「個」と「組織」それぞれの能力を向上し、「個」と「組織」のよりよい関係を築くために
                                    

NHK World (英語版 視聴料フリー!)

NHK World (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると、海外向け英語放送が24時間が流れるサイトにつながります。

Channel NewsAsia International (英語版 視聴料フリー!)

Channel NewsAsia International (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックするとシンガポールからの英語ニュースが24時間流れるサイトにつながります。

Al Jazeera English: Live Stream (英語版 視聴料フリー!)

Al Jazeera English: Live Stream (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると中東カタールからの英語ニュースが24時間流れるサイトにつながります。

Bloomberg TV (英語版 視聴料フリー!)

Bloomberg TV (英語版 視聴料フリー!)
画像をクリックすると、24時間ビジネス経済情報が英語で流れるサイトにつながります。

「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!(姉妹編ブログ)

「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!(姉妹編ブログ)
「専門知識」×「雑学」がビジネス思考の「引き出し」幅を拡げる! 最新投稿は画像をクリック!

MVVの3文字で、個人と組織にブレない軸とブランドをつくる!

MVVの3文字で、個人と組織にブレない軸とブランドをつくる!
このブログの執筆者が運営している facebookページです。

「日本型リーダーシップ」の基本は山本五十六にあり!

「日本型リーダーシップ」の基本は山本五十六にあり!
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」 には続きがあった!





東南アジア・ビジネスは背景をよく知ってから!

■■■■ 「ミャンマー再遊記」 全8回+α ■■■■
 総目次はここをクリック!
■■■■ 「三度目のミャンマー、三度目の正直」 全10回+α ■■■■
 総目次はここをクリック!
■■■■ 「タイのあれこれ」 全26回+番外編 (随時増補中) ■■■■
 総目次はここをクリック!



会社ウェブサイトは
 http://kensatoken.com です。

ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。   


  

2010年5月20日木曜日

「バンコク騒乱」について-アジアビジネスにおける「クライシス・マネジメント」(危機管理)の重要性

        
 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは、今回の「バンコクの騒乱」についてです。
 アジアビジネスにおける「クライシス・マネジメント」(危機管理)の重要性について、あらためて考えたいと思います。


「バンコク騒乱」の終結とその余波
               
 昨日(2010年5月19日)バンコク市内の騒乱状況は、最後通牒のあと行われたタイ陸軍治安部隊による強制排除作戦によって、「赤組」幹部は投降し、市内の占拠状態は終了した。

 しかしながらその後も「暴徒化したデモ隊」が ISETAN の入っている Central World が焼き討ちされ黒煙を吐きながら炎上した。暴徒が乱入し、略奪を行っているという情報もある。

このほかにも証券取引所(SET)や金融機関も放火され、地方都市でも焼き討ちが飛び火している。政府寄りとされる財閥CPグループ傘下の「セブンイレブン」(合弁企業)は、破壊と放火の対象になっている。商業銀行ではバンコク銀行(BBL)が標的とされているようである。
 このため「夜間外出禁止令」(curfew)がだされ、金融機関も活動停止状態になっている。
 タイ政府が発表しているように、「赤組」内部に「テロリスト」あるいは「外国人傭兵」が紛れ込んでおり、こうした者たちが「暴徒」を扇動したことの蓋然性は高いと思われる。

 私は、「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク(2010年5月17日付け)と題したブログ記事において、地方の農民層を主体とした「赤組」にやや同情しないでもないような内容の文章を書いているが、タイ国内に激しい格差が存在し、低い「身分」に置かれている農民層が目覚めたことは間違いないことだ。彼らの多くが、出稼ぎ先の首都バンコクで貧困層として差別されてきた。
 しかし、こうした農民層の怒りにつけ込み、暴力によって「国家転覆」(?)を目的とした外部勢力が紛れ込んでいる可能性が否定できないように思われる。タクシン以外に背後にいかなる勢力がいるのか、さまざまな憶測が飛んでいるが、私には検証のしようがないので、断定的なことは書くことができない。

