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2014年10月18日土曜日

書評 『なぜローカル経済から日本は甦るのか-GとLの経済成長戦略-』(冨山和彦、PHP新書、2014)-重要なのはグローバルではなくローカルだ!


『なぜローカル経済から日本は甦るのか-GとLの経済成長戦略-』(冨山和彦、PHP新書、2014)は、ことしイチオシの経済ビジネス本といっていいのではないかと思います。
  
内容をかいつまんで見ておきましょう。
   
日本の GDP の7割以上はローカル経済が生み出しているのであり、日本の総労働人口の8割以近くがローカル経済に生きているという事実。まずはこの事実を押さえておきましょう。残りがグローバル経済ですが、グローバル経済の論理で動いている人たちは、じつは3割以下しかないということになります。

この数字は20年前よりも、むしろ現在のほうがローカル経済比率のほうが高まっていますが、それは「グローバル化のパラドックス」によるものです。

すでに世界全体のGDPの1割にも満たない日本経済は、グローバル企業からみればそれだけの意味しか持っていないのです。したがって、日本での投資は抑えられ、日本での雇用も抑制されることになるのは理の当然というものでしょう。

そしてその結果、むしろローカル経済のウェイトのほうが高まっていくのが現在の姿なのです。グローバル化が進めば進ほどローカルのウェイトが増していくというパラドックス。これは日本だけではなく、先進国に共通している現象です。
    
著者はグローバルを頭文字をとって「G」、ローカルを「L」としていますが、その意味では、「G」と「L」は共存しているだけでなく、それぞれあまり関係なく共存しているという著者の主張にはおおいに納得するものがあります。 日本はドイツと比べても輸出依存比率の低い、内需中心の経済になっていることは常識とすべきでしょう。

日本人の8割近くはL(=ローカル)の世界で生きているのです。首都の東京でさえ、人口の大半がかかわっているのはグローバルではなく、ローカルのサービス業です。東京もまた「Gの世界」と「Lの世界」が共存しているのです。東京以外では、あたりまえといってもよい状況です。

グローバル展開するメーカーは、生産コストと物流コストの観点から工場を海外に移転するのは理の当然。ローカル経済から製造業関係の労働需要が減少するのも、その意味では当然といえば当然です。これは「モノ」にかんする話です。
    
だが、「コト」にかんする話はまったく違います。在庫ができず時間消費型の「コト」を扱うサービス業は、基本的に地域密着型という性格をもっています。ローカル経済はサービス産業が中心です。

(帯のウラ)


■需給ギャップが人手不足を生み、賃金はさらに上昇する

サービス業ではますます人手不足がひどくなりつつあるのが現状です。というのも、団塊世代がリタイアしてサービス需要が増加するのに対して、若い人が減っているので労働力の供給が減少しているからです。

人件費抑制と労働生産性向上のため、以前から飲食業ではタッチパネル方式のオーダーやセルフサービスが普及してますし、エッソのセルフSSは最近とみに目にするようになっています。  
ここらへんのことは、じっさいにローカル経済で仕事をしている人には実感のある話でしょう。人手不足はアベノミクスで顕在化しましたが、けっしてアベノミクスによって引き起こされたのではないのです。

ローカル経済での地域密着サービス産業をめぐる需給ギャップに原因があり、しかもこの需給ギャップは今後20年間(!)はつづくのです。20年後には需給が均衡するので、人手不足は収束に向かうと予測されますが、それにしても今後20年間というのはけっして短い期間ではありません。人手不足のために、賃金水準はさらに上昇するのです。
   
著者は、少子高齢化が原因の人手不足は史上初めての出来事で未曾有のものだといいます。このポイントはぜひ押さえておきたいものです。日本はおなじ先進国でも欧州よりも速いスピードで進行中なのです。

人手不足による賃金上昇。高騰する賃金の負担が可能な企業は生き残り、その負担ができない企業は退出を迫られることになります。

介護や子育てを考えれば、柔軟な働き方を選択する労働者はますます増加するでしょうし、その意味では、会社に帰属する「メンバーシップ型」の働き方ではなく、同一労働同一賃金を原則とするジョブ(=職務)型の働き方が日本人の大半が選択することになるは当然というべきでしょう。流動性が高まるということです。

この結果、「個」としての労働者と「組織」としての会社が対等になっていくことが考えられます。労働生産性向上にこれまで以上に注力するとともに、いかに労働者を「囲い込む」ために魅力ある職場をつくりあげるかが、ローカル経済に生きる会社には問われることになります。


グローバルとの接点を持ちながらローカルに生きる

著者は、産業再生機構で地方の破綻企業再生をつうじて、ローカル経済の現状を熟知している人です。現在も東北のバス会社の経営にタッチしており、グローバル製造業もローカルのサービス業も、ともに熟知しているという立ち位置にあります。

イデオロギーからではない、リアリズム(=現実主義)という姿勢。これは、見たいものしか見ないのに、それで世界観を構築している経済学者との違いでもあり、俗耳に入りやすい一部上場のグローバル製造業について書きたがるマスコミ論調との違いでもあります。

現実主義の立場から書かれたこの本は、長いあいだ日本人の「常識」となっていた固定観念をくつがえす内容であるからこそ読むに値する本であるといってよいでしょう。

グローバル化やグローバリゼーションという流行語に翻弄されるのは、もういい加減やめたほうがいいんじゃないの、日本人の大半には関係ない話なのだから、とわたしはつよく思います。

それは言い過ぎだとしても、「G」と「L」は二者択一ではなく共存可能、どちらの世界で生きるかは個人の価値観だという著書の姿勢にはい大いに共感するものがあります。ローカルに生きるわれわれは、グローバル化の成果を享受すればいいということです。

現在の日本は、「グローバル化のパラドックス」によってもたらされた世界ですが、すべての日本人がグローバル競争に巻き込まれるのはナンセンスなこと。

グローバルとの接点をもちつつ、ローカルに生きる。これが大多数の日本人にとっての幸せに生きる道であると思います。







目 次

プロローグ-労働力消滅!? 今、かつてないパラダイムシフトが起こっている
第1章 グローバル(G)とローカル(L)という二つの世界
 GとL、2つの世界の現場に携わって芽生え始めた「違和感」
 単純なイデオロギーだけで、明快な解を得ることができなかった
  ありのままの現実・・・・グローバル化のパラドックス
 経済学者がローカル型のサービス産業を嫌いな理由
 「Gの世界」と「Lの世界」それぞれを支配する経済法則とは
 「GとL」を理解すれば格差問題の実相も見えてくる
第2章 グローバル経済圏で勝ち抜くために
 グローバル経済圏のリアル
 日本のグローバルプレイヤーが長期的に交代してきた本当の理由
 目指すは「稼ぐ力のオリンピックチャンピオン」
 大企業と中小企業ではなく、グローバルとローカルで分ける 
 ・・(以下省略)・・
第3章 ローカル経済圏のリアル
 ローカル経済圏に向けられる根強い誤解
 ローカル経済圏の経済性は何で規定されるか?
 GかLかではなく、GもLもいいではないか!
 実はほとんどの産業がローカル経済圏のプレイヤー
 女性が家で子どもを育てるのは日本の淳風美徳というのは本当か 
 産業再生機構時代に手がけた日光鬼怒川温泉の再生
第4章 ローカル経済圏は穏やかな退出と集約化で寡占的安定へ
 淘汰が起きにくいローカル経済圏では「穏やかな退出による集約化」がポイント
 「県大会」上位を目指すローカル経済圏で必要なのはカリスマ経営者ではない
 「地方発のグローバル企業を育成せよ」は正しいか
 ローカル経済圏の労働移動はスムーズに進められる
 お気楽な規制緩和ではなく「スマートレギュレーション」が求められる
 「非営利ホールディングカンパニー」は規律の鍵となりうるか
第5章 集約の先にあるローカル経済圏のあるべき姿
 退出のキーとなるのは地方金融機関のデットガバナンス
 Lの世界に生きる企業の最重要KPI(主要業績指標)は労働生産性
 どんな会社が労働生産性を高める潜在力を持っているか?
 倒産法をアメリカ型にすることで「穏やかな退出」は促される
 退出によって自己破産する必要のない個人保証制度に
 ゾンビ企業が生き残る理由・・・・今こそ中小企業政策を大転換せよ!
 地方の組成は、集約によるコンパクトシティ化と駅前商店街の復活
 最終的な人口減少に備えて 
 地域住民との「共創」関係をいかにして構築するか
 Lの世界に生きる人々の「ゴール」はどこにあるか
第6章 GとLの成長戦略で日本の経済・賃金・雇用は再生する
 構造的なパラダイムシフトからは逃れられない
 このパラダイムシフトこそ経済と雇用と賃金再生の大チャンス!
 「コト」消費の時代の到来で「GもLも」戦略に追い風が吹き始めた
 「GとL」はどちらも素晴らしい・・・・個人にとっては選択の問題
エピローグ-双発なる会話
参考文献



