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2013年10月31日木曜日

書評 『反省させると犯罪者になります』(岡本茂樹、新潮新書、2013)-この本をいかにマネジメントの現場に応用するか考えるべき



『反省させると犯罪者になります』(岡本茂樹、新潮新書、2013)は、読む価値のある本です。

受刑者の更生に長年かかわってきた著者は、臨床教育学を専攻する大学教授。ロールレタリングという手法で、被害者ではなく加害者自身に心情を考えさせ、「更生」に導いてきました。

多くのケースにかかわっているなかで著者がわかってきたのは、犯罪者にすぐ「反省」を求めるのは逆効果をもたらすということ。出所してもまた累犯者となってしまうのは、「反省」することがうまくなるだけで、ほんとうは「反省」などしていないからなのだ、と。

なぜこの本をマネジメント関係者に推薦するのか? まずは「目次」をみてもらうのがよいでしょう。

第1章 それは本当に反省ですか?
第2章 「反省文」は抑圧を生む危ない方法
第3章 被害者の心情を考えさせると逆効果
第4章 頑張る「しつけ」が犯罪者をつくる
第5章 我が子と自分を犯罪者にしないために

「反省」させることじたいが目的ではないのです。二度と同じ犯罪や事故を起こさせないことが目的であるはず。

うわべだけの「反省」はむしろ有害だというのが著者の見解ですが、たしかに自分にあてはめて考えてみても、うなづくことの多い内容です。

ある意味では「逆転の発想」です。常識の真逆であり、常識の盲点を突くといってよいでしょう。

JR西日本・福知山線の脱線事故は多くの死傷者がでた大事故でしたが、職員の乗務中のミスを「日勤教育」という労務管理の手法で「反省」させていたことを想起させるものがあります。「日勤教育」とは、精神論にもとづいた非人間的な「反省」を強いる手法でありました。

毎日のように有名な大企業で大きな不祥事が発生していますが、マスコミをつうじて表明される一般世間向けに行われる「謝罪」がほんとうに不祥事の再発防止につながっているのか、よくよく考えてみる必要がありそうですね。

この本をいかに教育の「現場」やマネジメントの「現場」にあてはめて応用できるかを考えてみることは、まずはみずからの日々の言動を「反省」するよい機会ともなるでしょう。

わたしとしては、企業内教育でもつかわれることのある「内観療法」の問題点を指摘(P.113)していることに注目したいと思いました。

自分とは異なる世界での体験を、どう自分の世界にあてはめて考えるか。これは大事なことです。自分の体験にも照らし合わせながら考えてみることです。そのためにはまず、自分とは異なる世界の経験を「一般化」し、それを自分の世界に「応用」してみることが大事ですが、この「一般化」というプロセスは訓練しないとできないかもしれません。

教育関係者や企業関係者にとって、読むとさまざまな気づきや示唆を受けることのできる本だと思います。ぜひ読んでみてください。





目 次

まえがき
第1章 それは本当に反省ですか?
第2章 「反省文」は抑圧を生む危ない方法
第3章 被害者の心情を考えさせると逆効果
第4章 頑張る「しつけ」が犯罪者をつくる
第5章 我が子と自分を犯罪者にしないために
あとがき

著者プロフィール

岡本茂樹(おかもと・しげき)
1958(昭和33)年、兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部教授。臨床教育学博士。中学・高校で英語教員を務めた後、武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科博士課程を修了。日本ロールレタリング学会理事長。刑務所での累犯受刑者の更生支援にも関わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

<関連サイト>

立命館大学 産業社会学部 現代社会学科 岡本 茂樹 (教員紹介サイト)

「現在の刑務所は罰を与えるだけで更生する場になっていない」 ホリエモンが語る刑務所からの"社会復帰" 岡本茂樹 × 堀江貴文 【前編】 (現代ビジネス 2013年12月17日)



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「ハインリッヒの法則」 は 「ヒヤリ・ハットの法則」 (きょうのコトバ)

書評 『未曾有と想定外-東日本大震災に学ぶ-』 (畑村洋太郎、講談社現代新書、2011)

「痛み」から学び、イマジネーションによって組織で共有する「組織学習」が重要だ!

