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2012年12月28日金曜日

「昇龍の年」である2012年を振り返り、「蛇の年」である2013年を考える


ことし2012年は「辰年」でした。「龍の年」ですね。
来年2013年は「巳年」です。「蛇の年」ですね。

「辰年」は「昇龍の年」。
「巳年」は「脱皮を繰り返す蛇の年」。

「昇龍の年」にホップし、
「蛇の年」にステップ、そしてジャンプと脱皮していく。

三段跳びで発展していきたいと思う年末のきょうこの頃です。

龍と蛇はじつは同じもの。
インドではともにナーガといっています。
その心は、水の神。

だから、2012年と2013年は連続していると考えるべきです。
まさに 辰巳ですね。 

去年(こぞ)今年(ことし) 貫く棒の如きもの(虚子)

ことしもありがとうございました。
みなさま、よいお年を!


<ブログ内関連記事>

『龍と蛇<ナーガ>-権威の象徴と豊かな水の神-』(那谷敏郎、大村次郷=写真、集英社、2000)-龍も蛇もじつは同じナーガである




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2012年12月26日水曜日

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い!



この本は、「アウェイ」でビジネスをすることの意味を、いやというほどわからせてくれる希有な本です。

国内でも新規創業がかならずしも100%成功するわけではないことは、みなさんもよく理解できることと思います。日本国内はサッカーの比喩をつかえば「ホーム」ですが、海外はたとえタイのような「親日国」であっても「アウェイ」であることには変わりません。

中堅中小企業にとっての海外進出は、「アウェイでの第二創業」であるということをアタマのなかに刻みつけてほしいものです。つまり難易度はきわめて高いということなのです。

グローバル化やグローバリゼーションということがよく言われますが、実務家にとっては禁句です。なぜなら、国によって法律が違うから。文化が違うから。グローバル化されても、国境というものは厳然と存在するわけです。

「日本の常識は世界の非常識」というのは往年の評論家・竹村健一氏の名言ですが、日本という「ホーム」の常識は「アウェイ」では通用しないと思って間違いありません。

もちろん人間のつくった法律ですから基本的に共通するものもありますが、そもそもアジアにおいては近代化が日本よりも遅く開始されたのであり、法治主義が徹底しているわけでもありません

リスクがあるからこそリターンはある。アジアには日本では期待できないチャンスがまだまだ多いのは事実です。だからこそ、リスクは「想定内」にしておいて、できるだけ小さくするように設計するに限るわけです。

本書は入門書ではないので読者は限定されますが、この分野にかかわりのある人、関心のある人にとっては必読でしょう。

出版社サイトに詳細な目次があるので紹介させていただきます。すくなくともこの目次だけでもじっくり読んでみてください。タイの事例が多いのは、日本企業にとっての進出が中国よりも早く、それだけ問題事例も多いということです。


はじめに-本書は「入門書」ではない
序章 景気減速で高まる事業リスク なぜ今リスク面からアジアを語るのか

第一部 マクロ経済からとらえたアジア・ビジネスの局面

第一章 人口ボーナスの光と影 
 第一節 人口ボーナスの定義と内容
 第二節 人口ボーナス期の意味
 第三節 いつ終わる?アジア諸国の人口ボーナス期
 第四節 チャイナ・ショックの予感
第二章 金融政策リスクとどう向き合うか 
 第一節 円高の原因と現状
 第二節 金融政策リスクの今後―日銀法改正問題とアジア・ビジネス

第二部 痛い目に遭わないための実務上の注意点

第一章 アジアにおける日系企業の法務リスクを考える 
第二章 アジアにはびこる悪質日本人コンサルタント 
第三章 アジア諸国における不動産投資のリスク 
第四章 真のローカル・エキスパティーズ 
第五章 アセアン投資ファンドへの期待 


第三部 エキスパートが語る 罠を見抜く知識と戦法

第一章 アジアのクレジット・ビジネスとリスク対策    
 定石1 世界の現状とアジア進出の必然
 定石2 無限の市場で現地企業となる覚悟
 定石3 自ら情報を確認すること
 定石4 外国人とのコミュニケーションの重要性
 定石5 偏狭なナショナリズムで冷静さを失うな
 定石6 外国では、日本および日本人の存在はわれわれが思うほど日本は外国に知られていない
 実践1 現地に飛ぼう
 実践2 形式と実行
 実践3 交渉相手はアジアでは「個」、日本では「会社」
 実践4 交渉には必ずカウンターの武器を持て
 実践5 「協調・融和型」の日本企業、「対立」をいとわない海外企業
 実践6 利益の帰属
 実践7 中国人と華人
 実践8 個人の関係とビジネス取引の峻別
 実践9 アジアにおける信用とは
 実践10 法律~その前提としての法治国家を知る
 実践11 どのように現地法人を経営したか
第二章 M&Aの現場から見えてくるアジア―リスクへの心構えとアプローチ方法
 リスク編1 “常識を疑う”ことが大事:中国での「政府の許認可」の例
 リスク編2 本当にあった怖い話:インドネシアの「ビザ」
 リスク編3 微笑みの裏側?:華人をも自家薬籠中のものとするタイ人の凄み
 リスク編4 牙をむく“温厚な紳士”:マレーシア・ブミプトラ政策のもたらす光と影
 アプローチ編 大中華圏内のキャッチボール:現代エリート華僑たちの生態
 要点 アジアで活躍するための日本人の要件
第三章 苦渋12事例に学ぶタイ・ビジネス
 教訓1 タコ壺駐在員
 教訓2 「ちょっと知り合いになった」というのが最も危ない
 教訓3 日本人を安易に信用するな、日本人にこそ注意しろ
 教訓4 わからない契約書にはサインするな。そして日本人には注意しろ。
 教訓5 日本の大手電機・自動車メーカーの下請けいじめはタイでも同じ
 教訓6 オーナー経営者の一人相撲経営によるシロウト実務
 教訓7 うかつに信用した仲間が…
 教訓8 能力も経験もないドラ息子にやらせたら、ただ騙されただけ
 教訓9 タイでは労働者は厚く保護されている
 教訓10 高潔で有能な社長でも、「想定外」の事態に直面することがある
 教訓11 管理体制の不備
 教訓12 詐欺、不正、ぼったくり。悪質日本人コンサルタントにご注意を
第四章 進出準備段階における検討事項~日本でできないことはアジアでもできない
 第一節 何のためのアジア進出か
 第二節 アジア進出に際しての事業計画の必要性
 第三節 現地法人経営のあり方
第五章 企業法務組織論の観点からリスクを探る
 第一節 法務機能の目指す姿
 第二節 法務リスク管理とは
 第三節 法務リスク管理に関する本社と現地法人との関係
 第四節 法務リスク管理体制をどうやって構築するか?
 第五節 これからどうする?実務的なステップ
 第六節 法務リスク管理へのアプローチ

