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2011年12月19日月曜日

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?



日本製品とサービスを海外市場で販売する人のため「ものの見方」と「考え方」を身につけるために

本書は、とくにメイド・イン・ジャパンの製品やサービスを海外市場向けに販売する際に考えておくべきことを、デザインという観点から豊富な事例をつうじて、多面的かつ複合的に見るための視点を提供する、中身の濃いビジネス書です。

タイトルの『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか』に端的に表現されているように、日本製品やサービスの海外普及は、その進出先のローカル市場の声に虚心坦懐に従うと、一人歩きを始めるようになることがあります。

これは、浮世絵やカラオケやアニメがとくにプロモーションをしたわけでもないのに海外に拡がっていったプロセスとよく似ていますが、お金を払って好きで購入するのが現地の人たちである以上、当然といえば当然でしょう。

だが、なぜそうなのかを考えることが、このプロセスを意識的に行うためには不可欠ですね。そのためには勘に頼るのではなく、現地の顧客のアタマのなかを論理的にとらえることが大事だと著者は説いています。

第2章の「世界で売れる8つの日本製品」で扱われた事例は、マルちゃんのカップ麺のほか、キッコーマンの醤油、パナソニックの欧州白物家電、洗浄機能のついたTOTOの便器、ソニー・エリクソンの携帯電話といった製品だけでなく、KUMON(公文式)教室、ヴェルサイユ宮殿で開催された村上隆のアート、フランス料理のシェフとサービスにも及んでいます。著者の一人がイタリアのミラノ在住だけあって、欧州市場での事例が多く取り上げられています。

第3章の「現地化のチェックポイント」では、ローカリゼーション(=現地化)のために必要な「ものの見方」について具体的なアドバイスが紹介されています。

現地の人々のアタマのなかにある日常生活で働くロジックを知るには、製品やサービスをめぐる現地市場のコンテクスト(=文脈)を理解し、現地の歴史・地理・言語に対する関心をもち、ディテールにこだわりつつ俯瞰的(=バーズアイ)にも見るなど、異なる視点の使い分けや組み合わせ、二者比較だけでなく三点測量を行うべきなどの「ものの見方」を身につけるべきである、と。

本書は、「日経ビジネスオンライン」に連載された記事に、現地市場における日常生活のロジックを把握するツールである「ローカリゼーションマップ」の解説を記した第4章を書き下ろしで加えたものですが、もともとは、『デザインの異文化対応力』というタイトルを考えていたのだそうです。本書の内容はこのタイトルでほぼすべて表現しつくされているといっていいでしょう。製品でもサービスでも、共通して考慮に入れておかなければならないのは、海外現地市場でローカライズするための異文化理解だからです。

日本の国内市場が縮小していくなか、市場を世界に求めて企業活動がグローバル化していくのは不可避の流れです。

とはいえ、現地の人々のアタマのなかを知るにはどうしたらいいかという課題をもっているのは、商品開発やデザイン関係者だけではありません。

この課題をもつビジネスパーソンにはぜひ薦めたい一冊です。



<初出情報>

■bk1書評「日本製品とサービスを海外市場で販売する人のため「ものの見方」と「考え方」を身につける」投稿掲載(2011年11月30日)
■amazon書評「日本製品とサービスを海外市場で販売する人のため「ものの見方」と「考え方」を身につける」投稿掲載(2011年11月30日)





目 次

INTORODUCTION グローバル時代に欠かせないローカリゼーションの視点

CHAPTER 1 世界のお客さんの「頭の中」
生活パターンが違うとロジックも違う
コンテクストと脚本のミスマッチ
レクサスは「侘びさび」のイメージを出したが・・・・
イケアは「スウェーデン」をトッピングとして使う
ミラノは日本製品の好感ゾーンの南限
共感は「五感」ではなく「論理」によって生まれる

CHAPTER 2 世界で売れる8つの日本製品
① キッコーマンの醤油は「日本食」ではなく「グローバルスタンダード商品」
② 「マルちゃんする」とメキシコで独自解釈されたカップ麺
③ 「腑に落ちなくても従う」-パナソニックの欧州白物家電戦略
④ 外国人も洗ってほしい?-TOTO が目指す世界制覇
⑤ 世界の親を熱狂させる公文式「超国家」学習法
⑥ スマートフォンに現地化は不要?-ソニー・エリクソンの戦略
⑦ ヴェルサイユ宮殿の村上隆
⑧ フランス人になりきろうとしたシェフ松嶋啓介

コラム① イタリア女性の化粧が派手で香水が強いのはなぜ?