Παθηματα, Μαθηματα (パテマータ・マテマータ)-人は手痛い失敗経験をつうじて初めて学ぶ

書評 『不格好経営-チームDeNAの挑戦-』(南場智子、日本経済新聞出版社、2013)-失敗体験にこそ「学び」のエッセンスが集約されている

書評 『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる-自分、人、会社-全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィー』(原 英次郎、ダイヤモンド社、2013)-メンバーの一人ひとりが「当事者意識」を持つことができれば組織は変わる




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2013年10月29日火曜日

「ブルータス、お前もか!」-立派な「クレド」もきちんと実践されなければ「ブランド毀損」(きそん)につながる


先週木曜日(2013年10月25日)、大阪リッツカールトンで発覚したのが「メニュー誤標示」問題

行動規範としての「クレド」(=信条)を従業員に徹底させることで、すぐれたサービスを実践する会社として著名なアメリカ系の高級ホテルがリッツ・カールトンですが、まことにもって悲しいかな、「ブルータス、お前もか!」と言いたくなってしまう出来事です。

日本経済新聞に掲載された記事「リッツ大阪でも誤表示 公表なしにメニュー訂正」(2013年10月25日)から一部引用しておきます。

報道各社の取材に応じたオリオル・モンタル総支配人によると、ホテル内のレストランでブラックタイガーを車エビ、バナメイエビを芝エビとしてそれぞれ提供していたほか、レストランやラウンジで容器詰めのストレートジュースを「フレッシュジュース」とメニューに表記していた。・・(中略)・・「あってはならないことで深刻に受けとめている。誤表示が起きた詳しい経緯について今後調査する」とした。


接客にかんしては定評のあるリッツカールトンですが(・・わたしも大阪リッツカールトンには一回だけですが宿泊したことがあります)、お客様とはダイレクトに接触する接客ポジション以外では、「クレド」が徹底していなかったということでしょうか・・・?

まことにもって残念としかいいようがありません。


短期的なコスト削減がブランド毀損(きそん)を招く

企業経営にとっての最大の難問の一つは、短期利益と長期利益の折り合いをどうつけるかにあります。これは企業業績にかかわるものであると同時に企業倫理にもかかわる問題です。

おそらくホテルのレストランの現場においては、コストダウン要請プレッシャーがそうとう強かったのではないかと推測されます。

大阪リッツ・カールトンは米本社の直営ではなく、阪急阪神グループがオーナーです。阪急ホテルでも「誤表示」問題が表沙汰になっています。リッツ大阪のオーナーである阪急グループとしての経営姿勢が問われますが、リッツ・カールトンのブランドイメージに傷を付けた責任も問われることでしょう。

短期利益にたいして、ブランドはまさに長期利益の源泉企業がサステイナブル(=持続可能)な存在として利益を指し続けていくために大事なのがブランドです。

ブランドに体現された信用を築き上げるのには長い時間がかかるのに対し、信用が失われるのは一瞬の出来事です。なぜなら、ブランドは法的には企業の所有物であっても、あくまでも顧客のアタマのなかにあるものだからです。顧客の信用があってこそブランドは意味をもつのです。

つまり、短期利益追求姿勢と長期利益実現のコンフリクト(葛藤)が不祥事として表面化したということなのです。

さらなるブランド毀損(きそん)がリッツ・カールトン全体に波及するのを防ぐため、リッツの米本社サイドがどう判断し動くか要注視でありましょう。


リッツ・カールトンといえば「クレド」

「クレド」とは、米国の高級ホテルチェーンのリッツ・カールトン・ホテルが、全従業員に配布し、徹底させている「理念や使命、サービス哲学を凝縮した不変の価値観」のことです。

しかし今回明らかになったのは、たとえ「クレド」そのものは立派な内容でも、それを実践するのはあくまでもヒトであるということ、しかも全従業員が確実に実践できいていないのであれば、いくら立派な「クレド」であっても額縁に入って飾られた「経営理念」となんら変わらないということです。

顧客を中心にしたステークホールダーとのコミュニケーションにおいて、「ブランドの約束」が守れなかったということなのです。

コスト削減要請が無言のプレッシャーとして存在したのではないかと推測されますが、だからといってけっして許されることではありません。故意だったかどうかは外部からはわかりませんが、結果としてお客様をあざむいていたわけですから。

裏切られた思いをしているのはリッツ・カールトンのファンであるリーピーターの皆さんだと思いますが、それと同じくらい残念で悔しい思いをしているのは従業員のみなさんではないかと想像されます。