第四部 勝利の方程式を求めて

第一章 勝利の方程式の構成要素 
第二章 「勝利の方程式」のケース・スタディ(1)
第三章 「勝利の方程式」のケース・スタディ(2)
  
あとがき-きちんとやれば「勝ちやすい時代」を生きる







<関連サイト>

『誰も語らなかったアジアの見えないリスク』(出版社サイト)
http://pub.nikkan.co.jp/books/detail/00002458


<ブログ内関連記事>

書評 『中国の次のアジア(日経BPムック)』(日経ビジネス=編集、日経ビジネス、2012)-アジアの中心は東南アジア、南アジアへシフトしていく

書評 『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法-「アジアのやり方」を徹底的に理解し確固たる戦略をもって進出せよ-』(森辺一樹、中経出版、2012)-海外進出は「アウェイでの戦い」である

アジア進出に際しては「失敗事例」を押さえたうえで「成功方法」を考えよう-『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?』 と 『アジアで成功する企業家の知恵』を読む

書評 『中国ビジネスの崩壊-未曾有のチャイナリスクに襲われる日本企業-』(青木直人、宝島社、2012)-はじめて海外進出する中堅中小企業は東南アジアを目指せ!

「脱・中国」に舵を切るときが来た!-『中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!』(三橋貴明、ワック、2010)はすでに2年間に出版されている

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ

書評 『地獄へようこそ-タイ刑務所/2700日の恐怖-』(コリン・マーティン、一木久生訳、作品社、2008)-無実の罪で投獄された白人ビジネスマンが手記につづるタイの刑務所の恐るべき実態 

書評 『グローバル・ジハード』(松本光弘、講談社、2008)-対テロリズム実務参考書であり、「ネットワーク組織論」としても読み応えあり

(2014年1月18日、5月22日 情報追加)



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2012年12月21日金曜日

書評 『中国の次のアジア(日経BPムック)』(日経ビジネス=編集、日経ビジネス、2012)-アジアの中心は東南アジア、南アジアへシフトしていく


「チャイナプラスワン」ということは、かなり以前から言われていたことですが、ことし2012年8月の「尖閣暴動」以来、もはや避けて通れないことになってきています。

『中国の次のアジア(日経BPムック)』(日経ビジネス=編集、日経ビジネス、2012)は、基本的に大企業で働く人たちを読者対象としている「日経ビジネス」の記事を「特集」として編集しなおしたものです。

このような形で一冊にまとまっていると、東南アジア(+南アジア=インド・バングラデシュ)を一覧するうえで有用であるといってよろしいでしょう。

ASEANとほぼ重なる東南アジアと、その周辺に位置する南アジアを、ひとつの全体として把握することができます。

目次を紹介しておきます。


目 次

中国リスクに備えよ
次の中国を狙う国々
新興11カ国マップ: アジアの中心は南に移る

【第1章】 立ち上がるポスト中国

●ミャンマー (遅れてきた新興国)
●ベトナム (勤勉な技術者の宝庫)
●インドネシア (爆発する中間所得層)
●フィリピン (グローバル人材の潜在力)
●インド (世界最大の消費市場)
●タイ (モノづくりの結節点)
●マレーシア (危機感募る優等生)
●ラオス (インドシナのダイナモ)
●シンガポール (ASEANの先進国)
●バングラデシュ (最貧国の逆襲)
●カンボジア (失われた時を求めて)

【第2章】 挑む、日本企業

【第3章】 アジア攻略、虎の巻

●現地のスペシャリストに聞く「ベトナムで成功する秘訣」
●現地のスペシャリストに聞く「フィリピンで成功する秘訣」
●現地のスペシャリストに聞く「ミャンマーで成功する秘訣」
●データ編: 新興アジア11カ国の基礎的資料


「日経ビジネス」による各国のキャッチコピーによって、直観的な把握が可能となります。

とくに製造業にとっては、東南アジアや南アジアが今後の中心になってくるのは間違いないことです。

「モノづくりの結節点」というコピーのついたタイは、とくに中堅中小企業にとっては、最初の海外進出先として最適であるといっていいでしょう。

ぜひ アジア進出に際しては「失敗事例」を押さえたうえで「成功方法」を考えよう-『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?』 と 『アジアで成功する企業家の知恵』を読む で取り上げた『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?-「後悔しない」成功マニュアル-』(日経トップリーダー編、日経BP社、2011)も併読されることをおすすめします。



⇒ 弊社ケン・マネジメントは、タイ進出のお手伝いもしております。 http://kensatoken.com/







<ブログ内関連記事>

書評 『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法-「アジアのやり方」を徹底的に理解し確固たる戦略をもって進出せよ-』(森辺一樹、中経出版、2012)-海外進出は「アウェイでの戦い」である

アジア進出に際しては「失敗事例」を押さえたうえで「成功方法」を考えよう-『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?』 と 『アジアで成功する企業家の知恵』を読む

書評 『中国ビジネスの崩壊-未曾有のチャイナリスクに襲われる日本企業-』(青木直人、宝島社、2012)-はじめて海外進出する中堅中小企業は東南アジアを目指せ!

「脱・中国」に舵を切るときが来た!-『中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!』(三橋貴明、ワック、2010)はすでに2年間に出版されている

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ

『東南アジアを学ぼう-「メコン圏」入門-』(柿崎一郎、ちくまプリマー新書、2011)で、メコン川流域5カ国のいまを陸路と水路を使って「虫の眼」でたどってみよう!






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2012年12月20日木曜日

「クラウド」のほうが便利で安全だ!-『クラウド「超」仕事法-スマートフォンを制する者が、未来を制する-』(野口悠紀雄、講談社、2011)のキモはそこにある



買ったまま積ん読になっていた 『クラウド「超」仕事法-スマートフォンを制する者が、未来を制する-』(野口悠紀雄、講談社、2011)を読んでみました。というのも、これから書いていく「事故」が発生したからです。


デスクトップPCが立ち上がらない

じつは今週の日曜日(12月16日)の「総選挙」の朝から、デスクトップパソコンが立ち上がらなくなってしまったのです。より正確にいうと Windows XP がまったく起動しなくなってしまったのです(・・いまだにわたしはXPを使用してます)。

ありとあらゆる手段を尽くしてみたが、非情にもデスクトップPCは立ち上がりません。セーフモードをつかって起動してみたのですが、なんどもなんどもトライしてわずかに立ちあがった機会に見ると、なんどCドライブはすでにかなり破損していたのです(泣)

つまり、この3年間に作成したファイルの大半が破損、消滅したということです。

不幸中の幸いであったのは、Dドライブは無傷であったという点。つまりハードディスクそのものが問題なのではなく、Windows XP のソフトウェアにかかわる障害が原因であったということ。