 混乱が拡大すると、必然的に外部勢力の浸透を誘発しやすいのは、古今東西変わることはない。とくに比較的「ゆるい」タイのことである。かつてベトナム戦争当時、「国際スパイ都市」といわれたバンコクのことでもある。アルカーイダの海外ネットワークの重要な拠点ともいわれるバンコクのことである。なおさら、さまざまな勢力が跋扈しやすい素地があるといえる。

 今回の騒乱によって、対処療法には明らかに限界があることが示された。根本的な問題に対応するために、タイは国家として、抜本的に社会政策を見直さなければならないであろう。間違いなく多くのタイ国民が問題のありかに目覚めたはずである。


日本企業と日本人ビジネスパーソンにとっての教訓

 以上はタイの内政問題であるが、ビジネスパーソンとしては、クライシス・マネジメント(危機管理)の立場からこの問題を捉えなくてはならない
 日本語で「危機管理」と表現することが多いので、リスクマネジメントと誤解している人が多いのだが、クライシス・マネジメントは、自然災害、誘拐事件そして脅迫、テロなどの「不測の事態」が発生したときに、混乱する状況のなかでいかに対応するかという問題にかかわるものである。

 今回の「バンコク騒乱」はまさに、海外ビジネスの難しさ、負の側面を痛感させられる事件となっている。
 「閉鎖エリア」内にオフィスを構えていた日系企業は、臨時オフィスでの業務を余儀なくされている。市内交通の混乱、金融機関の活動縮小停止など、ビジネスに与える影響はきわめて大きい。
 また焼き討ちにあった商業ビルの損害など、果たして保険でどこまでカバーされるのか、これもまた暴動、内乱などの「不可抗力」(force majeure)であるだけに、きわめて疑問である。政府による損害補償も限界はあろう。

 2010年のタイ経済は、第一四半期のパフォーマンスが景気回復の兆候を示していただけに、今回の騒乱のダメージは計り知れない。
 クライシス・マネジメント体制が出来上がっている大企業とは異なり、中堅中小企業の対応は万全といえるだろうか、という問題意識である。

 そもそも日本人のマインドセットは、「マイペンライ精神」のタイ人ほどではないが、「まあ、なんとかなるさ」という「お気楽意識」が強すぎる。
 「いまそこにある危機」に鈍感すぎるのではないか。
 日本にある本部は、現地感覚をどこまで理解できているだろうか。イマジネーションに欠けるところはないか?

 どうも事業のコスト削減に意識が集中しすぎて、安全面でのコストを軽視しがちな傾向がありはしないだろうか?
 何事もバランスが不可欠である。リスクマネジメントの観点から保険さえかけておけばそれで終わりという話ではない。
 アジアでは過去にも、1997年のアジア金融危機後の「ジャカルタ暴動」(インドネシア)などが発生したことは記憶に新しい。
 自社ビジネスを展開する進出国の現地状況を、どこまで理解して事業経営に取り組んでいるのだろうか。一度じっくりと考えてみてほしい。


 あらためて、このクライシス・マネジメント問題についての注意喚起を行いたい。




<ブログ内関連記事>

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い!

タイのあれこれ (21) バンコク以外からタイに入国する方法-危機対応時のロジスティクスについての体験と考察-

「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク

「不可抗力」について-アイスランドの火山噴火にともなう欧州各国の空港閉鎖について考える

(2016年7月3日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)






Clip to Evernote 


ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。


禁無断転載!




end    
      

2010年5月19日水曜日

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2010年5・6月合併号「ビジネスが激変する「労働の新世紀」 働き方が、変わる。」(SPECIAL FEATURE)を読む


 2010年7月号から新装版が刊行されるので、5月号と6月号は合併号となった。
 「SPECIAL FEATURE 時代は変わった、仕事はどうなる。働きかたが、変わる。」という、非常に興味深い特集なのだが、多忙のため積ん読状態が続いて、読むのが後回しになってしまった。amazon で検索してみたら、もうすでに品切れになっている。特集の内容がいいので完売したのだろうか。リニューアル前の最終号の特集は、この雑誌の読者層にジャストミートしたのだろうか?
 遅ればせながら、コメントしておきたい。

(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/05/courrier-japon-201056-special-feature.html にて)





            

                               