徹底的な調査を行ったうえで、「クレド」をふたたび徹底させるべく、一から出直してていただきたいものです。


行動規範を組織全体に徹底させるには組織内コミュニケーションがいかに重要か

それにしても、行動規範を組織全体に徹底させるのは、いかに難しいことか・・・。あのリッツ・カールトンですら、こうなのですから。

「クレド」にかんしては経営学のテキストでよく引き合いに出されるアメリカの医薬品メーカーのジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)があります。経営理念の浸透によって危機管理において初期動作を成功させた事例です。

1982年、ジョンソン・アンド・ジョンソンが販売する解熱剤「タイレノール」に何者かがシアン化合物を混入。服用した7人が死亡する事件が起きたのですが事件発生後1時間ほどで対応を開始、「シアン化合物混入の疑いがある」とすぐに情報を公開し、製品を回収。異物混入を防ぐ対策を取ったのがその内容です。徹底した情報公開と迅速な対応により問題を収束させたわけです。

そのジョンソン・アンド・ジョンソンですら、2010年には米国内で医薬品のリコール問題を引き起こしています。ヒューマン・エラーは完全に根絶できないのはいたしかたありません。

大阪リッツ・カールトンの件ですが、組織内コミュニケーションにも問題があったのではないかと推測されます。トップと現場との距離感が、どうも予想に反して存在していたのでないかという印象を受けています。

「誤(あやま)つは人のさが」という表現があるように、誰にでも安直な道を選択してしまうという誘惑にかられることも間違いを起こしてしまうこともあります。コスト削減要請を安い食材で代替してしまうという誘惑に負けてしまったかもしれません。

しかしながら、包み隠さずなんでも話し合うことができうようなコミュニケーション環境ができあがっていれば、こうした問題に直面したときに上司に相談ができたはずです。詳しい事情がわからないので何とも言えませんが。

組織内コミュニケーションの重要性をさらに真剣に捉えていただきたいものです。それがなければ、行動規範の徹底は不可能です。

世の中の経営者の皆さんは、大阪リッツ・カールトンのケースを「他山の石」として教訓を学び取るべきでしょう。


<関連サイト>

リッツ・カールトン大阪が食材を"偽装" 東京と異なる経営(ハフィントンポスト 2013年10月25日)

ホテル、百貨店で偽装を続発させた「レストラン」という世界の特殊性(財部誠一、ダイヤモンドオンライン 2013年11月8日)

阪急阪神ホテルズだけでない!メニュー表示偽装の構造問題(ダイヤモンドオンライン 2013年11月11日)

偽装メニュー対応で分かったホテル信用度 ワーストは近鉄系「奈良 万葉若草の宿 三笠」 主要30社調査(My News Japan 2013年11月5日)

食材偽装問題の根っこは「ブランド乱立」にあり!数百ページの再発防止策より大切な“シンプルルール”――水村典弘・埼玉大学経済学部准教授に聞く (ダイヤモンド・オンライン 2013年12月18日)
・・ブランドの根幹には顧客からの「信頼」という目に見えないものがあるという原点を見つめることだ。看板に書かれた表示を「信頼」している顧客を裏切るとブランド崩壊につながる!



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2013年10月17日木曜日

アマゾンの在籍年数はたった1年!-いまや米国企業の在籍年数はこんなに短くなっている


アマゾン1年、グーグル1.1年、イーベイ1.9年、ヤフー2.4年・・・。アメリカの有名 IT企業の在籍年数はこんなに短くなっている!

「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」(Bloomberg Businessweek)の「アマゾンと創業経営者ベゾス特集記事」に掲載されていた図表です。

ただしこの数字は「平均値」ではなく「中央値」であることに注意してください。平均在籍年数ではありません

「中央値」はメディアンともいいますが、統計学では重要な指標。「平均」はすべてのデータを均したものだが、「中央値」でみたほうが実態に近い場合も多いわけです。図に書いたら正規分布ではなく、左側に山がかたよった分布になることでしょう。

このデータから読みとれるのは、アマゾンの場合、在籍年数1年で辞める人間が多いということで、社内で出世している人間はそれよりも長く在籍しているということです。それくらいプレッシャーの大きな環境にさらされて働いているわけです。

