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2016年3月3日木曜日

書評 『ターゲット-ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?-』(ジェローム・シュシャン、高橋書店、2016)-日本との出会い、弓道からの学びをビジネスに活かしてきたフランス人社長が語る


『ターゲット-ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?-』(ジェローム・シュシャン、高橋書店、2016)。書評執筆のためレビュープラスさまより献本していただいて読みましたが、これはじつにいい本です。おすすめです。

ゴディバ、売上2倍、フランス人社長、弓道と、読みたい(!)という気持ちをそそる要素がてんこ盛り。ゴディバはいうまでもなくベルギー生まれの高級チョコレートのブランドです。

ここでいう「売上2倍を5年間で達成した」のはゴディバの日本法人の話ですが、なんと日本市場の売り上げはゴディバ全体の3分の1にあたるのだとか。ということは、なおさら大きな意味をもつ数字だということになりますね。

しかも、売り上げ2倍は目標としてかかげたわけではなく、結果としてそうなったというのです。ターゲット(=お客様)を狙うのではなく、無心になってターゲット(=お客様)に集中し、ターゲットと一体になるのだ、と。ここらへんにフランス人社長が修行してきたという弓道の教えが反映しているようです。「チョコレートを通じて世界にハッピーをお届けする」という理念にもとづいた、売り込まない売り方です。

さらに、日本市場においての競争と協調を両立させることの重要性も強調されています。

 この本は一言で要約してしまえば、「弓道から学んだ知恵でビジネスにあたるフランス人社長が語る」ビジネス書ということになるわけですが、25年以上も修行してきた弓道の格言にあわせて語られる社長スピーチ20本といった感じですので、読みやすく面白い。

(ベルギーの首都ブリュッセルのゴディバ 筆者撮影)

スペインの高級磁器人形ブランドのリヤドロの日本法人社長も歴任していたので、ゴディバの話だけでなくリヤドロでの体験談もでてきます。ゴディバもリヤドロも、ともにヨーロッパの高級ブランドであるということが共通しています。

わたし自身は弓道ではなく合気道をやってましたが、フランス人の視点から語られる弓道の話はひじょうに興味深いものがありますし、日本人にとっては当たり前でも気づいていない長所についても教えてもらえます。

たとえば、見て学ぶことにたけている日本人の特性については、もっと意識的に取り組んでみるといいでしょう。これは「見て学ぶ」観察力を活かす「見取り稽古」という章で語られていることです。
既成概念にとらわれず、虚心坦懐に見て学び、自分でやってみることの重要性が何度も強調されています。

若き日に異文化の日本と出会い、弓道の修行に打ち込んできた経験が、ライフだけでなくワークにもおおいに活きてくるという事例だといっていいでしょう。自分と向き合い、自分を成長させることがビジネスパーソンとしての成長も実現させるのだ、と。

マーケティングとセールスを中心としたビジネス書であり、自己啓発書であり、異文化マネジメントでもある内容。 こういう本を読みたかったのだ、という気持ちにさせてくれる本。ぜひ読むことをおすすめします。






目 次

はじめに-ビジネス成功の秘訣は「正射必中」の考え方に
ジェローム・シュシャン 個人年表
第1章 ヒットを生む法則】
 1. 当たるビジネスの秘訣①・・・当てるのではなく、当たる
 2. 当たるビジネスの秘訣②・・・純粋な心
 3. 的(まと)に気をとられない・・・正射必中
 4. 会社の姿勢・・・正射正中
 5. セールスの基本・・・離れの心
 6. 前の射を忘れる・・・一射一射
 7. 結果を見て、原因を探る・・・矢所(やどころ)を見る
 8. 老舗ビジネスとイノベーション・・・心を開く
 9. 評価するのは外部・・・的(まと)は自分の鏡
 10. 挑戦から何かが生まれる・・・射即人生
第2章 日本とビジネス
 11. 見て学び、試してみる・・・見取り稽古
 12. 日本人と完璧主義・・・完璧の射はない
 13. 決断するタイミング・・・矢を放つ瞬間
 14. 日本発信のビジネス・・・牽引する力
 15. 季節で動く日本のマーケット・・・自然との一体化
第3章 人生を楽しくする仕事の仕方
 16. ハッピーな職場・・・内(うち)志(こころざし)正しく
 17. 会社の理念・・・大切なことは身体で覚える
 18. セカンドライフと日本人・・・新しい人生
 19. ビジネスで向上する方法・・・すべてを己に求める
 20. 人生はヒッチハイク・・・一射絶命
おわりに
参考文献
弓道とビジネスの世界の架け橋となったジェローム・シュシャン


著者プロフィール

ジェローム・シュシャン(Jerome Chouchan)
1961年フランス、パリ生まれ。HEC Paris経営大学院卒業。専攻はインターナショナルビジネス。1983年、大学在学中に旅行で初来日したのを機に日本文化に興味を持ち、29歳で弓道を始める。フランス国立造幣局、ラコステ北アジアディレクター、LVMHグループ・ヘネシーのディレクター、リヤドロジャパン代表取締役社長などを経て、2010年ゴディバジャパン代表取締役社長に就任。商品のパッケージデザインに世界の有名アーティストを起用、テレビCMなど、様々な施策により5年間で売り上げ2倍を達成。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)






<関連サイト>

ゴディバ ジャパン (公式サイト)

 

<ブログ内関連記事>

マイク・タイソンが語る「離脱体験」-最強で最凶の元ヘビー級世界チャンピオンは「地頭」のいい男である!
・・弓道精神を体得したドイツの哲学者オイゲン・ヘリゲルの著書『弓と禅』について、マイク・タイソンは少年時代に恩師から聞かされていた


チョコレートのビジネス

バレンタイン・デーに本の贈り物 『大正十五年のバレンタイン-日本でチョコレートをつくった V.F.モロゾフ物語-』(川又一英、PHP、1984)

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


ベルギーの食品関連

『ベルギービール大全』(三輪一記 / 石黒謙吾、アートン、2006) を眺めて知る、ベルギービールの多様で豊穣な世界

ベルギーとポテトの関係-ベルギー・ポテトの水煮缶詰が便利!


ストーリー主導のマーケティング

「恵方巻き」なんて、関西出身なのにウチではやったことがない!-「創られた伝統」についての考察-


■製品ローカリゼーション

ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の「日本語吹き替え版」は「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)!

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは? 
・・「ローカリゼーション」にかんする必読書

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!
・・日本マクドナルド創業者の藤田田は原音に近い「マクダーノー」では日本では成功しないと確信していた


■外国人の見た日本 自らの内なる知られざる日本

書評 『座右の日本』(プラープダー・ユン、吉岡憲彦訳、タイフーン・ブックス・ジャパン、2008)-タイ人がみた日本、さらに米国という比較軸が加わった三点測量的な視点の面白さ

世界のなかで日本が生き残るには、自分のなかにある「日本」を深掘りしてDNAを確認することから始めるべきだ! 
・・ジェトロがタイ政府の依頼で企画し、2006年にバンコクで開催した 「日本デザインの遺伝子展」の日本語カタログ





(2012年7月3日発売の拙著です)







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2014年6月2日月曜日

書評 『ゲームのルールを変えろ-ネスレ日本トップが明かす新・日本的経営-』(高岡浩三、ダイヤモンド社、2013)-スイスを代表するグローバル企業ネスレを日本法人という「窓」から見た骨太の経営書


グローバル企業ネスレ日本法人で、初の生え抜きCEOとなった著者の第二弾。

前著 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013) がみずからの死生観=人生観を語った、かなりパーソナルな内容であったのに対し、本書は実際のネスレ日本のビジネスと経営に即して持論を展開した本格的なビジネス書です。かなり内容豊富で、しかも濃いといっていいでしょう。

帯には、「思いついたことの98パーセントは実行せよ!」などのキャッチコピーが書かれていますが、それだけなら並のビジネス書と同じで、あえて読むまでのこともないという気にさせられます。

本書が類書と異なるのは、きわめて日本的な教育を受けてきた著者であるにもかかわらず、グローバル企業のなかでもまれることによって培われた、実践をつうじた本質的な思考が展開されていることにあります。

現役の経営者が書いた経営書だけに、テーマは経営全般にわたりますが、ネスレというグローバル企業が、マーケティングとブランド・マネジメントをビジネスの根幹に据えた会社であり、すべてはそこに集約されることを説得力ある筆致で描いていることにあるでしょう。

著者は、ネスレはブランドを以下の三段階でマネジメントしていると書いています。

① コーポレート・ブランド(=企業ブランド)
② カテゴリー・ブランド
③ プロダクト・ブランド(=製品ブランド)