2010年5月17日月曜日

「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク

      
「タイフェスティバル2010」 (東京・代々木公園)が開催された東京

 昨日(2010年5月15日)と本日の二日間、今年も「タイ・フェスティバル」が東京では代々木公園で開催された・・・(後略)・・


市街戦がつづく騒乱のバンコク情勢とその背景
 
 ところで一方、タイ王国の首都バンコクでは、いったん沈静化するとみえた騒乱が、ますます激化の度合いを強めている。政府と陸軍は、市内の中心部を封鎖して、座り込みをつづけ、事実上の籠城をつづけている「赤組」を兵糧攻めにする作戦のようだ。電気と水道の供給を止め、携帯電話の電話も遮断しているという。
すでに事実上の最後通牒をつきつけ、強制排除の準備に入っている・・・


(全文は http://e-satoken.blogspot.com/2010/05/2010_17.html にて)




             

2010年5月5日水曜日

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)

        
 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは前回に引き続き 上海万博 です。
 今回もまた、「中国のいま」を扱った本の紹介 を行います。



原題が『チャイナ・プライス』であることを念頭に読めば、中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

原題:The China Price:The True Cost of Chinese Competitive Advantage (by Alexandra Alexandra)

 日本語と中国語に堪能な米国人経済ジャーナリストが複眼的に見た中国の生産現場のリアル。原題は『チャイナ・プライス』(The China Price:中国価格)である。
 生産現場における労務管理の実情だけでなく、米国の世界的ブランド企業や巨大流通業の中国におけるビジネスの現場にも踏み込んで話を聞き出しているので、読んでいてきわめてリアリティが高いと感じるだけでなく、「チャイナ・プライス」が生み出される構造と、今後の行方についてもヒントを得ることができる。
 したがって、日本語版のタイトルは適切ではない。また帯のコピーが「これはまさに中国版「蟹工船」」というのも、日本語版出版当時の世相を反映したものだが、扇情的すぎるし一面的に過ぎるので本書の価値を損ないかねない。

 前半では、華南の広東省を中心にした消費財分野(アパレル、シューズ、玩具などの日用品や家電製品)の中国企業の生産現場を記述している。労務管理の実態と労働環境は、労働者自身による証言やさまざまな中国人労働者のライフストリーを語らせており、読み物としても興味深い。
 「世界の工場」となった中国について、著者は19世紀英国で発生した産業革命に匹敵する「第二の産業革命」といっているが、たしかに生産現場での労働状況をみるかぎり、直接は言及されていないが、フリードリヒ・エンゲルスが書いた『イギリスにおける労働者階級の状態』(一條和生/杉山忠平、岩波文庫、1990)を想起させるものがある。つまり本書はルポルタージュとしても中身が濃いということだ。

 本書は、基本的に米国人読者向けに英語で書かれた本なので、米国の消費者の関心が高いテーマに焦点をあてている。その意味では、本書の最大の読みどころは、後半の「第7章 損得勘定と社会的責任」であろう。1992年に大きく火を噴いたナイキの「搾取工場」(スウェット・ショップ)問題のメカニズムと構造について、中国の生産現場を舞台に描いているのが特筆すべき特色だ。
 米国の世界的ブランド企業や巨大流通業のサプライチェーンの末端に位置づけられる中国の工場。これらの米国の大企業にとって、中国の工場は自社工場ではなく、国際分業の一環として、あくまでもアウトソーシング先の下請け工場として位置づけられている。
 「チャイナ・プライス」を実現させた要素は、米国企業の立場からみれば製品のコモディティ化にともなう生産のモジュール化、IT化、オフショアリング。一方、低賃金で無尽蔵に供給され続けた中国の労働力。この両者がジャストミートした結果うまれてきたものだ。
 こういう事情については、日本のマスコミではほとんど取り上げられないので日本人にはピンとこない問題かもしれない。日本メーカーの場合、ユニクロやEMSに生産委託している一部の家電メーカーを除けば(*この点については、<書評への付記>を参照)、消費財メーカーは中国人が経営する工場に生産委託は行わず、自ら現地生産するのが当たり前になっている。労務管理も生産管理も、5Sなど日本流を徹底させているのが当たり前だ。中国人ワーカーを使うにあたっては、そもそも日本企業と米国企業とではアプローチの仕方に違いがあるのだ。
 低価格の製品を望みながら、一方ではCSR(企業の社会的責任)の観点からコンプライアンスを要求する米国の消費者の要求に応えるため、米国の大企業はとくに生産労働者の労務実態について、AS8000という「ソーシャル・コンプライアンス監査」を中国の工場に対して実施しているのだが、この実態についての記述を読んでいると、一筋縄ではいかない問題であることが実感される。そもそも中国は「上に政策あれば下に対策あり」という国柄だ、納入先の米国企業の政策に対して、地場の中国企業がとる対策は、なんだかイタチごっこのような感さえある。