米国企業でも、むかしは日本と同様に、いったん就社したら勤め上げるというのが一般的なキャリアでしたが、もはやそんなことははるか昔の話となっています。

この図表に掲載されている IBM や HP も、もはやむかしの IBM や HP ではありません。

日本でもタイムラグをおいて同様の傾向がでているわけですが、キャリア論の観点からいうと「永年勤続」そのものに価値があるのは、一握りの社員に限定されるわけです。つまり社内で出世した人は長く在籍しているのであり、それはつねに成果を出し続けているということです。

出世する人間は在籍年数は長いのですが、そうでない人間は回転が速い。しかし、たとえばアマゾンに在籍していた、グーグルに在籍していたいたということでキャリアに箔がつく。ゆえに在籍期間が短くても、労使双方にとってメリットがあるとういうことですね。

アメリカの人事管理の世界では3Rという表現をつかいます。採用のリクルート(Recruit)、雇用のリテンション(Retention)そして退職のリリース(Release)。いかいいい人材を確保し、いい人材に辞められないように腐心し、成果を出さない人には去ってもらうか。

解雇規制緩和にかんする議論が日本でも活発になっていますが、緩和否定派の見解にたつとアマゾンなど米国企業はブラック企業そのものですが、かならずしもそうではないのです。

ここでちょっと考えてみましょう。50歳代になっても組織人としてチャレンジングな人って、いったいどれだけいるのだろうか、と。

じっさい日本でも大企業であれば社内で出世コースからはずれた人は関連会社に出向・転籍することは当たり前に行われてきました。企業グループ内での人材移動ということです。

しかし、この移動が子会社や関連会社にプロパー社員にとってウェルカムかどうかはまったく別の話です。組織のパフォーマンスを阻害することも多々あります。

個人のキャリアにかんしては千差万別の選択肢がありますが、組織の新陳代謝を活発にするための雇用規制緩和は必要ではないかという考えも一理あるのではないでしょうか?

まずは組織人としての経験を積み、いずれは独立してふたたび「新人」になってあらたなキャリアを歩む。本人にとっても、会社にとってもハッピーではないでしょうか?

そのためには自分の専門を磨くことが必要になりますが、こういうキャリアデザインは若者だけでなく、最初から念頭においたほうがよいのではないか、企業としてもそれを支援することも必要ではないか、そんなことを考えます。


<ブログ内関連記事>

原点としての 「HPウェイ」 -創業者の理念は度重なる経営者の交代でも生き続けているのだろうか?

カリスマが去ったあとの後継者はイノベーティブな組織風土を維持できるか?-アップル社のスティーブ・ジョブズが経営の第一線から引退





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2013年10月15日火曜日

技術やサービスは地方から上京することもある-「ボタン式半自動」が導入されたJR青梅線



昨日、ひさびさにJR中央線(JR東日本管内)に乗車して気づいたこと。青梅行き特別快速だから正確にいうとJR青梅線でしょうか。

電車のドアが自動開閉だけでなく、ボタンを手動で押して乗客がスイッチ開閉できるようになっていました。いわゆる「ボタン式半自動」です。

そういえば、TVのニュースで報道していたなと思い出しつつ。この手動開閉は地方、とくに北国では当たり前ですよね。

東京でもドアが開きっぱなしだと、利用客にとっては夏は暑いし冬は寒い。しかも、事業者にとっても、夏の冷房費、冬の暖房費のムダ使いになってしまう。さらには世の中全体ではエネルギーの無駄づかいは環境にもよろしくない。

こういう「三方よし」の精神が東京にも導入されたのは、たいへん喜ばしいことであります。「三方よし」とは近江商人のCSR(=企業の社会的責任)のことです。

「ボタン式半自動」そのものはハイテクではなくローテクでもなく、ミドルテクといったところでしょうが、単なる機能追加としてだけではなく顧客サービスとして考えればありがたいものといえるでしょう。

いずれ首都圏でも都心部以外では当たり前に装備されることになるのかもしれません。

技術やサービスは、地方から上京することもあるわけですね。首都圏にはなかったものですから、「ヨコ展開」によるイノベーションといえるかもしれません。

ビジネスのヒントにもなりそうです。


<ブログ内関連記事>

書評 『「できません」と云うな-オムロン創業者 立石一真-』(湯谷昇羊、新潮文庫、2011 単行本初版 2008)-技術によって社会を変革するといういうことはどういうことか?

