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2010年12月31日金曜日

書評 『治癒神イエスの誕生』(山形孝夫、ちくま学芸文庫、2010 単行本初版 1981)




原始キリスト教におけるイエスとその教団の活動を、精神疾患の「病気直し」集団のマーケティング活動と捉えることも可能

 そもそも「治癒神イエス」とは何か? イエスが「治癒神」とは何を意味しているのか?
 この卓抜なネーミングで読者の心を掴んだ一般書が、再びオリジナルのタイトルに戻して文庫版として再登場した。
 小学館の「創造選書」の一冊として初版がでたのは1981年、この間に何度か版を改めているが、すでにいまから30年前のことである。

 「治癒神」(ちゆしん)と書くとわかりにくいが、ひらたくいってしまえば「病気直しの神様」のことだ。こう書くと、なんだか日本の新興宗教のようだが、本質的には同じことだといっていい。
 もしかすると、キリスト教会内部では、イエスを「病気直しの新興宗教」と一緒にするとは何事か(!)という声があったのかもしれないが、キリスト教徒ではない私には何ともいえない。
 いずれにせよ、イエスと使徒たちの教団もまた、最初は「新興宗教」だったことは、間違いのない事実なのである! 多国籍巨大企業も、始まりはすべてベンチャーだったのと同じことだ・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/2010-1981.html にて)




   

2010年12月26日日曜日

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)




「アーミテージ・ナイ報告書」番外編-「知日派」両巨頭が語る知的刺激に満ちた一冊

 まさに時宜を得た企画であり出版である。「日米安保体制50年」の節目の年に、米国の安全保障分野の「知日派」両巨頭が、日本人ジャーナリストの挑発的とも思える質問に思う存分に語った、知的刺激に満ちた一冊である・・・


(つづきは  http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/vs-2010.html にて)






    

2010年12月16日木曜日

書評 『語学力ゼロで8カ国語翻訳できるナゾ-どんなビジネスもこの考え方ならうまくいく-』(水野麻子、講談社+α新書、2010)




「仕事ができる人」の心得-「ロジカルシンキング応用編」

 この特許翻訳者の女性は、なんと地頭(ぢあたま)のいい人であろうか! と感歎する思いで読んでいた。
 
 夫も子どものいる主婦でありながら、いや、そうだからこそというべきか、きわめて効率的な仕事の方法を編み出して、実行している人である。
 一言でいってしまえば、この本は、論理的思考力に基づいた「仕事ができる人」の心得、を書いた本だといってもいいだろう・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/82010.html にて)





    

2010年12月14日火曜日

書評 『Facebook(フェイスブック)をビジネスに使う本-お金をかけずに集客する最強のツール-』(熊坂仁美、ダイヤモンド社、2010)




全世界で友達の輪ができるフェイスブックは、国境を越えた強力なビジネスツールになる

 米国発の世界最大のSNS(=ソーシャル・ネットワーク・サービス)であるフェイスブック

 日本ではまだまだ参加者も少なく、ツイッターのようにブレイクする段階にまで至っていないが、ここのところ急速に参加者が増える傾向にあることは、知る人ぞ知るという状態にある・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/facebook2010.html にて)





   

2010年12月13日月曜日

書評 『ネット・バカ-インターネットがわたしたちの脳にしていること-』(ニコラス・カー、篠儀直子訳、青土社、2010)




インターネット世界の「浅瀬」化は必然の流れ。だからこそときには「浅瀬」からでて「情報遮断」することが必要だと気づかせてくれる好著

 インターネットによってわれわれの生活は、それ以前とは比べようのないほどまったく異なるものとなっている。
 インターネット以前と以後とでは、生活だけでなく思考そのものまで激変してしまったのだが、そう指摘されてもわからないほど、現在のわれわれはどっぷりとインターネットの流れに身を任せている。

 現代人のこの状況をさして著者は「浅瀬」(shallows)と名付けた。英語版のタイトルはスバリ「浅瀬」である。深みのない、浅い思考の流れに身を任せて生きているのが現実だと気づかせてくれる・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/2010_08.html にて)





    

2010年12月12日日曜日

書評 『グーグル秘録-完全なる破壊-』(ケン・オーレッタ、土方奈美訳、文藝春秋、2010)




単なる一企業の存在を超えて社会変革に向けて突き進むグーグルとはいったい何か

 かつて「邪悪な帝国」と多くの人から警戒されていたマイクロソフトを上回る巨大な存在となったグーグル。
 フリー(無料)経済の先導役でもあるグーグルは、単なる IT企業であることにとどまらず、社会変革の原動力として、「邪悪になるなかれ」という理念のもと日々進化を遂げている。

 このように書く私は、グーグルは検索で使うだけでなく、現在では新聞は取らずにグーグル・ニュースで記事を読み、ユーチューブで映像を楽しみ、メールもカレンダーもブラウザーもブログもみな、グーグルのクラウド・コンピューティングに多大な世話になっている。広告が入るのでうっとうしいという感もなくはないが慣れてしまえば気にならない。無料(フリー)というのはユーザーにとっては実に魅力的だ。

 つまるところ、原著英語版のタイトル "Googled" ではないが、私自身がすっかり「グーグル化」されてしまっているわけであり、私の日々の生活のほぼすべてがプライバシーも含めてグーグルのアルゴリズム改良に寄与しているわけだ。もちろん、この状況を無邪気にも無条件に肯定しているわけではない・・・


(このつづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/2010_09.html にて)






   

2010年12月10日金曜日

書評 『地雷処理という仕事-カンボジアの村の復興記-』(高山良二、ちくまプリマー新書、2010)




「現場」に徹底的にこだわった、地に足の着いた現地支援のあり方とは?

 1992年のカンボジアPKOに参加した陸上自衛官が、「人生の目的」を発見してしまったのは45歳のときであった。

 それから10年間、温め続けた夢を実現するため55歳で定年退職後、自衛隊関係者がつくった地雷処理の NPO の一員としてカンボジアに渡り、カンボジア語はおろか英語さえままならないまま、徒手空拳で事務所を立ち上げることから「第二の人生」の第一歩が始まった・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/2010_05.html にて)





  

2010年12月3日金曜日

「就活生」はもっと中小企業に目を向けるべき-「就活生」と中小企業とのあいだに存在するパーセプション・ギャップを解消せよ!



大企業だけが職「場」じゃない!

 今年2010年の「就活」戦線は、かつてないほどの最悪の状況であるという。すでに20歳台前半の若年層の失業率は 9%台に達している。これは高卒だけでなく、大学卒業予定の男女ともに共通していることだ。

 『失われた場を探して』は、基本的に最終学歴が「普通科高校の男子」というカテゴリーが、現在もっとも就職できずに、ニートやフリーターとして、社会を浮遊していることを指摘している。

 若者を浮遊させずに、うまく仕事の「場」に軟着陸させること、これは日本社会を安定させるうえで、もっとも重要な政策課題になることはいうまでもない。

 「大学卒業の男女」も「普通科高校の男子」と同じような状態になりつつある。これはたいへんなことだ。


「就活生」と中小企業とのあいだに存在するパーセプション・ギャップを解消せよ!