「コンピュータ、ソフトなければただの箱」 とはよく言ったものです。オペレーティングシステム(OS )である Windows XP が起動しなかれば、パソコンはたんなる箱にしか過ぎません。

Gmail や Google カレンダーなどは、スマートフォンと同期させてつかてるので、通信や連絡には問題はないものの、デスクトップが使えないことには仕事に多大な支障が生じてしまいます。

あまり問題を長引かせて解決を先送りするわけにもいかないので、今週月曜日に Windows XP の「再インストール」を決断しました。

Cドライブは完全に初期化されてしまいますが、Dドライブはそのままなので、被害はCドライブに限定されます。「3-11」ですべてを失った方々のことを考えれば、比較するのも失礼な話です。

破壊は一新のチャンスでもあると、前向きに考えることにしよう、復旧に手間がかかるのは仕方がないというわけです。「創造的破壊」という経済学者シュンペーターのコトバを思い出しながら。



こまめなバックアップよりも、クラウドに保管しておくほうが安全だ

Windows XP 再インストールは成功しましたが、その結果、Cドライブに保管してたファイルはきれいさっぱり消滅しました。ここしばらくバックアップはとってなかったので、それらのファイルは壊滅です。

ところが、Gmail でやりとりした添付文書は無傷Google ドキュメントにアップしていたファイルは無傷Google ブログは無傷、Evernote で保管していた文書は無傷、です。そのほか、フェイスブックなどの投稿した写真などはすべて無傷に残っています。

つまり、クラウドで保管していた文書はすべて無傷であったのです。ですから、Cドライブで保管していた文書そのものは全壊ですが、一部はクラウドで保存されていたというわけです。このほか、プリントアウトしていた文書なども、ファイルそのものではありませんが、修復は可能です。

ただし、痛いのはウェブサイト関連のデータです。これはクラウドではなく、Cドライブのなかに保存していたためでした。いっそのこと、これを機会にウェブサイトはつくりなおしたほうがいいかもしれません。

そんな状態のとき、 『クラウド「超」仕事法-スマートフォンを制する者が、未来を制する-』(野口悠紀雄、講談社、2011)を読んだのは、読むべきときに読むべき本を読んだという気持ちになります。

「スマートフォンでデジタルオフィスを実現!」というのが野口先生の趣旨ですが、むしろ「ため込むな、クラウドに上げよ!」というほうが本質的なポイントなのではないか、と。

クラウドにあげてさえおけば、同期させることによって、スマートフォンでも、その他の情報機器でもファイルを見ることも加工することも可能です。いわゆる「知的生産のノマド化」が可能になるということです。

そのためには、Gmail やカレンダーを活用することが前提となりますが、わたし自身はすでに前職を退職して以来、3年前以上から使いこなしているので問題ありません。

手元においておくと紛失したり破損する可能性がありますが、クラウドに保管しておけばファイルは無傷で助かるのです。セキュリティについての不安があるかもしれませんが、厳重注意の情報を除けばアクセス制限をかけておけば大丈夫でしょう。Google に情報のバックアップをまかせておいたほうが安全なのです。

Gmail は、迷惑メール排除機能にもすぐれているので、同期しておけば、スマートフォンでは携帯メールをつかわなくても済むのです。

また、よほどのことがない限り、Google が倒産してクラウドに保管した情報が消滅してしまうこともないと思われます。すでに世界にとっての基幹システムとなっているので、経営危機になったとしても米国政府が救済措置をとるはずです。


こんなことを思うのも、最近こんな経験をしたからです。

わたしとほぼ同世代のある著名人がすでに一年以上前にお亡くなりになっていることを知らずショックを受けたのですが、検索でいろいろ情報をあたっていたらフェイスブックのアカウントがあることもわかり、アクセスしてみたら本人は死んでいるのに更新されないままアカウントが生き残っていることを目にしたからなのです。

つまり、無料でつかえるフェイスブックやツイッターなどは、本人が死んでも申請して削除してもらうか、だれかの手によって削除しない限り、情報が消滅することなく残り続けるということなのです。

その著名人の場合も、フェイスブックもツイッターも最後の投稿が一年以上前であることを除けば、生きている人となんら変わらず、クラウドに上げた情報が生き続けているという事実。それだけ、クラウドに上げた情報は安全だという証明でもあります。

なるほど、文字どおりのライフログ(lifelog)であるわけだな、と。まさに「生きてきた軌跡」ですね。

そんなことを考えれば、仕事関連のファイルはできるだけクラウドに置くのがよいと実感いたします。海外でも通信費を下げる工夫さえすれば、国内と同様にリアルタイムでシームレスに同期できるからです。

もちろん、充電さえできる環境にあり、電波が届きさえすれば、ですが。そのためにはリスクヘッジとして、紙媒体もときには必要かもしれません。わたしも日誌は手書きのノートに書き記しています。


終わりに

この本は、野口先生の 『超整理法』の現時点における最終到達点デジタルオフィスがついに実現したという趣旨の本です。

しかし、ポイントはスマートフォンそのものというよりも、情報は自分のPCのハードディスクで蓄積するよりも、できるだけクラウドに上げてしまったほうがいいということです。

この本は、まさにデジタル版の『知的生産の方法』ですね。現在72歳の野口先生ですが、「知的生産の方法」の探究に終わりなし、なのです。

わたしは野口先生の「超整理手帳」は使用してませんが、その『知的生産の方法』にはいちばん最初の書籍から大いにインスパイアされてきました。

わたしは今回の「事故」で痛い思いをした結果、あらためてクラウドの意味について実感いたしました。

この記事がみなさまの参考になれば幸いです。






目 次

序章 クラウドが開く魔法の世界
-1 クラウドをめぐるいくつかのエピソード
-2 ディジタルオフィスはクラウド化でスマートになった
第1章 クラウドの魔法を誰でも使える時代が来た
-1 スマートフォンでインターネットを能動的に使う
-2 クラウドとスマートフォンは、情報システムを大きく変えた
-3 ネットワークがコンピュータになる
-4 頭が痛い電波問題
-5 「何ができるか」でなく、「何をやりたいのか」が問題
第2章 ため込むな クラウドに上げよ
-1 メモや断片的情報の管理は難しい
-2 スマートフォンのカメラで断片的情報をクラウドに
-3 原稿は自動的にクラウドに蓄積される
-4 「自家製ブックマーク」でウェブ情報を駆使する
第3章 クラウドを用いて時間を有効に使う
-1 手帳はスケジューリングのためにある
-2 クラウド時代のワークステーション「超」整理手帳
-3 時間泥棒と戦い、「すきま時間」に対処する
第4章 考える環境を作る
-1 もっとも重要なことは紙に向かってやっている
-2 PDFとエクセルをもっと活用しよう
-3 私はどのように仕事をしているか
第5章 クラウド時代に生き残るメディアは何か?
-1 YouTubeは大きな可能性を持つ
-2 新聞もテレビもクラウドで
-3 新聞の役割は重要性の評価
-4 もうすぐ絶滅するという紙の書物について
第6章 クラウドを制する者が未来を制する
-1 スマートフォン+クラウド大戦争
-2 個人でもクラウドに支援されて起業できる
-3 日本人は「ガラパゴス島」に閉じ込められている
-4 日本の大企業や政府はクラウドに対応できない
第7章 クラウドは民主主義と両立するか
-1 情報システムにおける集権と分権
-2 クラウドの本質的基盤は民主主義
-3 技術進歩に社会が対応できない
おわりに
索引