カテゴリーブランドとは、ネスカフェやキットカットといった製品群ごとに束ねたものであり、その傘下に製品ブランドが含まれるわけですが、BEM( Business Executive Manager)として、ブランド全般について損益責任をもって経営する体制になっているとのこと。

このため、ネスカフェやキットカットは消費者に知られていても、ネスレという企業ブランドと結びついていないといった問題もあるようです。しかし、著者が言うように、直接カネを生み出すのはカテゴリーブランドと製品ブランドであって、企業ブランド強化にチカラを入れすぎても意味はないのです。日本企業のブランドマネジメントに対する痛烈な批判rと受け取るべきでしょう。

このように著者の思考は合理的でロジカルですが、次のローカリゼーションにかんする発言もまた、かなり本質をついたものです。

日本人は、これまで受けてきた教育のせいで、グローバルな視点を日本風にローカライズ(地域化)する能力に欠けている。本質的な部分を論理的に把握できないため、日本独自の戦略やアイデアが生まれてこないのだ。(P.58)

著者は、この点を本書全体をつかって具体的に述べた本だと言ってもいいかもしれません。

日本人として、日本市場というローカルマーケットを熟知したうえで、グローバル企業のロジックをローカルで展開するとはどういうことかグローバル全体のなかでローカルマーケットを経営するとはどういうことかを考え抜いているからこそ生まれてきた考えでしょう。

著者の立ち位置は、グローバル展開を考えている日本企業の大半とは真逆のものですが、海外進出先という海外のローカルマーケットで、いかに日本本社のロジックを普遍的なレベルまで高めたうえで、ローカルに即して経営していくかについてヒントを得ることができるかもしれません。

もしかしたら、日本企業に比べて、ネスレは特殊な感覚を持っているかもしれない。クライシスが起こって当たり前というなかでマーケットヘッドに求められるのは、クライシス(危機)をいかにしてオポチュニティ(機会)に変えるかということになる。・・(中略)・・ つまり「Crisis is Opportunity.」なのだ。このことは、スイス本社から常に言われてきた。私が入社した30年前から聞かされていたので、ネスレとして筋金入りのカルチャーなのである。(P.254)

国内市場が小さくて、たとえ危険な地域であろうと海外市場を開拓していかなければ生き残れないというスイスの制約条件から生まれたネスレもまた、濃厚なスイス的を持ち合わせているということでしょう。

一方で、ネスレ日本法人は、日本の国内市場でしかビジネスを行うことは許されていないという絶対的な「制約条件」があるからこそ、縮小する市場のなかでもビジネスチャンスを発見し、徹底的にマーケットを深掘りし、成功を収めてきたわけです。

つねに変化しつづける市場環境、消費者意識、そして従業員意識。みずからの成功体験すら、環境変化のなかでは否定していかなくては、絶対的な「制約条件」のもとでは生き残っていけないのです。

経営トップの仕事とは、ゲームのルールを変えることにある、変革こそが経営者のやりがいであるといいう著者の姿勢はまさにそのとおりです。そうでなければ、本社にとってもローカルの経営トップ交代の意味はありません。

経営者あるいは経営者になりたい人、欧州系グローバル企業の日本法人とはどういうものか知りたい人だけでなく、ネスレという欧州系のグローバル会社について、日本法人という「窓」から覗いてみることのできる内容にもなっています。

「Think Globally, Act Locally」(グローバルに思考し、ローカルに行動する)を地でいった、実践と思考に基づいた本。読み応えのある本書は、ぜひ読んでいただきたいと思います。





目 次

序章 史上初、生え抜き日本人社長に就任
 ●グローバル人材の条件は「祖国を捨てること」
 ●史上初の生え抜き日本人社長に就任
 ●副社長就任も異例の人事だった
 ●変革こそが、経営者のやりがい
第1章 マーケティングは経営そのものである-戦後モデルの終焉で求められるプロの経営-
 ●日本以上に日本的経営の外資系企業
 ●過去の成功体験より未来を語る
 ●国家と企業が抱える問題の共通点
 ●旧来の成長モデルに縛られてはいけない
 ●脱却のカギは「プロの経営者」を育てること
 ●マーケティングは経営そのものである
 ●プロの経営者に必要なリーダーシップとは
 ●ゲームのルールを変えて、道を拓く
 ●ニッポン株式会社のルールを変えるのは人事から
 ●基本戦略をローカライズしているか
第2章 売れない商品を売ってこそ一人前-現場が教えてくれたイノベーションの真髄-
 ●42歳で他界した父と祖父
 ●嫌なことは、自分で変えなさい 試練を迎えた大学受験
 ●実力で評価される企業を選択
 ●外資系企業ネスレは日本的経営だった
 ●売れない商品を売ってこそ一人前
 ●思いついたことの98パーセントは実行する
 ●試験合格で得た本社への切符
第3章 撤退という決断を下すとき-ネスレに受け継がれる、他社を思いやる経営-
 ●過酷なアメリカ生活のスタート
 ●「Silent is Stupid」
 ●日本に粉ミルクを導入せよ
 ●撤退という決断は辛くても、正しかった
第4章 批評の前に自分のアイデアを実行せよ-「キットカット」で実践した「Think Globally, Act Locally.」-
 ●日本人にとってのキットカット・ブレイクとは何か
 ●九州支店の1本の電話から始まった
 ●全国の受験生の不安に寄り添うプロジェクト
 ●受験生のお守りとなった「キットカット」
 ●「キットカット」は主役にならなくていい
 ●ブランドは広告ではなくニュースで作られる
 ●「ありがとう」と言ってもらえるブランドを目指す
 ●批評する前にまずは実行せよ
第5章 ゲームのルールを変えろ-変革を起こすリーダーに必要なこと-
 ●人口減少のなかでも必ずチャンスはある
 ●システムで飲ませる新モデルを構築
 ●「価値共創」で揺るぎないモデルへ
 ●直属で招集した50人のプロジェクトメンバー
 ●強力なトップダウンでゲームのルールを変える
 ●変革には最悪のケースを想定した準備が必要
 ●あらゆる最終責任はリーダーが負う
 ●間接部門もゲームのルールを変えられる
第6章 採用・育成・評価で会社は決まる-ストーリーを共有、ただしコンセンサスは必要ない-
 ●イノベーションを起こす人材を集めるために
 ●究極のトレーニングによる人材育成
 ●社員の能力は人事次第で開花する
 ●労働組合もコンサルタントになる
 ●残業が減らないネックは管理職にあった
 ●変革にコンセンサスは必要ない
第7章 危機のあるところに機会がある-義務を糧に遂げる成長-
 ●変わりつつあるネスレのブランド戦略
 ●マーケティング発想のブランド戦略へ
 ●東日本大震災で発揮されたリスクマネジメント
 ●世界規模の危機に学んだBCP
 ●危機のあるところに機会がある
 ●これからの企業が負うべき責任と義務
 ●利益を上げることに堂々と胸を張れ
終章 本物のリーダーはリーダーをつくる
 ●仕組みで育てるリーダーシップ
 ●次世代リーダーへの期待
あとがき


著者プロフィール  
高岡浩三(たかおか・こうぞう)ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO。1983年、神戸大学経営学部卒。同年、ネスレ日本株式会社入社(営業本部東京支店)。各種ブランドマネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリー株式会社マーケティング本部長として「キットカット」受験生応援キャンペーンを成功させる。2005年、ネスレコンフェクショナリー株式会社代表取締役社長に就任。2010年、ネスレ日本株式会社代表取締役副社長飲料事業本部長として新しいネスカフェ・ビジネスモデルを提案・構築。利益率の低い日本の食品業界において、新しいビジネスモデルを追求しながら超高収益企業の土台をつくる。同年11月、ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEOに就任。 現在、経済同友会幹事、医療・福祉ビジネス委員会副委員長。日本インスタントコーヒー協会会長。共著書に、『逆算力』(日経BP社)がある。






<関連サイト>

【ネスレ日本】 M&Aに頼らず貫く収益成長と利益率改善 強みへの集中戦略 (ダイヤモンドオンライン 、2014年4月4日)
・・グローバル企業の日本ローカル拠点は、日本国外でのビジネスは御法度。その制約条件下での成長は称賛に値する

ネスレを世界一にした「連邦経営」 100年間の計略 (日経産業新聞、2014年8月5日



<ブログ内関連記事>

書評 『逆算力-成功したけりゃ人生の〆切を決めろ-』(高岡浩三、おち まさと=プロデュース、日経BP社、2013)-人生は有限だと感じることは究極の逆算思考である


ロジカル経営のための基礎

書評 『無印良品の「あれ」は決して安くないのになぜ飛ぶように売れるのか?』(江上隆夫、SBクリエイティブ、2014)-徹底的に「コンセプト」にこだわることがビジネス成功のカギ
・・ロジカル経営のために必要かことはコンセプト抽出作業と共通点がある


スイスとグローバル企業

「小国」スイスは「小国」日本のモデルとなりうるか?-スイスについて考えるために

書評  『ブランド王国スイスの秘密』(磯山友幸、日経BP社、2006)
・・ビジネスパーソンにとっては「ブランド王国スイス」という捉え方が面白い

書評 『民間防衛-あらゆる危険から身をまもる-』(スイス政府編、原書房編集部訳、原書房、1970、新装版1995、新装版2003)
・・スイスといえば、いまでは「国民皆兵」は日本人の常識になったことと思う。スイス人の家庭には、一家に一冊備え付けなのが、この本と銃器一式!