 著者に指摘されてはじめて気がついたのは、「改革開放」から30年が経過した現在、出稼ぎ労働者はすでに第一世代ではないということだ。「第二世代」は農村出身者ですら「一人っ子」政策の申し子なのだ! しかも農業体験なしで、いきなり農村から都市に出稼ぎにきている。すでにさまざまな労働問題を経験してきた中国の労働者は労働法にも詳しくなってきているという、訴訟社会中国の実態。
 労働現場の是正への方向性にむけた動きが、なぜ必ずしも効果的に進まないのか、そのメカニズムについて多面的に考察した著者は政府の役割に大きく期待しており、中国で新しい「労働契約法」が2008年1月から施行されたことが、労働法制において大きな転換点になることを指摘して本書を閉じている。

 とかく一面的にみがちな中国ビジネスと中国の労働問題だが、本書で展開される「複眼的な見方」で見直してみると、中国と中国ビジネスの今後について考えるための多くのヒントが書かれていることに気がつくはずだ。
 バランスのとれた記述が、とくに後半に向けて展開されていくので、中国に関心のある人はビジネスパーソンも含めて、ぜひ最後まで目を通すことをすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「原題が『チャイナ・プライス』であることを念頭に読めば、中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本」投稿掲載2010年5月4日






<書評への付記>


原題:The China Price:The True Cost of Chinese Competitive Advantage の意味するところ


 原題:The China Price:The True Cost of Chinese Competitive Advantage を直訳すれば、「中国の競争優位性の真のコスト」というきおとになろう。この cost というコトバは、原価にしめる「コスト」でもあり、「犠牲」や「代償」という意味にも解釈できる。
 「プライス」をタイトルにしているので、おそらく両義的な意味合いが込められているのであろう。「中国価格」を構成する原価のうち、わずかな部分をしめるに過ぎない中国製造の「コスト」は、中国価格を実現するための工場労働が支払わねばならない犠牲や代償を指しているのだ、と。

 こういったことを念頭においておけば、訳文はこなれて読みやすいし、なによりも地名などの固有名詞が特定されているので、英語よりは読みやすいはずだ。ただし、「ブランド業者」などというおかしな訳語も散見される。原文がどうなっているのか知らないが、ナイキやティンバーランドなど、世界的な有名なブランドをもつ米国の大企業のことを指している。


著者のアレクサンドラ・ハーニー(Alexandra Harney)について

 日本語にも中国語(普通話)にも堪能な米国人経済ジャーナリストで、英国の FT(Financial Times)の記者をやっていた人。略歴(英語)はここを参照。http://thechinaprice.org/AboutAuthor.html
 「The China Price」というウェブサイト(英語)をもっているので紹介しておこう。
http://thechinaprice.org/home.html
 なお、著者の blog である The China Price には、著者が寄稿した記事が、日本語のものもリンクされている。
 http://thechinaprice.blogspot.com/
 なお、本書『チャイナ・プライス』出版以後については、日経ビジネス・オンラインのインタビュー記事を含めた6回の記事を参照。



オフショアリングについて
 
 オフショアリング(offshoring)とは、研究開発から試作設計を経て量産、そしてマーケティングとセールスに至る製造業の一連のフローから、製造(=量産)にかんする部分をアンバンドル(分離)し、生産コストの低い海外で生産を行う経営戦略をさす、経営専門用語である。米国企業がかなり以前から採用している戦略である。
 本書にもでてくるスポーツ関連製品のナイキやテインバーランド、玩具メーカーのマッテルといった世界的なブランド企業だけでなく、ウォルマートに代表される巨大流通業も積極的に推進してきた。
 本書でも詳しく取り上げられているように、かつてはメキシコの米国との国境地帯に設置されていた特区マキラドーラで行われていたオフショアリングも、いまでは完全に中国に移管、さらには東南アジアやアフリカに移転も始めている。ローコストでの調達戦略といいかえてもいい。

