライン、2014年4年8日)

ソフトバンク時価総額2位の秘訣はデータ重視 マーケティング本部・岩本嘉子課長に聞く (西内 啓、日経ビジネスオンライン、2014年5月7日)



<ブログ内関連記事>

月刊誌 「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2013年11月号の 「特集 そして、「理系」が世界を支配する。」は必読!-数学を中心とした「文理融合」の時代なのだ
・・因果関係よりも相関関係を重視するのが統計学の世界

映画 『マネーボール』 をみてきた-これはビジネスパーソンにとって見所の多い作品だ!
・・「メジャーリーグ球団のひとつ、カリフォルニア州北部にフランチャイズのあるオークランド・アスレティクス(Oakland Athletics)の GM(=ゼネラル・マネージャー)として球団経営に数字とロジックを持ち込んで、劇的な V字回復を果たした44歳の中年男の実話(ture story)に基づいた映画」

書評 『シゴトの渋滞学』(西成活裕、新潮文庫、2013)-数学者が数式をつかわずに書いた読みやすくて役に立つ実用書

「オックスフォード白熱教室」 (NHK・Eテレ)が面白い!-楽しみながら公開講座で数学を学んでみよう

書評 『コンピュータが仕事を奪う』(新井紀子、日本経済新聞出版社、2010)-現代社会になぜ数学が不可欠かを説明してくれる本
・・そういう時代に弱者とならないためにも、統計学の知識の習得と活用は現代人の「教養」となる

ビジネスパーソンに「教養」は絶対に不可欠!-歴史・哲学・宗教の素養は自分でものを考えるための基礎の基礎




(2012年7月3日発売の拙著です)





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2014年2月24日月曜日

書評 『ヤバい経営学-世界のビジネスで行われている不都合な真実-』(フリーク・ヴァーミューレン、本木隆一郎/山形佳史訳、東洋経済新報社、2013)-これがビジネス世界の「現実」というものだ



『ヤバい経営学-世界のビジネスで行われている不都合な真実-』(フリーク・ヴァーミューレン、東洋経済新報社、2013)は、ビジネスやマネジメント世界の住人、あるいはその世界に関心がなければ面白くもなんともない本でしょうが、その世界にいると 「これはじつに面白い!」 といった内容の本です。 

英語タイトルは Business Exposed : The Naked Truth about What Really Goes on in the World of Business (2010)、つまり真相解明の暴露もの、といった感じでしょうか。著者はオランダ出身でロンドン・ビジネススクールのMBAコースで組織論とアントレナーシップを教えている準教授。

いろんな経営理論がつぎからつぎへと生まれ、ウイルスのように伝染したのち、あっという間に消えていくのがビジネス世界ですが、そういった流行りものの理論に対して胡散臭いと感じたり、ほんとうは違うんじゃないの?とうすうすと感じている人は、読み進めるうちに納得の連続になることでしょう。

みずからの直観を豊富な学術論文のエッセンスで跡付けているのが本書の特色。事例はどうしても英国と米国を中心にした英語圏のものが多いですが、著者がオランダ人であることもあってオランダ企業も多数取り上げられています。

この本で展開される議論のキモは、ビジネスやマネジメントの世界における「因果関係」についての注意を喚起している点でしょうか。

原因と結果の関係というものは、かならずしも一対一の関係ではないし、時間的なスパンをどうとるかでまったく異なる結論がでてくるもの。原因と結果が逆転して語られていることもじつに多い。

たんなる相関関係にすぎないものを因果関係だと思い込んでいる人がじつに多いという嘆かわしい現実は、ビジネス世界においても同じということですね。

短期的にはすぐ効果のでる経営施策であっても、副作用というものは時間がたってから顕在化するもの。たとえば、リストラという名の人員削減は長い目でみて効果ないだけでなく有害であることが経営学の学術研究で明らかになっていることが紹介されていますが、日本人なら十分に納得のいくことでしょう。

企業経営をサステイナブル(=持続的)に行っていくためには、流行りの経営理論に飛びつくのは考えものだということですね。

ビジネスの世界に長くいると、本書に書かれている内容はまったくそのとおりだと思います。はっきりいってしまえば、「常識」といってもいいような話ばかりです。とはいえ、アタマでっかちの人たちには納得がいかないかもしれませんが・・・

結局のところ、ヒトによって成り立っているのがビジネス。根本のところでは、英語圏であれ日本であれ、本質的には変わらないことを実感させてくれる内容でもあります。

ただし、当然のことながら「これをやればかならず効果がでる!」なんて処方箋はこの本には書かれていません。

翻訳もよくこなれているので、それほどムリなく読めると思います。




目 次

日本の読者の皆さんへ
Introduction モンキーストーリー
Chaper 1 今、経営で起きていること
Chaper 2 成功の罠(とそこからの脱出方法)
Chaper 3 登りつめたい衝動
Chaper 4 英雄と悪党
Chaper 5 仲間意識と影響力
Chaper 6 経営にまつわる神話
Chaper 7 暗闇の中での歩き方
Chaper 8 目に見えるものと目に見えないもの
Epilogue 裸の王様
訳者あとがき
参考文献