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ





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2013年10月9日水曜日

日本人の基礎能力は高い 「読解力」と「数的思考力」は先進国で一位!-「OECD 国際成人力調査 PIACC」の結果から



「OECD 国際成人力調査 PIACC」の結果が発表されました。国際成人力調査:日本、読解力と数的思考力で首位 (毎日新聞 2013年10月08日

PIAAC(ピアック)は、 Programme for the International Assessment of Adult Competencies の略、国際共通基準で成人のコンピテンシーを計測する調査で、欧州を中心とした先進国である OECD24カ国を対象に行われたもの。

「読解力」(Literacy)と「数的思考力」(Numeracy)にかんしては、なんと日本は先進国24カ国中ともに一位でした!

「ITを活用した問題解決能力」(Problem solving in technology-rich environments)は、10位という結果がでたようです。

「読解力」と「数的思考力」がともに、あのフィンランドを抜いて一位というのが痛快ですね。「ITを活用した問題解決能力」がくわわれば鬼に金棒となりましょう。

この結果は、日本人の平均レベルがいま現在でも高いことを意味しており、安心してよいのではないかと思います。

国立教育政策研究所(文部科学省)のコメントは「OECD 国際成人力調査 調査結果の概要」によれば以下のとおりです。


●我が国は、いずれのスキルに関しても、ほとんどの年齢で、OECD平均を上回り、他国に比べ、加齢にもかかわらず、高い水準を維持している。
●我が国は、いずれの職業でもスキルが世界トップクラスであり、OECD報告書で指摘されているように、日本の単純作業の従事者は、多くの国のセミスキルド・ホワイトカラーと同程度以上の読解力を有している。
●我が国でも、各国と同様、読解力のスキルが高い者ほど、賃金が高い傾向がある。
●参加国全般において、読解力でも、数的思考力でも、職場や家庭で読む、計算するなどのスキルを頻繁に使っている者の方が、スキルが高く、特に数的思考力においてその傾向が顕著。


この結果は、日本ではたとえ学校であまり勉強してこなかった社員であっても、会社に入ってから厳しく鍛え直すからでしょう。この基礎能力をさらに応用力として駆使できるなら、世界で勝ち抜くことも不可能ではないことを意味しています。

むかしから言われているように、兵隊と下士官の平均的な基礎レベルは高いが、将校のレベルはどうも・・という現象を統計データで裏付けているようにも思われます。

バラツキ(分散値)がどうなっているのか細かく見てみたい気もしますが、おそらく日本人はバラツキが小さいのではかと思います。平均レベルが高いというのはそういうことです。

「ゆとり世代」よりも、そのうえの世代の占める比率がまだまだ高いから、このような結果がでたのかもしれません。「ITを活用した問題解決能力」は10位という結果でしたが、これは成人でも若年層のほうが高いのは言うまでもありません。

調査結果はそのまま受け取ったほうがよさそうです。

企業経営の立場からみれば、これまでどおり「現場力」をさらに強化し、さらに「将校」の能力も強化していくことが、国全体だけでなく会社単位でも重要なことだと考えるべきです。

入社時点では能力は低くても、そうはいっても日本人。新入社員も磨きをかければ十分に世界レベルで戦える社員になるのです。思ったような人材が採用できない中小企業であっても、鍛え直せばモノになるということです。

能力開発には、いままで以上にチカラをかけ、人材の戦力化を図っていきたいものですね。



<関連サイト>

国際成人力調査:日本、読解力と数的思考力で首位 (毎日新聞 2013年10月08日

国際成人力調査(PIAAC:ピアック)

国際成人力調査で優秀だった日本の欠陥がまた判明 (BLOGOS 2013年12月08日 
団藤保晴)
・・「新しい物事を学ぶのが好き」の数値の低さに唖然



<ブログ内関連記事>

アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみよう

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)

「就活生」はもっと中小企業に目を向けるべき-「就活生」と中小企業とのあいだに存在するパーセプション・ギャップを解消せよ!

書評 『日本でいちばん大切にしたい会社』、『日本でいちばん大切にしたい会社2』(坂本光司、あさ出版、2008、2010)

フィンランドのいまを 『エクセレント フィンランド シス』で知る-「小国」フィンランドは日本のモデルとなりうるか?