 かつて、自らが中小企業の取締役経営企画室長として、人事管理全般と採用活動までかかわった経験から、中小企業と大企業の違いについて、いくつか指摘をしておきたい・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/blog-post.html にて)





   

2010年12月2日木曜日

書評 『蟻族-高学歴ワーキングプアたちの群れ-』(廉 思=編、関根 謙=監訳、 勉誠出版、2010)




「蟻族」すなわち「大卒低所得群居集団」たちの「下から目線」による中国現代社会論

 「蟻族」(イーズー)というネーミングを考案し、はじめてかれらの存在を目に見えるものとした本格的な社会調査の記録である。
 昨年2009年に出版されたこの記録は、中国ではベストセラーになり、「蟻族」というコトバが一気に拡がったという。本書はその日本語版で・・・

(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/2010.html にて)





 

2010年12月1日水曜日

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2011年1月号 特集 「低成長でも「これほど豊か」-フランス人はなぜ幸せなのか」を読む




米国型か、フランス型か、それが問題だ!

 月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」(講談社)2011年1月号は創刊5周年特大号、特集は「低成長でも「これほど豊か」 フランス人はなぜ幸せなのか」

 提携先の「クーリエ」がフランスの雑誌であることの特色が最大限に活かされた特集になっている。その意味でも、読み応えのある内容になっているだけでなく、フランスでの独自現地取材記事も多いのが特徴だ。

 「クーリエ・ジャポン」もここのところ米国発の新しいものの考え方の特集がずっと続いていたので、その意味では米国とは対極にあるフランスを特集した意味は非常に大きい・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/courrier-japon-20111.html にて)





   
  

書評 『ゼロから学ぶ経済政策-日本を幸福にする経済政策のつくり方-』(飯田泰之、角川ONEテーマ21、2010)




「成長」「安定」「再分配」-「3つの政策」でわかりやすくまとめた経済政策入門書

 経済政策の基本をわかりやすく解説した新書版のレクチャー。順を追って読んでいけば、経済政策の素人にもスッキリわかるようなロジカルな構成の本になっている。

 著者の基本姿勢は、国民の一人一人にとっての「幸福度」を高めるための経済政策とは何かということにある。
 「幸福を増やす」政策は、「成長政策」と「安定化政策」(財政政策と金融政策)
 「不幸を減らす」政策として「再分配政策」がある。この「3つの政策」で説明する著者のレクチャーは、非常に明確で理解しやすい。
 結論からいえば、この「3つの政策」をバランスよく、うまく行うことが経済政策の基本である。ぞれぞれの経済政策についての詳しい説明が・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/12/one212010.html にて)





  

2010年11月21日日曜日

書評 『企画書は一行』(野地秩嘉、光文社新書、2006)




人を動かすのが究極的な目的である、企画書の本質を語った本

 企画書は短ければ短いほうがいい。エッセンスはたった一行、たった一言なのだ、という内容の本だ。
 このタイトルは実に上手い。思わず買ってしまうタイトルだ。

 もちろん、一行で済ませることができる企画書はそう多くはないし、そしてそういうある種の名人芸が許されるのも、企画の達人のみである。

 著者がいいたいのは・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/11/2006.html にて)




 

2010年11月19日金曜日

書評 『跡取り娘の経営学 (NB online books)』(白河桃子、日経BP社、2008)




「跡取り娘」たちが背負う日本の中小企業の未来。彼女たちから元気をもらいたい

 日本全国の法人数は、国税庁のデータによれば約280万社、法人の数だけ社長がいると考えれば、そのうちの約1割を占めるのが女性経営者である。

 女性経営者のなかには、最近よく脚光を浴びているベンチャーの創業経営者もいるが、その多くはスモールビジネスの所有者であろう。また、配偶者の死によって事業を継いだオーナー経営者の未亡人や、父親の後を継いで経営者になったものもいる。本書に取り上げられた「跡取り娘」とは、この最後のタイプのことだ・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/11/nb-online-booksbp2008.html にて)





         

書評 『ホッピーで HAPPY ! -ヤンチャ娘が跡取り社長になるまで-』(石渡美奈、文春文庫、2010 単行本初版 2007)




大企業でもベンチャーでもない、中小企業の現実を描いた三代目女性跡取りによる経営者修行の記録

 この本の著者であるホッピーミーナこと石渡美奈副社長、今年2010年の3月に、文庫版の出版と同時に三代目社長に就任したようだ。
 文庫化された機会に、タイトルが単行本出版時の『社長が変われば会社は変わる!』から、『ホッピーで HAPPY!ーヤンチャ娘が跡取り社長になるまで-』と改題したしたことで、ビジネス書のワクを出て一般書に衣替えすることとなった・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/11/happy-2010-2007.html にて)





         

2010年11月17日水曜日

書評 『仕事で成長したい5%の日本人へ』(今北純一、新潮新書、2010)




「仕事をつうじて成長すること」、これは残り95%の人にとっても重要なことだ

 著者は20歳台で日本を飛び出し、欧州企業を舞台に30年以上にわたって、個人として生き抜いてきたビジネスマンである。

 『仕事で成長したい 5%の日本人へ』とは、実に挑戦的なタイトルではないか。「仕事で成長したい 5%の日本人」に向けて語っているということは、極端な話、「残り95%の日本人」には用はないということだ。
 だが、「仕事をつうじて人間的に成長すること」、これはすべての働く人にとって重要なことではないだろうか。そう思ったら、この本は読むべきだ。その時点で読者は間違いなく 5%に入っているのである・・・


(つづきは  http://e-satoken.blogspot.com/2010/11/52010_17.html にて)





                

2010年11月16日火曜日

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)




空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「実践経営語録」

 自社の社員向けに作られた「経営用語解説」を、著者自ら編集したものだという。

 著者は現役の中小企業オーナー経営者、中小企業の経営者教育の分野でも有名な実践派である。いわば「小山昇経営語録」を、辞書のように「あいうえお順」に並べ替えたものだ。
 ただ、タイトルはもっと工夫したほうが、さらに多くの人が手にとるのではないか、とも思う。おそらく研修用テキストだから、書店で手にとって購入する人はそう多くないからかもしれない・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/11/2001.html にて)






                

2010年11月11日木曜日

What if ~ ? から始まる論理的思考の「型」を身につけ、そして自分なりの「型」をつくること-『慧眼-問題を解決する思考-』(大前研一、ビジネスブレークスルー出版、2010)




What if ~ ? (もし~だったらどうする)から始まる論理思考法の「型」を身につけるために

 『慧眼-問題を解決する思考-(大前研一通信特別保存版 PartⅣ)』、ビジネスブレークスルー出版、2010) の献本を「R+ レビュープラス」からいただいた。「大前研一 LIVE秘蔵映像~慧眼編~の DVD一枚がついている。

 本書は、大前研一がさまざまな媒体に書いて、語った最近の発言が再編集されて一冊にまとめられたものだ。

 テーマは大きく分けて4つある。1.教育・ビジネス、2.経営戦略、3.政治・経済、4.観光 である。まず目次をみておこう・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/11/what-if-2010.html にて)






         

2010年11月9日火曜日

書評 『ユダヤ人エグゼクティブ「魂の朝礼」-たった5分で生き方が変わる!-』(アラン・ルーリー、峯村利哉訳、徳間書店、2010)


現代社会に生きるビジネスパーソンのためのスピリチュアル・リーダーシップのすすめ

 不動産コンサルティング会社のエグゼクティブで、かつユダヤ教の精神的指導者(導師)であるラビが、生き馬の眼を抜くニューヨークでビジネスに従事するエグゼクティブたちに、毎週月曜日の朝に行ってきた訓話から30話を集めて一冊にまとめたもの。

 現代社会に生きるビジネスパーソンのための、スピリチュアル・リーダーシップのすすめとでもいうべき内容の本である。ニューヨークで話題のビジネス書だという・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/11/52010.html にて)