著者プロフィール
冨山和彦(とやま・かずひこ)
 1960年生まれ。経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。ボストン・コンサルティング・グループ入社後、コーポレイト・ディレクション社設立に参画、後に代表取締役社長に就任。産業再生機構設立時にCOOに就任。(現職)オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、中日本高速道路社外監査役、みちのりホールディングス取締役、経済同友会副代表幹事、財務省・財政投融資に関する基本問題検討会委員、内閣府・税制調査会特別委員、文部科学省・国立大学法人評価委員会専門委員、国土交通省・下水道政策研究委員会委員、経済産業省・新ものづくり研究会委員等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

冨山和彦・なぜローカル経済から日本は甦るのか (PHP BiZ Online、2014年7月31日)

「ローカル企業の年収100万円アップ」戦略【1】 -対談:経営共創基盤CEO 冨山和彦×田原総一朗 田原総一朗の「この人に聞きたい!」 (PRESIDENT 2014年10月13日号)

「ローカル企業の年収100万円アップ」戦略【2】 -対談:経営共創基盤CEO 冨山和彦×田原総一朗 田原総一朗の「この人に聞きたい!」 (PRESIDENT 2014年10月13日号)
・・「【冨山】そうです。日本のGDPは、いま世界の中で7%を切っています。グローバル企業がそれに合わせて自社の設備や人員を配分するとしたら、日本に割り当てるのはせいぜい1割でしょう。そういった企業が日本で大きな雇用を新たに創出するのは考えにくい。つまりグローバル化が進むほど、ローカル産業でメシを食う国民の比率が高まっていくというパラドックスが起きるのです。これは日本だけでなく、成熟した先進国に共通した傾向です。アメリカやドイツでもローカル経済の比率は高まっているし、早晩、中国や韓国でも同じことが起きるでしょう。」

時代は好景気か不景気か? 人手不足対策の本丸は「何もしないこと」  冨山和彦 × 原田 泰 (ウェッジ、2014年10月25日)


我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性-今回の議論に際し通底的に持つべき問題意識について (2014年10月7日(火) 株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山和彦) (文部科学省 「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第1回) 配付資料」 Pdf資料) 

Population Decline and the Great Economic Reversal (George Friedman, Geopolitical Weekly STRATFOR, FEBRUARY 17, 2015)
・・先進国における「人口減少問題」は、500年つづいた「近代」の終焉とその後を示している。人口減少スピードの早い先進国では資本よりも労働力のほうが希少財となる

(2015年2月18日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

書評 『挫折力-一流になれる50の思考・行動術-』(冨山和彦、PHPビジネス新書、2011)-「むしろ積極的に挫折せよ!」という著者の熱いメッセージを真っ正面から受け止めよう


ローカル経済と地域密着型ビジネス

地域密着型で成功した 「地域新聞」 というフリーペーパー(=無料紙)のビジネスモデルを知ってますか?

お寺の「経営改革」-外部環境の変化にどう対応して生き残るか?

書評 『跡取り娘の経営学 (NB online books)』(白河桃子、日経BP社、2008)-「跡取り娘」たちが背負う日本の中小企業の未来

ふなっしーにとって「非公認」こそ増殖する「ゆるキャラ」のなかでの "勲章" であり "差別化" ポイントだ


ローカルは「ジョブ」(=職務)が仕事のベース

アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみよう

「就活生」はもっと中小企業に目を向けるべき-「就活生」と中小企業とのあいだに存在するパーセプション・ギャップを解消せよ!

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・

書評 『失われた場を探して-ロストジェネレーションの社会学-』(メアリー・ブリントン、池村千秋訳、NTT出版、2008)-ロスジェネ世代が置かれた状況を社会学的に分析

「就活生」はもっと中小企業に目を向けるべき-「就活生」と中小企業とのあいだに存在するパーセプション・ギャップを解消せよ!

書評 『キャリア教育のウソ』(児美川孝一郎、ちくまプリマー新書、2013)-キャリアは自分のアタマで考えて自分でデザインしていくもの

書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう
・・日本人としての強みを正確に把握したうえで、それなりの英語能力があれば生き抜いていくことはできる

書評 『大学とは何か』(吉見俊哉、岩波新書、2011)-特権的地位を失い「二度目の死」を迎えた「知の媒介者としての大学」は「再生」可能か?
・・大学が「実学志向」になるのは受容者サイドの要請


日本人の大半に英語は不要

英語よりも日本語をキチンと教育してもらいたい!-「英語至上主義」と訣別し、人的資源の有効活用策を考えるべし

書評 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013)-英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではない

書評 『日本語は亡びない』(金谷武洋、ちくま新書、2010)-圧倒的多数の日本人にとって「日本語が亡びる」などという発想はまったく無縁


グローバル化のパラドックス

書評 『終わりなき危機-君はグローバリゼーションの真実を見たか-』(水野和夫、日本経済新聞出版社、2011)-西欧主導の近代資本主義500年の歴史は終わり、「長い21世紀」を生き抜かねばならない

(2014年10月23日、2015年4月15日 情報追加)





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2014年6月3日火曜日

書評 『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか-爆発的な成長を遂げた驚異の逆張り戦略-』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー、長谷川圭訳、日経BP社、2013)-タイの 「ローカル製品」 を 「グローバルブランド」に育て上げたストーリー


「レッドブル」は日本でもすっかり有名になったエナジードリンクですね。本書はそのレッドブルが世界商品に成長した過程を描いたビジネスノンフィクションです。

どれだけの人が気がついているか知りませんが、じつはレッドブルを販売しているのはオーストリア企業です。オーストラリアではなくオーストリア。豪州ではなく欧州。

しかもモーツァルトの生まれ故郷ザルツブルクの近くに本社を置いています。

エナジードリンクとモーツァルトはフツーはぜんぜん結びつきませんが、なぜオーストリアでしかもザルツブルクなのか? それはレッドブルを「世界商品」に成長させ、「世界ブランド」にしたのがこの近くで生まれ育ったオーストリア人だからです。

しかもその創業経営者はクロアチア系オーストリア人のマーケッター。クロアチア系というのは、クロアチアがハプスブルク帝国の一部であった時代の名残ですね。

マスコミ嫌いで、プライベートライフを大事にする姿勢を貫いているためほとんど露出がありません。本書もまたインタビュー取材ができなかったので、すでに雑誌などのマスコミに発表されている記事をもとに、関係者を取材して本にしたものです。ですからちょっと物足りない感じがなくもありませんが・・。


ビジネスのヒントは日本から、製品はタイのローカル商品から

創業経営者のマテシッツ氏は、もともとは英蘭系の食品コングリマリットのユニリバーでマーケッターとして成功したビジネスマン。英語には堪能だということです。戦後タイプの欧州人なのでしょう。

自分でビジネスをやりたいと考えていたときに出会った雑誌記事の長者番付で、日本の大正製薬のことを知ります。日本では圧倒的に有名なリポビタンDというスタミナドリンクで財産を築いたということが強く印象に残ったようです。

そんなときユニリバーのフランチャイザーであった華人系タイ企業で出会ったのがレッドブル。そうです、レッドブルはもともとタイのスタミナドリンクなのです。

このブログでもすでに書いてますが、タイの「ローカル製品から、「グローバル製品」として脱皮させたのはタイ人ではなく、なんとオーストリア人の企業家だったのです。

(これがタイの「レッドブル」=「クラティンデーン」 筆者撮影)

日本で缶入りの「レッドブル」を飲んだことのある人なら、タイで「レッドブル」(=クラティンデーン:赤い牛)を飲むと、日本で売っている缶入りのレッドブルは、すでに別物になっていることに気がつくはずです。成分を改良し、味も洗練された普遍的(=ユニバーサル)なものに改造されているからです。

(Made in Austria の文字に注目! 筆者撮影)

これは「ローカル製品のグローバル化」と言えるでしょう。分野は違いますが、武道としての柔道が日本人によってではなく、主に欧州人によって Judo として全世界に普及していったプロセスと似ているかもしれません。

タイのレッドブルに惚れ込んだ創業経営者のマテシッツ氏は、タイのユーウィッタヤー家からレッドブルのアジア地域外での販売ライセンスを取得し、合弁でレッドブル・マーケティング社を設立。これはちょうどいまから30年前の1984年のことだったようです。

タイとの合弁は、創業経営者が49%でタイ側が51%(・・会社が49%で個人が2%)のようですが、本社はオーストリアで登記しているようなので、タイの法律に従ったわけではなさそうです。

タイ側としてはレッドブルの世界的成功は評価しており、とくにクチを出さないのだとか。タイ側のパートナーはすでに死去して息子が事業承継してますが、とくに問題は起こってないようです。創業経営者のマテシッツ氏のたぐいまれなる手腕に満足しているということでしょう。