コーポレートブランドと製品ブランド(プロダクトブランド)

「正露丸」は超ロングセラーの製品ブランドだ!
・・コーポレートブランドと製品ブランドが異なる例

製品ブランドの転売-ヴィックス・ヴェポラップの持ち主は変わり続ける
・・・・コーポレートブランドと製品ブランドが異なる例正露丸の場合は、ブランドの担い手としての所有者に変更はないが、ヴェポラッブは二転三転。製品ブランドの生命力は会社の生命よりも長い(!)ということがある

ゼスプリ(Zespri)というニュージーランドのキウイフルーツの統一ブランド-「ブランド連想」について

大学ブランドというプライベート・ブランド(PB)商品について-玉川学園の「抹茶アイス」は新製品!

「泉屋のクッキー」-老舗(ブランド)には歴史(ヒストリー)=物語(ストーリー)がある

「ポルシェのトラクター」 を見たことがありますか?

「ブルータス、お前もか!」-立派な「クレド」もきちんと実践されなければ「ブランド毀損」(きそん)につながる






(2012年7月3日発売の拙著です)







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2014年5月8日木曜日

ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の「日本語吹き替え版」は「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)!


ディズニーの新作アニメ映画 『アナと雪の女王』(2013)の日本語吹き替え版は、「製品ローカリゼーション」の鑑(かがみ)ともいうべき存在です!

じつはこの連休の最初に、ディズニーの新作アニメ映画『アナと雪の女王』、「日本語吹き替え版」で見てきました。この「吹き替え」ということが、映像作品のローカリゼーション、つまりローカル市場における「現地化」なのです。

ハリウッド映画の日本語吹き替え版なんて見るのは「初体験」ですが、日本語吹き替え版を劇場で見たのは大正解でした。

ミッキーマウスやドナルドダックはもちろんのこと、『ピノキオの大冒険』『くまのプーさん』『ダンボ』『バンビ』『ピータパン』『101匹わんちゃん大行進』『白雪姫』『シンデレラ』などなど、ディズニーのアニメーションで育った世代なので、逆にディズニーというと子ども向けという先入観や固定観念ができあがってしまっていたのかもしれません。

しかし、考えてみれば、これらの作品はすべて日本語吹き替え版で見てきたのであり、子どもの頃はディズニーとかアメリカとかはいっさい気にすることなく見ていたわけですね。

しかもミュージカルですから、歌詞が聞き取れないのは致命的日本語吹き替え版はその点はまったく心配はいりません。わたしは、映画が始まってから字幕がでてこないので、ちょっと拍子抜けしてしまいましたが(笑)

姉のエルサの声を担当した松たか子の「ありのままで」もいいし、妹のアナの声を担当した神田沙也加の「生まれてはじめて」もいいですね~! 神田沙也加の声がアイドル時代の松田聖子そっくり!

日本のアニメも世界最高水準ですが、 さすが本家本元のディズニー、底力が違うなあ、と。ディズニーの伝統とピクサーの技術が合体した 「3Dコンピュータアニメーション・ミュージカル・ファンタジー映画」です。

なんといっても映像が美しい!圧倒的な美しさなのです。


各国語で歌われる「ありのままで」を合成したプロモーションビデオ)



日本語「吹き替え版」という「ローカリゼーション」(現地化)

『アナと雪の女王』は、ディズニー初のダブル・ヒロイン作品。『白雪姫』『シンデレラ』以来、ヒロインは一人という殻を破ったのも今回の特色のようです。しかもアンデルセンの原作そのものではなく、現代風の改作でもあるわけです。

オリジナルのタイトルは「凍りついた」という意味の『Frozen』(フローズン)。アンデルセンの原作が「雪の女王」なので、どうしても主人公は「雪の女王」と思いがちですが、かならずしもそうではありません。雪の女王のエルサに妹のアナを加えたのはディズニーによる改作のようです。



その意味では、日本語版のタイトルを『アナと雪の女王』としたのは大正解だといっていいでしょう。アナもまた主人公の一人であることを明確にしているからです。姉妹でキャラの違いがよく表現されてますので、姉のエルサと妹アナのどちらか、いや両方ともに感情移入することが可能になると思います。

日本語版では、姉の「雪の女王」エルサに松たか子を起用、妹のアナ王女に神田沙也加を採用。このキャスティングもまた大成功といえます。日本人なら、ちいさな子どもは別として、松たか子や神田沙也加がどういう存在であるかは、多かれ少なかれ知っているからです。

つまり、松たか子が歌舞伎役者の松本幸四郎の娘で、どちらかというと可愛らしい声でしゃべる女優であり、神田沙也加が歌手の松田聖子の娘であること。それぞれディズニーのこの作品においてもきわめて重要な要素である「ファミリー」(家族)というストーリー(物語)をもっているからです。

「生まれてはじめて」(For the first time in forever)という曲は、いかにもディズニーらしいバラード曲。古き良きディズニーの伝統を継承した、ファンンタジーにふさわしい、安心してなんども口ずさめる歌。これを一人娘だが、母親からみれば妹のような存在の沙也加が歌うのはふさわしいといえます。

これに対して、「ありのままで」(Let It Go)は、かなり現代的な内容の曲「自分らしく生きる」という自己肯定の内容は、女性だけに限らず現代人の生き方を示したもので、ディズニーのあたらしい面をみせてくれます。この曲を歌うのが、どちらかというと可愛い印象の松たか子が歌うからこそ、そのギャップが面白いのですね。姉の「雪の女王」の精神的葛藤をうまく表現できているので。


日本語版のポスターにみる「国民性」の違い

日本語版のポスターが醜い(!?)と表現している人が海外にはいるようですが、日本人的感覚とはちょっと違うものを感じますね。冒頭に掲載した者が日本版のポスターです。

趣味の違いといってしまえばそのとおりですが、日本人としてはとくに違和感は感じません。もちろん日本人でも受け取り方に違いはあるでしょう。

英語版のポスターは何種類もあります。「Frozen poster」で Google 検索してみるといいでしょう。
そのなかから2点ほど掲載しておきます。


オリジナルの英語版ポスターは、なんだか人形劇やパペットアニメーションのような印象をわたしはもってしまします。どうもリカちゃん人形というか、バービードール(?)みたい、というのが日本人の感覚ではないでしょうか。

たしかに映画のなかではひじょうになめらかでスムーズな動きがある一方、意図的なものがあるのでしょうがカクカクとした人工的な動きがあって、後者は人形劇のような動作に見えなくもありません。奥行きのある立体的な(・・つまり3Dも前提)アニメーションだからでもありますが。


とはいえ、よりナチュラルなものを好ましいとするのが日本人の感覚だといっても言い過ぎではないでしょう。女性のメイクアップでもナチュラルメイクを好むのが日本女性の傾向であることは一般に知られていることです。

このように、「国民性」というか「民族性」の違いというか、言語だけにも還元できない違いがあるからこそ、ローカリゼーション(現地化)が重要なのです。「グローバル化」の時代だからといっても、ローカル市場ではあくまでもローカル市場。ローカル市場ではローカルのあり方に徹しなければけっして売れることはありません。

日本語吹き替え版で見ていると、なんだか登場人物も日本人みたいな感じがしてくるのが不思議です。とくに妹のアナはブルーアイではありますが、なんとなくアジア人っぽい感じもします。日本でいう、いわゆる「アニメ顔」っぽい。