           
          

2010年11月5日金曜日

「学(まな)ぶとは真似(まね)ぶなり」-ノラネコ母子に学ぶ「学び」の本質について



 「学(まな)ぶとは真似(まね)ぶなり」。

 昔からよくいわれてきた格言のような表現だ。
 日本語の「まなぶ」とは「まねぶ」と同じこと。つまり、人の真似をすることが学びの出発点にあるということだ。漢字が導入される以前のやまとことばの段階においては、「まなぶ」(manabu)と「まねぶ」(manebu)はコトバとしてはほとんど同じで、概念としても同じだったのだろう。
 同じような表現としては、「あまい」(amai:甘い)は「うまい」(umai:旨い)というものもある。

 「学ぶとは真似ぶなり」、これをさらに分解すると、「気づき」と「観察」、そしてカラダを使った「再現」ということになる・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/11/blog-post_05.html にて)






            

2010年10月19日火曜日

書評 『空港 25時間』(鎌田 慧、講談社文庫、2010 単行本初版 1996)


業務マニュアルではなく、「現場」で働くナマの人間の声で語られた「仕事」=「人生」

 「空港」にかかわるさまざまな仕事を、社会派ルポライターの鎌田慧が聞き書きでまとめた一冊。

 機長2人、パーサー2人、カウンター、貨物の搭載、機内クリーニング、整備士、運航管理者、航空管制官、税関の合計11人からの聞き書きが、本人の語りをうまく活かして収録されている。
 最初から通して読み進めてゆくうちに、この人たちがいるからこそ、飛行機が安全に飛ぶという「当たり前のことが当たり前に」なっていることに、あらためて気がつかされるのである。テレビドラマには出てこない仕事にも十分に目配りしている・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/25-2010-1996.html にて)





          
            

『JAL崩壊-ある客室乗務員の告白-』(日本航空・グループ2010、文春新書、2010) は、「失敗学」の観点から「反面教師」として読むべき内容の本


間違っても機内に持ち込んで読むべき本ではないが、「経営の失敗学」の観点からは生きた事例の宝庫である

 「JALの現役・OBを含めた、複数の客室乗務員(CA:キャビン・アテンダント)等のグループ」が、主に人事労務にかかわる観点から描いた内幕物である。

 私は昔からよほどのことがない限り JAL は利用しないのだが、この本を読む限りこの会社には実に大きな問題がある(・・あった、と過去形でいうべきなのだろうが、インサイダーではないのでわからない)ことが手に取るようにわかる。
 正直いって、読んでもあまり後味のよいものではない。この本は、どの航空会社であるかは問わず、機内では読まない方がいい。読んでいて不安になってくるから、地上で読むことをおすすめする・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/jal20102010.html にて)





               

2010年10月14日木曜日

書評 『日本のグランドデザイン-世界一の潜在経済力を富に変える4つのステップ-』(三橋貴明、講談社、2010)


よく考えれば「当たり前」のことを、「当たり前」だと直球勝負で主張する著者の強み

 著者は、2009年7月に出版された『ジパング再来』(講談社)で、間違いなく日本は一人勝ちするであろうことを主張した。この見解に異論はない。

 本書では、より積極的な観点から、日本が国家として取り組むべき事を「国家のグランドデザイン」として提唱している。著者の問題意識の深さと問題分析には大きく同意するとともに、著者による提言内容については基本的に賛成だ・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/42010.html にて)




             

2010年10月13日水曜日

書評 『スミダ式国際経営-グローバル・マネジメントの先進事例-』(桐山秀樹、 幻冬舎メディアコンサルティング、2010)


「知られざる日本のグローバル企業」の突出ぶりを描いたビジネス・ノンフィクション

 「知られざる日本のグローバル企業」についてのビジネス・ノンフィクションである。「巻き線コイル技術を活かす幅広い事業分野」でグローバル展開するB2B分野の部品メーカー、東証一部上場企業スミダコーポレーションとその二代目社長が主人公である。
 マスコミに頻繁に登場する有名企業ではないが、グローバル企業としての突出ぶりは注目に値する。

 この会社は、日本の部品メーカーとしては、いちはやく1971年には国際事業展開を開始し、現在では中国、台湾、メキシコ、ベトナム、ドイツ、オーストリア、ルーマニア、スロベニアに生産拠点をもつにいたっている。売上高700億円超のうち、ドル建て、ユーロ建てがそれぞれ40%、円建ては残りの20%だけという、日本の製造業のなかでは例外的な存在であるといってよい・・・


(このつづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/2010_13.html にて)





                  

2010年10月12日火曜日

書評 『ユーロが危ない』(日本経済新聞社=編、日経ビジネス人文庫、2010)


日本経済新聞社の欧州特派員が足で稼いで取材した「ユーロ危機」をめぐる現地報告

 日本経済新聞社の欧州特派員が足で稼いで取材した「ユーロ危機」をめぐる現地報告。文庫版オリジナルである。

 本書を通読しての感想は、結局のところ共通通貨ユーロとは、かつてのドイツマルクの実質的な適用範囲を欧州全域まで拡大したものであり、共通市場と共通通貨によって一番メリットを享受したのが、ドイツそのものであったということだ。

 にもかかわらず、「何よりも規律を愛するドイツ国民」(*注)である。有権者の90%が抱いていた「放漫財政国ギリシア」への感情的反発ゆえに、メルケル首相の政治的判断にブレが生じた結果、ギリシア救済のタイミングを逸し、ユーロ危機拡大を招いたのが真相のようだ・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/2010_12.html にて)






               

2010年10月11日月曜日

書評 『Me2.0-ネットであなたも仕事も変わる「自分ブランド術」-』(ダン・ショーベル、土井英司=監修、伊東奈美子訳、日経BP社、2010)


ネット時代の「セルフ・ブランディング」の教科書

 ネット時代の「セルフ・ブランディング」の教科書である。
 セルフ・ブランディングとは、自分をブランド化すること。他の誰でもない自分(Me)をブランド化することで、就職するにせよ独立するにせよ、市場での差別化を実現する・・・





(このつづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/me20bp2010.html  にて)





                                    

2010年10月10日日曜日

書評 『ビジネス・ツイッター-世界の企業を変えた140文字の会話メディア-』(シェル・イスラエル、林信行=解説、滑川海彦/前田博明訳、日経BP社、2010)


ツイッターの多用な用途のなかにビジネス・ユースを位置づけていることに本書の意味がある

 米国のノンフィクション作品は長いものが多い。本書もその例外ではないが、読んでいて長いということがそれほど気にならないのは、著者がベテランのジャーナリストであるだけでなく、1944年生まれの現在66歳でありながら、新しい世界への好奇心が旺盛で、なんでもやってみようというチャレンジ精神に充ち満ちた人だからだろう。

 原題の Twitterville とは著者の造語のようだ。140文字で「つぶやく」(・・英語のもともとの意味は小鳥が「さえずる」)ソーシャル・メディアの Twitter に 町という意味の ville を合成したもの。だから、本書の内容はビジネス・ユースにとどまらず、ツイッターの使い手のほぼすべてをカバーしている・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/140bp2010.html にて)





                    

2010年10月9日土曜日

書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)


この本は、「やる気のある若者たち」への応援歌だ!