著者プロフィール

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年生まれ。東京大学工学部卒、エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。大蔵省、一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、現在早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問。一橋大学名誉教授。専門はファイナンス理論。『「超」整理法』『「超」勉強法』等ミリオンセラーのほか、著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

<関連サイト>

『クラウド「超」仕事法』の野口悠紀雄さんに聞く(前編)、電話はもっとも邪悪な情報伝達手段。こちらの都合にまったく関わりなくかかってくる(日経Bizアカデミー 2012年1月30日)

「グーグルカレンダーが見にくいのはラッキーだった」、『クラウド「超」仕事法』の野口悠紀雄さんに聞く(後編)(日経Bizアカデミー 2012年2月6日)

パスワードは手書きでメモに残せ(小田島隆 日経ビジネスオンライン 2013年1月25日)


<ブログ内関連記事>

『ビジネス EVERNOTE-「劇的に」成果を上げる!活用事例が満載- (日経BPパソコンベストムック) 』(日経BP社、2011) をガイドにして EVERNOTE に入門してみる

書評 『達人に学ぶ「知的生産の技術」』(知的生産の技術研究会編著、NTT出版、2010)

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ





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2012年12月19日水曜日

書評 『中国ビジネスの崩壊-未曾有のチャイナリスクに襲われる日本企業-』(青木直人、宝島社、2012)-はじめて海外進出する中堅中小企業は東南アジアを目指せ!



すでのこのブログでも 「脱・中国」に舵を切るときが来た!-『中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!』(三橋貴明、ワック、2010)はすでに2年間に出版されている という記事で書いておりますが、「脱・中国」を意識しないわけにはいきません。

新刊 『中国ビジネスの崩壊』(青木直人、宝島社、2012)の副題は、「未曾有のチャイナリスクに襲われる日本企業」です。そして帯には、「尖閣暴動は序章にしかすぎない」とあります。

2012年夏の尖閣暴動はTVで衝撃的な映像が繰り返し報道されたので、「未曾有のチャイナリスク」についてはじめて認識をもった人、あたらめてその認識をつよめた方も少なくないはずです。

もちろん中国全土で暴動がおこったわけではありませんし、きわめて良好な関係を保っている日本企業も少なくありません。

しかし、「チャイナリスク」が顕在化したことは否定できません。

しかも、報道されてるのは、あくまでも氷山の一角に過ぎないのです。

マスコミで報道されない理由についても、この本のなかでは何度にもわたって説明されています。詳しいことはここでは省略しますが、大企業でもメーカーは独自の情報網を中国に構築しておらず、商社や金融機関、そして政府関係機関に依存しているのが現実なのです。

大企業ですらこのような状況なのです。ましてや中小企業であれば、よほど自信のある方以外は、これ以上、中国にコミットすることは再考すべきことは言うまでもありません。

帯には、「トヨタもパナソニックも・・・」と書かれていますが、その是非はその当事者が判断すべきことですが、すでに中国に進出している企業はさておき、すくなくとも、はじめて海外進出する中堅中小企業は中国に進出するべきではないのです。

そもそも海外ビジネスは、サッカーのたとえをつかえば、日本市場という「ホーム」ではなく海外という「アウェイ」での戦いです。アウェイでの戦いでは、スキルだけでなくメンタル面での強化も不可欠であることは言うまでもありません。そのためにはホームでは必要ないコストもかかります。

アウェイである中国ビジネスにおいては、日本のマスコミが報道しない、さまざまな追加コストが無数にあることを知らなくてはなりません。「反日」という政治リスクが、通常のビジネスコストをさらに上乗せすることになっているのです。詳しくは本書を読んでいただきたいと思います。

経営者であれば、経済合理性に基づいた意思決定を行うのが筋というものでしょう。そして、また19世紀末の排外的な大衆運動であった義和団の歴史など、中国近現代史をひもといてみることが不可欠です。

著者も主張していますが、わたしも進出するならば、東南アジアを最初の進出国にすべきだと考えております。はじめての海外進出であれば、なんといってもタイでしょう。

チャンスとリスクは裏腹の関係にありますが、くれぐれも他人の判断に盲従することなく、自分のアタマで考え、自分で判断したうでアクションを起こしていただきたいものです。 







目 次

序章 「日中ビジネス」を人質に取る中国
第1章 中国の高度成長は終わった
第2章 実際はこんなにひどい中国経済の裏側
第3章 中国バブル崩壊の激震
第4章 むしり取られる日本企業
第5章 習近平体制は“既得権喰い”
第6章 中国から流出するチャイナマネー
第7章 高まる社会不安-やがて義和団が登場する
第8章 間違いだらけの日本人の中国観
終章 日本企業は今すぐ撤退すべきだ

著者プロフィール  

青木直人(あおき・なおと)
ジャーナリスト。中国情報誌『ニューズレター・チャイナ』編集長。1953年島根県生まれ、中央大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

「俺は中国から脱出する!」ある中小企業経営者の中国撤退ゲリラ戦記 (ダイヤモンドオンライン、2014年7月4日)
・・「風林火山」はもともと孫子の兵法の一説であり、現代中国のビジネス社会でも有効な戦術。A社長は無意識のままにこれを実践」 ⇒読む価値ある好記事!

