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2014年6月12日木曜日

書評 『全員で稼ぐ組織-JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書-』(森田直行、日経BP、2014)-世界に広がり始めた「日本発の経営管理システム」の仕組みを確立した本人が解説


「アメーバ経営とは京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長がつくり出した、経営哲学をベースにしたトータルな経営管理システムです」。これは、京セラ自身による「アメーバ経営」の定義です。

この簡潔な定義に「アメーバ経営」のエッセンスが見事に表現されているといっていいでしょう。すなわち「経営哲学」と「経営管理システム」の2つです。本書では随所で、この哲学(あるいは理念)と仕組みの2つが両輪となって、はじめて「アメーバ経営」が意味をもつことが強調されています。

「アメーバ」とは5人から10人くらいの小集団のこと。このアメーバを一単位として、あたかも会社のように採算意識をもって自主的に自律的に活動し、その他のアメーバとともに日々協同していけば、おのずから全社目標も達成されていくという経営システムです。

全社の数値目標が、末端の小集団までブレイクダウンされ、しかもすべてが連動しているので実現が可能となるわけです。経営数字が全社の従業員にオープンになっているという点も大きな意味をもっています。

経営者であれば、経営目標達成のための最適な経営手法は気になるものです。どうやったら売り上げを上げることができるか、どうやったら利益を上げることができるか、そのためにはどうやったら従業員のやる気を引き出すことができるのか。

そういう観点から、「失われた20年」の日本では、いわゆる「成果主義」システムが大流行したことがありました。ところが多くの会社では成果主義はうまく機能しなかったようです。

わたしは「成果主義」そのものが悪いとは考えていません。企業はそれぞれ考えもバックグラウンドも違いますし、業種業態によっても大きな違いがあるからです。成果主義がうまく機能している会社もあれば、そうでない会社もあります。

とはいえ、実際問題として、成果主義がうまく機能しなかった日本企業が多いことはたしかなことですし、一方ではアメーバ経営を導入して成功している会社が多いことも否定できません。

さらに、成果主義で破竹の勢いで快進撃していたといわれる中国企業においてすら、成果主義が機能不全に陥っているケースがすくなくないという事実には興味深いものを感じます。本書でもそういった中国企業の事例について取り上げられています。

こういった事実からわかるのは、すべての従業員がスーパースターになって稼ぎまくることができるわけがないし、そうなる必要もないということです。成果主義の前提が成り立たないケースが多いという事実です。

わたしは、本書を読みながら、「アメーバ経営」とは、一握りのスーパースターに依存するのではなく、「ごくごくフツーの平凡な人たちから自発性と自律性を引き出し、そのパワーを結集して非凡な組織をつくりあげるものだ」と思いました。わたしならこんな定義をしてみたくなります。


「全員経営」をたんなるスローガンにしない「仕組み×理念」

本書のタイトルに注目してみましょう。『全員で稼ぐ組織』とありますね。

「全員で」まではよくあるフレーズですが、「稼ぐ」という点が大事です。企業組織である以上、適正利益をあげてサステイナブルに存続し続けることが顧客にとっても、従業員にとっても、その他ステークホールダー全体にとっても重要です。

「全員経営」をスローガンやかけ声倒れに終わらせない仕組みがアメーバ経営にあるわけです。

付加価値をベースに考えること、しかもすべて金額ベースで考えること。管理会計の仕組みとしてここまでは考える人も少なくないと思いますが、時間意識を導入していることもきわめて大きな意味をもっています。同じ仕事をするにも、どれだけの時間(工数)がかかったかがわかれば、生産性向上についての意識が向かうからです。しかも数字ですべてが表現されるわけです。

さらにいえば、細かい話ですが、付加価値の計算に人件費を加えない(!)という点に、アメーバ経営がじつに非凡な経営管理システムであることを感じさせます。詳しくは本書を読んで確認していただきたいと思います。

しかし、いくら仕組みがしっかりしていても経営システムがうまく回るわけではありません。ここで暴騰に引用した定義に戻るわけです。「経営管理システム」は、「経営哲学」と両輪になることによって、はじめてうまく機能するのです。

小集団と小集団のあいだに発生するコンフリクト(葛藤)を最小限にするために、稲盛哲学の根底にある「利他の精神」という理念が生きてくるわけです。ビジネス関係者は、「制度に魂を入れる」という表現をよくつかいますが、まさに理念こそ魂」なのです。しかも生きた理念であってこそ、経営システムが生きてくるわけです。

「人生・仕事の結果」とは「考え方×熱意×能力」だという稲盛氏の「人生の方程式」が本書にも出てきます。これは「個」の心構えを説いたものですが、アメーバ経営を自薦する会社では、自分たちで立てた目標数字を達成するために、ゲーム感覚さえ感じている小集団もあるようです。