 経営コンサルタントで事業経営者の大前研一と、いまや日本のグローバル展開をリードするユニクロの経営者・柳井正の共著である。
 この二人が交互に見解を発展させていく形で進行していくスタイルをとった本だが、二人とも「老大国日本」の「若者のふがいなさ」を叱っている。

 おそらく叱られる対象である「ふがいない若者」が、この本を手にすることもないだろうし、もし手に取ったとしても、60歳を過ぎた(!)エネルギッシュな熱いオッサンたちの勢いに、この本を放り出してしまうだろう。

 しかし、それはこの国しか知らないからなのだ。この国のなかに引きこもっているからなのだ。一歩でもこの国を出てみたらいい。仕事を求めてハングリーな人間たちであふれかえっているのである。この熱気、この厳しさ、この激しい生存競争を肌で感じよ、というのがこの本のメッセージなのだ・・・

(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/2010_09.html にて)





            

2010年10月6日水曜日

書評 『日本型プロフェッショナルの条件-アメリカ的論理思考では問題は解決できない-』(安永雄彦、ダイヤモンド社、2009)


30歳代以上のビジネスパーソンにとって本当に重要なことを説いたビジネス法話集

 エグゼクティブサーチのプロフェッショナルが書いた、ワンランク上を目指す30歳代以上のビジネスパーソンにとって本当に重要なことを懇切丁寧に説いた本である。 

 著者が教鞭をとるビジネススクールでの授業で、最後の5分間で話す「法話」がことのほか好評らしい。さすが50歳台で、失敗もふくめて、酸いも甘いもかみ分けた、人生経験を積んだビジネスマンだからこそ説得力があるのだろう。
 いわゆるビジネススキルといった狭い範囲の話ではなく、ビジネスをつうじて、人としてそう生きて行くべきかを、著者の豊富なビジネス経験と浄土真宗の僧侶という立場も踏まえて説かれた「ビジネス法話集」を一書としてまとめあげたものだ・・・


(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/2009.html にて)






                   

2010年10月5日火曜日

書評 『経営の教科書-社長が押さえておくべき30の基礎科目-』(新 将命、ダイヤモンド社、2009)


経営学者が書いた「経営学の教科書」ではない、経営者が書いた「経営の教科書」

 『経営の教科書』というシンプルなタイトルのとおり、まさに「経営の教科書」である。
 経営学者が書いた「経営学の教科書」ではない、20年以上にわたる外資系企業の経営者としての実践に裏打ちされた「経営の教科書」である。

 副題には、「社長が押さえておくべき30の基礎科目」とある。「経営の原理原則」が、著者自身の経験談をまじえて、30項目にわたって書き込まれている・・・

(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/10/30-2009.html にて)






                    

2010年9月29日水曜日

書評 『ギリシャ危機の真実-ルポ「破綻」国家を行く-』(藤原章生、毎日新聞社、2010)


新聞記者が足で稼いで書いた 「ギリシアからみたギリシア危機」レポート

 特派員としてローマに駐在する毎日新聞社の記者が、足で稼いで書いた 「ギリシアからみたギリシア危機」レポートである。日々のマスコミ報道では知りようのない「ギリシアのいま」を伝えてくれるものだ。
 
 「ユーロ危機」の引き金となった「ギリシア財政危機」。一時期に比べたら「日本はギリシアになっていいのか!」というトンチンカンな叫びは沈静化したが、そもそも日本とギリシアはいっけん似たような地政学的ポジションにはあるものの、全く異なる歴史と文化をもつ国と国民であることが本書では確認される・・・


(つづきは、http://e-satoken.blogspot.com/2010/09/2010_29.html にて)






            

2010年9月1日水曜日

書評 『インドの科学者-頭脳大国への道-(岩波科学ライブラリー)』(三上喜貴、岩波書店、2009)


インド人科学者はなぜ優秀なのか?-歴史的経緯とその理由をさぐる好著

 インドの科学技術の発展を、英国の植民地時代から、独立を経て今日に至るまで歩みを、傑出したインド人科学者の人物と業績を中心に、きわめてコンパクトにまとめあげた本である。

 インドに対する関心が再び高まりつつある現在の日本であるが、関心の中心はビジネスと経済が中心で、科学技術にかんしても、科学分野よりも、技術分野のIT(情報科学)、あるいは原子力工学といった分野に話題が限られているのが現状である。「インドの科学者」を扱った本は残念ながらあまり類書がない。
 この本を読むと、インド人科学者とインド人技術者をめぐるさまざまな疑問に、すっきりと統一的に説明で答えてくれるのがありがたい。最近のニュースを見ているだけではわからない、インドの科学技術の本質的な側面を知ることができる・・・

(つづきは、http://e-satoken.blogspot.com/2010/09/2009.html にて)






               

2010年8月26日木曜日

レビュー 『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』(アップリンク、2010)


文字通り 「これを見ればドラッカーの全体像がわかる」 一本

 "Peter Drucker - An Intellectual Journey"(ドラッカー 知の旅)の日本語字幕付きバージョン。日本語版タイトルどおり、「これを見ればドラッカーが60分でわかるDVD」である。

 最近ドラッカーが話題になっているけど本を読むヒマがない、本を読むのが面倒くさいという人にはもちろん、ドラッカーが「マネジメントの父」と呼ばれており、ドラッカー経営学のエッセンスくらいはわかっている人も見るべき DVD だといえる。

 なぜなら、先入観のない初心者であれば、ドラッカーが単なる経営学者ではないことがわかるから時間の節約になる。
 一方、ある程度知っている人にとっても、経営学がドラッカー思想の中核をなしているが一部に過ぎないことを自覚する意味で必見だといえるからだ・・・

(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/08/60dvd2010.html にて)






                        

クレド(Credo)とは


リッツ・カールトン・ホテルの「クレド」

 サービス業に従事する人なら、「クレド」のなんたるかを知らない人、耳にしたこともないという人は、まさかいないだろう。

 「クレド」とは、米国の高級ホテルチェーンのリッツ・カールトン・ホテルが、全従業員に配布し、徹底させている「理念や使命、サービス哲学を凝縮した不変の価値観」(高野登)のことである。

『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』(高野登、かんき出版、2005)は、リッツ・カールトン・ホテルの日本支社長自らの言葉で語られた、ホスピタリティ(おもてなし)の心髄である。単なるビジネス書を越えた深い内容の一冊だ。

 サービス化が不可欠な先進国経済の日本では、すべてのビジネスパーソンはもとより、役所も病院もすべての人が読むべき必読書といってよい。サービスに直接携わっている人も、バックヤードで間接的に関わっている人も、みな読むべき、「ビジネス書を越えたビジネス書」なのである・・・

(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/08/credo.html にて)






                  

2010年8月23日月曜日

書評 『中古家電からニッポンが見える Vietnam…China…Afganistan…Nigeria…Bolivia…』(小林 茂、亜紀書房、2010)


中古家電からみえるのは発展途上国の現状だけでなく、日本の製造業の未来でもある

 日本製中古家電を海外に売る商売を長年続けてきた著者が、日本人の一般常識とはまったく異なる現地のホンネを紹介している本。著者は現在23カ国で海外展開しているという。

 なぜ発展途上国ではメイド・イン・ジャパンの家電製品が売れるのか。

 限られた予算のなかから、いいモノを求めて、真剣に選択しているのが、発展途上国の住人たちである。 
 けっして日本ブランドのイメージで買っているわけではないのだ。また同じ企業ブランドでも製品によって評価がかなり異なるらしい。きわめて厳しい目で製品を見ているのである・・・


(つづきは、http://e-satoken.blogspot.com/2010/08/vietnamchinaafganistannigeriabolivia201.html にて)





         

2010年8月19日木曜日

書評 『わたしはコンシェルジュ-けっして NO とは言えない職業-』(阿部 佳、講談社文庫、2010 単行本初版 2001)


「コンシェルジュ」の仕事-「サービス」と「ホスピタリティ」の違いとは?