CHAPTER 3 現地化のチェックポイント
ユーザー調査に必要な4つの基礎的素養
翻訳は、文化適合してこそ、意味が通じる
国によって「バカにされる表現」は違う
デザインの違いは国の制度にも関係している

コラム② クールジャパンは日本を救えるか?

CHAPTER 4 ローカリゼーションマップを作る

あとがき



著者プロフィール

安西洋之(あんざい・ひろゆき)

1958年横浜生まれ。上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、イタリアでビジネスプランナーとして独立。現在ミラノ在住。デザインを中心にさまざまな分野のマーケティングや文化論などを活動領域とする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

中林鉄太郎(なかばやし・てつたろう)

1965年東京生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、黒川雅之建築設計事務所に入社し、プロダクトデザインを担当。10年目に退社し、1997年テツタロウデザイン開設。文具、日用雑貨から住宅設備機器などのデザイン、中小企業へのデザインディレクションも行う。日本大学芸術学部デザイン学科非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<書評への付記>

本書で著者が説いていることを一言で言ってしまえば、現地の(潜在)顧客の「内在的ロジック」を知らねばならないということになるでしょう。

「内在的ロジック」というとやや難しい表現ですが、ある特定の人たちのものの見方を規定している目に見えないロジックと言い換えていいかもしれません。

同じ人間であっても異なる文化の人間は、とくに異なる言語を使用している以上、異なるものの見方をするのはある意味では当然なのです。

たとえば、日本語では名詞の単数と単数の区別をしませんが、英語をはじめとする西欧語では単数と複数は冠詞を使用して厳密に区分します。日本語でネコといったとき、一匹なのか三匹なのかわかりませんが、英語では a cat と three cats と異なる表現になります。つまり、こういった単純な物事でも見方が異なるのです。

言語、とくに生まれたときに習得する「母語」をとおして見る世界は、そもそも言語によって大きく異なるのであり、これに言語以外の文化が大きく影響して、さらに異なるものの見方がなされるようになっていくのです。

本書でも著者が強調しているように、自然条件や地理、そしてそのうえで生活している人間の歴史といった過去の集積が、いわゆる「内在的ロジック」を作り上げているのです。

もちろん、同じ文化のなかにいても個々人の違いはありますが、言語に代表される文化が支配する領域はきわめて深層まで及んでいるのが普通です。ですから、その言語を日常的に使っているうちに、その文化特有のものの見方が、知らず知らずのうちに形成されるわけです。


「ローカリゼーション」(現地化)について考えるには外国製品の日本市場での定着事例について考えてみるといい

日本水産のインスタント麺「マルちゃん」は、アメリカの出稼ぎにきていたメキシコ人たちによってメキシコに持ち帰られ、メキシコ流にカスタマイズされ、現地市場でローカライズされて広く受容されるにいたっています。メーカーはその動きに追随することで売り上げを大いに伸ばしているというわけですね。

つまり、メキシコ国民自身による主体的な選択の結果、ひろく国民に浸透したのであって、日本企業はその流れに乗って、ローカリゼーションは現地の人たちにまかせたということがポイントなわけです。

これは外国製品が日本市場で成功しているケースですが、外国製品の日本市場での定着事例逆に考えてみれば、日本市場でのローカライセーションがいかなるものか理解できると思います。なぜ、海外市場でローカリゼーションをしなければならないかは、発想を逆転してみれば理解できるはずです。

世界中のものを、なんでもかんでも取り入れているようにみえる日本人も、じつは当の日本人にもよく「見えないロジック」によって無意識のうちに選別作業を行っているのです。

海外にモノやサービスを売るのがアウトバウンド(outbound)であれば、海外製品を輸入して日本国内で売るのはインバウンド(inbound)ということになります。これは旅行業界ではよく使うコトバですね。

インバウンドの例としてはそれこそ無数にありますね。明治以降の日本人は、ひたすら欧米の事物を輸入しては日本化してきましたが、明治以前でも鎖国時代の江戸時代であっても中国の事物をひたすら導入して日本化してきた歴史があります。

これらは日本人自身の主体的な選択による結果ですが、キリスト教の日本布教は、ある意味では異文化マーケティングであり、ハイカルチャーのサービスのローカリゼーションだと言えるかもしれません。『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)という本がひじょうに面白い内容です。

近年の例としては、ソフトウェアを中心としたIT産業は、まさに外資系企業の製品サービスを日本国内市場向けにローカライズしてきた歴史そのものであるといっても言い過ぎではありません。一例として、『林檎の樹の下で-アップル日本上陸の軌跡-』(斎藤由多加、アスキー出版局、1996、新版 2011)をあげておきましょう。