スーパースターではなく、ごくごくフツーの人たちのやる気を引き出している点に、仕組みと理念が混在一体化した姿を見ることができるのではないでしょうか。


JAL再生の舞台裏のストーリー

本書の副題には『JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書』とあります。「アメーバ経営」については、聞きかじりで名前くらいは知っていても、「JAL再生」という事実がなければ、これほど注目が集まることもなかったのではないでしょうか。

わたしにとっても、「JAL再生」について、「アメーバ経営」の仕組みつくりを行い伝道師として活動した著者自身が語るのを読むのはじつに興味深いものがありました。

とくにアメーバ経営の「部門別採算制度」をもとにした「組織再設計」のくだりはさらっと書かれていますが、じつに理にかなった組織改革が行われていることがわかります。ポイントは採算部門を明確にし、サポート部門の役割を明確にすることにあるわけですが、この点は熟読する価値があるといえます。

JALのような歴史ある大企業で、しかもアメーバ経営が得意としてきた中小製造業でなくサービス業においても応用可能なことが実証されたことは、本書の出版元である日経BP社が取り上げていることからもわかるように、日本のビジネスパーソンの多くの目を開いたことでしょう。

世の中には数々の経営手法がありますが、アメーバ経営がそれらと一線を画すのは、導入することにより意思決定の仕組みや組織、事業の構造だけでなく、目に見えない企業文化や働く人々の人生観、価値観までが変わっていくところにあります。

「はじめに」から引用しましたが、これが自画自賛ではないことが、本書を通読すれば納得されるのではないかと思います。

「経営哲学」と「経営管理システム」が両輪としてかけ算となった「アメーバ経営」は、先にふれたように中国企業にも導入が始まっているだけでなく、世界に広がりつつあるようです。

バブル崩壊後、自信を喪失した日本企業は20年以上にわたって先進的なアメリカの経営手法の導入にチャレンジしてきましたが、そろそろ「日本発の経営管理システム」に注目すべきときがきているのかもしれません。

かつて戦前の日本には、GE(=ゼネラル・エレクトリック)と同時代に独自の考えから「事業部制」を導入した松下幸之助がいましたし、戦後の日本にも、アメリカから学んだ統計的生産管理手法を独自の思考によって、ジャストインタイムという哲学にまで鍛え上げ、世界的な経営手法に育て上げたトヨタの大野耐一による「カンバン」システムなどもあります。

稲盛和夫氏が考案し実践してきた「アメーバ経営」もまた、そうなっていくのかもしれません。もちろんシステムである以上、実際に導入して機能させるには、そうとうな覚悟が必要であることは言うまでもありませんが。

稲盛氏のもとでアメーバ経営の仕組みと情報システムの確立・推進を担当し、現在は伝道師としてその普及活動を推進している著者による本書は、構成がしっかりした、じつに読みやすい「教科書」です。

経営者だけでなく、ぜひ多くのビジネスパーソンの皆さまに一読をお勧めししたいと思います。



PS. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。





目 次 

はじめに
第1章 アメーバ経営とはどんな経営手法なのか?
 社員全員が経営に携わるために
 あなたの会社では、誰が利益を生み出しているのか
 社内売買によりアメーバの独立採算管理を実現
 管理会計と財務会計の関係
 論語とそろばんは一致しなければならない
 一対一の対応でダブルチェック
 創業3年目に突き当たった壁
 全員経営を生み出す時間当り採算
 世界中から注目を集めwるアメーバ経営
 アメーバ経営導入のメリット
 アメーバ経営導入の基本的な考え方
 アメーバに「収入」と「支出」の責任を持たせる
 社内売買価格はマーケットプライスをもとに決まる
 サービス業にも社内売買の考えを適用
 マスタープランは必達目標
 会議では数字の確認にとどまらず本人の決意を聞く
 アメーバ組織運営の心得とは
 アメーバ経営を支える「フィロソフィ教育」
 リーダーとしてのあるべき姿
第2章 JAL再生
 JAL再建を打診される
 仕組みだけではなく魂を入れる
 私がJALに着任して感じたこと
 まずは社員の意識改革から着手
 京セラ流コンパで社内を一つに
 経営理念の刷新とJALフィロソフィの誕生
 更生計画を着実に実行する
 稲盛さんを激怒させた会議での発言
 意識が変わると、現場が変わる
 年間で800億円のコスト削減に成功
 部門別採算制度導入のための組織改革に着手
 利益責任を一手に負う新部署を創設
 1便ごとのコストと各サービスの単価を設定
 予約状況を見ながら最適な機材に変更
 パイロットも航路の工夫で燃費を追求
 アメーバ経営が本領を発揮した東日本大震災
 関連会社は本体依存から脱却
 アメーバ経営で生きている会社になった
第3章 導入事例に学ぶアメーバ経営
  ●ケーススタディ01 荻野工業-筋肉質の経営体質でリーマン・ショックを乗り切る
第4章 アメーバ経営は業界の枠を超える
 患者増でも経営環境は厳しくなる医療業界
 赤字病院に導入、1年目から黒字化に成功
  ●ケーススタディ02 社会医療法人天神会-職種の壁を越え、医療の質と採算を両立
 介護業界でも導入企業が増加中
  ●ケーススタディ03 ケアサービス-デイサービスで驚異的な稼働率98.4%を実現
第5章 世界に広がるアメーバ経営
 7社の中国企業がアメーバ経営を導入
 成果主義は企業を壊していく
 中国のスーパーマーケットにJAL方式導入
 リーダーシップを発揮しやすくする「人柄のよさ」
 アジアを中心に世界へ
おわりに
謝辞
付録① 早わかりアメーバ経営
付録② アメーバ用語集