 コンシェルジュ(concierge)という仕事がどういうものか。このコトバが日本語でも使われるようになってきたので、単行本初版がでた2001年当時とはだいぶ状況が変化したのではないだろうか。お客様の要望にはどんなものでも応えるというコンシェルジュが、比喩的な意味で使われることもしばしばある。

 しかし一方、コトバは拡がっても、実際に日本国内でコンシェルジュのお世話になることがあまりないのは、外資系ホテルが増えたとはいえ、まだまだコンシェルジュの絶対数が日本では少ないからだろう。日本を一歩出れば、私もいつもコンシェルジュのお世話になっているのだが。
 その意味で、コンシェルジュというホスピタリティの仕事がどういうもので、そのために必要な能力は何が求められるのかについて語った本書は、現在でも貴重な一冊である。
 「サービス」と「ホスピタリティ」の違いについては、直接読んで確かめてほしい・・・

(つづきは、http://e-satoken.blogspot.com/2010/08/2010-2001.html にて)





                      

2010年7月15日木曜日

シンポジウム:「BOPビジネスに向けた企業戦略と官民連携 “Creating a World without Poverty” 」に参加してきた

        
 日本経済団体連合会、日本貿易振興機構(ジェトロ)、国際協力機構(JICA)三者共同主催のシンポジウム:「BOPビジネスに向けた企業戦略と官民連携 “Creating a World without Poverty”」(2010年7月14日)に参加してきた。

 バングラデシュのグラミン銀行ムハマド・ユヌス総裁の話をライブで聞きたかったからである・・・

(つづきは、http://e-satoken.blogspot.com/2010/07/bop-creating-world-without-poverty.html にて)





                    

2010年7月12日月曜日

起業家が政治家になる、ということ


 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは、「起業家が政治家になる、ということ」についてです。成功した起業家に誘いがかかる政治家への道、その是非について、考えてみたいと思います。



参議院選挙で松田公太氏が当選
             
 昨日(2010年7月11日)に行われた参議院選挙で、みんなの党から東京選挙区から立候補した松田公太氏が当選した。激戦区の東京での当選であるからたいしたものである。めでたいことだ。
 松田公太氏は1964年生まれ、三和銀行の銀行員を経て、タリーズコーヒー・ジャパンを創業し成功させたストーリーは、自ら執筆した『一杯のコーヒーから』(新潮文庫)に失敗も包み隠さず、赤裸々に語られている。

 私は、昨年12月に行われた講演会でお会いして、その場で購入した文庫本にサインしてもらって、ちょっと会話したことがあるが、この件については以前にブログに書いたとおりである。講演会「原点回帰と変革の経営」で、松田公太氏とゾマホン氏の話を聞いてきた を参照。
 日本での起業を成功に導いた松田氏は、次の目標としてアジアで日本のサービス業を海外展開させるミッションを遂行しているとの話だった。
 シンガポールか香港か迷った末にシンガポールをベースキャンプに選んだ着眼点の鋭さを私は口頭で賞賛したのだった。
 シンガポールでは、山野ビューティそのほかの海外現地法人のマネジメントに関与しているという講演内容でったので、成功した起業家でしかも海外でも起業している松田氏のような人に政治を変えて貰いたいのは私だけではないと思う。
 著書にサインしてもらった彼の座右の銘 No Fun No Gain は、子供時代から長く海外で過ごしてきた彼の人生観そのものだろう。

 ただ、彼は本拠地をシンガポールに移していたから、日本での代議士活動とビジネスは両立可能なのか疑問もないわけではない。詳しくは知らないので、あくまでも憶測に過ぎないが。
 起業家で成功した人はそれなりに財産もあり、また部下の人材もいるだろうから、ビジネスは彼ら腹心にまかせて、自分は政治活動に専念するのも一つの手だろう。
 成功した起業家としての能力を政治に活用する、トヨタ流にいえば「ヨコ展開」することは、大いに期待されることである。



成功した起業家が政治家になった例

 もちろん、成功した起業家が政治家になるというケースは日本でも少なくはない。政治にカネがかかる以上、資金調達を自らの企業をつうじて行うのは、けっして不思議なことではない。
 たとえば、自民党の代議士・田中角栄は成功した土建業者だったし、河本敏夫は三光汽船のオーナー社長でもあった。

 問題は、政治活動を自分のビジネスに利用しているのではないか、という疑念を抱かれることだ。一般人は持ち上げても、なにか問題がおこると、あっというまに平気で祭り捨てるものである。
 田中角栄は、ロッキード事件という汚職事件を仕掛けられて失脚し、河本敏夫は、自らの企業の破綻で政治生命も絶たれることとなった。いまだに当選していないが、羽柴秀吉という青森の起業家もまた政治家になりたい起業家の一人である。

 日本以外でも、タイ王国のタクシン前首相は、IT関連で巨大な財をなした起業家であるが、彼がクーデタによって政治的に失脚して亡命を余儀なくされたのは、自社の持ち株をシンガポール市場で売り抜け、法律を自分の都合のいいよういねじ曲げて租税回避を図った疑いをかけられたからである。
 イタリアの首相でメディア王ベルルスコーニもまた、自分に対する訴訟を葬り去るために、政治家としてのチカラを行使して法律の改正を行っている。彼もまた、いつまでも安泰であるとはいえないだろう。



何事もメリットとデメリットがある

 このように書いていると、起業家出身の政治家は問題だといいたいのかと問われそうだが、私がいいたいのは何事もアドバンテージとディスアドバンテージがあるということだ。プラスとマイナス、あるいはメリットとデメリットといってもいいだろうか。
 起業家として成功したノウハウや識見を政治に活かすのは、大いにウェルカムである。
 しかし、ビジネスを続けながら政治家をやっていると、どうしても中途半端になることもあるし、また金銭がらみのスキャンダルを仕掛けられやすいことも否定できない。

 ほんとうは、起業家を卒業してから政治家になるのが、後腐れのなくてベストなのだが、いろいろな事情もあろうから、なかなかそうもいくまい。
 身辺をできるだけキレイにしておくことが、危機管理(クライシス・マネジメント)の観点から絶対不可欠であろう。どんなことでスキャンダルをでっちあげられて、政治生命を失ったり、ましてや本業のビジネスに大影響がでないとも限らないからだ。


経営者としての起業家と選挙で選ばれる政治家は根本的に異なる存在だ

 とくに政治家というのは、一般人が投票という行為をつうじて選出する性格をもっており、自ら起業して経営者となった起業家とは、根本的に異なる存在なのである。経営者は選挙で選ばれたわけでなく、自らの意思で起業し、経営者になるのである。
 開発途上国では、軍人が政治家になることも多いが、軍服を脱がずに政治家になるとどうしても独裁者になりやすい。シビリアン・コントロールの観点から、軍服を脱いでから、すなわち退役してから政治家になることが成功の秘訣である。

 同様に、起業家ももてる能力を大いに発揮して欲しいと願うのだが、ケジメをどのような形でつけるのか、ケースバイケースでもあるのできわめて難しい。
 30歳台の起業家には政治家を志している人も少なくないようだが、このことだけは肝に銘じておいていただきたいと思う。