英語オリジナル版をYouTubeに投稿されているビデオクリップで見ると、いかにもアメリカっぽいなあという印象をもちます。耳から入ってくる音声によって、画像の視覚イメージも影響を受けるのかもしれません。

そういえば、子どもの頃は吹き替え版のディズニーがアメリカのものだとは知らなかったなあ、と思い出します。いまでも、ちいさな子どもは、そんなものでしょう。

ディズニーのような全世界にむけてコンテンツを製作し、流通させてきた「グローバル企業」においてはは、ローカリゼーションの歴史は長く、ノウハウもそうとう蓄積されているといっていいいでしょう。

しかしそんなディズニーにとっても今回の作品は、「愛」という普遍的なテーマを、設定はファンタジーでありながら現代風にアレンジした世界を表現しており、新境地を拓いたといえるかもしれません。


英語版と日本語版は違う作品として鑑賞も可能

英語版は劇場で見たわけではありませんが、YouTube でディズニーが公開しているビデオクリップを視聴した限りでは、オリジナルの英語版と日本語吹き替え版は別の作品として鑑賞することも可能ではないかと思います。

基本的に英語版のセリフはかなり忠実に、しかも登場人物の動きにあわせた適切なシラブルの日本語になっていますが、そうはいっても英語と日本語とではニュアンスの違いがないわけではありません。

松たか子が歌う挿入歌の「ありのままで」は「Let It Go」の日本語版ですが、英語の "let it go" と「ありのまま」は意味としてはイコールでありません

英語の "let it go" は、内側から外に向けて「放出」するというニュアンスが強いのに対して、日本語の「ありのままで」は自己肯定であり現状肯定というニュアンスが強い。あえて英語でいえば、むしろ "let it be" に近いのですね。日本女性にとっては後者の「ありのままで」のほうが、メッセージ性が強いと判断したのかもしれません。

じつは、英語の "let it go" という表現は、この作品のカギとなる表現なのです。英語の "it" が指しているのは、「自分の気持ち」もその対象ですが、「魔法」もまた"let it go"するものだからです。姉の雪の女王エルサにとって、「魔法を解き放つ」ことと「自分を解き放って自分になる」ことと同じなのです。

Disney's Frozen "Party Is Over" Clip (Walt Disney Animation Studios)に、エルサの魔法が解放されてしまうシーンがあるので参考まで。なお、sorcery とは魔術のことです。悪しき目的に使う黒魔術のことです。いわゆるマジック(magic) とは意味合いが異なります。

そう考えると、日本語版では「ありのままで」という歌詞にしたのは、英語版とは別の作品として楽しんだらいいということもであるわけです。ニュアンスの違いは意外と大きいのです。

YouTube で英語版のさわりを視聴してみると、さすが基本的に「子ども向け」でもあるので、スラングもなく、クリアできれいな口語体の標準アメリカ英語。むずかしいコトバもいっさいないので、これなら生きた英語の教材としても最高でしょう! 

英語版と日本語版はどちらも甲乙つけがたいですが、わたしは神田沙也加によるアナの歌声が好きです。

まだ見てない人は、だまされたと思って絶対に見ることを薦めますよ! まずは「日本語吹き替え版」で!








PS 日本語版でアナの声を担当した神田沙也加さんが亡くなった

昨日(2021年12月19日)のことだが、神田沙也加さんが亡くなったというニュースを聞いて大きなショックを受けた。自分の娘のような女性がホテルの上層階から転落死。享年35歳。おそらく自殺であろう。ことばにならない思いで残念でならない。気の毒で仕方ない。「生まれてはじめて」(For the first time in forever)を聴きながら追悼したい。ご冥福を祈ります。合掌 (2021年12月20日 記す)



<関連サイト>

ディズニー公式サイト (日本語)

『アナと雪の女王』公式サイト (日本語)

『Let It Go』が『ありのままで』と訳された理由(The Page、2014年5月3日)
・・「吹き替えの監修を行っているのが、ディズニー・キャラクター・ヴォイス・インターナショナル(DCVI)だ。DCVIは1991年に設立され、これまでにも『美女と野獣』、『アラジン』、『ライオン・キング』といった人気映画のローカリゼーションをサポートしている。世界中の17カ国にオフィスを持ち、55か国語もの吹き替えを行っており、今回の『Let It Go』の大ヒットの影の立役者とも言える」

Disney Character Voices International - DisneyWiki

大人気の『アナ雪』、怒涛の多面展開へ 来春、東京ディズニーランドもアナ雪に染まる (東洋経済オンライン、2014年8月23日)



<ビデオクリップ集>

『アナと雪の女王』予告編 (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)
・・この「予告編」の段階では、まだ歌はオリジナルの英語版のまま

Disney's Frozen "First Time in Forever" Trailer (英語オリジナル版トレーラー 2013年10月)
・・日本語版との微妙な違いとは? さすがに子ども向けでもあるので、英語はスラングもなく明快で聞き取りやすい

Disney's Frozen Holiday Trailer  (英語オリジナル版トレーラー 2013年12月) ・・こちらは Let It Go バージョンのトレーラー

Disney's Frozen Official Trailer  (英語オリジナル版トレーラー 2013年9月)
・・これがオフィシャル・トレーラー

『アナと雪の女王』「Let It Go」(25ヵ国語Ver.)
・・世界中でもっとも美しいという賞賛の声のあがる松たか子が歌うエルサ(1分13秒前後)。日本語の母音の響きが美しい

一緒に歌おう♪『アナと雪の女王』「Let It Go<歌詞付Ver.>」 松たか子 (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)

一緒に歌おう♪『アナと雪の女王』「Let It Go<歌詞付Ver.>」 イディ・メンゼル(オリジナル英語版)   (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)

『アナと雪の女王』♪生まれてはじめて/アナ(神田沙也加) (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)
・・神田沙也加の声は母親の松田聖子そっくり!

『アナと雪の女王』♪生まれてはじめて / アナ(神田沙也加)&エルサ(松たか子) (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)

『アナと雪の女王』クリップ映像:チョコレート! (YouTube ディズニーチャンネル disneyjp)

ディズニーが YouTube で公開しているこのクリップ
Disney's Frozen - "Elsa's Palace" Extended Scene (Walt Disney Animation Studios)
(アナが氷の宮殿でエルサと対面するシーン)


<歌詞の比較>


「ありのままで」(Let it go)
Idina Menzel - Let It Go Lyrics

The snow glows white on the mountain tonight
Not a footprint to be seen.
A kingdom of isolation,
and it looks like I'm the Queen
The wind is howling like this swirling storm inside
Couldn't keep it in;
Heaven knows I've tried
Don't let them in,
don't let them see
Be the good girl you always have to be
Conceal, don't feel,
don't let them know
Well now they know
Let it go, let it go
Can't hold it back anymore
Let it go, let it go
Turn away and slam the door
I don't care
what they're going to say
Let the storm rage on.
The cold never bothered me anyway
It's funny how some distance
Makes everything seem small
And the fears that once controlled me
Can't get to me at all
It's time to see what I can do
To test the limits and break through
No right, no wrong, no rules for me,
I'm free!
Let it go, let it go
I am one with the wind and sky
Let it go, let it go
You'll never see me cry
Here I stand
And here I'll stay
Let the storm rage on
My power flurries through the air into the ground
My soul is spiraling in frozen fractals all around
And one thought crystallizes like an icy blast
I'm never going back, the past is in the past
Let it go, let it go
And I'll rise like the break of dawn
Let it go, let it go
That perfect girl is gone
Here I stand
In the light of day
Let the storm rage on
The cold never bothered me anyway!



「ありのままで」

降り始めた雪は 足跡消して
真っ白な世界に一人の私
風が心にささやくの
このままじゃだめなんだと
戸惑い傷つき
誰にも打ち明けずに
悩んでたそれももう
やめよう
ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの
何も恐くない
風よ吹け
少しも寒くないわ
悩んでたことが嘘みたいね
だってもう自由よ
何でも出来る
どこまでやれるか
自分を試したいの
そうよ変わるのよ 私
ありのままで 空へ風に乗って
ありのままで 飛び出してみるよ
二度と涙は 流さないわ
冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる思い出描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい
もう決めたの
これでいいの
自分を好きになって
これでいいの
自分を信じて
光浴びながら
歩き出そう
少しも寒くないわ




<ブログ内関連記事>

ローカリゼーションは海外市場攻略の要(かなめ)

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・「ローカリゼーション」にかんする必読書

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!
・・日本マクドナルド創業者の藤田田は原音に近い「マクダーノー」では日本では成功しないと確信していた

「MOOMIN!ムーミン展-トーベ・ヤンソン生誕100周年記念-」(松屋銀座)にいってきた(2014年4月23日)
・・原作の hattifnattarna を「ニョロニョロ」という名前に変えなかったなら、日本製アニメ 『ムーミン』の日本での大成功はあり得なかっただろう。スナフキンも原語のスウェーデン語とはイコールではない!