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2013年10月1日火曜日

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・


『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)という本を読んでみました。最近、ネットではいろいろ叩かれていますが、ユニクロは内部からみるといったいどんな会社なのか関心があります。

ユニクロは消費者としてよく利用しますが、なかで働いたことがないわたしのような人間にとって、じっさいに店頭で働いていた経験をもとにした本書のようなノンフィクションはじつに読みであります。

著者は某有名国立大学を卒業後、フリースでブレークする前のユニクロ(=ファーストリテーリング)に新卒入社したものの7カ月で挫折して退職を余儀なくされたという体験をもっているフリーライター。

その著者が最初に配属された「ユニクロ154番店」、いまはなき「ユニクロ町田店」で勤務したときの同僚を10年後に訪ね歩くという形で聞き取りを行ったものが本書です。ごく身近な人間関係から全体像を導き出すというスタイルはなかなか面白い。

この本を読むと、正社員とパートやアルバイトといった非正規社員とでは働きがいと賃金以外の処遇に大きな違いがあることがわかります。

正社員としてやっていくにはかなりつらいものがあるものの、パートやアルバイトといった非正規社員として働くなら、うつ病になったりすることはないという事実。

最近のことですが、労働者にしめる非正規社員比率が4割に近いという報道がされましたが、ユニクロのような企業においては正社員として働くことの是非は、あくまでも働く本人が考えて決めるべきことだということを意味しているのかもしれません。

じっさいのところ、準社員という名のパートやアルバイトとして働く限り、過酷なプレッシャーのかかる店長になったり転勤させられることは皆無なわけですから、モノは考えようということでありましょう。


ユニクロで店長経験がなければその後のキャリアパスはない

正社員の場合、ユニクロでは店長を経験しなければその先の希望する職種にはつけないということです。

ユニクロのキャリア方針は、わたしにはアメリカ海兵隊に似ているような気もします。

海兵隊においてはブーツキャンプでの過酷な訓練というイニシエーション(=通過儀礼)を経たうえで、全員がライフルマンであることが徹底されます。そのうえで、歩兵や航空パイロット、広報やロジスティクスなどさまざまな職種に配属されていくことになります。全員がライフルマンである、というのが基本原則なわけです。

ただし、海兵隊においては、将校のキャリアと下士官以下のキャリアはまったく異なるので、兵隊からたたき上げで将校になるのはなかなか至難の業です。ユニクロの正社員キャリアパスは、むしろ徴兵制をしくイスラエルに近いかもしれません。

国民皆兵の国であるイスラエルでは、一部の例外を除いて、徴兵によって兵役期間満了まで勤め上げることが国民の義務でありますが、優秀な兵士のなかでこれはと目星をつけた者に、兵役満了後に軍に残って将校になる道を選択させる形で将校のリクルーティングを行っています。 つまりイスラエル国防軍においては、将校はすべて兵から上がってきた者だけなのです。

これはきわめて納得のいくキャリアパスといえうでしょう。現場を知っている人間がマネージャーになるという方式と同じです。

この論点については、アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみよう という記事に書いてありますのでご覧になっていただければ幸いです。

ユニクロの組織は本書によれば上意下達の軍隊式なので、その組織内キャリアにかんしても軍隊そのものであるともいえるでしょう。


正社員とパート・アルバイトが同じ現場で働くことの問題点

ただ、ユニクロがアメリカ海兵隊ともイスラエル国軍とも違うのは、正規と非正規の従業員が現場に混在していることです。非正規のなかにはパート、アルバイト、嘱託、派遣などさまざまな雇用形態が含まれます。

日本の航空会社においても事情は同じですね。ただし最近、全日空(ANA)では、客室乗務員(CA)は全員が正社員に変更になると報道されてました。ANAの動きにかんしては賛否両論があると思います。

最近のアメリカ軍では民間兵士会社に業務委託しているので、正規の兵士と民間軍事会社の兵士が混在しているので似た状況にあるのかもしれません。民間軍事会社の社員は市民であって軍人ではないので、軍人としての保護や補償はありません。つまり処遇体系の異なる兵士が混在していることになります。

サービス産業化がさらに進展し、非正規社員比率はさらに上がることが予想されています。労働は二極分化していくのは避けられない時代の流れなのだといってよいのかもしれません。