 まあ辛口のコメントを書いたが、松田氏には大いに手腕を発揮してもらいたいし、成功を祈る次第である。





PS 松田公太氏の当選後については、いろいろと紆余曲折があるようだが、政治家になった初心を忘れずに初志貫徹していただきたいと思う。(2015年10月25日 記す)

PS2 参議院選挙に出馬せず1期6年の任期をもって政界引退を決意した松田公太氏。ビジネスで培った手法が通じない政治の世界にうんざりしたようだ。実験は、最終的に失敗であったということか。政治家経験を有効に活かして、つぎの活動に進んで欲しいものだ。 (2016年7月22日 記す)


<関連サイト>

政治家・松田公太に達成感なし “愚か者”と言われても、「第三極」を貫く (日経ビジネスオンライン、2016年3月15日)
・・「国会議員としての6年間を「大きな達成感は得られなかった」と振り返る。」現状報告と抱負

静かに政界を去るタリーズ創業者・松田公太氏 「PDCAがない世界、私のいるべき場所ではない」(日経ビジネスオンライン、2016年7月22日)
・・参議院選挙に出馬せず1期6年の任期をもって政界引退を決意した松田公太氏のインタビュー記事。「1つ目は事業管理手法のPDCAサイクルの発想がないこと、2つ目は契約を順守する考えが欠如していることだと指摘する」

(2016年3月15日 項目新設)
(2016年7月22日 情報追加)





<ブログ内関連記事>

来日中のタクシン元首相の講演会(2011年8月23日)に参加してきた
・・在職中は「CEO型首相」と呼ばれていたタクシン元タイ首相は、通信事業を核に一台企業グループを作り上げた人。政権を終われてからは国外逃亡生活を続けている

書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)-「エネルギー自主独立路線」を貫こうとして敗れた田中角栄の闘い
・・土建業から起業し、ビジネスを成功させたのち政治家になった田中角栄




(2012年7月3日発売の拙著です)










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2010年6月2日水曜日

本日(2010年6月2日)鳩山首相が退陣-「デッドライン」の意味について

        
 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは、今回の「民主党の鳩山首相が退陣を表明」(2010年6月2日)についてです。
 ビジネスパーソンにとっての基本中の基本である「デッドライン」(納期、締め切り)について、あらためて考えたいと思います。


民主党の鳩山首相が退陣を表明


 本日(2010年6月2日)、民主党の鳩山首相が退陣を表明した。

 沖縄の普天間基地問題解決を、5月31日のデッドラインまでに実現すると公約(・・口約)し、結局約束を守れず、さらに逆戻りするような結果を招いたことに対する、国民の不信感が支持率20%前後という結果を招いたためである。
 連立政権を組んでいた社民党の福島党首(・・消費者担当相として入閣)が、米国との共同署名を拒否したため罷免されたことが、社民党の離脱の引き金となった。
 もともと安全保障問題にかんする共通認識のない「野合」的な連立だったことから、いずれこの事態になることが当初から予想されたのであるが、鳩山首相が自ら設定したデッドラインには、公約がともなわないまま時間切れとなったことが、連立解消の原因となった。

 しかし、この政権はいったい何だったのだろうか、という想いがしないわけでもない。

 2009年の8月の総選挙での地滑り的勝利で「政権交代」に成功した功績は大きい。そのとき党首であった鳩山氏は「政権交代」の漢字熟語4文字で選挙を戦い抜いたのであった。
 しかし、首相の器ではなかったということだ。一言で片付けてしまえば。
 
 今回の一連の事件について、有権者としての立場はさておき、ビジネスマンの観点からコメントしておきたいことがある。
 「人の上に立つ人」のあり方についてだ。

 もちろん、同じリーダーだとはいっても、民主主義下の政治家と経営者には共通点もさることながら、相違点も大きい。同族企業ではない大企業の場合は、経営トップは、競争という名の、ある種の権力闘争を勝ち抜いている。選挙で選ばれる政治家であっても、政党内の権力闘争を勝ち抜いてきた党首には共通点がある。

 ここでは、リーダーとしての共通点に焦点をあててみたい。  


デッドライン(締め切り、納期)感覚と約束の重さ

 
 ビジネスであればつねに「デッドライン」が設定されている。どんな部署においても一番多いのは「納期」であろう。「締め切り」といいかえてもよい。

 20歳台前半でビジネス界に入って、まず最初にたたきこまれるのが、この「デッドライン」感覚である。
 何があろうと、メシを抜こうが、徹夜しようが、これだけは絶対に守らなければならない。でなければ・・・

 私のビジネス人生のなかでも、納期を守れずに「逃げた」人間を二人知っている。

 一人は、報告会までにプレゼン資料を完成させることができずに、報告会にあらわれなかった人。この人は、私が直接仕事をしていたわけではないので、ウワサ話なのであるが、こうしたウワサは一気に拡がるものである。
 「納期を守れず、逃げた男」というレッテルは一生はがれることがない。

 もう一人は、連載中の原稿が書けずに、消息を断ってしまった人の話。同じプロジェクトで仕事をしていなかったのが不幸中の幸いだが、しかしいったんこういうことをやってしまうと、もう二度と声がかかることはないだろう。

 ビジネスとは、その意味では厳しいものがある。

 生産管理の世界では「後工程(あとこうてい)はお客様」というビジネス格言がある。いま自分が担当している作業工程(プロセス)が終わらないと、次の工程(プロセス)に支障がでてくるということなのだ。

 ビジネスの世界にいれば当たり前のこんなことが、なぜ一国の首相ともあろう人が守らないのか、という国民の怒りの声は、しごく真っ当なものである。

 できなければ最初から約束するな!

 これがビジネス界の掟であり、常識的な人間が守るべきルールである。

 また約束にあたっては、とくに「人の上に立つ人」は、自らの発言の重みを自覚しなくてはならない、ということだ。
 「人の上に立つ人」でありながら「結果を出せなかった人」は、当然のことながら、その職からは辞職するしかないだろう。
 20歳台の駆け出しのビジネスパーソンではないのである。
 同じフィールドでは再起は難しい。敗者復活に際しては、活躍の場は別に求めなければなるまい。

 「失敗は若いうちにたくさんしておけ!」というのはそういう意味だ。失敗をおそれずにやることと、できもしない無謀な約束を空想して公約し、その結果が失敗に終わることとはまったく別である。


 「人の上に立つ人」は、「反面教師」として、「他山の石」として、今回の鳩山首相退陣劇を考える必要があろうかと思う。

 「人の上に立つ人」のコトバは、それだけ重いのである。





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2010年5月20日木曜日

「バンコク騒乱」について-アジアビジネスにおける「クライシス・マネジメント」(危機管理)の重要性

        
 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは、今回の「バンコクの騒乱」についてです。
 アジアビジネスにおける「クライシス・マネジメント」(危機管理)の重要性について、あらためて考えたいと思います。


「バンコク騒乱」の終結とその余波
               
 昨日(2010年5月19日)バンコク市内の騒乱状況は、最後通牒のあと行われたタイ陸軍治安部隊による強制排除作戦によって、「赤組」幹部は投降し、市内の占拠状態は終了した。

 しかしながらその後も「暴徒化したデモ隊」が ISETAN の入っている Central World が焼き討ちされ黒煙を吐きながら炎上した。暴徒が乱入し、略奪を行っているという情報もある。