著者プロフィール


フリーク・ヴァーミューレン(Freek Vermeulen)

ロンドン・ビジネススクール准教授。オランダ・ユトレヒト大学で組織論、ティルブルフ大学で経営管理の博士号を取得。専門は戦略論とアントレプレナーシップで、主にMBAとエグゼクティブMBAプログラムで教鞭をとっている。東芝、BP、フィアット、IBM、KPMG、ノバルティス、ボーダフォンなど、大企業の経営層のアドバイザーを務めるとともに、一般紙・専門誌への寄稿多数。Academy of Management Journalの最優秀論文賞を受賞、現在は同誌を含めた経営ジャーナル4誌の編集委員を務める。ロンドン・ビジネススクールでは、ベストティーチャー賞と最優秀授業賞を受賞。『フィナンシャル・タイムズ』紙上で「ライジングスター」と称される。本書は英語・日本語の他に中・韓・露・蘭の4カ国語でも出版されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

訳者プロフィール
本木隆一郎(もとき・りゅういちろう)
神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。大日本印刷の経営企画部にて子会社の再建や競合企業のM&Aに携わる。その後、IBMビジネスコンサルティングサービスにて、主に銀行、証券、海運のコンサルティングに従事。ロンドン・ビジネススクール修了(MBA)。現在、外資系ヘルスケア企業に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

訳者プロフィール
山形佳史(やまがた・よしふみ)
東京都生まれ。一橋大学商学部卒業。日本IBMで大企業向けシステム構築・運用プロジェクトに携わる。その後、IBMビジネスコンサルティングサービスで、幅広い業界におけるオペレーション、IT戦略にかかわるコンサルティングプロジェクトに従事。ロンドン・ビジネススクール修了(MBA)。現在、コンサルティング会社に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連情報>

経営学関連

書評 『経営管理』(野中郁次郎、日経文庫、1985)-日本の経営学を世界レベルにした経営学者・野中郁次郎の知られざるロングセラーの名著

書評 『経営の教科書-社長が押さえておくべき30の基礎科目-』(新 将命、ダイヤモンド社、2009)-経営者が書いた「経営の教科書」

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)-空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「実践経営語録」

M.B.A.(経営学修士)は「打ち出の小槌」でも「魔法の杖」でもない。そのココロは?

アジアでは MBA がモノを言う!-これもまた「日本の常識は世界の非常識」

レンセラー工科大学(RPI : Rensselaer Polytechnic Institute)を卒業して20年 ・・わたしはこの大学のMBAコース(MOT)を卒業


オランダ関連

書評 『植物工場ビジネス-低コスト型なら個人でもできる-』(池田英男、日本経済新聞出版社、2010)
・・・オランダの先進植物工場モデル

書評 『チューリップ・バブル-人間を狂わせた花の物語』(マイク・ダッシュ、明石三世訳、文春文庫、2000)-バブルは過ぎ去った過去の物語ではない!
・・17世紀オランダの「バブル経済」

書評 『ニシンが築いた国オランダ-海の技術史を読む-』(田口一夫、成山堂書店、2002)-風土と技術の観点から「海洋国家オランダ」成立のメカニズムを探求

「フェルメールからのラブレター展」にいってみた(東京・渋谷 Bunkamuraミュージアム)-17世紀オランダは世界経済の一つの中心となり文字を書くのが流行だった
・・フェルメールとスピノザをつなぐものは光学レンズであった









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2011年9月21日水曜日

経営計画の策定と実行は、「自力」と「他力」という仏教の考えをあてはめるとスムーズにいく



 いまNHKのEテレで「100分 de 名著: ブッダ『真理のことば』」をやっています。各回25分の番組が全4回で100分。100分で名著のさわりを読んでしまおうという番組です。

 ブッダ『真理のことば』の放送は9月7日から毎週一回。ゲスト講師は、佐々木閑・花園大学国際禅学科教授です。

 昨日(9月21日)は「第3回 執着を捨てる」。番組内容案内を引用させていただきましょう。

人は様々なものに執着して生きている。しかし執着が過度に強くなると、家族や財産といった、本来幸せをもたらすはずのものも、自分の思い通りにならないことにいらだち、苦しみを感じてしまう。ブッダは、自分勝手な執着をいましめるとともに、自分の教えについても、過度に執着してはならないと説いた。そして、自分を救えるのはあくまでも自分自身であり、自分の心を正しく鍛えることによって、心の平安を得ることが出来るとした。第3回では、依存ではなく、心の自立を説いたブッダの思想について考える。