(2014年7月4日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

「脱・中国」に舵を切るときが来た!-『中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!』(三橋貴明、ワック、2010)はすでに2年間に出版されている

書評 『成金炎上-昭和恐慌は警告する-』(山岡 淳一郎、日経BP社、2009)-1920年代の政治経済史を「同時代史」として体感する
・・「バブル崩壊後」の中国こそ、戦前の日本の道を突き進む可能性もある。中国はバブル崩壊を体験したことがないのだ。中国はいつバブルが崩壊してもおかしくない状況がつづいている。バブル崩壊後の社会の激動は想像を絶するものとなる可能性もある。日中ともに注視していかねばなるまい





(2012年7月3日発売の拙著です)





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2012年12月18日火曜日

書評 『小さなことでいいから、まずは一番になりなさい。』(高田 稔、中経出版、2012)-若手ビジネスパーソンに自信をもたせるためにぜひ読ませてあげたい本



『小さなことでいいから、まずは一番になりなさい。』

そう、まさにそうなのです。

営業に限らず、ビジネスパーソンが自信をもつには、「小さなことでいいから、まずは一番」を目指すことなんですね。

自信とは、自分を信じる、ということ。英語でいえば、セルフ・コンフィデンスです。

「世界で一番」になれ、なんて誰も言っているわけではないのです。「職場で一番」、でいいのですよ。

電話を一番にとる、朝一番に出社する、なんてことでもいいわけです。これならやろうという意志のチカラさえあれば、おカネもかかりません

趣味の世界では「この人に聞け」状態になるというのもいいですね。たとえば映画の話にかけては職場では一番というのもいいでしょう。会社で一番である必要はないし、日本で一番である必要もありません。

「好きなこと」や「得意なこと」で相対的な優位性を確立せよ、そうすれば自分に自信をもつことができるということなのです。

自分に自信がもてればコミュニケーションもスムーズになってきます。コミュニケーションはテクニックやスキルよりも、まずは自信をもつことが先決なのです。

わたしはこの本を読んでいて、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(佐藤けんいち、こう書房、2012)とは、じつは同じ問題意識から発している内容だなと、つよく共感しました。

その後、著者の高田稔さんとは、先日会食しながら意気投合。2013年から、いろいろコラボしていくことになりそうです。いまから楽しみです。

「目立たない仕事で目立て!」というのは、なんだか矛盾に満ちたように聞こえるかも知れませんが、あきらかに事実です。見ている人はかならず見ているのですから。

もちろん、すぐに人生が変わるなんてことは世の中ありえません。最低でも3ヶ月は続けてなくてはなりません。そのこともきちんと書いてあるこの本は、やさしい語り口ながら本質論を書いた本であるといっていいでしょう。

ぜひ若いビジネスパーソンに読むのを薦めてあげてください。







目 次
はじめに
1. 小さなことでいいから、まずは「一番」をめざしなさい
2. 自分の強みで「一番」をめざしなさい
3. 相手にマッチングする「一番」をつくりなさい
4. 自分の「一番」を活かす習慣を身につけなさい
おわりに


著者プロフィール  

高田 稔(たかだ・みのる)
A & M Enterprise(有)取締役。1969年生まれ。東京都杉並区出身。立命館大学経済学部卒業。1993年アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社。日本国内およびグアム、マイクロネシア地域の営業およびマネジメントを10年間行なう。営業成績が認められ、センチュリオンクラブ(トップ10位)、アンバサダークラブ(トップ3位)、プレジデントクラブ(社長賞)を3年連続で受賞。2005年に営業コンサルティング会社A & M Enterprise を設立。英国ハル大学にてMBA取得。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに加筆)。




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2012年12月15日土曜日

大学ブランドというプライベート・ブランド(PB)商品について-玉川学園の「抹茶アイス」は新製品!




教育諮問委員を拝命しております玉川学園ではビジネスという「異分野」の立場から、「教育」への提言を行っておりますが、お歳暮として 「たまがわアイスクリーム」(Tamaga Ice Cream)を送っていただきました。

これは玉川大学のプライベートブランド(PB)ですね。PBとは、全国的知名度の高いNB(ナショナル・ブランド)ではないブランドのことです。

「たまがわアイスクリーム」は、玉川大学農学部が開発したプロダクトです。まさに内部資源の有効活用。ハチミツもぽんかんも乳牛飼育も、玉川大学農学部が実習の一環として手がけているものです。いずれもハチミツが隠し味でもないですが、アイスのフレーバーを引きだたせているスグレモノです。

おお、「抹茶アイス」が新製品として導入されたようです。日本人としては、これがほしかった! 世界ブランドのハーゲンダッツにも抹茶アイスありますからね。



夏はさておき、冬のお歳暮としてアイスクリームというのも面白いかもしれません。

暖房を効かせた部屋でアイスクリームを食べるというシチュエーションは容易に想像できますが、寒い冬に野外でアイスクリームを食べるというのは、日本人にはちょっと考えにくいかもしれません。

ところが、冬の寒いロシアでは、路上でアイスを買って食べている人をよく見かけます。冬にアイスも乙なものかも。

どういうシチュエーションであれ、デザートにアイスクリームを食べるというライフスタイルはすでに日本でも定着したといっていいでしょう。

ハーゲンダッツはふつうのスーパーマケットでも売っていますが、PBのアイスクリームは知る人ぞ知るという製品でしょう。

「たまがわアイスクリーム」と「たまがわはちみつ」は、小田急線玉川学園駅ちかくの玉川学園購買部(Campus Store Tamagawa)でも販売されています。またネットショップもありますので、いちど訪れてみてはいかがでしょうか。



<関連サイト>

玉川学園購買部(Campus Store Tamagawa)

玉川学園購買部ネットショップ


<ブログ内関連記事>

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(2014年4月14日、2015年3月26日 情報追加)





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2012年12月11日火曜日

書評 『No.2理論-最も大切な成功法則-』(西田文郎、現代書林、2012)-「ナンバー2」がなぜ発展期の企業には必要か?



『No.2理論-最も大切な成功法則-』(西田文郎、現代書林、2012)という本が出版されています。

「ナンバー2」というタイトルに目をひかれました。なぜなら、わたし自身がある中小企業で7年間にわたって「ナンバー2」を務めたらからです。

「ナンバー1」ばかりがもてはやされるなか、なぜいま「ナンバー2」なのか?

「ナンバー2」とは、企業など組織での重要な機能のことを指しています。経営トップが「ナンバー1」であれば、その補佐役が「ナンバー2」。もっとも有名な例でいえば、ホンダの創業者である本田宗一郎を支え続けた藤澤武夫をあげることができるでしょう。

本書は、「ナンバー2」がなぜ発展期の企業には必要か述べています。「ナンバー2」は、日本においては、大番頭、女房役、補佐役、相談役といった役割になります。

会社経営では「ナンバー2」がカギを握っているという著者の主張には全面的に賛成です。つぶれる会社、伸び悩む会社の共通点は「ナンバー2」を欠いていることというのはその通りです。

著者が言うように、優秀な「ナンバー2」をもつ「ナンバー1」は最強といっていいでしょう。その関係は足し算ではなく掛け算だからです。

そして、「ナンバー2」のなんたるかを知り、「ナンバー2」を体験した者は、「ナンバー1」になってから成功する可能性が高いとは言って問題ない。

でも実際には優秀な「ナンバー2」はきわめて少ない。それは「ナンバー2」の能力不足の問題でもあり、また「ナンバー1」の器量の大きさの問題でもあります。

本書が、「ナンバー2」について注意を促した点は評価すべきです。なぜなら、ここのところ「ナンバー2」を正面切って論じた本がまったくなかったからです。かつては少なくなかったのですが、冒頭にも書いたように「ナンバー1」を目指すことばかりが強調されるきらいがあったからです。