ただし、タイ側パートナーの孫が引き起こした事件は、タイでは大きなスキャンダルになってましたが・・・


地元オーストリアにこだわる姿勢

オーストリア企業で世界ブランドといえば、本書でも触れられていますが、日本でも有名なクリスタル製品のスワロフスキーくらいしか思いつきません。

そのオーストリアで、この四半世紀で急成長したのがレッドブル。じつはわたしもレッドブルがオーストリア企業だということには長く気がついてませんでした。オーヅトリアはドイツ語圏ですが、ドイツやスイスと比べると、あまりビジネスという点では話題になることがないからでもあります。

オーストリア企業であるという以外のきわだった特徴はそれだけではありません。

創業経営者がマスコミへの露出を嫌っているだけでなく、非上場に徹し、しかも無借金経営。本体はマーケティングとブランド・マネジメントに特化して、製造部門はもたずに完全に地元メーカーにアウトーソシング。ファブレスというビジネスモデルといってもいいでしょう。

税金の高いオーストリアで納税し、地元で雇用をつくりだし、地域経済を重視する姿勢は、グローバル企業に大成長した現在でもかたくなに変えることはないようです。郷土愛、地域愛が根底にあるのでしょう。

(ドイツ語版のカバーは創業経営者と本社ビル)

マーケティングとブランド・マネジメントに特化していても、広告宣伝は代理店まかせにせず、事業としてのスポーツビジネスとスポーツマーケティングをつうじてシナジー効果を狙うという姿勢。

そもそも創業経営者自身が大のモータースポーツ好きであるだけでなく、スポーツのもつ特性がエナジードリンクの商品特性にフィットし、ブランド育成に多大な効果をもっていることをマーケッターとして熟知しているからなのでしょう。

マーケティングとブランド・マネジメントに特化するという姿勢は、スイスのグローバル企業ネスレにも共通するものがありますね。

そもそもマーケティング(marketing)もブランドマネジメントも英語圏のアメリカで発展したものですが、欧州では伝統的に重視されてきたブランドを中核に置くという姿勢とあいまって、レッドブルというブランドとして花開いたのでありましょう。

あらたにブランドを立ち上げて成長させるのは、そう簡単なことではありません。しかし、レッドブルのケースにおいては、元ネタも発想も自分で考え出したものではありませんし、先進国や地元から生まれたものでもありません

本書では強調されてませんが、わたしとしては、レッドブルはタイで生まれたスタミナドリンクであり、それを世界ブランドに育て上げたのがオーストリア企業であることに、日本企業はもっと注目してほしいと思います。

それはローカル商品をグローバル化し、しかも新規進出先ではローカルマーケットにあわせてローカライズするという循環。そのエッセンスには学ぶべきものが多いといっていいと思います。





目 次

序章 レッドブルとは何者か?
PARTⅠ  52億本への道

第1章 市場を創造する
 きっかけは日本のリポビタンD
 タイのエナジードリンクにほれ込む
 オーストリアに本拠を置く
 同級生と斬新なCMをつくる
 ハンガリーから世界への第一歩
 ライバルたちはまだ甘く見ていた
第2章 世界市場を制圧せよ
 レッドブル、アメリカへ
 世界の頂上に行く道
 レッドブル・コーラの失敗
 ミスが許されるのは一度だけ 
 まるで宗教?
第3章 「販売禁止」を逆手に取る
 飲みすぎると死亡する?
 砂糖たっぷりのエスプレッソ
 医者は警告する
第4章 男と男の握手に価値がある 
 契約書はいらない
 欧州生産にこだわる
 頭の痛いデポジット制に秘策で対応
 商標が命
第5章 銀行にだけは借金するな
 姿を現さない株主
 飲料ではなくエキサイティングな体験を売る
 儲けた金だけを投資する
第6章 すべてがマーケティングだ
 オリジナルだからこそ価値がある
 ポストモダンの"聖水"
 代理店に丸投げせずイベントを自社開催
第7章スポーツの一部になる
 アスリートは「家族」
 「新しいスポーツ」を育成する
 黄金の三分率
 スポーツを一方的に利用しない/ドーピング医師を雇う
PART II スポーツ・マーケティング

第8章 ファンに抵抗されてもサッカークラブを買収
 「伝統を破壊した」と抗議される
 監督のクビ切り問題
 トレーニング施設には金をかける
 ニューヨーク・レッドブルズ
 ドイツ・ブンデスリーガ参戦
 ブラジルとガーナに育成施設をつくる
第9章  F1王者になる
 ジャガーを飲み込んだブル
 スクーデリア・トロ・ロッソ
 ベッテルの快進撃
 ミスコンテスト?
 オーストリアのサーキットの復活
 ナスカー参入の失敗
 ラリーとオートバイにも進出
 若手ドライバーの育成
第10章 氷の上のブル
 レッドブル・ザルツブルグ
 ヨーロッパ制覇へ
 NHLチーム買収の失敗
第11章 メディア嫌いによるメディアへの進出
 取材対応の"アメとムチ"
 レッドブルの先進的なデジタルTV
 ローカル放送局の買収
 遅れに遅れたTV放送のリニューアル
 レッドブルの出版社
 オーストリアの生活雑誌
第12章 グルメ・ブランドの創設
 由緒正しい飲み物
 最高級フィンガーフード
 アフリカンテイストなカフェ
PART III  レッドブル帝国の正体

第13章 叩き上げの億万長者
 計算しづらい資産
 レッドブルグループの構成
第14章 オーストリアに喜んで税金を払う
 豊かな自然の中にある本社
 イベント開催スペースも自前
 飛行機のコレクション
 レッドブル・エアレース
 絶好調のF1
 世界各地でサッカーに参入
 メディア企業の買収
 自社内に広告代理店をつくる
 アフロカフェ
第15章 レッドブルのもう一つの顔
 マテシッツ個人のビジネス
 レストランの運営
 不動産ビジネス
 フェルテンドルフの飛行場
 建設会社のブル・バウ
 地域暖房ネットワーク
 すべてが成功プロジェクトではない
PART IV 創業者の横顔

第16章 創業者マテシッツの華麗なる人脈
 F1貴族の仲間たち
 サッカー界の「皇帝」
 政治家のつながり
 レッドブルを彩るアーティスト
 グルメ仲間たち
 マテシッツの右腕は誰?
第17章 ブルと呼ばれる男
 華やかなウィーンの街で学ぶ
 ブルの息子
 型破りだけど保守的な性格
 空飛ぶスポーツマン
 女性関係は派手だが…
 慈善家としての一面
終章 ブルのこれから


<関連サイト>

レッドブル・ジャパン 公式サイト

wikipedia の項目「レッドブル」には、「世界商品」としての開発事情についての解説がある

オーストリアに学ぶ「地方・中小企業主義」-「都会で大企業勤務」以外に広がる選択肢!(東洋経済新報オンライン、2014年12月8日)


<ブログ内関連記事>

「レッドブル」-タイが本家本元の 「ローカル製品」 が 「グローバル製品」 として生まれ変わった!
・・現在でもタイ側は51%を所有するパートナー

タイのあれこれ (26) タイ好きなら絶対に必携のサブカル写真集 Very Thai
・・タイ人が好きなスタミナドリンクという飲料カテゴリーについても一章とりあげられている。ちなみに、朝鮮人参のふるさとである韓国でもスタミナドリンク人気は高いのだが、本書には韓国の事情がまったく出てこないのが不思議


ローカリゼーション

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・「ローカリゼーション」にかんする必読書

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として・・日本語と音楽の関係について

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!

ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の「日本語吹き替え版」は「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)!

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


スポーツ

「近代スポーツ」からみた英国と英連邦-スポーツを広い文脈のなかで捉えてみよう!