 製造業の観点からいえば、いわばファブレス(fabless=工場をもたない)製造業といってもいい形態であり、流通業の開発輸入によるPB(プライベート・ブランド)も同様の形態である。
 こういったファブレスメーカーにおいてカギとなるのは、アウトソーシング先である下請けの中国メーカーで製造される製品の品質保証(QA)機能であり、工場における品質管理(QC)の管理と監査である。

 ここまでなら米国企業であれ、日系企業であれ共通する話なのだが、こと中国においては、「搾取工場」(sweat shop)問題が米国内でわき起こり、ナイキを筆頭に消費者団体によって追いつめられ、ブランド毀損が懸念され事態に追い込まれた企業もある。米国企業の基本スタンスが、自社工場ではないので自社の雇用する従業員ではない、というものだったからだろう。
 「搾取工場」とは文字通り、労働者を搾取して利益を上げている企業というレッテル貼りの表現だが、製造現場における労働状況にかんするものである。ただしく労働者が扱われているかどうかも含めた監査が、いわゆる「ソーシャル・コンプライアンス監査」であり、米国の大企業は風評被害や、レピュテーション・リスクをミニマムにし、ブランド毀損を防ぐため、「ソーシャル・コンプライアンス監査」を行っていることを強調せざるを得ないのである。
 「SA8000」は、ソーシャル・アカウンタビリティー・インターナショナル (Social Accountability International, SAI) による、就労環境評価の国際規格のことである。世界人権宣言や児童の権利に関する条約、国際労働機関 (ILO) の諸条約を基に作成したものである。主に、消費財分野の米欧の世界的大企業が参加している。

 正確にいうと、日本企業でも米国と同様のオフショアリングは行っている。誤解を生んだらいけないので補足しておくが(・・ハーニーの本は、華南の軽工業について書いているので、私もウッカリしていた)、たとえば、日本でもJTが生産委託していて問題になった冷凍餃子の例があるように、食品製造の分野では例が多い。また、「100円ショップ」のダイソーなども同様に、中国の下請けメーカーに製造を委託している。このほか、日本企業が中国メーカーに生産委託している例は無数にあるが、少なくとも世界的なブランド企業の日本メーカーで、米国企業のように完全にファブレスに徹しているものはないといってよい。
 日本のハイテクメーカーや家電メーカーは、中国においても自社工場での製造が中心で、協力工場に生産委託することがあっても、労務問題でトラブルにならないように細心の注意を払っているのが実情である。これがコスト高の要因となっているといわれることもあるが、日本企業は比較的誠実にやっているといっていいだろう。

 米国企業のとるオフショアリング戦略という国際分業については、一長一短があるが、製造業における中国との国際分業だけでなく、ソフトウェアの分野ではインドとあいだで国際分業が行われていることは比較的よく知られていることだろう。
 このオフショアリングが、いい悪いは別にして、米国企業の(・・米国ではなく、あくまで米国企業の)競争優位性を作り出していることは特記しておかねばならない。
 日本企業も過度に「ものつくり」を強調しすぎないことも必要なのではないだろうか。

 オフショアリングについては、また別途取り上げることとしたい。日本企業が研究すべき、重要な経営手法であることは否定できないからだ。



         

2010年5月3日月曜日

書評 『拝金社会主義中国』(遠藤 誉、ちくま新書、2010)

 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは前回に引き続き 上海万博 です。
 今回は、「中国のいま」を扱った本の紹介を行います。



「向前看」(カンチェンカン)時代にひたすら前進することをたたき込まれた中国人は、「向銭看」(カンチェンカン)の合言葉のもと、ひたすらゼニに向かって驀進する欲望全開時代の中国人