ただ、わたしとしては本書に不満が多々あるのは、書かれていることはややキレイごとが多いのではないかという点です。

また、「MBAでは教えないが・・」というフレーズがでてきますが、ピントはずれなものの少なくないという印象をうけます。グーグルのシェリル・サンドバーグのような「ナンバー2」をどう説明するのか、本書からはまったくわかりません。

経営トップという「ナンバー1」がきわめて孤独なポジションであるとすれば、「ナンバー2」というのは、体験者であるわたしの理解においては、きわめて危険なポジションです。「ナンバー1」と一般従業員のあいだに挟まれるポジションであるからです。

しかも、あくまでも補佐役に徹しなくてはならないのに、求められる要件はきわめて大きくかつ多い。最終責任を負うのは「ナンバー1」ですが、「ナンバー1」以外のすべての執行責任は「ナンバー2」にあるのです。

欲望、誘惑、権力。こういった人間の根源的なものにかんする考察を抜きに「ナンバー2」を語るのは危険ではないかとわたしは思います。なぜなら、この世には聖人君子といえるような人は、きわめてまれにしか存在しないから。それは「ナンバー1」も「ナンバー2」も同じです。

わたしは、「ナンバー2」は目指すべきものだとは思いません。目指すのではなく、求められてなるもの、巡り合わせでなるものです。

しかし、求められてその立場にたったとき、「ナンバー2」に求められるものを理解し、その「覚悟」を決めることこそが本質的に必要であると考えています。それが「ナンバー1」と「ナンバー2」のあいだに「信頼」を生み出すのです。「信頼」は「なれあい」ではありません。

なによりもまず、「ナンバー2」は組織における機能であり、「ナンバー2」とは組織内における人間の生き方でもあるのです。しかも、きわめて厳しいものが求められる困難な生き方です。これは中国近現代史であれば、毛澤東と周恩来の関係を考えてみればすぐにわかることです。

「ナンバー2」論は、精神論に終わらせず、経営理論として鍛え上げる必要があるのではないかと思うのは、わたしが「ナンバー2」を7年間にわたって経験しているからです。

組織「外」の立場と組織「内」の立場とでは、180度まったく違うのです。これは身をもって体験しない限り、よほどのイメジネーション能力の持ち主でない限り、理解困難なことでしょう。

とはいえ、『No.2理論』という形で「ナンバー2」論を執筆した著者と、それを可能にした出版社には敬意を表します。ここ数年、「ナンバー2」というタイトルでは、まったく出版がなくなっていたからです。これを機会に、企業組織において「ナンバー2」の役割が見直されることを願います。

わたしもいずれ、自分自身の体験というフィールドワークをベースにした、自分自身の「ナンバー2」論を執筆したいと考えております。


PS 都知事選の結果について

「ナンバー2」を体験したトップはつよい。その意味では東京都知事に当選した猪瀬氏への期待は大きい。石原慎太郎前都知事の下で5年半のあいだ「ナンバー2」をつとめた実績は多いに評価すべきであろう。(2012年12月17日 記す)





目 次

まえがき
第1章 会社も組織もチームもナンバー2が伸ばす
第2章 会社の実態はナンバー2を見ればつかめる
第3章 戦う集団にこそナンバー2が不可欠である
第4章 七つの心得がナンバー2のレベルを決める
第5章 間違いない人選でナンバー2を育て上げる
第6章 優秀なナンバー2が優秀なトップをつくる
あとがき

著者プロフィール

西田文郎(にしだ・ふみお)
株式会社サンリ代表取締役会長。株式会社キャリティ取締役会長。西田塾塾長。西田会会長。1949年生まれ。日本におけるイメージトレーニング研究・指導のパイオニア。1970年代から科学的なメンタルトレーニングの研究を始め、大脳生理学と心理学を利用して脳の機能にアプローチする画期的なノウハウ『スーパーブレイントレーニングシステム(S・B・T)』を構築。日本の経営者、ビジネスマンの能力開発指導に多数携わり、驚異的なトップビジネスマンを数多く育成している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<ブログ内関連記事>

最高の「ナンバー2」とは?-もう一人のホンダ創業者・藤沢武夫に学ぶ

シェリル・サンドバーグという 「ナンバー2」 としての生き方-今週の Bloomberg BusinessWeek (ビジネスウィーク) のカバーストーリーから

「長靴をはいた猫」 は 「ナンバー2」なのだった!-シャルル・ペローの 「大人の童話」 の一つの読み方

官房長官は実質的に政権「ナンバー2」-政治と企業経営の共通点について考えてみる

「世襲」という 「事業承継」 はけっして容易ではない-それは「権力」をめぐる「覚悟」と「納得」と「信頼」の問題だ!

書評 『挫折力-一流になれる50の思考・行動術-』(冨山和彦、PHPビジネス新書、2011)

(2014年11月3日 情報追加)




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2012年12月6日木曜日

日刊工業新聞(2012年11月22日付け)で『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(佐藤けんいち、こう書房、2012)が紹介されました!




 『日刊工業新聞』の 2012年11月22日付けで、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)が紹介されました。 
⇒ https://docs.google.com/file/d/0BwLpyF-Aru_kaHRUQ2t5VkthYnM/edit

 『日刊工業新聞』は、メーカー勤務の人なら誰でも知っている「日本のものづくりに貢献する」日刊紙です。

書評が掲載されていたことは読者の方から教えていただいて知りました。スキャンした画像(上掲の写真)まで送っていただきました。この場を借りてお礼申し上げます!

写真だと読み取りにくいかもしれませんので、文言を書き写しておきます。


 「引き出しの多い人」「雑学に富む人」「守備範囲の広い人」「知恵袋をいっぱい抱えている人」・・・などと呼ばれる人には、いつも相談に来る人が押し寄せる。それほど "頼りになる人" なのだ。
 自分の専門分野の「専門知識」はもちろん必要だが、ビジネスパーソンには「雑学」がおカネ以上に重要な財産になる。仕事の専門知識と雑学の掛け算が、視野を広げ、発想を豊かにするものだと著者は強調する。
 本書の序章で、なぜ多くの「引き出し」が必要なのかを説き、1-4章では「引き出し」に増やし方のノウハウを具体的に紹介、そのうえで5章では料理づくりを起点に、雑学の「引き出し」つくりを解説する。(こう書房刊=03-3269-0581、A5、215ページ、1,470円)


さすが、日刊工業新聞、プロの文章力は違いますね。新聞の「書評」として取り上げて頂くのは、たいへんありがたいことです。

読んですぐに「人生が変わる」ことはありえませんが、拙著がそのキッカケとなるのであれば、著者冥利につきます。

ご関心のあるかたは、出版社サイトで中身の一部が「チラ見」できますのでぜひ。
http://www.kou-shobo.co.jp/files/sample/1074.pdf

ご購入は丸善&ジュンク堂、または紀伊國屋書店など全国の主要チェーンまたは、オンライン書店にて。





<ブログ内関連記事>

「サンケイビジネスアイ」(SankeiBiz)に『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(佐藤けんいち、こう書房、2012)の紹介が掲載されました。





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2012年12月5日水曜日

書評 『君は、世界を迎え撃つ準備ができているか?-日本人が世界で生き残るためのたった1つの方法-』(田村耕太郎、中経出版、2012)-若者に読ませて、若者をけしかけよう!