オーストリア

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)-ドラッカー自身による「メイキング・オブ・知の巨人ドラッカー」
・・オーストリア出身でアメリカに移民して成功した有名人はドラッカーとアーノルド・シュワルツネガーの二人

書評 『向う岸からの世界史-一つの四八年革命史論-』(良知力、ちくま学芸文庫、1993 単行本初版 1978)-「社会史」研究における記念碑的名著
・・「ウィーンはゲルマン民族とスラヴ民族の接点という、地政学的な特徴をもった都市なのである。ゲルマン民族を頂点にいただきながら、ゲルマン民族とスラヴ民族が中層から下層をなす重層構造をもった都市である。これは現在のオーストリアでも変わらない」

(2014年8月21日 情報追加)




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2014年6月2日月曜日

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


グローバル企業ネスレ日本法人で、初の生え抜きCEOとなった著者の第二弾。

前著 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013) がみずからの死生観=人生観を語った、かなりパーソナルな内容であったのに対し、本書は実際のネスレ日本のビジネスと経営に即して持論を展開した本格的なビジネス書です。かなり内容豊富で、しかも濃いといっていいでしょう。

帯には、「思いついたことの98パーセントは実行せよ!」などのキャッチコピーが書かれていますが、それだけなら並のビジネス書と同じで、あえて読むまでのこともないという気にさせられます。

本書が類書と異なるのは、きわめて日本的な教育を受けてきた著者であるにもかかわらず、グローバル企業のなかでもまれることによって培われた、実践をつうじた本質的な思考が展開されていることにあります。

現役の経営者が書いた経営書だけに、テーマは経営全般にわたりますが、ネスレというグローバル企業が、マーケティングとブランド・マネジメントをビジネスの根幹に据えた会社であり、すべてはそこに集約されることを説得力ある筆致で描いていることにあるでしょう。

著者は、ネスレはブランドを以下の三段階でマネジメントしていると書いています。

① コーポレート・ブランド(=企業ブランド)
② カテゴリー・ブランド
③ プロダクト・ブランド(=製品ブランド)

カテゴリーブランドとは、ネスカフェやキットカットといった製品群ごとに束ねたものであり、その傘下に製品ブランドが含まれるわけですが、BEM( Business Executive Manager)として、ブランド全般について損益責任をもって経営する体制になっているとのこと。

このため、ネスカフェやキットカットは消費者に知られていても、ネスレという企業ブランドと結びついていないといった問題もあるようです。しかし、著者が言うように、直接カネを生み出すのはカテゴリーブランドと製品ブランドであって、企業ブランド強化にチカラを入れすぎても意味はないのです。日本企業のブランドマネジメントに対する痛烈な批判rと受け取るべきでしょう。

このように著者の思考は合理的でロジカルですが、次のローカリゼーションにかんする発言もまた、かなり本質をついたものです。

日本人は、これまで受けてきた教育のせいで、グローバルな視点を日本風にローカライズ(地域化)する能力に欠けている。本質的な部分を論理的に把握できないため、日本独自の戦略やアイデアが生まれてこないのだ。(P.58)

著者は、この点を本書全体をつかって具体的に述べた本だと言ってもいいかもしれません。

日本人として、日本市場というローカルマーケットを熟知したうえで、グローバル企業のロジックをローカルで展開するとはどういうことかグローバル全体のなかでローカルマーケットを経営するとはどういうことかを考え抜いているからこそ生まれてきた考えでしょう。

著者の立ち位置は、グローバル展開を考えている日本企業の大半とは真逆のものですが、海外進出先という海外のローカルマーケットで、いかに日本本社のロジックを普遍的なレベルまで高めたうえで、ローカルに即して経営していくかについてヒントを得ることができるかもしれません。

もしかしたら、日本企業に比べて、ネスレは特殊な感覚を持っているかもしれない。クライシスが起こって当たり前というなかでマーケットヘッドに求められるのは、クライシス(危機)をいかにしてオポチュニティ(機会)に変えるかということになる。・・(中略)・・ つまり「Crisis is Opportunity.」なのだ。このことは、スイス本社から常に言われてきた。私が入社した30年前から聞かされていたので、ネスレとして筋金入りのカルチャーなのである。(P.254)

国内市場が小さくて、たとえ危険な地域であろうと海外市場を開拓していかなければ生き残れないというスイスの制約条件から生まれたネスレもまた、濃厚なスイス的を持ち合わせているということでしょう。

一方で、ネスレ日本法人は、日本の国内市場でしかビジネスを行うことは許されていないという絶対的な「制約条件」があるからこそ、縮小する市場のなかでもビジネスチャンスを発見し、徹底的にマーケットを深掘りし、成功を収めてきたわけです。

つねに変化しつづける市場環境、消費者意識、そして従業員意識。みずからの成功体験すら、環境変化のなかでは否定していかなくては、絶対的な「制約条件」のもとでは生き残っていけないのです。

経営トップの仕事とは、ゲームのルールを変えることにある、変革こそが経営者のやりがいであるといいう著者の姿勢はまさにそのとおりです。そうでなければ、本社にとってもローカルの経営トップ交代の意味はありません。

経営者あるいは経営者になりたい人、欧州系グローバル企業の日本法人とはどういうものか知りたい人だけでなく、ネスレという欧州系のグローバル会社について、日本法人という「窓」から覗いてみることのできる内容にもなっています。

「Think Globally, Act Locally」(グローバルに思考し、ローカルに行動する)を地でいった、実践と思考に基づいた本。読み応えのある本書は、ぜひ読んでいただきたいと思います。





目 次

序章 史上初、生え抜き日本人社長に就任
 ●グローバル人材の条件は「祖国を捨てること」
 ●史上初の生え抜き日本人社長に就任
 ●副社長就任も異例の人事だった
 ●変革こそが、経営者のやりがい
第1章 マーケティングは経営そのものである-戦後モデルの終焉で求められるプロの経営-
 ●日本以上に日本的経営の外資系企業
 ●過去の成功体験より未来を語る
 ●国家と企業が抱える問題の共通点
 ●旧来の成長モデルに縛られてはいけない
 ●脱却のカギは「プロの経営者」を育てること
 ●マーケティングは経営そのものである
 ●プロの経営者に必要なリーダーシップとは
 ●ゲームのルールを変えて、道を拓く
 ●ニッポン株式会社のルールを変えるのは人事から
 ●基本戦略をローカライズしているか
第2章 売れない商品を売ってこそ一人前-現場が教えてくれたイノベーションの真髄-
 ●42歳で他界した父と祖父
 ●嫌なことは、自分で変えなさい 試練を迎えた大学受験
 ●実力で評価される企業を選択
 ●外資系企業ネスレは日本的経営だった
 ●売れない商品を売ってこそ一人前
 ●思いついたことの98パーセントは実行する
 ●試験合格で得た本社への切符
第3章 撤退という決断を下すとき-ネスレに受け継がれる、他社を思いやる経営-
 ●過酷なアメリカ生活のスタート
 ●「Silent is Stupid」
 ●日本に粉ミルクを導入せよ
 ●撤退という決断は辛くても、正しかった
第4章 批評の前に自分のアイデアを実行せよ-「キットカット」で実践した「Think Globally, Act Locally.」-
 ●日本人にとってのキットカット・ブレイクとは何か
 ●九州支店の1本の電話から始まった
 ●全国の受験生の不安に寄り添うプロジェクト
 ●受験生のお守りとなった「キットカット」
 ●「キットカット」は主役にならなくていい
 ●ブランドは広告ではなくニュースで作られる
 ●「ありがとう」と言ってもらえるブランドを目指す
 ●批評する前にまずは実行せよ
第5章 ゲームのルールを変えろ-変革を起こすリーダーに必要なこと-
 ●人口減少のなかでも必ずチャンスはある
 ●システムで飲ませる新モデルを構築
 ●「価値共創」で揺るぎないモデルへ
 ●直属で招集した50人のプロジェクトメンバー
 ●強力なトップダウンでゲームのルールを変える
 ●変革には最悪のケースを想定した準備が必要
 ●あらゆる最終責任はリーダーが負う
 ●間接部門もゲームのルールを変えられる
第6章 採用・育成・評価で会社は決まる-ストーリーを共有、ただしコンセンサスは必要ない-
 ●イノベーションを起こす人材を集めるために
 ●究極のトレーニングによる人材育成
 ●社員の能力は人事次第で開花する
 ●労働組合もコンサルタントになる
 ●残業が減らないネックは管理職にあった
 ●変革にコンセンサスは必要ない
第7章 危機のあるところに機会がある-義務を糧に遂げる成長-
 ●変わりつつあるネスレのブランド戦略
 ●マーケティング発想のブランド戦略へ
 ●東日本大震災で発揮されたリスクマネジメント
 ●世界規模の危機に学んだBCP
 ●危機のあるところに機会がある
 ●これからの企業が負うべき責任と義務
 ●利益を上げることに堂々と胸を張れ
終章 本物のリーダーはリーダーをつくる
 ●仕組みで育てるリーダーシップ
 ●次世代リーダーへの期待
あとがき


著者プロフィール  
高岡浩三(たかおか・こうぞう)ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO。1983年、神戸大学経営学部卒。同年、ネスレ日本株式会社入社(営業本部東京支店)。各種ブランドマネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリー株式会社マーケティング本部長として「キットカット」受験生応援キャンペーンを成功させる。2005年、ネスレコンフェクショナリー株式会社代表取締役社長に就任。2010年、ネスレ日本株式会社代表取締役副社長飲料事業本部長として新しいネスカフェ・ビジネスモデルを提案・構築。利益率の低い日本の食品業界において、新しいビジネスモデルを追求しながら超高収益企業の土台をつくる。同年11月、ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEOに就任。 現在、経済同友会幹事、医療・福祉ビジネス委員会副委員長。日本インスタントコーヒー協会会長。共著書に、『逆算力』(日経BP社)がある。