小倉千加子の 『松田聖子論』 の文庫版に「増補版」がでた-松田聖子が30年以上走り続けることのできる秘密はどこにあるのか?
・・アナの日本語版吹き替えを担当した神田沙也加は松田聖子の娘


あえてローカリゼーションしないという方法

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として・・日本語と音楽の関係について


ミュージカル映画

『中島みゆき 「夜会VOL.17 2/2」 劇場版』 (2011年11月)をイオンシネマでみてきた(11月9日)-これは日本語による魂のセラピーなのだ

ミュージカル映画 『レ・ミゼラブル』を観てきた(2013年2月9日)-ミュージカル映画は映画館で観るに限る!
・・これは吹き替え版ではなく英語。原作はフランス語だがミュージカル版は英語。

なぜいま2013年4月というこの時期に 『オズの魔法使い』 が話題になるのか?
・・ハリウッドのミュージカル映画の古典。アメリカ人の深層意識に存在する作品

ボリウッド映画 『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(インド、2007)を見てきた  ・・インド映画はみな、ある意味でミュージカル。しかも、歌って踊るシーンに観客も参加する「体験型」だ


ディズニーの『アナ雪』の原作アンデルセン童話

「ふなばしアンデルセン公園」にはじめて行ってみた(2014年4月6日)-デンマーク王国オーデンセ市と千葉県船橋市が姉妹都市となって25年
・・原作の「雪の女王」はアンデルセンの童話作品


メガヒット映画

映画 『アバター』(AVATAR)は、技術面のアカデミー賞3部門受賞だけでいいのだろうか?
・・2010年日本公開の洋画では 『アバター』が興行収入100億円を超えたのが50日目であるのに対し、『アナと雪の女王』は37日目で達成。アメリカを除けば日本が全世界で一位の興行収入、公開54日でついに『アバター』を超えた。動員1,000万人超えも達成

(2014年8月29日 情報追加)


PS 『アナ雪』のDVDセールスが200万枚突破! 

2014年8月18日付のオリコン週間映像ランキングで累計202万5千枚を記録。売り上げ200万枚突破は2002年の『千と千尋の神隠し』についで歴代2位だという。ランキング登場4週目での200万枚突破は史上最速とのこと。(2014年8月13日 記す)。




(2012年7月3日発売の拙著です)





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2012年3月1日木曜日

プラクティカルな観点から日本語に敏感になる-藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!

■「日本語に注意を払わなあかんで!」

海外で成功しているビジネスを日本にもってきて成功させるモデルの原点は、なんといっても日本マクドナルドの創業経営者であった藤田田(ふじた・でん)にあるといっていいでしょう。

日本から海外へ製品やサービス、あるいはビジネスフォーマットをもっていくのはアウトバウンドですが、海外から日本にもってくるのはインバウンドといいます。

アウトバウンドとインバウンドは、旅行業界ではむかしからつかわれているコトバを転用したものです。

アウトバウンド戦略であれ、インバウンド戦略であれ、成功のカギはローカリゼーション(現地化)にあります。

そしてローカリゼーションでもっとも重要なカギは現地語である! ということを実践したのが1970年代の藤田田だったのです。

藤田田のライフワークが日本語研究であったことは知る人ぞ知る事実です。まさに趣味と実益を兼ねた研究でした。

天下取りの商法』(ワニの新書、1999)のなかで、以下のエピソードをマクドナルド成功の理由の一つとして披露しているので、ここに紹介しておきましょう。温故知新のエピソードとして受け取ってみてください。

藤田田は、米マクドナルド社と合弁を組んで日本市場での立ち上げを行った際、「マクド」・「ナルド」と「3音+3音」で切れるように日本語の社名をきめ、米国側の意見に対して最後まで自説を譲らなかったのです。

藤田田が説明するところによれば、アメリカ英語の発音では McDonaldsは、マクダーナルズ(・・より原音に近くすればマクダーノーズ)となるので、それでは日本人の言語感覚にはあわないから、「マクド」・「ナルド」と3音ずつに区切ることをつよく主張して、米側に認めさせたのだそうです。

現に、関西では「マクド」というし、関東では「マック」で定着しています。藤田田の先見性の高さと、日本語と日本人の関係についての洞察力がいかに深かったかを示しています。

マクドナルド以外でも、ケンタッキーフライドチキンが「ケンタ」と省略されていますし、その結果、KFCはCMでも「ケンタ」を使用しています。
ドラッグストアチェーンのマツモトキヨシを「マツキヨ」と省略しますし、ドンキホーテは「ドンキ」、吉野家の牛丼を省略して「ヨシギュー」と言うのは当たり前になっています。

長たらしい名称は、若者だけでなく、ほぼすべての「日本語人」には発音しにくいのです。だから日本語人にとって切りのいい音に省略されるのです。

ほぼすべての音が、子音+母音で1つの「拍(はく)」を構成する日本語においては(たとえば、「さ」は子音s+母音a)、基本的に3音と4音(=2音+2音)の単語がもっとも落ち着きがあります。拍にかんしては、金田一春彦の『日本語 上下』(岩波新書、1988)を参照してください。

日本語のリズムとして五七五がもっとも安定している理由は、5=2+3、7=4(2+2)+3で構成されていることにあります。五七五の「拍」が作り出すリズムは、ある意味では日本人の言語感覚を呪縛しているとさえいえます。五七五については、坂野信彦の『七五調の謎をとく-日本語リズム原論-』(大修館書店、1996)を参照してください。

アウトバウンドやインバウンドそのものではありませんが、アウトバウンドとして進出先の企業からの異議申し立てで、企業ブランド名が変更を余儀なくされたケースもあります。

たとえば、スタンダードオイルが1972年に米国独禁法による分割命令がでた際、当初はENCOというブランドにする予定であったが、結局は中止してEXXON(エクソン)に落ち着いたという事例があります。

日本語のエンコでは、とくにガソリン販売にかんしては最悪のネーミングであるという異議申し立てが日本法人から出たためだという説があります。もちろん、現在ではエンジン故障を略したエンコはすでに死語となっており、一般にエンストといいます。なんだか、時代を感じさせるエピソードですね。

ブランド関連書では、マクドナルドにかんしてはブランドマークのゴールデンアーチが取り上げられることが多いのですが、インバウンドの場合は、藤田田が基本原則としていた日本語の音韻法則についても注意を払うべきでしょう。

もちろん、アウトバウンドにかんしては、現地語の言語感覚はその現地語を母語とする人にはかないません。企業ブランドの原理原則は死守しながらも、現地の意見を最大限にとりいれてローカライズすることは絶対に必要なことなのです。

ちなみに、『Den Fujitaの商法』と題して4部作が復刊されている。それぞれのタイトルは以下のとおり。やや偽悪派的な匂いのプンプンするタイトルばかりがついていますが、藤田田らしくでいいですね。金持ち=悪という日本の一般感覚を逆手にとった大阪人のセンスを感じさせます。

(1) 頭の悪い奴は損をする
(2) 天下取りの商法
(3) 金持ちラッパの吹き方
(4) 超常識のマネー戦略

残念ながら主著というべき『ユダヤの商法』は絶版になったままで、古書価はそうとう高騰してい、ます。なぜ再版されないのかわかりません? 内容的には問題ないと思うのですが・・・

藤田田は「情報収集は雑学を増やすこと」として貪欲に雑学を吸収していたことは、世の中には「雑学」なんて存在しない!-「雑学」の重要性について逆説的に考えてみる に書きましたので、ご参照いただけると幸いです。

ビジネスにおいても、あたらしいものを探すだけでなく、たまには温故知新によって先人の知恵を振り返って学ぶことは大切でしょう。










<関連サイト>

私の履歴書 復刻版  竹鶴政孝 第24回 ニッカ売り出し 苦心の“道産子”に感激 価格統制で1級の指定に 竹鶴政孝(ニッカウヰスキー創業者)に、「ニッカ」というネーミングの理由が創業者自身によって語られている。