意欲ある元気な若い人たちにはぜひ読んで欲しい自己啓発書です。

「日本人が世界で生き残るためのたった1つの方法」というのは、出版社がつけた副題でしょうが、この本の趣旨はわたしは全面的に賛成です。

最大のメッセージは、「最悪の事態を想定して準備を怠らな」ければ、ポジティブに生きていくことができる。そのためには・・・・です。「・・・・」に書かれていることが本書の内容です。

「最悪の事態」についてはここでは繰り返しませんが、日本人がもっともクチにするのを回避しがちなものだといっていいでしょう。言霊(コトダマ)の悪しき側面がでてしまうからです。

しかし、「最悪の事態」を想定し、すべてを「想定内」にしておくことは危機管理の基本中の基本。「3-11」後に起こった原発事故で、いやというほど感じることになったものではありませんか。

内容は基本的に、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』と内容はオーバーラップするものが多いと思いますが、もちろん語り口はかなり異なります。

それが、著者の個性というものであり、生きてきた世界とこれまでの軌跡の違いというものでしょう。世の中を変えるために政治家になったものの、日本の旧態依然とした政治の世界ではそれが難しいことを体感し、ご存じのとおり、その後はひたすら世界を相手に生きてきたわけですね。

田村耕太郎氏はストレートに「教養を身につけろ」と言い切っているのは、わたしから見ればうらやましい限りです。

敷居を下げるため、拙著では 「雑学」という表現にしましたが、趣旨は同じであるといっていいでしょう。大学学部で歴史学を専攻したわたしは、ほんとうは「教養」と言いたかったのですが。

これから何が起こるかわからない、まさに激動の世の中の渦中にある若い世代には、わたしも専門以外の「教養」(=リベラルアーツ、雑学)を貪欲に身につけようといいたいのです。

専門知識だけでは、自分のアタマで骨太に思考することができないからです。自分のアタマで考えることができなければ、自分で主体的に行動することもできません。

すでに若者でない人も、他人事だとは思わないでほしいものです。ぜひ若者に読ませて、若者をけしかけてください。

ただし、その若者の反応は保証できかねますが、じつは意欲ある元気な若者はあなたのすぐそばにいるかもしれないのですよ。





<ブログ内関連記事>

書評 『私が「白熱教室」で学んだこと-ボーディングスクールからハーバード・ビジネススクールまで-』(石角友愛、阪急コミュニケーションズ、2012)-「ハウツー」よりも「自分で考えるチカラ」こそ重要だ!

書評 『未曾有と想定外-東日本大震災に学ぶ-』 (畑村洋太郎、講談社現代新書、2011)

書評 『官邸から見た原発事故の真実-これから始まる真の危機-』(田坂広志、光文社新書、2012)-「危機管理」(クライシス・マネジメント)の教科書・事例編

M.B.A.(経営学修士)は「打ち出の小槌」でも「魔法の杖」でもない。そのココロは?




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2012年12月4日火曜日

【セミナーのご案内】 「ビジネスパーソンのための『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』


「ビジネスパーソンのための『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』セミナーのご案内です。

営業パーソンは言うまでもなく、ひろくビジネスパーソンにとって、専門知識以外の引き出しの幅を拡げることは、ビジネスのみならず人生を豊かにするうえで、きわめて重要であるといってよいでしょう。

「引き出し」は多ければ多いほど、初対面の人であってもコミュニケーションをスムーズに進めるための潤滑剤になりうるからです。

また、専門分野が細分化されればされるほど、専門家どうしのコミュニケーションもますます困難となりつつあります。そんなとき、自分の狭い専門を超えた引き出しをもっていれば、専門を異にする人とのあいだでもスムーズに人間関係をつくることができるようになります。

組織をこえて異業種とのコラボレーションの機会も増大する傾向にある現在、専門知識以外の引き出しの重要性が増しているのはそういう背景があるのです。

そこでご提案したいのが、筆者が行っているワークショップ型の全員参加型セミナーです。

拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)に書いた「アタマの引き出しの増やし方」を、参加者全員に体感してもらうために企画し、実施しているセミナーです。


セミナーの流れ

セミナーは全体で2時間。以下の流れで進行させます。

●「アタマの引き出し」とは何か
●「本業」の「専門知識」以外の「雑学」や「教養」の意味
●知識と経験の二つが重要なこと。
●経験の裏付けのある知識がその人なりの「引き出し」となる
●「連想ゲーム」で脳内の知識ネットワークを知る
●キーワードをつかってアウトプットする訓練で引き出しを整理する

最後の20~30分は質疑応答の時間にあてています。

ワークショップは場所を選びません。
講師と参加者さえいれば、どこでも開催は可能です。
とはいえ、連想ゲームのためにはホワイトボードはほしいもの。
図解によって「見える化」するためです。





セミナー参加者の声

「参加者の声」を一部紹介いたします。


「ワークショップ型でとっても勉強になりました。コミュニケーションの研修にも活用出来そうです」(30歳代男性 中小企業社長)


「アウトプットが大事というのは常々感じてはいましたが、改めて教えとして拝聴したお陰で、今度は大切さを認識しつつ実行に移せます」(30歳代女性 NPO法人事務局長)


「とっても勉強になりました。自分の引出しの少なさを実感できました。これから回りにも伝えながら、私自身も一つずつ引出しを増やしていきたいと思っています」(40歳代男性 会計士)


「翌朝の朝礼である社員が、みんなに向けて、ほとんど自分より年上、先輩、上司に向けて発信してました。『つかんだ情報や知識は、インプットするだけでは身にならない。アウトプットしてはじめて自分のものになるということを学習しました。皆さんも、得た情報は積極的に発信して自分のものにして下さい!若干25才の女子の発言です』。感動しました」(40歳代女性 中堅企業管理職)


このほか多数の声をいただいております。

今後の開催予定については、このブログなどでご確認お願いいたします。

セミナーや講演会、あるいはコンサルティング等をつうじて、ぜひみなさまの町を訪問したいと考えております。こんな話を聞いてみたい、こんな話をしてほしい、あるいは社員研修をしてほしいというご要望があれば、気軽にお声がけしていただければ幸いです。