<関連サイト>

【ネスレ日本】 M&Aに頼らず貫く収益成長と利益率改善 強みへの集中戦略 (ダイヤモンドオンライン 、2014年4月4日)
・・グローバル企業の日本ローカル拠点は、日本国外でのビジネスは御法度。その制約条件下での成長は称賛に値する

ネスレを世界一にした「連邦経営」 100年間の計略 (日経産業新聞、2014年8月5日



<ブログ内関連記事>

書評 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013)-人生は有限だと感じることは究極の逆算思考である


ロジカル経営のための基礎

書評 『無印良品の「あれ」は決して安くないのになぜ飛ぶように売れるのか?』(江上隆夫、SBクリエイティブ、2014)-徹底的に「コンセプト」にこだわることがビジネス成功のカギ
・・ロジカル経営のために必要かことはコンセプト抽出作業と共通点がある


スイスとグローバル企業

「小国」スイスは「小国」日本のモデルとなりうるか?-スイスについて考えるために

書評  『ブランド王国スイスの秘密』(磯山友幸、日経BP社、2006)
・・ビジネスパーソンにとっては「ブランド王国スイス」という捉え方が面白い

書評 『民間防衛-あらゆる危険から身をまもる-』(スイス政府編、原書房編集部訳、原書房、1970、新装版1995、新装版2003)
・・スイスといえば、いまでは「国民皆兵」は日本人の常識になったことと思う。スイス人の家庭には、一家に一冊備え付けなのが、この本と銃器一式!


コーポレートブランドと製品ブランド(プロダクトブランド)

「正露丸」は超ロングセラーの製品ブランドだ!
・・コーポレートブランドと製品ブランドが異なる例

製品ブランドの転売-ヴィックス・ヴェポラップの持ち主は変わり続ける
・・・・コーポレートブランドと製品ブランドが異なる例正露丸の場合は、ブランドの担い手としての所有者に変更はないが、ヴェポラッブは二転三転。製品ブランドの生命力は会社の生命よりも長い(!)ということがある

ゼスプリ(Zespri)というニュージーランドのキウイフルーツの統一ブランド-「ブランド連想」について

大学ブランドというプライベート・ブランド(PB)商品について-玉川学園の「抹茶アイス」は新製品!

「泉屋のクッキー」-老舗(ブランド)には歴史(ヒストリー)=物語(ストーリー)がある

「ポルシェのトラクター」 を見たことがありますか?

「ブルータス、お前もか!」-立派な「クレド」もきちんと実践されなければ「ブランド毀損」(きそん)につながる






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2014年5月8日木曜日

ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の「日本語吹き替え版」は「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)!


ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の日本語吹き替え版は、「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)ともいうべき存在です!

じつはこの連休の最初に、ディズニーの新作アニメ映画『アナと雪の女王』、「日本語吹き替え版」で見てきました。この「吹き替え」ということが、映像作品のローカリゼーション、つまりローカル市場における「現地化」なのです。

ハリウッド映画の日本語吹き替え版なんて見るのは「初体験」ですが、日本語吹き替え版を劇場で見たのは大正解でした。

ミッキーマウスやドナルドダックはもちろんのこと、『ピノキオの大冒険』『くまのプーさん』『ダンボ』『バンビ』『ピータパン』『101匹わんちゃん大行進』『白雪姫』『シンデレラ』などなど、ディズニーのアニメーションで育った世代なので、逆にディズニーというと子ども向けという先入観や固定観念ができあがってしまっていたのかもしれません。

しかし、考えてみれば、これらの作品はすべて日本語吹き替え版で見てきたのであり、子どもの頃はディズニーとかアメリカとかはいっさい気にすることなく見ていたわけですね。

しかもミュージカルですから、歌詞が聞き取れないのは致命的日本語吹き替え版はその点はまったく心配はいりません。わたしは、映画が始まってから字幕がでてこないので、ちょっと拍子抜けしてしまいましたが(笑)

姉のエルサの声を担当した松たか子の「ありのままで」もいいし、妹のアナの声を担当した神田沙也加の「生まれてはじめて」もいいですね~! 神田沙也加の声がアイドル時代の松田聖子そっくり!

日本のアニメも世界最高水準ですが、 さすが本家本元のディズニー、底力が違うなあ、と。ディズニーの伝統とピクサーの技術が合体した 「3Dコンピュータアニメーション・ミュージカル・ファンタジー映画」です。

なんといっても映像が美しい!圧倒的な美しさなのです。


各国語で歌われる「ありのままで」を合成したプロモーションビデオ)



日本語「吹き替え版」という「ローカリゼーション」(現地化)

『アナと雪の女王』は、ディズニー初のダブル・ヒロイン作品。『白雪姫』『シンデレラ』以来、ヒロインは一人という殻を破ったのも今回の特色のようです。しかもアンデルセンの原作そのものではなく、現代風の改作でもあるわけです。

オリジナルのタイトルは「凍りついた」という意味の『Frozen』(フローズン)。アンデルセンの原作が「雪の女王」なので、どうしても主人公は「雪の女王」と思いがちですが、かならずしもそうではありません。雪の女王のエルサに妹のアナを加えたのはディズニーによる改作のようです。



その意味では、日本語版のタイトルを『アナと雪の女王』としたのは大正解だといっていいでしょう。アナもまた主人公の一人であることを明確にしているからです。姉妹でキャラの違いがよく表現されてますので、姉のエルサと妹アナのどちらか、いや両方ともに感情移入することが可能になると思います。

日本語版では、姉の「雪の女王」エルサに松たか子を起用、妹のアナ王女に神田沙也加を採用。このキャスティングもまた大成功といえます。日本人なら、ちいさな子どもは別として、松たか子や神田沙也加がどういう存在であるかは、多かれ少なかれ知っているからです。

つまり、松たか子が歌舞伎役者の松本幸四郎の娘で、どちらかというと可愛らしい声でしゃべる女優であり、神田沙也加が歌手の松田聖子の娘であること。それぞれディズニーのこの作品においてもきわめて重要な要素である「ファミリー」(家族)というストーリー(物語)をもっているからです。

「生まれてはじめて」(For the first time in forever)という曲は、いかにもディズニーらしいバラード曲。古き良きディズニーの伝統を継承した、ファンンタジーにふさわしい、安心してなんども口ずさめる歌。これを一人娘だが、母親からみれば妹のような存在の沙也加が歌うのはふさわしいといえます。

これに対して、「ありのままで」(Let It Go)は、かなり現代的な内容の曲「自分らしく生きる」という自己肯定の内容は、女性だけに限らず現代人の生き方を示したもので、ディズニーのあたらしい面をみせてくれます。この曲を歌うのが、どちらかというと可愛い印象の松たか子が歌うからこそ、そのギャップが面白いのですね。姉の「雪の女王」の精神的葛藤をうまく表現できているので。


日本語版のポスターにみる「国民性」の違い

日本語版のポスターが醜い(!?)と表現している人が海外にはいるようですが、日本人的感覚とはちょっと違うものを感じますね。冒頭に掲載した者が日本版のポスターです。

趣味の違いといってしまえばそのとおりですが、日本人としてはとくに違和感は感じません。もちろん日本人でも受け取り方に違いはあるでしょう。

英語版のポスターは何種類もあります。「Frozen poster」で Google 検索してみるといいでしょう。
そのなかから2点ほど掲載しておきます。


オリジナルの英語版ポスターは、なんだか人形劇やパペットアニメーションのような印象をわたしはもってしまします。どうもリカちゃん人形というか、バービードール(?)みたい、というのが日本人の感覚ではないでしょうか。

たしかに映画のなかではひじょうになめらかでスムーズな動きがある一方、意図的なものがあるのでしょうがカクカクとした人工的な動きがあって、後者は人形劇のような動作に見えなくもありません。奥行きのある立体的な(・・つまり3Dも前提)アニメーションだからでもありますが。


とはいえ、よりナチュラルなものを好ましいとするのが日本人の感覚だといっても言い過ぎではないでしょう。女性のメイクアップでもナチュラルメイクを好むのが日本女性の傾向であることは一般に知られていることです。

このように、「国民性」というか「民族性」の違いというか、言語だけにも還元できない違いがあるからこそ、ローカリゼーション(現地化)が重要なのです。「グローバル化」の時代だからといっても、ローカル市場ではあくまでもローカル市場。ローカル市場ではローカルのあり方に徹しなければけっして売れることはありません。

日本語吹き替え版で見ていると、なんだか登場人物も日本人みたいな感じがしてくるのが不思議です。とくに妹のアナはブルーアイではありますが、なんとなくアジア人っぽい感じもします。日本でいう、いわゆる「アニメ顔」っぽい。

英語オリジナル版をYouTubeに投稿されているビデオクリップで見ると、いかにもアメリカっぽいなあという印象をもちます。耳から入ってくる音声によって、画像の視覚イメージも影響を受けるのかもしれません。