昭和15年(1940年)の秋、ぎざぎざの線のはいった角びん、ニッカウ井スキーの第1号を発売した。ニッカという商品名は、当時の社名の大日本果汁の略、日果からとったものである。
ニッカの3文字を採用したのは、横書きにしても片方からしか読めないことと、3文字は語呂(ごろ)もいいしネオンの場合でもスペースが少なくてもすむし、一定スペースの場合は大きく書けるという利点があるということで決めた。

(2015年2月28日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・ローカリゼーションにかんする必読書

世の中には「雑学」なんて存在しない!-「雑学」の重要性について逆説的に考えてみる
・・藤田田の代表作『ユダヤの商法』に書かれている「雑学」の重要性から話を展開

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として・・日本語と音楽の関係について






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2012年1月26日木曜日

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として


昨夜(2012年1月25日)10:55から放送されたNHKの番組 SONGS では、由紀さおり が取り上げられていました。題して 「由紀さおり in ニューヨーク」

なぜか昨年末に世界で大ブレイクした由紀さおり。その情報はすでに日本のマスコミでも取り上げられていますね。ひさびさに明るい、ほんとうに驚きのニュースです。

米国西海岸のポートランドのジャズオーケストラ「ピンク・マルティーニ」と共演したアルバム「1969 Pink Martini & Saori Yuki」が米国だけではなくインターネットをつうじて注目され、ロンドンやアメリカでの共演が実現したということです。しかも、日本語で全盛時代の昭和歌謡曲を歌っています。

ある日、突然全世界で注目されるようになったシンデレラ・ストーリーのようなものですが、デビュー43年で現在63歳の歌手にとっては、あらたなスタートラインに立ったということになるのかもしれません。

「ピンク・マルティーニ」と共演するキッカケがまた面白いですね。

「ピンク・マルティーニ」のリーダーが、たまたま米国の中古レコード店で、由紀さおりが人気歌手の座をつかむことになったアルバム「夜明けのスキャット」を手にとったのがキッカケだったそうですね。音楽からではなく、レコード・ジャケットの写真に惹かれてというのもまた面白い。たしかに20歳当時の由紀さおりは若くて美しいですね。その後、レコードを聴いてみて、その歌声に魅了されたのが始まりだとか。

アルバム発売以来43年にして起こったセレンディピティというべきでしょう。しかも、デジタルではなく超アナログなお話です。

アルバム売り上げ210万枚というヒットだったこともあるのでしょうが、カタチにしておけば、いつかどこかで誰かが手にすることがあるかもしれないということですね。確率的には極小の世界ですが。


今回の由紀さおり世界デビューは、「意図せざる海外進出」ということになりますね。

この点にかんしては、浮世絵やアニメやマンガに近いものがありますが、由紀さおりがそういったケースとは違うのは、本人の意志的な行動も大きくかかわっていることです。

昨夜のNHK番組によれば、中古レコードを購入して持ち帰った「ピンク・マルティーニ」リーダーが、曲をきいてたいへん気に入り、そのなかの一曲をカバーして自分たちのアルバムで発表、それをインターネットで発見した由紀さおり側のスタッフが「ピンク・マルティーニ」に連絡をとり、由紀さおりと意気投合した結果、アルバム「1969」をコラボレーションし、コンサートでの共演が実現したのだとか。

中古レコード店の在庫のなかから、偶然手に取ったアルバムからうまれたセレンディピティ。これまで発売され、中古市場に流通しているレコードの総数がどれくらいの規模になるのかはわかりませんが、ほんとうに極小の偶然としか言えません。

それも、「ピンク・マルティーニ」というジャズ・オーケストラが、1950年代から60年代の曲を現代に復活させることをミッションにしていること、由紀さおりが1960年代末から活動をはじめた歌手であることが重なったからです。

しかもコラボレーションが実現したのは、由紀さおり自身が長年、日本語の美しさを一人でも多くの人たちに実感してほしいというミッションがあったからでもありますね。

その対象が日本人から、世界に拡がったということは、ある意味では彼女自身のミッション遂行にあたては、渡りに船であったという言い方も間違いではないのかもしれません。

日本語の曲が日本以外でもブレイクしたケースでは、坂本九の「Sukiyaki」(=「上を向いて歩こう」)が有名ですが、これは積極的なプロモーション戦略のもとに行われた結果もたらされたものでした。全米ヒットチャート化のキッカケになったのは日系米人たちのあいだで人気になったことがあったようです。

由紀さおりの場合はまったく正反対です。そもそも、TVのインタビューなどで語っているのを聞く限り、本人は海外進出などとはまったく念頭にもなかったこと。

この事例から導き出せるのは、偶然を活かしきることの重要性です。

偶然を見つけ出すのはあくまでも人、その偶然を偶然に終わらせないのもまた人。結局は、人間が介在することによって、きわめて極小なチャンスが大きな結果をもたらしうるということを示しているわけです。

しかも、英語圏にあわせて英語で歌うわけでもない。過剰なローカリゼーションは行っていないということです。

考えてみたらオペラでも洋楽でも、日本公演の際に、すべてを日本語で歌うなんて考えられませんよね。由紀さおりは、そのまま日本語で歌っているわけですから、日本の歌謡曲(kayokyoku)という音楽ジャンルを世界の音楽市場に創り出したことになるのかもしれません。

由紀さおりは、歌謡番組がなくなってTVでみることもなくなりましたが、かつての歌謡曲全盛時代に小学生時代を送っていたわたしはTVでよく目にしたものです。

ところで、わたしが実際の由紀さおりをでナマを見たのは、日本国内ではなくベトナムの首都ハノイです。ジャパン・フェスティバルの企画で姉妹で招待されていたコンサートを見る機会がありました。実姉と一緒に行っていた童謡を聴かせる活動の一環でした。

わたしがこういう内容の記事を書くのもまた、偶然の積み重ねの結果です。

海外進出にあたっては、AKB48を大ヒットさせたプロデューサー秋本康によるインドネシア版の姉妹グループ JKT48(=ジャカルタの頭文字JKT)が始まっていますが、力こぶを入れた戦略的な進出だけでなく、偶然を活かした由紀さおりのようなケースもあります。

いっけん真逆のケースに見えますが、共通しているのは海外市場での市場創造現地の潜在需要をいかに掘り起こす仕掛けをつくりことができるか、その見極めが大事だということでしょう。

JKT48のケースでも、インドネシア側からの熱心な働きかけがあったので、台湾でもタイでもなく、インドネシアが先行したと聞いています。

呼びかけに対して答えるかどうか、そしてどう答えるかが、その後を決める分かれ道になるのでしょう。呼びかけに対する応答、そしてキャッチボール。これが対話の本質でもありますね。

ビジネスにおいても同じです。いかに市場から聞こえてくる声をキャッチするか、その呼びかけにどう応答するかが大事なのです。

JKT48は日本語で歌っています。どこまでインドネシア市場でのローカリゼーションを行うのか注目していきたいところです。由紀さおりは、あくまでも日本語にこだわっています。

ローカリゼーションの程度はどこまで行うべきか、これもケースバイケースなので、市場との密接な対話が不可欠だということでしょう。個別の事例に則してじっくり研究するしかありません。







<関連サイト>

Pink Martini 公式サイト

由紀さおりオフィシャルブログ「はじめの一歩 ー日々生ききる

「世界を魅了する日本の歌謡曲~由紀さおり ヒットの秘密~」(NHKクローズアップ現代 2012年2月22日放送 ビデオ映像あり)

Pink Martini & Saori Yuki - ブルー・ライト・ヨコハマ(Youtube)
・・いしだあゆみ とはだいぶテイストが違うジャズスタイルです

JKT48 Meet & Greet di fX(Youtube)
・・インドネシアで日本語で歌うJKT48


<ブログ内関連記事>

書評 『対話の哲学-ドイツ・ユダヤ思想の隠れた系譜-』(村岡晋一、講談社選書メチエ、2008)
・・「呼びかけ」と「応答」によって成り立つ関係、「話す」よりも「聞く」ことの重要性。「対話」の本質について考えるために

「レッドブル」-タイが本家本元の 「ローカル製品」 が 「グローバル製品」 として生まれ変わった!