このほかにも証券取引所(SET)や金融機関も放火され、地方都市でも焼き討ちが飛び火している。政府寄りとされる財閥CPグループ傘下の「セブンイレブン」(合弁企業)は、破壊と放火の対象になっている。商業銀行ではバンコク銀行(BBL)が標的とされているようである。
 このため「夜間外出禁止令」(curfew)がだされ、金融機関も活動停止状態になっている。
 タイ政府が発表しているように、「赤組」内部に「テロリスト」あるいは「外国人傭兵」が紛れ込んでおり、こうした者たちが「暴徒」を扇動したことの蓋然性は高いと思われる。

 私は、「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク(2010年5月17日付け)と題したブログ記事において、地方の農民層を主体とした「赤組」にやや同情しないでもないような内容の文章を書いているが、タイ国内に激しい格差が存在し、低い「身分」に置かれている農民層が目覚めたことは間違いないことだ。彼らの多くが、出稼ぎ先の首都バンコクで貧困層として差別されてきた。
 しかし、こうした農民層の怒りにつけ込み、暴力によって「国家転覆」(?)を目的とした外部勢力が紛れ込んでいる可能性が否定できないように思われる。タクシン以外に背後にいかなる勢力がいるのか、さまざまな憶測が飛んでいるが、私には検証のしようがないので、断定的なことは書くことができない。

 混乱が拡大すると、必然的に外部勢力の浸透を誘発しやすいのは、古今東西変わることはない。とくに比較的「ゆるい」タイのことである。かつてベトナム戦争当時、「国際スパイ都市」といわれたバンコクのことでもある。アルカーイダの海外ネットワークの重要な拠点ともいわれるバンコクのことである。なおさら、さまざまな勢力が跋扈しやすい素地があるといえる。

 今回の騒乱によって、対処療法には明らかに限界があることが示された。根本的な問題に対応するために、タイは国家として、抜本的に社会政策を見直さなければならないであろう。間違いなく多くのタイ国民が問題のありかに目覚めたはずである。


日本企業と日本人ビジネスパーソンにとっての教訓

 以上はタイの内政問題であるが、ビジネスパーソンとしては、クライシス・マネジメント(危機管理)の立場からこの問題を捉えなくてはならない
 日本語で「危機管理」と表現することが多いので、リスクマネジメントと誤解している人が多いのだが、クライシス・マネジメントは、自然災害、誘拐事件そして脅迫、テロなどの「不測の事態」が発生したときに、混乱する状況のなかでいかに対応するかという問題にかかわるものである。

 今回の「バンコク騒乱」はまさに、海外ビジネスの難しさ、負の側面を痛感させられる事件となっている。
 「閉鎖エリア」内にオフィスを構えていた日系企業は、臨時オフィスでの業務を余儀なくされている。市内交通の混乱、金融機関の活動縮小停止など、ビジネスに与える影響はきわめて大きい。
 また焼き討ちにあった商業ビルの損害など、果たして保険でどこまでカバーされるのか、これもまた暴動、内乱などの「不可抗力」(force majeure)であるだけに、きわめて疑問である。政府による損害補償も限界はあろう。

 2010年のタイ経済は、第一四半期のパフォーマンスが景気回復の兆候を示していただけに、今回の騒乱のダメージは計り知れない。
 クライシス・マネジメント体制が出来上がっている大企業とは異なり、中堅中小企業の対応は万全といえるだろうか、という問題意識である。

 そもそも日本人のマインドセットは、「マイペンライ精神」のタイ人ほどではないが、「まあ、なんとかなるさ」という「お気楽意識」が強すぎる。
 「いまそこにある危機」に鈍感すぎるのではないか。
 日本にある本部は、現地感覚をどこまで理解できているだろうか。イマジネーションに欠けるところはないか?

 どうも事業のコスト削減に意識が集中しすぎて、安全面でのコストを軽視しがちな傾向がありはしないだろうか?
 何事もバランスが不可欠である。リスクマネジメントの観点から保険さえかけておけばそれで終わりという話ではない。
 アジアでは過去にも、1997年のアジア金融危機後の「ジャカルタ暴動」(インドネシア)などが発生したことは記憶に新しい。
 自社ビジネスを展開する進出国の現地状況を、どこまで理解して事業経営に取り組んでいるのだろうか。一度じっくりと考えてみてほしい。


 あらためて、このクライシス・マネジメント問題についての注意喚起を行いたい。




<ブログ内関連記事>

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い!

タイのあれこれ (21) バンコク以外からタイに入国する方法-危機対応時のロジスティクスについての体験と考察-

「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク

「不可抗力」について-アイスランドの火山噴火にともなう欧州各国の空港閉鎖について考える

(2016年7月3日 情報追加)





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2010年5月19日水曜日

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2010年5・6月合併号「ビジネスが激変する「労働の新世紀」 働き方が、変わる。」(SPECIAL FEATURE)を読む


 2010年7月号から新装版が刊行されるので、5月号と6月号は合併号となった。
 「SPECIAL FEATURE 時代は変わった、仕事はどうなる。働きかたが、変わる。」という、非常に興味深い特集なのだが、多忙のため積ん読状態が続いて、読むのが後回しになってしまった。amazon で検索してみたら、もうすでに品切れになっている。特集の内容がいいので完売したのだろうか。リニューアル前の最終号の特集は、この雑誌の読者層にジャストミートしたのだろうか?
 遅ればせながら、コメントしておきたい。

(つづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/05/courrier-japon-201056-special-feature.html にて)





            

                               

2010年5月17日月曜日

「タイ・フェスティバル2010」 が開催された東京 と「封鎖エリア」で市街戦がつづく騒乱のバンコク

      
「タイフェスティバル2010」 (東京・代々木公園)が開催された東京

 昨日(2010年5月15日)と本日の二日間、今年も「タイ・フェスティバル」が東京では代々木公園で開催された・・・(後略)・・


市街戦がつづく騒乱のバンコク情勢とその背景
 
 ところで一方、タイ王国の首都バンコクでは、いったん沈静化するとみえた騒乱が、ますます激化の度合いを強めている。政府と陸軍は、市内の中心部を封鎖して、座り込みをつづけ、事実上の籠城をつづけている「赤組」を兵糧攻めにする作戦のようだ。電気と水道の供給を止め、携帯電話の電話も遮断しているという。
すでに事実上の最後通牒をつきつけ、強制排除の準備に入っている・・・


(全文は http://e-satoken.blogspot.com/2010/05/2010_17.html にて)




             

2010年5月5日水曜日

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)

        
 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは前回に引き続き 上海万博 です。
 今回もまた、「中国のいま」を扱った本の紹介 を行います。



原題が『チャイナ・プライス』であることを念頭に読めば、中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

原題:The China Price:The True Cost of Chinese Competitive Advantage (by Alexandra Alexandra)

 日本語と中国語に堪能な米国人経済ジャーナリストが複眼的に見た中国の生産現場のリアル。原題は『チャイナ・プライス』(The China Price:中国価格)である。
 生産現場における労務管理の実情だけでなく、米国の世界的ブランド企業や巨大流通業の中国におけるビジネスの現場にも踏み込んで話を聞き出しているので、読んでいてきわめてリアリティが高いと感じるだけでなく、「チャイナ・プライス」が生み出される構造と、今後の行方についてもヒントを得ることができる。
 したがって、日本語版のタイトルは適切ではない。また帯のコピーが「これはまさに中国版「蟹工船」」というのも、日本語版出版当時の世相を反映したものだが、扇情的すぎるし一面的に過ぎるので本書の価値を損ないかねない。