『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』を読んでいてわたしが気になるのは、いくら店長は「オーナー意識をもて!」と叱咤されても、正社員ですら自社株を一株も持っていないのであればムリがあるのではないかということです。コンビニにおいては、真の意味におけるオーナーとのフランチャイズ契約関係にあるのとは大きな違いです。

いっそのこと正社員として採用せず、店長候補はすべて業務委託という形にしたほうが、働く側にとっても経営側にとっても Win-Win でかつスッキリしていいのではと思うのですが・・・。いわゆるインディペンデント・コントラクター(=独立請負業者)という形態です。

そんなことを考えながら読みました。面白い本ですので一読をおすすめします。





目 次

プロローグ 居心地の良かった「ユニクロ154番店」の跡地を訪ねて
第1章 裏店長と呼ばれたAランクパートとフリースブーム以前入社の古参準社員
第2章 サッカー選手を目指すフリーターと元ギャル。アルバイトスタッフの意外な本音
第3章 熱血社員たちはなぜ3年でユニクロを辞めたのか
第4章 ユニクロ外資系金融マンとCSスタッフ賞受賞の美人現役スタッフ
第5章 元チーマーと元銀行員がなぜユニクロに? 謎だらけだった2人の過去
第6章 勤続16年「ユニクロが青春だった」元スーパースター店長との邂逅
エピローグ 地域で愛されるユニクロに生まれ変われ

著者プロフィール

大宮冬洋(おおみや とうよう)
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(=ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。『日経ビジネスアソシエ』、『プレジデント』、『きょうの料理ビギナーズ』、『dancyu』などで執筆。著書に、『30代未婚男』、『ダブルキャリア』(ともに共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』(ぱる出版)がある。





<関連サイト>

ユニクロ社員が不幸になる”合理的な”理由 スタッフの足跡をたどって見えたもの(大宮冬洋、東洋経済オンライン 2013年3月28日)
・・「僕はユニクロ勤務時代にサービス残業などの理不尽さを強要されたことはない。ユニクロがいわゆる「ブラック企業」なのかは今でもよくわからない。ユニクロ社員の8割が不幸になってしまうのは、むしろ合理的すぎることに起因していると感じている」。

ユニクロ 疲弊する職場 [拡大版] サービス残業が常態化、うつ病の罹患率も高い(風間直樹 :東洋経済記者、2013年03月12日)

【特報】ユニクロ、パートとアルバイト1万6000人を正社員化 (日経ビジネスオンライン、2014年3月19日)
・・「今回の取り組みでは、子育てや介護といった多様な事情で、不規則な勤務時間でしか働けないような従業員に対しても正社員化の門戸を開き、多様な働き方を認めたままで待遇を正社員化する。・・(中略)・・パートやアルバイトから正規雇用される社員は、特定の店舗や地域に勤務地が限定される「R(リージョナル=地域)社員」と位置づけられる。さらに今後は、パートやアルバイトからR社員への移行だけではなく、R社員としての新卒、中途採用も進める予定だ」。 ユニクロも、もはや背に腹は代えられないということか。



<ブログ内関連記事>

アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみよう

『JAL崩壊-ある客室乗務員の告白-』(日本航空・グループ2010、文春新書、2010) は、「失敗学」の観点から「反面教師」として読むべき内容の本

書評 『ユニクロ帝国の光と影』(横田増生、文藝春秋社、2011)

書評 『民間軍事会社の内幕』(菅原 出、 ちくま文庫、2010)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ①

むかし富士山八号目の山小屋で働いていた (2) 宿泊施設としての山小屋 & 登山客としての軍隊の関係
・・「兵隊レベルでは、自衛隊員のほうが米陸軍兵士よりも、忍耐力もあって強いのではないか、という印象が私には強い」、という印象を抱いた扶持さにゃ孫やでの勤労体験記。将校と兵士の違いは日米で共通

書評 『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダン・セノール & シャウル・シンゲル、宮本喜一訳、ダイヤモンド社、2012)-イノベーションが生み出される風土とは?

書評 『エリートの条件-世界の学校・教育最新事情-』(河添恵子、学研新書、2009)-世界の「エリート教育」について考えてみよう!
・・なぜ日本では「現場」は優秀だがエリートはダメなのか?

(2015年6月29日、2016年8月11日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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