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・「ローカル商品のグローバル化」において、「レッドブル」の事例とは異なる、進出先市場でのローカリゼーションについて書かれた好著

書評 『プーチンと柔道の心』(V・プーチン/ V・シェスタコフ/A・レヴィツキー、山下泰裕/小林和男=編、朝日新聞出版、2009)






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2011年6月29日水曜日

なぜ「経営現地化」が必要か?-欧米の多国籍企業の歴史に学ぶ


「最近の若者は海外に行きたがらない」。よく耳にするセリフですね。

たしかにそのとおりです。しかし、これはバブル崩壊の頃から言われていた話。理由は、少子高齢化の影響がストレートにでているためだと思われます。

なんといっても一人っ子が増えているので、親が手元からてばなしたくないというケースが多いことは、新人採用にかかわってたときに何度も経験しました。本人は入社したいと思っても、親の都合で断念する。子どもの側からみても、年老いてゆく親をほっておいて上京するのは、しのびないものがあると思う。

これは海外勤務の話ではありません。国内ですらそうなのです。地方から上京するという話ですらまとまらないことが多い。これは中小企業ではあたりまえの傾向です。

若者じしんも考え方が大きく変化しています。地元で就職して、地元の友人たちとずっとつきあい続けたいという意向は、すでに定着したといっていいでしょう。

何ごともメリットとデメリットは裏腹の関係です。逆もまたしかり。デメリットと思われることも、視点をかえればそれはメリットでもある。

今回の大震災と大津波で東北の太平洋岸は大規模に破壊されましたが、テレビでみていると、老人だけでなく、若者たちもまた「地元に残りたい」と口々にのべています。一言でいえば「地元愛」。これが悪いとは誰に言えましょうか?

海外に出る、出ないも同じことです。あくまでも「個人の選択」の問題ですから、一概に、いい悪いはいえないと思います。

いままでのように、有無をいわせず海外にいかせる、国内移動させるという、日本企業ではあたりまえだった考えと慣習が、あまりにも個人を軽視したものだったというべきでしょう。

わたしは、こういう状況だからこそ、さらなる「現地化」を進めるべきだというのが持論です。日本で事業展開する米国の外資系企業も、そういう考えで海外事業展開しています。


植民地における「二重支配体制」が多国籍企業の経営モデルとなった

米国系企業や欧州系企業では、日本企業とはまったく異なるアプローチをしています。

米国や欧州のグローバル企業の現地法人では、ローカル経営は現地代表(マネージング・ディレクター)に権限委譲して完全にまかせていることがフツーです。

たとえば私がいたタイでも、欧米系のグローバル企業の現地代表はみな30歳台から40歳台ににかけての華人系タイ人で、米国でM.B.A.を取得した者が大半でした。従業員はいうまでもなくローカルのタイ人です。

ただし、現地法人トップの人事権とカネにかんしては、親会社がガッチリ握って離さないというのは、進出先の全世界に共通した経営手法ですね。

英語で経理部のことをコントローラー(Control)というのはそういう意味なのです。現地代表は、本社でいえば課長程度といってもいいでしょう。

じっさいに、日本にある外資系企業でも、本社の都合にほんろうされるケースが非常に多いのは、マイクロソフトやグーグルなどの動きを見ていればあきらかでしょう。

なぜこのような経営形態になったかというと、やはり「植民地」における企業経営の経験が非常に大きいと思われます。

英領インドにおける英国の東インド会社(East India Company)、蘭領東インド(=現在のインドネシア)におけるオランダの東インド会社が典型的な事例です。英国とオランダの双方に本社のある、エネルギーのロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)や、食品のユニリバー(Unilever)のような英蘭系グローバル企業は、その最右翼というべきでしょう。

要は、限られた駐在員ですべてをこなすのは不可能なので、「二重支配体制」を創り上げたのです。

「二重支配体制」とは、日本の近現代史の例でいえば、敗戦後進駐してきたアメリカ占領軍が、日本の官僚制を温存して現地の行政を行わせ、肝心かなめのところはガッチリ軍政当局が押さえていた、という「二重支配体制」を考えてみればいいでしょう。

マッカーサーはこの支配体制を、すでに当時は米国の植民地であったフィリピンで実験済みだったのです。マッカーサーは父親の代からフィリピンには深い利害関係をもっていました。


欧米の多国籍企業で「経営現地化」が進んだもう一つの理由

第二次大戦後は、とくに中南米では現地駐在員が、誘拐やテロの被害に遭遇することが激増し、この対策として現地経営は現地人にまかせていった、という歴史的背景もあります。これは、米国でもドイツなどの欧州企業でも同じことです。

日本人のビジネスマンが、フィリピンや中南米で身代金目的で誘拐される事件が相次いでいた頃、米国や欧州の多国籍企業はすでに、「経営現地化」を完了していたわけなのです。

中南米の事例は、M.B.A.の授業で「国際ビジネス」を受講したとき、元米国海軍士官のエンジニアで、ブラジル駐在体験もある国際ビジネスマン経験をもつ教授が教えてくれましたが、なるほどと思ったものです。

ちなみに、その教授は、朝鮮戦争には海軍士官として出征し、佐世保基地に駐在したという経験もあり、日本人の私には親しく接していただいた。東部出身の、アナポリスの米海軍兵学校(US Naval Academy)出身のエリートでした。

進出先の現地での企業経営は、できるだけ現地出身の人間にまかせていくというのがスジとしてとおるだけでなく、合理的でもあるというべきでしょう。このような形をとれば、やる気で能力ある現地社員のモチベーションをうまく活用することも可能になります。

これは個々の企業によって対応は異なるでしょうが、必ず進めていかねばならない課題といっていいでしょう。

現地に骨を埋めろ、というのはたやすいですが、それを強いることは韓国企業ならいざしらず、現在の日本では難しい。現地滞在はとりあえず数年、というのが限界ではないでしょうか?

それなら、いっそのこと現地出身の人間を採用して日本国内で教育訓練し、現地に送り返しほうが現実的でだといえるかもしれません。

もちろん、経営者自身が現地に骨を埋めるつもりであれば、それはそれでかまいません。


とはいえ、「ビジネスに唯一の正解はない」!

とはいえ、「経営現地化」が最終解決ではないことは、「現地化」に潜む落とし穴-「ついに誕生!中国人総経理」で暗転した現地法人の顛末 という記事にも書かれています。「総経理を中国人にすること」が現地化の目的ではない。責任権限の明確化が不可欠なわけですね。

「ビジネスに唯一の正解はない」、というのはこのケースもふくめて、すべてのケースにあてはまるといってよいでしょう。

どこの国でも似たような事例があります。モデルが正しくても、運用する仕方と運用する主体である人間次第で、結果は異なってくるものなのです。

日本企業はまだまだ海外事業の経験を十分につんだ状態とはいえないでしょう。多国籍展開をすすめる大企業ですらそういう状況ですから、中堅中小企業は、まだまだ試行錯誤を続けていかねばならないのは仕方ありません。

ですが、日本の大企業をそのままなぞるのは、経営資源のすくない中堅中小企業では難しいものもあります。参考にしつつ、独自の取り組みを行うことも必要かもしれません。

場合によっては、官僚的な大企業組織よりも、柔軟かつスピーディに「経営現地化」を進めることができるかもしれません。ただし、優秀なブレインが必要でしょう。



<ブログ内関連記事>

書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)

イエズス会士ヴァリリャーノの布教戦略-異文化への「創造的適応」
・・キリスト教を布教する立場からみた異文化の土地における「経営現地化」の方法論について。そのエッセンスは、現地語に習熟、現地の文化と風習を学んで適応することから始める。現地に大幅な権限委譲を行い、かつ現地人の担当者を育成する。将来、現地の統轄をまかせることのできる現地人責任者を育成する教育を現地で行う。

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)
・・同じく、インバウンドの立場からの「経営現地化」を考えるには示唆の多い本

書評 『村から工場へ-東南アジア女性の近代化経験-』(平井京之介、NTT出版、2011)-タイ北部の工業団地でのフィールドワークの記録が面白い ・・経営する側ではなく、経営される側のローカル従業員たちはどう考えているかがわかる内容

書評 『グローバル・ジハード』(松本光弘、講談社、2008)-対テロリズム実務参考書であり、「ネットワーク組織論」としても読み応えあり

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い!