いずれも、日本に輸出した外国企業と、日本サイドで定着させようと努力奮闘した人たちがいてこそ成功した事例について語っています。

これらとは逆に、アウトバウンドの例としては、本書で取り上げられた事例をより深掘りする本としては、『寺子屋グローバリゼーション-The Kumon Way-』(木下玲子、岩波書店、2006)をあげておきたい思います。これは KUMON(公文式)がいかに海外に普及していったかを克明にレポートしたノンフィクション作品です。

また、日本独自の文化の海外進出にかんしては、『プーチンと柔道の心』(V・プーチン/ V・シェスタコフ/A・レヴィツキー、山下泰裕/小林和男=編、朝日新聞出版、2009)という本が面白い内容です。この事例は、マルちゃんとは違った意味で、現地の人間が徹底的に武道のあり方にこだわった事例といえるかもしれません。




「ローカリゼーション」のために身につけるべきマインドセットについて

本書でも強調されている「ズームイン」と「ズームアウト」という二つの異なる視点の使い分けについては、認知心理学の分野ではアジア人と西洋人の違いが明らかになっており興味深いものがあります。

「ズームイン」と「ズームアップ」は、「寄せ」と「引き」といった表現を使って見るのもいいかもしれません。この二つの視点の使い分けが重要なわけですね。あるいは、ディテールにこだわりつつ俯瞰的(バーズアイ)でもみるという二つの視点をともにもつことが重要だと言うべきでしょう。

また、著者がいう「三点測量」もきわめて重要です。この点については、日本大好きのタイ人のグラフィックデザイナーが書いた面白い本があります。

『座右の日本』(プラープダー・ユン、吉岡憲彦訳、タイフーン・ブックス・ジャパン、2008)。英語はわかるが日本語はあまりできないタイ人がみた日本。

わたしの場合も、日本・米国・タイ(アジア)という視点でモノを見てきましたが、これも「三点測量」の好事例と言えるでしょう。

二者比較から、三点測量へ。つまるところ、これは複眼的視点ということになります。やや高度な視点の持ち方ですが、ぜひ心がけていただきたいものです。



<関連サイト>

異文化市場で売るためのモノづくりガイド-「ローカリゼーションマップ」(日経ビジネスオンライン 連載 2010年~2011年)

#lmap ローカリゼーション・マップ(facebookページ 外部からの閲覧可能)



<ブログ内関連記事>

複眼的思考

書評 『座右の日本』(プラープダー・ユン、吉岡憲彦訳、タイフーン・ブックス・ジャパン、2008)
・・タイ人がみた日本。さらに米国という比較軸が加わった「三点測量的な視点」の面白さ

書評 『知的複眼思考法-誰でも持っている創造力のスイッチ-』(苅谷剛彦、講談社+α文庫、2002 単行本初版 1996)
・・必読書!

書評 『日本語は亡びない』(金谷武洋、ちくま新書、2010)
・・「母語」としての日本語の意味について考える

朝青龍問題を、「世間」、「異文化」、「価値観」による経営、そして「言語力」の観点からから考えてみる

いかにして異なる業種業界や職種間、また組織内の異なる機能間で「共通言語」と「コンテクスト共有」によるコミュニケーションを可能とするか


異文化マーケティング

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)

書評 『聖書の日本語-翻訳の歴史-』(鈴木範久、岩波書店、2006)

「泥酔文化圏」日本!-ルイス・フロイスの『ヨーロッパ文化と日本文化』で知る、昔から変わらぬ日本人

イエズス会士ヴァリリャーノの布教戦略-異文化への「創造的適応」

書評 『プーチンと柔道の心』(V・プーチン/ V・シェスタコフ/A・レヴィツキー、山下泰裕/小林和男=編、朝日新聞出版、2009)

書評 『マイ・ビジネス・ノート』(今北純一、文春文庫、2009)
・・フランスで活躍してきた日本人ビジネスマンの本


アウトバウンド・マーケティング

『ベルギービール大全』(三輪一記 / 石黒謙吾、アートン、2006) を眺めて知る、ベルギービールの多様で豊穣な世界

IKEA (イケア) で北欧ライフスタイル気分を楽しむ-デフレ時代の日本に定着したビジネスモデルか?
・・商品を売るには、文化そのもを売る、という姿勢が大事


インバウンド・マーケティング

ローカリゼーションの温故知新-インバウンド戦略の原点である藤田田(ふじた・でん)の「マクド」・「ナルド」を見よ!






(2012年7月3日発売の拙著です 電子書籍版も発売中!)






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