著者プロフィール
  
森田直行(もりた・なおゆき)
KCCSマネジメントコンサルティング(KCMC)会長。1942年、福岡県生まれ。鹿児島大学卒業後、1967年、京都セラミック(現・京セラ)に入社。アメーバ経営の仕組みと情報システムの確立・推進を担当。1995年、社内ベンチャーとして始めた事業をベースに京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)を設立、社長に就任(現相談役)。2006年、京セラ代表取締役副会長。2010年、経営破綻したJALグループの再建に参画、副社長として稲盛和夫京セラ名誉会長とともに部門別採算制度の導入による経営改革を実行し、再建に貢献した。2012年、中国に京瓷阿美巴管理顧問(上海)有限公司を設立し、董事長に就任。アメーバ経営の伝道に日々心血を注いでいる。






<関連サイト>

勝算なき戦いの始まり-JALを再生させた「アメーバ経営」(その1) (森田直行、日経ビジネスオンライン、2014年5月29日)
・・「JAL再生の原動力になった「アメーバ経営」は、もともと京セラの経営手法なので製造業のイメージが強いのですが、実は、導入企業の業種はバラエティに富んでおり、数年では医療・介護といった業界でも導入が進んでいるなど、あらゆる業種で活用が可能です。このコラムでは、JALの経営改革がどのように行われたのかをあらためて振り返りつつ、「フィロソフィ」と「アメーバ経営」の要点を紹介します。」

売り上げ未達、されど経費は予算通りの矛盾 JALを再生させた「アメーバ経営」(その2) (森田直行、、日経ビジネスオンライン、2014年6月5日)

稲盛さんを激怒させた会議での発言 JALを再生させた「アメーバ経営」(その3) (森田直行、日経ビジネスオンライン、2014年6月12日)

勝ち負けがすぐわかる、だから工夫が始まる JALを再生させた「アメーバ経営」(その4) (森田直行、日経ビジネスオンライン、2014年6月19日)

書籍『全員で稼ぐ組織』が紀伊國屋書店新宿本店、丸善丸の内本店、丸善日本橋店で売り上げランキング1位を獲得(京セラ公式サイト、2014年6月10日)

京セラ、不思議な会社の深層競争力は「アメーバ経営」を支える倫理と論理の両輪文 (Business Journal、2014年8月6日)

"新・経営の神様" 稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」 日本を「幸せに導く」方法とは(現代ビジネス、2016年8月24日)

(2016年8月27日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

稲盛和夫氏と「稲盛哲学」関連

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか?
・・中国では民間企業の経営者のあいだだけではなく、一般読者にも浸透しつつある稲盛和夫氏の教え

書評 『「利他」-人は人のために生きる-』(瀬戸内寂聴・稲盛和夫、小学館文庫、2014 単行本 2012)-智慧に充ち満ちた二人のエルダーによる対談型法話
・・「「第5章 人はなぜ「働く」のか-誰かのために尽くすことが心を高める-(利他の実践)」では、JALの再建が「意識改革」によって実現し、持続可能なものとなっていること、稲盛氏の考えが提携先のアメリカン航空(AA)にも伝播していることが、稲盛氏自身の肉声によって語られている」

書評 『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる-自分、人、会社-全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィー』(原 英次郎、ダイヤモンド社、2013)-メンバーの一人ひとりが「当事者意識」を持つことができれば組織は変わる ・・経済記者が書いたJAL再建についてのドキュメント

『週刊ダイヤモンド』の「特集 稲盛経営解剖」(2013年6月22日号)-これは要保存版の濃い内容の特集


稲盛和夫氏の「経営哲学」を実践する経営者たち

書評 『道なき道を行け』(藤田浩之、小学館、2013)-アメリカで「仁義と理念」で研究開発型製造業を経営する骨太の経営者からの熱いメッセージ
・・稲盛フィロソフィー信奉者によるアメリカでの経営実践の最新報告

書評 『俺のイタリアン、俺のフレンチ-ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方-』(坂本孝、商業界、2013)-ビジネスモデル×哲学(理念)を参入障壁にブルーオーシャンをつくりだす
・・稲盛和夫氏の弟子である経営者の最新の挑戦の中間報告書


フツーの人の自発性と自律性を引き出す仕組み

日体大の『集団行動』は、「自律型個人」と「自律型組織」のインタラクティブな関係を教えてくれる好例

PDCA (きょうのコトバ)






(2012年7月3日発売の拙著です)






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