ウェブサイト http://kensatoken.com/gyoumu.htm をご覧ください。

お問い合わせは、047-498-9016 あるいは ken@kensatoken.com まで。

お待ちしております。


<ブログ内関連記事>

「サンケイビジネスアイ」(SankeiBiz)に『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(佐藤けんいち、こう書房、2012)の紹介が掲載されました。





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2012年12月1日土曜日

書評 『オーケストラの経営学』(大木裕子、東洋経済新報社、2008)-ビジネス以外の異分野のプロフェッショナル集団からいかに「学ぶ」かについて考えてみる



オーケストラの元団員の経営学者が書いた『オーケストラの経営学』。そのものずばりのタイトルと内容の一冊である。

著者のプロフィールは以下のとおりである。

東京藝術大学音楽学部器楽科卒業後、ヴィオラ奏者として東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に入団し、数々のコンサートにて演奏を行う。演奏活動を通じ組織・ビジネスとしてのオーケストラの魅力に惹かれ、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に入学。オーケストラのマネジメントなどを研究し、MBA、博士(学術)を取得。

まさに異色の経歴をもった経営学者だが、本書の特徴は経営学者が「外側からの視点」で観察したものだけでなく、オーケストラ団員としての経験をもとに「内側からの視点」も兼ね備えていることにある。


オーケストラそのものと裏方である団体にとってのマネジメントは意味が異なる

著者はあまり明確に区分していないのだが、オーケストラを考えるにあたっては、演奏の主体であるオーケストラは文化であって、オーケストラ活動そのものが収益を生み出すことを目的にした事業ではないということが重要だ。これはオペラやバレエなどその他の舞台芸術もまた同じである。

したがって、いわば裏方としてオーケストラの運営を支えている団体のマネジメントと、演奏家の集団であるオーケストラのマネジメントそのものはわけて考える必要がある。

前者においてはカネ、すなわち収益構造と財務構造が問題になるのであり、後者においてはヒト、すなわち最高の演奏を実現するための演奏家集団のマネジメントが最重要になる。

もちろん演奏家の集団であるオーケストラのマネジメントにおいても、予算の制約という絶対条件のもとで行われる。誰を指揮者として呼ぶか、ソリストとして呼ぶかは予算の範囲内となるためだからだ。

オーケストラを運営する団体のマネジメントにおいては、チケット収入だけでは運営が不可能なため、欧州では国家財政による負担の割合が高く、米国では民間による寄付の割合が高いという。

そのため米国では寄付をつのるためにマーケティングが早くから導入されているのだが、日本は欧州型でも米国型でもない中途半端な状態であるらしい。つまりマネジメント的にはどうもあいまいなままになっているようなのだ。したがって、日本のオーケストラが置かれている状況は、けっして経済的にラクなわけではない。

では、演奏家集団のマネジメントについてはどうか。

著者によれば、オーケストラは、指揮者を頂点にはしているが階層構造をもつ組織ではない。指揮者、ソリスト、コンサートマスター、首席奏者といったプレイヤーたちで構成されるが、指揮者以外はすべて何かの楽器のプレイヤーであり、フラットな組織構造をもっているという。

つまり、オーケストラはフラットな構造をもつ、プロフェッショナル組織なのである。しかも、それじたいが収益を生み出すことを目的とした事業ではないのである。

オーケストラに求められるのは、基本的に聴衆(=顧客)をいかに満足させるかにある。顧客満足は、顧客が演奏に満足するかどうかで決まるものであり、それは演奏者がどこまで満足のいく演奏をできるかにかかっている。その結果として、おカネはついてくるということだ。

オーケストラにおいては、個々の演奏者が、いかに他の演奏者とのハーモニーをつくり出すことができるかということであり、別の表現をつかえば、いかにチームワークを作りあげるかということになる。

もともと日本には、教会の響きのなかで賛美歌を歌いながらハーモニー(調和・和声)を創っていくという習慣がない。そのため、お互いの音を聴き合ってハーモニーを創っていくという意識が、どうしても低くなっているようにみえる」(P.157~158)

この点が、もしかすると日本のオーケストラと本場の欧州のオーケストラとの違いの根底にあるのだろう。その意味では、オーケストラは完全に日本の文化とはなったとは言い難いのかもしれない。

本書では、プロフェッショナル集団としてのオーケストラについては、きわめて多額の投資に対してリターンがあまりにも小さいという指摘以外に、団員の報酬と評価制度にかんする記述が薄いのが残念だ。

プロスポーツであれば、個々のプレイにかんして事細かに評価項目が定められており、プレイヤーの評価はそれに基づいて定量的に行わている。オーケストラの場合ははたしてそのような評価基準はどうなっているのだろうか? 

この点にかんしても、欧州と米国、そして日本との比較を知りたいところだ。それは本書の不満点である。


「知識集約」型時代のプロフェッショナル集団のマネジメント

時代はますます「労働集約型」から「知識集約型」に向かっている。「知識集約」時代のプロフェッショナル集団のマネジメントが、これからの日本企業には求められている。

プロフェッショナルの集団をどうマネジメントしていくかという点について、異分野から学ぶ意味はそこにあるといっていいだろう。

オーケストラの事例は、企業経営にとっては直接に役に立つものではないが、これからの「個人と組織」の関係、あたらしいスタイルのマネジメントを考えるうえで参考になる面もある。






目 次

開幕挨拶
第1楽章 「のだめ効果」はあったのか-業界の特徴と規模
第2楽章 「音大生」の投資対効果-オーケストラの人々
第3楽章 なぜ赤字なのに存続するのか—オーケストラの会計学
第4楽章 オーケストラの経営戦略-外部マネジメント
第5楽章 指揮者のリーダーシップ-小澤征爾かカラヤンか
第6楽章 世界的音楽家はいるのに日本に世界的オケがないわけ-内部マネジメント
終幕挨拶

著者プロフィール  

大木裕子(おおき・ゆうこ)
京都産業大学経営学部准教授。京都産業大学大学院マネジメント研究科准教授。東京藝術大学音楽学部器楽科卒業後、ヴィオラ奏者として東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に入団し、数々のコンサートにて演奏を行う。演奏活動を通じ組織・ビジネスとしてのオーケストラの魅力に惹かれ、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に入学。オーケストラのマネジメントなどを研究し、MBA、博士(学術)を取得。昭和音楽大学音楽学部専任講師、京都産業大学経営学部専任講師を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
書評 『国家と音楽-伊澤修二がめざした日本近代-』(奥中康人、春秋社、2008)-近代国家の「国民」をつくるため西洋音楽が全面的に導入されたという事実
・・日本人を近代産業に適した近代的身体に改造することが明治時代初期の課題であった。幕末の鉄砲隊はリズムに合わせて発砲するためのドラマー(=鼓手)を必要とした

日体大の『集団行動』は、「自律型個人」と「自律型組織」のインタラクティブな関係を教えてくれる好例

(2014年3月19日 項目新設)




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