そういえば、子どもの頃は吹き替え版のディズニーがアメリカのものだとは知らなかったなあ、と思い出します。いまでも、ちいさな子どもは、そんなものでしょう。

ディズニーのような全世界にむけてコンテンツを製作し、流通させてきた「グローバル企業」においてはは、ローカリゼーションの歴史は長く、ノウハウもそうとう蓄積されているといっていいいでしょう。

しかしそんなディズニーにとっても今回の作品は、「愛」という普遍的なテーマを、設定はファンタジーでありながら現代風にアレンジした世界を表現しており、新境地を拓いたといえるかもしれません。


英語版と日本語版は違う作品として鑑賞も可能

英語版は劇場で見たわけではありませんが、YouTube でディズニーが公開しているビデオクリップを視聴した限りでは、オリジナルの英語版と日本語吹き替え版は別の作品として鑑賞することも可能ではないかと思います。

基本的に英語版のセリフはかなり忠実に、しかも登場人物の動きにあわせた適切なシラブルの日本語になっていますが、そうはいっても英語と日本語とではニュアンスの違いがないわけではありません。

松たか子が歌う挿入歌の「ありのままで」は「Let It Go」の日本語版ですが、英語の "let it go" と「ありのまま」は意味としてはイコールでありません

英語の "let it go" は、内側から外に向けて「放出」するというニュアンスが強いのに対して、日本語の「ありのままで」は自己肯定であり現状肯定というニュアンスが強い。あえて英語でいえば、むしろ "let it be" に近いのですね。日本女性にとっては後者の「ありのままで」のほうが、メッセージ性が強いと判断したのかもしれません。

じつは、英語の "let it go" という表現は、この作品のカギとなる表現なのです。英語の "it" が指しているのは、「自分の気持ち」もその対象ですが、「魔法」もまた"let it go"するものだからです。姉の雪の女王エルサにとって、「魔法を解き放つ」ことと「自分を解き放って自分になる」ことと同じなのです。

Disney's Frozen "Party Is Over" Clip (Walt Disney Animation Studios)に、エルサの魔法が解放されてしまうシーンがあるので参考まで。なお、sorcery とは魔術のことです。悪しき目的に使う黒魔術のことです。いわゆるマジック(magic) とは意味合いが異なります。

そう考えると、日本語版では「ありのままで」という歌詞にしたのは、英語版とは別の作品として楽しんだらいいということもであるわけです。ニュアンスの違いは意外と大きいのです。

YouTube で英語版のさわりを視聴してみると、さすが基本的に「子ども向け」でもあるので、スラングもなく、クリアできれいな口語体の標準アメリカ英語。むずかしいコトバもいっさいないので、これなら生きた英語の教材としても最高でしょう! 

英語版と日本語版はどちらも甲乙つけがたいですが、わたしは神田沙也加によるアナの歌声が好きです。

まだ見てない人は、だまされたと思って絶対に見ることを薦めますよ! まずは「日本語吹き替え版」で!








PS 日本語版でアナの声を担当した神田沙也加さんが亡くなった

昨日(2021年12月19日)のことだが、神田沙也加さんが亡くなったというニュースを聞いて大きなショックを受けた。自分の娘のような女性がホテルの上層階から転落死。享年35歳。おそらく自殺であろう。ことばにならない思いで残念でならない。気の毒で仕方ない。「生まれてはじめて」(For the first time in forever)を聴きながら追悼したい。ご冥福を祈ります。合掌 (2021年12月20日 記す)



<関連サイト>

ディズニー公式サイト (日本語)

『アナと雪の女王』公式サイト (日本語)

『Let It Go』が『ありのままで』と訳された理由(The Page、2014年5月3日)
・・「吹き替えの監修を行っているのが、ディズニー・キャラクター・ヴォイス・インターナショナル(DCVI)だ。DCVIは1991年に設立され、これまでにも『美女と野獣』、『アラジン』、『ライオン・キング』といった人気映画のローカリゼーションをサポートしている。世界中の17カ国にオフィスを持ち、55か国語もの吹き替えを行っており、今回の『Let It Go』の大ヒットの影の立役者とも言える」

Disney Character Voices International - DisneyWiki

大人気の『アナ雪』、怒涛の多面展開へ 来春、東京ディズニーランドもアナ雪に染まる (東洋経済オンライン、2014年8月23日)



<ビデオクリップ集>

『アナと雪の女王』予告編 (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)
・・この「予告編」の段階では、まだ歌はオリジナルの英語版のまま

Disney's Frozen "First Time in Forever" Trailer (英語オリジナル版トレーラー 2013年10月)
・・日本語版との微妙な違いとは? さすがに子ども向けでもあるので、英語はスラングもなく明快で聞き取りやすい

Disney's Frozen Holiday Trailer  (英語オリジナル版トレーラー 2013年12月) ・・こちらは Let It Go バージョンのトレーラー

Disney's Frozen Official Trailer  (英語オリジナル版トレーラー 2013年9月)
・・これがオフィシャル・トレーラー

『アナと雪の女王』「Let It Go」(25ヵ国語Ver.)
・・世界中でもっとも美しいという賞賛の声のあがる松たか子が歌うエルサ(1分13秒前後)。日本語の母音の響きが美しい

一緒に歌おう♪『アナと雪の女王』「Let It Go<歌詞付Ver.>」 松たか子 (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)

一緒に歌おう♪『アナと雪の女王』「Let It Go<歌詞付Ver.>」 イディ・メンゼル(オリジナル英語版)   (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)

『アナと雪の女王』♪生まれてはじめて/アナ(神田沙也加) (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)
・・神田沙也加の声は母親の松田聖子そっくり!

『アナと雪の女王』♪生まれてはじめて / アナ(神田沙也加)&エルサ(松たか子) (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)

『アナと雪の女王』クリップ映像:チョコレート! (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)

ディズニーが YouTube で公開しているこのクリップ
Disney's Frozen - "Elsa's Palace" Extended Scene (Walt Disney Animation Studios)
(アナが氷の宮殿でエルサと対面するシーン)


<歌詞の比較>


「ありのままで」(Let it go)
Idina Menzel - Let It Go Lyrics

The snow glows white on the mountain tonight
Not a footprint to be seen.
A kingdom of isolation,
and it looks like I'm the Queen
The wind is howling like this swirling storm inside
Couldn't keep it in;
Heaven knows I've tried
Don't let them in,
don't let them see
Be the good girl you always have to be
Conceal, don't feel,
don't let them know
Well now they know
Let it go, let it go
Can't hold it back anymore
Let it go, let it go
Turn away and slam the door
I don't care
what they're going to say
Let the storm rage on.
The cold never bothered me anyway
It's funny how some distance
Makes everything seem small
And the fears that once controlled me
Can't get to me at all
It's time to see what I can do
To test the limits and break through
No right, no wrong, no rules for me,
I'm free!
Let it go, let it go
I am one with the wind and sky
Let it go, let it go
You'll never see me cry
Here I stand
And here I'll stay
Let the storm rage on
My power flurries through the air into the ground
My soul is spiraling in frozen fractals all around
And one thought crystallizes like an icy blast
I'm never going back, the past is in the past
Let it go, let it go
And I'll rise like the break of dawn
Let it go, let it go
That perfect girl is gone
Here I stand
In the light of day
Let the storm rage on
The cold never bothered me anyway!



「ありのままで」

降り始めた雪は 足跡消して
真っ白な世界に一人の私
風が心にささやくの
このままじゃだめなんだと
戸惑い傷つき
誰にも打ち明けずに
悩んでたそれももう
やめよう
ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの
何も恐くない
風よ吹け
少しも寒くないわ
悩んでたことが嘘みたいね
だってもう自由よ
何でも出来る
どこまでやれるか
自分を試したいの
そうよ変わるのよ 私
ありのままで 空へ風に乗って
ありのままで 飛び出してみるよ
二度と涙は 流さないわ
冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる思い出描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい
もう決めたの
これでいいの
自分を好きになって
これでいいの
自分を信じて
光浴びながら
歩き出そう
少しも寒くないわ




<ブログ内関連記事>

ローカリゼーションは海外市場攻略の要(かなめ)

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・「ローカリゼーション」にかんする必読書

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!
・・日本マクドナルド創業者の藤田田は原音に近い「マクダーノー」では日本では成功しないと確信していた

「MOOMIN!ムーミン展-トーベ・ヤンソン生誕100周年記念-」(松屋銀座)にいってきた(2014年4月23日)
・・原作の hattifnattarna を「ニョロニョロ」という名前に変えなかったなら、日本製アニメ 『ムーミン』の日本での大成功はあり得なかっただろう。スナフキンも原語のスウェーデン語とはイコールではない!