(2014年5月22日 情報追加)





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(2012年7月3日発売の拙著です)





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end

2011年6月8日水曜日

Facebook Principle (フェイスブックの原則) を MVV (ミッション・ビジョン・バリュー) の観点からみてみよう


 軸、中心軸、背骨、プリンシプル、原理原則・・・

 いろんな言い方が可能ですが、原理原則がしっかりしていれば、海外進出にあたってはローカル市場の特性にあわせてローカライズできる部分はそうすればいい、カスタマイズできる部分はそうすればいい

 そして、ローカライゼーションは現地の担当者にまかせる

 米国でうまれたフェイスブックもまた、その定石を愚直なまでに貫いています。

 日本での事業展開にあたって、フェイスブックの海外戦略担当者がインタビューに答えた記事がありました。「独占インタビュー! 絶好調のFacebook・海外戦略担当者が語った、日本攻略への布石」 (日経トレンディ)。

ミクシィなどの SNS が先行する日本市場ですが、フェイスブックは 「実名主義」や「顔出し」といった原則を絶対に(!)曲げようとしません。

 もともと、大学の顔写真入り新入生紹介本であるフェイスブック(・・直訳すると「顔本」(笑)ですね)を、オンライン化したのがフェイスブックですから、当然といえば当然でしょう。

 それだけでなく、事業家というよりは社会革命家のような創業経営者マーク・ザッカーバーグの、人生における基本姿勢、信念といったものが、事業経営にもストレートに反映しているようです。そのため、現在にいたるまでさまざまな物議をかもしながらも突き進んでいるのは、みなさんご承知のことでしょう。

 「実名主義」や「顔出し」という、頑(かたくな)なというか、ゴーマンにも見えるこの原理原則を受け入れるか、受け入れないか、この原理原則は日本人にはまだまだ高いハードルなのかもしれません。

 しかし、フェイスブックに参加することを意志決定した日本人は、みなこの原則をさいしょは抵抗がありながらも受け入れ、ある意味ではマーク・ザッカーバーグの思想に共鳴していくということも体験していくことになるのでしょう。

 フェイスブックの言語はいうまでもなく英語ですが、日本で普及がはじまった最大の要因は、「いいね!」ではないかと考えています。

 英語では 「Like !」、これを直訳して 「好き!」 などという表現にせず、「いいね!」という日本語を採用したのは、ほんとうに天才的なヒラメキです。これぞカスタマイゼーションの極地というべきでしょう。

 このほか、日本語環境むけにさまざまなカスタマイゼーションを行っていることは、フェイスブックの伝道者の方々が積極的に情報発信していますので、あらためてわたしが指摘することはありません。

 以下に、Facebook Principle (フェイスブックの原則)を転載しておきます。
http://www.facebook.com/principles.php

 日本語と英語のニュアンスに注意を払いながら読んでみてください。

1. 情報を共有し、つながりになる自由 (Freedom to Share and Connect)
2. 情報の所有と管理 (Ownership and Control of Information)
3. 情報の自由な流れ (Free Flow of Information)
4. 基本的平等 (Fundamental Equality)
5. 社会的価値 (Social Value)
6. オープンなプラットフォームと標準 (Open Platforms and Standards)
7. 基本的サービス (Fundamental Service)
8. 公共の福利 (Common Welfare)
9. 透明性のあるプロセス (Transparent Process)
10. 1つの世界 (One World)



Facebook Principles (フェイスブックの原則)

Facebookは、世界のオープン性と透明性を高めることを目的として構築されています。これにより、優れた理解とつながりが生まれると弊社は考えています。Facebookは、個人が共有し、つながりを持つことができる優れた機能を提供することで、オープン性と透明性を推進しますが、これらの目標を達成するうえで、特定の原則がFacebookの指針となります。これらの原則の達成の制約となるのは、法律、テクノロジー、進化する社会規範の制限のみであるべきです。したがって、Facebookサービス内におけるそれらの権利および責任の基盤として、これらの原則を確立するものとします。


Facebook Principles

We are building Facebook to make the world more open and transparent, which we believe will create greater understanding and connection. Facebook promotes openness and transparency by giving individuals greater power to share and connect, and certain principles guide Facebook in pursuing these goals. Achieving these principles should be constrained only by limitations of law, technology, and evolving social norms. We therefore establish these Principles as the foundation of the rights and responsibilities of those within the Facebook Service.


1. 情報を共有し、つながりになる自由 (Freedom to Share and Connect)
人は、欲しい情報が何であれ、それをあらゆる媒体および形式で共有する自由を持ち、また、当事者同士が同意している限り、いかなる人、組織、サービスともオンラインでつながりになる権利を有するべきです。

People should have the freedom to share whatever information they want, in any medium and any format, and have the right to connect online with anyone - any person, organization or service - as long as they both consent to the connection.


2. 情報の所有と管理 (Ownership and Control of Information)
人は自分の情報を所有すべきです。また、それを好きな人と共有し、好きな場所へ持ち運ぶ(Facebookサービスから削除する行為を含む)自由、さらに、自分の情報を共有する相手を選び、そのような選択を保護するプライバシーコントロールを設定する自由を持つべきです。ただし、Facebookサービスの外部では特に、そのような自由によって、情報を受け取った人がその情報をどのように使用するかを制限することはできません。

People should own their information. They should have the freedom to share it with anyone they want and take it with them anywhere they want, including removing it from the Facebook Service. People should have the freedom to decide with whom they will share their information, and to set privacy controls to protect those choices. Those controls, however, are not capable of limiting how those who have received information may use it, particularly outside the Facebook Service.


3. 情報の自由な流れ (Free Flow of Information)
人は、他の人によって参照可能となったすべての情報にアクセスする自由を持つべきです。また、この情報の共有とアクセスを簡単、迅速、かつ効率的にする実用的なツールも持つべきです。

People should have the freedom to access all of the information made available to them by others. People should also have practical tools that make it easy, quick, and efficient to share and access this information.


4. 基本的平等 (Fundamental Equality)
個人か、広告主か、開発者か、組織か、その他の団体かを問わず、あらゆる人は、自分の主な活動が何かに関係なく、Facebookサービス内で自由に表現し、配信内容および情報にアクセスすることができるべきです。Facebookサービスを使用するすべての人に適用される一連の原則、権利、責任が存在すべきです。

Every Person - whether individual, advertiser, developer, organization, or other entity - should have representation and access to distribution and information within the Facebook Service, regardless of the Person's primary activity. There should be a single set of principles, rights, and responsibilities that should apply to all People using the Facebook Service.


5. 社会的価値 (Social Value)
人は、自分のアイデンティティとつながりを通じて、信頼と評判を築く自由を持つべきであり、Facebookの利用規約で述べられている内容以外の理由で、Facebookサービス上の自分の情報が削除されることがあってはなりません。

People should have the freedom to build trust and reputation through their identity and connections, and should not have their presence on the Facebook Service removed for reasons other than those described in Facebook's Statement of Rights and Responsibilities.


6. オープンなプラットフォームと標準 (Open Platforms and Standards)
人は、利用可能な情報にアクセスするためのプログラマティックインターフェイスを持つべきです。これらのインターフェイスの仕様は、すべての人に公開され、すべての人が利用およびアクセスできるべきです。

People should have programmatic interfaces for sharing and accessing the information available to them. The specifications for these interfaces should be published and made available and accessible to everyone.


7. 基本的サービス (Fundamental Service)
人は、自分の存在を確立し、他の人とつながりを持ち、情報を共有するために、Facebookを無料で利用できるべきです。参加または貢献の度合いに関係なく、すべての人がFacebookサービスを利用できるべきです。

People should be able to use Facebook for free to establish a presence, connect with others, and share information with them. Every Person should be able to use the Facebook Service regardless of his or her level of participation or contribution.


8. 公共の福利 (Common Welfare)
Facebookとその利用者の権利および責任は、利用規約に記載されているべきであり、その内容と本原則に矛盾があってはなりません。

The rights and responsibilities of Facebook and the People that use it should be described in a Statement of Rights and Responsibilities, which should not be inconsistent with these Principles.


9. 透明性のあるプロセス (Transparent Process)
Facebookは、その目的、計画、ポリシー、運用に関する情報を公開すべきです。また、通知およびコメントのタウンホールプロセスと、本原則または利用規約の修正に関する入力および会話を促す投票システムを持つべきです。

Facebook should publicly make available information about its purpose, plans, policies, and operations. Facebook should have a town hall process of notice and comment and a system of voting to encourage input and discourse on amendments to these Principles or to the Rights and Responsibilities.


10. 1つの世界 (One World)
Facebookサービスは、地理的境界および国境を越えて、世界中であらゆる人が利用できるべきです。

The Facebook Service should transcend geographic and national boundaries and be available to everyone in the world.



 もちろん、これらの原理原則は最初からあったものではなく、事業展開をしていくなかで試行錯誤を続けながら練り上げていったものだと思います。

 個人でも組織でも、原理原則を明確にもつことの重要性をしめしているのが、ザッカーバーグであり、フェイスブックであるといっていいでしょう。まだまだ物議をかもす存在ではありますが、それは原理原則を貫く姿勢ゆえ。批判をものともせずに突き進む姿勢。

 使命感をもった経営者と企業は、ほんとうに強い。



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