 「執着」を捨てよと説く仏陀の教え、なかなかそのとおりに実行するのは難しいのですが、これが実行できるようになってくると(・・わたしもまだまだですが)、仕事もスムーズに回るようになってくると思います。これは実感です。

 昨日はそのまま TV を消さずにチャンネルも変えずにいたところ、Eテレでは「仕事学のすすめ」という番組をやっていたので見てしまいました。「伊藤真“司法試験流”知的生産術 第3回」。司法試験の受験にかんする第一人者である伊藤真氏の司法試験合格のための受験術、これは見てしまうでしょう。もちろん、わたしは司法試験は受験したことも、これからするつもりもありませんが(笑)

 番組内容を紹介しておきましょう。

司法試験を受ける生徒たちに、まず合格体験記を書かせるという伊藤真は、常にゴールを見定め、計画を立てることが重要だと語る。そのポイントは「必ず何もしない休養日を立てる」「スケジュールを定期的に見直しする日を設ける」など。また、1日のタイムスケジュールを10分単位で見直し、時間をやりくりすることも大切だという。実例を交えつつ、まさに“目からウロコ”の伊藤の時間管理術のノウハウを紹介する。

 「執着」するなというブッダの教えを聞いたすぐあとに、この「時間術」の番組を見ていて思ったのは、スケジューリングと実行の関係も、「執着」しないということを念頭におくとスムーズにいくのではないかと思った次第です。

 司法試験に合格するためには、まず自分が合格しているイメージを具体的に思い描き、それを「合格体験記」という形で書かせるというメソッド。これをブレイクダウンして二年間の学習計画をスケジュールとして作成し、2週間に一回のカウンセリングで見直しを行う。

 これは経営戦略策定において、長期目標としてビジョンを設定し、ビジョンをブレイクダウンして経営計画を作成し、実行させるメソッドと同じですね。しかも、PDCAサイクルが見事なまでに織り込まれています。

 伊藤氏は「ビジョン」というコトバは使っていませんが、私流に翻訳するとそうなります。なぜなら、ビジョン(vision)というコトバのもともとの意味はイメージであり視力のこと。ビジュアルなイメージを想起することはビジョンそのものなわけだからです。ビジョンは数字である必要はありません。

 とはいいながら、スケジュールを立てたものの、なかなかそのとおりには実行できないもの。そのとき最初にたてたスケジュールに絶対にしがみつくという「執着」を捨ててマイナーチェンジをしていけばいい

 あるいは、最初から完全に実行できないことを織り込んで、「遊び」の時間を入れておくこと。これは機械設計の世界においても「公差」(tolerance)として、あらかじめ許容しておくのと似ているかもしれません。tolerance は直訳すれば「寛容」です。

 さらに仏教がらみでいうと、スケジューリングと実行の関係は、「自力」と「他力」の関係に似ているような気もします。

 スケジュールを作成することと、それに従って実行するプロセスは「自力」の要素が強いのは言うまでもありません。
 
 しかし、実際はかならずしもスケジュールどおりに実行できるわけではない。それは、「自分」を取り巻く「外部環境」は、「自分」で完全にコントロールすることなどできないから。いいかえれば、「外部環境」では「他力」が働く要素がひじょうに大きい。自分が意図するのとは違う、コントロール不可能なチカラのことを「他力」といっておきましょう

 現代に生きるわれわれにとっては、「自力」と「他力」のバランスが必要だということでしょう。自分のチカラで「コントロール可能な部分」と「コントロール不可能な部分」のバランスといってもいいでしょう。

 欧米流の思考では、どうしても環境をコントロールするという発想が優先されがちですが、それでは思うようにいかないものです。自然を征服し克服しようとした岩手県田老(たろう)町につくられた世界一に防潮堤も、「3-11」の大津波ではあっという間にあっけなく決壊してしまいました。何ごともコントロールしてしまおうとしう「自力」には限界があるのです。

 意思のチカラはきわめて大事ですが、しかしそれだけで世の中が動いているわけではないということ。無理に通そうとしてもうまくいかないことが、脱力すればひとりでにうまくいってしまうことも多い。不思議といえば不思議ですが、世の中はこういうものであるのは、実感できることでありますね。

 日々の活動においても、経営においても、コントロール可能な部分とコントロール不可能な部分をいかにバランスさせて、初期の目標を達成するかが大事なことであるかを感じます。

 「ブッダ『真理のことば』」と「仕事学のすすめ」という二つの番組を連続して見ながら、そんなことを考えていました。


<関連サイト>

「100分 de 名著: ブッダ『真理のことば』」(NHK・Eテレ) 

「仕事学のすすめ」(NHK・Eテレ) 


<ブログ内関連記事>

PDCA (きょうのコトバ)

「無計画の計画」?

"粘菌" 生活-南方熊楠について読む-





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