小倉千加子の 『松田聖子論』 の文庫版に「増補版」がでた-松田聖子が30年以上走り続けることのできる秘密はどこにあるのか?
・・アナの日本語版吹き替えを担当した神田沙也加は松田聖子の娘


あえてローカリゼーションしないという方法

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として・・日本語と音楽の関係について


ミュージカル映画

『中島みゆき 「夜会VOL.17 2/2」 劇場版』 (2011年11月)をイオンシネマでみてきた(11月9日)-これは日本語による魂のセラピーなのだ

ミュージカル映画 『レ・ミゼラブル』を観てきた(2013年2月9日)-ミュージカル映画は映画館で観るに限る!
・・これは吹き替え版ではなく英語。原作はフランス語だがミュージカル版は英語。

なぜいま2013年4月というこの時期に 『オズの魔法使い』 が話題になるのか?
・・ハリウッドのミュージカル映画の古典。アメリカ人の深層意識に存在する作品

ボリウッド映画 『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(インド、2007)を見てきた  ・・インド映画はみな、ある意味でミュージカル。しかも、歌って踊るシーンに観客も参加する「体験型」だ


ディズニーの『アナ雪』の原作アンデルセン童話

「ふなばしアンデルセン公園」にはじめて行ってみた(2014年4月6日)-デンマーク王国オーデンセ市と千葉県船橋市が姉妹都市となって25年
・・原作の「雪の女王」はアンデルセンの童話作品


メガヒット映画

映画 『アバター』(AVATAR)は、技術面のアカデミー賞3部門受賞だけでいいのだろうか?
・・2010年日本公開の洋画では 『アバター』が興行収入100億円を超えたのが50日目であるのに対し、『アナと雪の女王』は37日目で達成。アメリカを除けば日本が全世界で一位の興行収入、公開54日でついに『アバター』を超えた。動員1,000万人超えも達成

(2014年8月29日 情報追加)


PS 『アナ雪』のDVDセールスが200万枚突破! 

2014年8月18日付のオリコン週間映像ランキングで累計202万5千枚を記録。売り上げ200万枚突破は2002年の『千と千尋の神隠し』についで歴代2位だという。ランキング登場4週目での200万枚突破は史上最速とのこと。(2014年8月13日 記す)。




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2011年8月9日火曜日

『グローバル仕事術-ニッポン式ビジネスを変える-』 (山本 昇、明治書院、2008) で知る、グローバル企業においての「ボス」とのつきあい方


グローバル企業で働くということは「ボス」との一対一の契約関係に入って組織のなかで生き抜くことだ

 本書は、典型的な日本の大企業で働いた後、英国でグローバル企業を体験、その後は現地でコンサルティング会社を立ち上げて、通算20年以上英国で働いている著者による、「グローバル企業での働き方」のキモを紹介した本です。

 タイトルには「グローバル」企業とタイトルにありますが、正確にいえば著者が体験してきた「欧米系グローバル」企業のことでしょう。ですが、あえて「欧米系」と冠をつけることもないと思います。

 というのは、デファクトで世界ルールとなっているのは欧米流だからです。これはアジアでも同様。中国人もインド人も、みなこの「グローバル」の作法にしたがって仕事をしています。

 欧米の植民地になった経験をもたなかったのは日本とタイだけですが、そのタイでも企業経営は欧米流のルールに基づいて行われていることは、わたし自身が体験したことです。

 日本企業だといっても、日本の外で事業展開する際には、「グローバル企業」として行動することが求められるわけです。かつて評論家の竹村健一がよく言っていた表現ですが「日本の常識は世界の非常識」というものがあります。その意味では、日本企業とグローバル企業を対比させて語るのは、あながち間違いではありません。

 「グローバル企業で働くということは「ボス」との一対一の契約関係に入って、組織のなかで生き抜くことだ」。本書の内容を、このようにひと言で要約してしまって問題ないと思います。これが本書のキモです。

 ただし、「ボス」(boss)の意味が、日本と欧米モデルでは大きく異なります。日本だとボスとの関係は伝統的には親分子分関係で、中小のオーナー企業ではその傾向も多々ありますが、近代組織のなかにおいては、「ボス」は、社内の人事異動でやってきた上司以外の何者でもありません。「組織が個人に優先する」という組織原則が、タテマエのうえでは「あるべき論」として強調されるのが、日本の組織ですね。

 ところが、グローバル企業においては、ボスと部下との関係は、文字通りの契約関係です。人事権を含めて絶大な責任権限をもつボスが、最終的に誰を採用するかどうかを決定するのであり、ボスの側が求めるものと、その下で働くことになるものの要求が合致したときに契約が成立するのです。もちろん棹の際には仕事ができるだけでなく、いわゆるケミストリー(化学)という相性も重要な要素となります。

 ボスと部下との関係は、明文化された契約であり、語の本来の意味における労働契約なのです。

 その意味では、ドライな関係であるというのは確かでしょう。日本でも労働法においては「労働契約」という概念そのものは存在しますが、期限を定めた短期の契約社員以外には、労働契約は通常はあってなきがごとしでしょう。

 日本では、明確な契約関係で労働を提供するのは、取締役か個人事業主の外部コンサルタントなど、労働法の適用を受けない商法上の関係に限定されます。日本でも取締役はその意味では、グローバル企業の社員に近い存在といってよいでしょう。

 もちろん、グローバル企業の社員は労働契約ですから、労働法によって守られた存在です。本書にもあるように解雇には二種類あります。余剰人員削減が目的にリダンダンシー(redundancy)と狭い意味の解雇であるディスミッサル(dismissal)です。前者の場合は、会社都合ですから金銭的にもそれなりの支払義務が生じます。

 グローバル企業の場合は、すべてがこの契約関係にあるので、この前提があってはじめて成果主義が成立することになるのです。これはきわめて重要なことです。契約関係にあるということは、契約上の甲も乙も対等な関係にあるということになります。

 ボスの側が提示するのが「ジョブ・ディスクリプション」(職務内容記述書:Job description)、そしてそのボスの下で働く契約後に部下が提出するのが「ワーク・プラン」(Work plan)。年度のはじめに詳細なすりあわせを行い、それをもとに一年間のパフォーマンスが評価されることになります。

 日産自動車の立て直しを行ったカルロス・ゴーンが、当時しきりに強調していたコミットメント(commitment)ということはそのことなのです。

 本書で強調されているのは、わたしなりに抜粋すれば、「あくまでも自分が中心」、「グローバル企業での組織と個人の関係はサッカーのようなもの」、「ホンネとタテマエの使い分け、柔術は欧米系グローバル企業でも役に立つ」、「コトバの訓練、とくに英語の訓練はきわめて重要」、「原則を尊重して、基本的に何が目的かというファンクションを基本にモノを考え、クリエイティな解決策を見いだすことの重要性」などになりうでしょうか。

 いずれも、著者自身が体験した具体的な事例をもとに語られています。

 日本の企業経営が簡単に変化するとは思えませんが、国内市場が収縮傾向にある一方、円高基調が続く見込みの日本では、今後は海外に活路を見いだすことは必至の情勢といっていいでしょう。

 先にも触れたように、日本企業とて、日本から一歩外にでたらローカルの社員を雇用することになるのです。日本的なやり方が通じないことは、すぐに体験することになります。

 部下の立場よりも、「ボス」の立場でローカル社員と接することになろうかと思いますが、当然のことながら日本流は通用しません

 グローバル企業の運営ルールは、好き嫌いにかかわらず欧米流が基本なのである以上、そのルールをまずはアタマで理解しておくことが重要であることはいうまでもないでしょう。

 ぜひ一読しておきたい基本のビジネス書として、お薦めします。






目 次

はじめに
第1部 グローバル企業に入る
 第1章 グローバルな組織を知る
  採用から着任まで
  グローバルな組織のなりたち
  ジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)
 第2章 グローバル企業の暗黙のルール
  グローバル企業の人間関係
  グローバル企業での「約束」と「契約」
  グローバル企業の行動様式
第2部 グローバル企業で生きる
 第3章 グローバル企業での仕事の基本
  自分自身で考え、行動するために
  専門分野を磨くために
  時間を有効に使うために
 第4章 競争の中で生き残るには
  職場の厳しい現実
  戦いにおけるボスの役割
  サバイバルのための戦略  
第3部 グローバル企業で活躍する
 第5章 グローバル企業でのキャリアの積み方
  キャリアアップの目的と方法
  ポジションを移るときの心得
  自己開発と情報収集
 第6章 国際ビジネスの舞台裏
  国際ビジネスと国際交渉
  国際ビジネスの最前線
付録 グローバル企業のルール vs. 日本企業のルール対照表
おわりに


著者プロフィール

山本 昇(やまもと・のぼる)