 本書は、「改革開放」以降の中国と中国人の変貌を、科学者の眼と建国前後からのインサイダーならではの視点で描いた中国社会論である。
 著者は経済の専門家ではないとはいえ、物理学で鍛えられた科学者の精神でもって、中国社会の急激な変容ぶりを冷静に見つめる目は、中国と中国人への深い理解とあいまって、並大抵の中国本にはない深みを与えている。事象の表層だけを追った中国本とはまったく性格を異にする。
 本書はもともと「日経BPオンライン」に連載された・・・

(このつづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/05/2010.html にて)




                                      kk

 

2010年5月1日土曜日

上海万博開幕!(2010年5月1日)


 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一 です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメント加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは 上海万博 です。


 万博のテーマ曲が岡本真夜のパクリだった件など、開幕直前になって赤っ恥さらしまくりの上海万博でありましたが、本日午前10時に無事開幕にこぎつけたことは、素直に祝福したいと思います。

 ◆パクられた原曲:岡本真夜 「そのままの君でいて」 http://www.youtube.com/watch?v=OiOSIcJe1ek 



中国人の面子(メンツ)は絶対につぶさないこと

 それにしても岡本真夜サイドの対応は見事でした。中国サイドに不必要に面子(メンツ)をつぶさせることは回避しただけでなく、すべて飲み込んだうえでビジネス拡大に活用してしまったわけですからね。水面下の交渉の内容は知りませんが、岡本真夜サイドには莫大な収入となることでしょう。まさに「棚からぼた餅」でウハウハ状態でしょう。
 中国人の作曲家がいまだに悪あがきをしているようですが、みっともないですね。
 この件は中国のネットユーザーからわき上がった盗作倒錯の声に押されて、万博サイドでも早期収拾に動いたようです。一般大衆の声がネットに反映される時代、思ったより健全な中国人の声に眼を開かれた人も少なくないのではないでしょうか。



東京オリンピック(1964年)と大阪万博(1970年)で日本は高度成長した-この成長モデルを徹底研究し活用して、韓国も中国も大きく飛躍した
 
 1970年の大阪万博から始まって、つくば万博、愛知万博、海外では太田(テジョン)万博にもいきましたが、私にとっては何といっても大阪万博に尽きます。
 1964年の東京オリンピックは記憶にありませんが、1970年の大阪万博はすごかった。1945年の敗戦からたった25年であそこまでこぎつけたというのは、あの当時の日本人がいかに猛烈だったか、という隔世の感にもとらわれますね。「おー、モーレツ!」という CM もありました。
 太陽の塔はいうまでもなく、アポロ号が採集してきた月の石を展示したアメリカ館などなど。ものすごい人出で、ほんの少ししか入れませんでしたね。記憶しているのは、ソビエト館、ベルギー館、ビルマ館ぐらいです。すいていたので入れました。

 大阪万博当時の1970年の日本、上海万博開催当時の2010年の中国
 熱気に満ちた、これから飛躍するぞ!という活力に満ちた国と国民、こういう姿を見るのは決してわるいことではありません。
 しかも日本の場合はオリンピック開催から6年後であったのに対して、中国は北京オリンピックの熱気も冷めないうちに翌年に万博をぶつけてくるという、息も尽かせぬ波状攻撃で内外に向かって躍進する中国を演出するという作戦で臨んでいるのがまたすごいところ。
 オリンピックと万博で、ホップ・ステップ・ジャンプというのは、まず日本が作り出した経済発展モデルですが、東アジアではこれにつづいて韓国、そして中国となったわけです。

 上海万博計画についてはじめて聞いたのは、いまから20年以上も前の話です。むかし金融系コンサルティング会社にいたとき、親会社の銀行で開発案件にコミットしてプロジェクトファイナンスを実行する部隊に人から聞きました。
 万博規模のプロジェクトは構想から開催まで20年以上の年月がかかるものなんですね。正確な計画内容については知りませんが、「改革開放」政策に舵を切ってから30年、かなり早い段階から北京オリンピックと上海万博のセットで大きく飛躍するという構想を描いていたのでしょう。当時から中国は日本を徹底研究していましたから。
 上海万博計画の話を聞いたときに、大阪万博の総合プロデューサーを務めた堺屋太一が顧問としてかかわっているという話も聞きました。堺屋太一は大阪万博当時は通産省(現在の経済産業省)の役人だったといのですから、その当時の役人には本当の意味で国家全体のことを考える人がいたわけなんですね。
 堺屋太一はいまだ現役でうが、私が在籍していたコンサルティングファームの親会社はである銀行は、いまではそのままの形では存在していないので、果たして承継した銀行が上海万博にコミットしているのかどかは知りません。



愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ■
 
 現在は上海万博歓迎ムード一色ですが、ただちょっと懸念することはあります。

 1970年の大阪万博は高度成長期のある意味ではピークの時期でもありました。高度成長と工業国としての急速な開発にともなう国土破壊と公害問題(・・現在では環境問題)、大学紛争などなど。
 大阪万博のテーマが「人類の進歩と調和」であったように、混沌とした状況のなか、なんとか高度成長と社会問題の緩和を両立しようとした時期でもありました。
 しかし1973年のオイルショックの到来で、「明るい未来」には一気に陰がさしました。狂乱物価とよばれた状況のなか、トイレットペーパー買い占め事件などが発生しました。
 日本はこのオイルショックを乗り切り、軌跡の経済成長を遂げたわけですが、かならずしもリニア(=直線的)に経済成長してきたわけではありませんし、1990年以降はずっと停滞状況が続いています。いやむしろ社会的には閉塞状況が続いているといってもいい過ぎではないでしょう。

 中国も日本と同じだとまではいいませんが、中国が今後も直線的に成長していくと考えるのは楽観的に過ぎるというよりも、ナンセンスというべきでしょう。
 もちろん短期的には経済は成長する。しかし同時に急速な経済成長が生み出したひずみが経済成長を鈍化させる要因ともなりかねない。
 考えてみれば当たり前のことですが、長いスパンをとってものを見ると、どこの国であれ、一直線に成長した国はないし、かならずどこかの時点でカベにぶつかるのです。
 中国も例外ではないでしょう。

 少し前までは中国悲観論というものがあって、「北京オリンピックまではもつだろう」、「いや上海万博までは・・・」という論調はいくらでもありました。
 「上海万博は成功してるじゃないか、悲観論なんて気分の問題だ」、と勝ち誇るようにいう人もいるでしょう。
 しかしながら、景気変動は必ず存在しますし、そもそも歴史というものは短期波動、中期波動、長期波動の組み合わせです。たしかに中国は長期波動の波に乗ってはいますが、短期的な揺り戻しは当然のことながらありうる。こう考えるのが自然というものでしょう。

 これを機会に、大阪万博以降の日本のあゆみを振り返りながら、中国のこれからについても、いろいろ考えてみてはいかがでしょうか。

 おそらく日本の経験で類推できる部分と、すでに未体験ゾーンに突入している中国の事実は日本人の常識を越えて理解不能な部分もあることがわかると思います。事実は事実として受け止めるしかないのです。

 しかも、中国も「改革開放」以降だけをみていては本当に理解することはできないはずです。すくなくともアヘン戦争以降の近現代史をしっかりと押さえておくことが不可欠であると、私は考えています。

 1930年代の上海は、その当時「東洋一の大都会」といわれていました。世界中の富が集まり、東京よりもはるかに巨大な都市でありました。
 2010年の上海は、万博で全世界の注目を浴びています。
 そして、2030年の上海は・・・20年先の話など誰にもわからないと答えるのが正直というものです。
 2010年に上海万博がこのように無事開催されると確信をもって断言できる人はいったいどれだけいたでしょうか・・・

 先を読むには、虚心坦懐に歴史を振り返るしかないのです。







<ブログ内参考記事>

■中国関連

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!

書評 『中国動漫新人類-日本のアニメと漫画が中国を動かす-』(遠藤 誉、日経BP社、2008)

『取締役 島耕作』 全8巻を一気読み

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)

書評 『中国市場で成功する人材マネジメント-広汽ホンダとカネボウ化粧品中国に学ぶ -』(町田秀樹、ダイヤモンド社、2010)

書評 『100年予測-世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図-』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、早川書房、2009)



■1970年代以降の日本

書評 『現代日本の転機-「自由」と「安定」のジレンマ-』(高原基彰、NHKブックス、2009)

書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)




                                        kk