株式会社オリエンス・コンサルティング代表取締役社長。1948年生まれ。東京大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院修士課程修了。KDD(現KDDI)で、営業、経営調査、需要予測、インドネシアの国営通信企業の長期計画などを担当の後、国際機関インマルサットに入社のため家族とともに渡英。予算、財務計画、衛星調達のグループ・リーダーを務めた後、新設の航空衛星部に移り、世界最初の航空機用の衛星電話とインターネット通信およびTV放送の企画・国際市場開拓に従事。同機関の民営化作業に関わった後に退社。その後、英国において、衛星通信・放送・ナビゲーションのビジネス・コンサルティングのほか、国際企業での経験をもとに国際交渉などについても助言している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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なぜ「経営現地化」が必要か?-欧米の多国籍企業の歴史に学ぶ

書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)

書評 『マイ・ビジネス・ノート』(今北純一、文春文庫、2009)
・・『欧米対決社会のビジネス』(今北純一、新潮社、1988)について言及

書評 『海外ビジネスを変える英文会計-経営の判断力が身につく!-』(木幡 幸弘、インテック・ジャパン監修、エヌ・エヌ・エー、2010)




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2011年6月29日水曜日

なぜ「経営現地化」が必要か?-欧米の多国籍企業の歴史に学ぶ


「最近の若者は海外に行きたがらない」。よく耳にするセリフですね。

たしかにそのとおりです。しかし、これはバブル崩壊の頃から言われていた話。理由は、少子高齢化の影響がストレートにでているためだと思われます。

なんといっても一人っ子が増えているので、親が手元からてばなしたくないというケースが多いことは、新人採用にかかわってたときに何度も経験しました。本人は入社したいと思っても、親の都合で断念する。子どもの側からみても、年老いてゆく親をほっておいて上京するのは、しのびないものがあると思う。

これは海外勤務の話ではありません。国内ですらそうなのです。地方から上京するという話ですらまとまらないことが多い。これは中小企業ではあたりまえの傾向です。

若者じしんも考え方が大きく変化しています。地元で就職して、地元の友人たちとずっとつきあい続けたいという意向は、すでに定着したといっていいでしょう。

何ごともメリットとデメリットは裏腹の関係です。逆もまたしかり。デメリットと思われることも、視点をかえればそれはメリットでもある。

今回の大震災と大津波で東北の太平洋岸は大規模に破壊されましたが、テレビでみていると、老人だけでなく、若者たちもまた「地元に残りたい」と口々にのべています。一言でいえば「地元愛」。これが悪いとは誰に言えましょうか?

海外に出る、出ないも同じことです。あくまでも「個人の選択」の問題ですから、一概に、いい悪いはいえないと思います。

いままでのように、有無をいわせず海外にいかせる、国内移動させるという、日本企業ではあたりまえだった考えと慣習が、あまりにも個人を軽視したものだったというべきでしょう。

わたしは、こういう状況だからこそ、さらなる「現地化」を進めるべきだというのが持論です。日本で事業展開する米国の外資系企業も、そういう考えで海外事業展開しています。


植民地における「二重支配体制」が多国籍企業の経営モデルとなった

米国系企業や欧州系企業では、日本企業とはまったく異なるアプローチをしています。

米国や欧州のグローバル企業の現地法人では、ローカル経営は現地代表(マネージング・ディレクター)に権限委譲して完全にまかせていることがフツーです。

たとえば私がいたタイでも、欧米系のグローバル企業の現地代表はみな30歳台から40歳台ににかけての華人系タイ人で、米国でM.B.A.を取得した者が大半でした。従業員はいうまでもなくローカルのタイ人です。

ただし、現地法人トップの人事権とカネにかんしては、親会社がガッチリ握って離さないというのは、進出先の全世界に共通した経営手法ですね。

英語で経理部のことをコントローラー(Control)というのはそういう意味なのです。現地代表は、本社でいえば課長程度といってもいいでしょう。

じっさいに、日本にある外資系企業でも、本社の都合にほんろうされるケースが非常に多いのは、マイクロソフトやグーグルなどの動きを見ていればあきらかでしょう。

なぜこのような経営形態になったかというと、やはり「植民地」における企業経営の経験が非常に大きいと思われます。

英領インドにおける英国の東インド会社(East India Company)、蘭領東インド(=現在のインドネシア)におけるオランダの東インド会社が典型的な事例です。英国とオランダの双方に本社のある、エネルギーのロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)や、食品のユニリバー(Unilever)のような英蘭系グローバル企業は、その最右翼というべきでしょう。

要は、限られた駐在員ですべてをこなすのは不可能なので、「二重支配体制」を創り上げたのです。

「二重支配体制」とは、日本の近現代史の例でいえば、敗戦後進駐してきたアメリカ占領軍が、日本の官僚制を温存して現地の行政を行わせ、肝心かなめのところはガッチリ軍政当局が押さえていた、という「二重支配体制」を考えてみればいいでしょう。

マッカーサーはこの支配体制を、すでに当時は米国の植民地であったフィリピンで実験済みだったのです。マッカーサーは父親の代からフィリピンには深い利害関係をもっていました。


欧米の多国籍企業で「経営現地化」が進んだもう一つの理由

第二次大戦後は、とくに中南米では現地駐在員が、誘拐やテロの被害に遭遇することが激増し、この対策として現地経営は現地人にまかせていった、という歴史的背景もあります。これは、米国でもドイツなどの欧州企業でも同じことです。

日本人のビジネスマンが、フィリピンや中南米で身代金目的で誘拐される事件が相次いでいた頃、米国や欧州の多国籍企業はすでに、「経営現地化」を完了していたわけなのです。

中南米の事例は、M.B.A.の授業で「国際ビジネス」を受講したとき、元米国海軍士官のエンジニアで、ブラジル駐在体験もある国際ビジネスマン経験をもつ教授が教えてくれましたが、なるほどと思ったものです。

ちなみに、その教授は、朝鮮戦争には海軍士官として出征し、佐世保基地に駐在したという経験もあり、日本人の私には親しく接していただいた。東部出身の、アナポリスの米海軍兵学校(US Naval Academy)出身のエリートでした。

進出先の現地での企業経営は、できるだけ現地出身の人間にまかせていくというのがスジとしてとおるだけでなく、合理的でもあるというべきでしょう。このような形をとれば、やる気で能力ある現地社員のモチベーションをうまく活用することも可能になります。

これは個々の企業によって対応は異なるでしょうが、必ず進めていかねばならない課題といっていいでしょう。

現地に骨を埋めろ、というのはたやすいですが、それを強いることは韓国企業ならいざしらず、現在の日本では難しい。現地滞在はとりあえず数年、というのが限界ではないでしょうか?

それなら、いっそのこと現地出身の人間を採用して日本国内で教育訓練し、現地に送り返しほうが現実的でだといえるかもしれません。

もちろん、経営者自身が現地に骨を埋めるつもりであれば、それはそれでかまいません。


とはいえ、「ビジネスに唯一の正解はない」!

とはいえ、「経営現地化」が最終解決ではないことは、「現地化」に潜む落とし穴-「ついに誕生!中国人総経理」で暗転した現地法人の顛末 という記事にも書かれています。「総経理を中国人にすること」が現地化の目的ではない。責任権限の明確化が不可欠なわけですね。

「ビジネスに唯一の正解はない」、というのはこのケースもふくめて、すべてのケースにあてはまるといってよいでしょう。

どこの国でも似たような事例があります。モデルが正しくても、運用する仕方と運用する主体である人間次第で、結果は異なってくるものなのです。

日本企業はまだまだ海外事業の経験を十分につんだ状態とはいえないでしょう。多国籍展開をすすめる大企業ですらそういう状況ですから、中堅中小企業は、まだまだ試行錯誤を続けていかねばならないのは仕方ありません。

ですが、日本の大企業をそのままなぞるのは、経営資源のすくない中堅中小企業では難しいものもあります。参考にしつつ、独自の取り組みを行うことも必要かもしれません。

場合によっては、官僚的な大企業組織よりも、柔軟かつスピーディに「経営現地化」を進めることができるかもしれません。ただし、優秀なブレインが必要でしょう。



<ブログ内関連記事>

書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)

イエズス会士ヴァリリャーノの布教戦略-異文化への「創造的適応」
・・キリスト教を布教する立場からみた異文化の土地における「経営現地化」の方法論について。そのエッセンスは、現地語に習熟、現地の文化と風習を学んで適応することから始める。現地に大幅な権限委譲を行い、かつ現地人の担当者を育成する。将来、現地の統轄をまかせることのできる現地人責任者を育成する教育を現地で行う。

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)
・・同じく、インバウンドの立場からの「経営現地化」を考えるには示唆の多い本

書評 『村から工場へ-東南アジア女性の近代化経験-』(平井京之介、NTT出版、2011)-タイ北部の工業団地でのフィールドワークの記録が面白い ・・経営する側ではなく、経営される側のローカル従業員たちはどう考えているかがわかる内容

書評 『グローバル・ジハード』(松本光弘、講談社、2008)-対テロリズム実務参考書であり、「ネットワーク組織論」としても読み応えあり

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い!

(2014年5月22日 情報追加)





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(2012年7月3日発売の拙著です)





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