 前半では、華南の広東省を中心にした消費財分野(アパレル、シューズ、玩具などの日用品や家電製品)の中国企業の生産現場を記述している。労務管理の実態と労働環境は、労働者自身による証言やさまざまな中国人労働者のライフストリーを語らせており、読み物としても興味深い。
 「世界の工場」となった中国について、著者は19世紀英国で発生した産業革命に匹敵する「第二の産業革命」といっているが、たしかに生産現場での労働状況をみるかぎり、直接は言及されていないが、フリードリヒ・エンゲルスが書いた『イギリスにおける労働者階級の状態』(一條和生/杉山忠平、岩波文庫、1990)を想起させるものがある。つまり本書はルポルタージュとしても中身が濃いということだ。

 本書は、基本的に米国人読者向けに英語で書かれた本なので、米国の消費者の関心が高いテーマに焦点をあてている。その意味では、本書の最大の読みどころは、後半の「第7章 損得勘定と社会的責任」であろう。1992年に大きく火を噴いたナイキの「搾取工場」(スウェット・ショップ)問題のメカニズムと構造について、中国の生産現場を舞台に描いているのが特筆すべき特色だ。
 米国の世界的ブランド企業や巨大流通業のサプライチェーンの末端に位置づけられる中国の工場。これらの米国の大企業にとって、中国の工場は自社工場ではなく、国際分業の一環として、あくまでもアウトソーシング先の下請け工場として位置づけられている。
 「チャイナ・プライス」を実現させた要素は、米国企業の立場からみれば製品のコモディティ化にともなう生産のモジュール化、IT化、オフショアリング。一方、低賃金で無尽蔵に供給され続けた中国の労働力。この両者がジャストミートした結果うまれてきたものだ。
 こういう事情については、日本のマスコミではほとんど取り上げられないので日本人にはピンとこない問題かもしれない。日本メーカーの場合、ユニクロやEMSに生産委託している一部の家電メーカーを除けば(*この点については、<書評への付記>を参照)、消費財メーカーは中国人が経営する工場に生産委託は行わず、自ら現地生産するのが当たり前になっている。労務管理も生産管理も、5Sなど日本流を徹底させているのが当たり前だ。中国人ワーカーを使うにあたっては、そもそも日本企業と米国企業とではアプローチの仕方に違いがあるのだ。
 低価格の製品を望みながら、一方ではCSR(企業の社会的責任)の観点からコンプライアンスを要求する米国の消費者の要求に応えるため、米国の大企業はとくに生産労働者の労務実態について、AS8000という「ソーシャル・コンプライアンス監査」を中国の工場に対して実施しているのだが、この実態についての記述を読んでいると、一筋縄ではいかない問題であることが実感される。そもそも中国は「上に政策あれば下に対策あり」という国柄だ、納入先の米国企業の政策に対して、地場の中国企業がとる対策は、なんだかイタチごっこのような感さえある。

 著者に指摘されてはじめて気がついたのは、「改革開放」から30年が経過した現在、出稼ぎ労働者はすでに第一世代ではないということだ。「第二世代」は農村出身者ですら「一人っ子」政策の申し子なのだ! しかも農業体験なしで、いきなり農村から都市に出稼ぎにきている。すでにさまざまな労働問題を経験してきた中国の労働者は労働法にも詳しくなってきているという、訴訟社会中国の実態。
 労働現場の是正への方向性にむけた動きが、なぜ必ずしも効果的に進まないのか、そのメカニズムについて多面的に考察した著者は政府の役割に大きく期待しており、中国で新しい「労働契約法」が2008年1月から施行されたことが、労働法制において大きな転換点になることを指摘して本書を閉じている。

 とかく一面的にみがちな中国ビジネスと中国の労働問題だが、本書で展開される「複眼的な見方」で見直してみると、中国と中国ビジネスの今後について考えるための多くのヒントが書かれていることに気がつくはずだ。
 バランスのとれた記述が、とくに後半に向けて展開されていくので、中国に関心のある人はビジネスパーソンも含めて、ぜひ最後まで目を通すことをすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「原題が『チャイナ・プライス』であることを念頭に読めば、中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本」投稿掲載2010年5月4日






<書評への付記>


原題:The China Price:The True Cost of Chinese Competitive Advantage の意味するところ


 原題:The China Price:The True Cost of Chinese Competitive Advantage を直訳すれば、「中国の競争優位性の真のコスト」というきおとになろう。この cost というコトバは、原価にしめる「コスト」でもあり、「犠牲」や「代償」という意味にも解釈できる。
 「プライス」をタイトルにしているので、おそらく両義的な意味合いが込められているのであろう。「中国価格」を構成する原価のうち、わずかな部分をしめるに過ぎない中国製造の「コスト」は、中国価格を実現するための工場労働が支払わねばならない犠牲や代償を指しているのだ、と。

 こういったことを念頭においておけば、訳文はこなれて読みやすいし、なによりも地名などの固有名詞が特定されているので、英語よりは読みやすいはずだ。ただし、「ブランド業者」などというおかしな訳語も散見される。原文がどうなっているのか知らないが、ナイキやティンバーランドなど、世界的な有名なブランドをもつ米国の大企業のことを指している。


著者のアレクサンドラ・ハーニー(Alexandra Harney)について

 日本語にも中国語(普通話)にも堪能な米国人経済ジャーナリストで、英国の FT(Financial Times)の記者をやっていた人。略歴(英語)はここを参照。http://thechinaprice.org/AboutAuthor.html
 「The China Price」というウェブサイト(英語)をもっているので紹介しておこう。
http://thechinaprice.org/home.html
 なお、著者の blog である The China Price には、著者が寄稿した記事が、日本語のものもリンクされている。
 http://thechinaprice.blogspot.com/
 なお、本書『チャイナ・プライス』出版以後については、日経ビジネス・オンラインのインタビュー記事を含めた6回の記事を参照。



オフショアリングについて
 
 オフショアリング(offshoring)とは、研究開発から試作設計を経て量産、そしてマーケティングとセールスに至る製造業の一連のフローから、製造(=量産)にかんする部分をアンバンドル(分離)し、生産コストの低い海外で生産を行う経営戦略をさす、経営専門用語である。米国企業がかなり以前から採用している戦略である。
 本書にもでてくるスポーツ関連製品のナイキやテインバーランド、玩具メーカーのマッテルといった世界的なブランド企業だけでなく、ウォルマートに代表される巨大流通業も積極的に推進してきた。
 本書でも詳しく取り上げられているように、かつてはメキシコの米国との国境地帯に設置されていた特区マキラドーラで行われていたオフショアリングも、いまでは完全に中国に移管、さらには東南アジアやアフリカに移転も始めている。ローコストでの調達戦略といいかえてもいい。

 製造業の観点からいえば、いわばファブレス(fabless=工場をもたない)製造業といってもいい形態であり、流通業の開発輸入によるPB(プライベート・ブランド)も同様の形態である。
 こういったファブレスメーカーにおいてカギとなるのは、アウトソーシング先である下請けの中国メーカーで製造される製品の品質保証(QA)機能であり、工場における品質管理(QC)の管理と監査である。

 ここまでなら米国企業であれ、日系企業であれ共通する話なのだが、こと中国においては、「搾取工場」(sweat shop)問題が米国内でわき起こり、ナイキを筆頭に消費者団体によって追いつめられ、ブランド毀損が懸念され事態に追い込まれた企業もある。米国企業の基本スタンスが、自社工場ではないので自社の雇用する従業員ではない、というものだったからだろう。
 「搾取工場」とは文字通り、労働者を搾取して利益を上げている企業というレッテル貼りの表現だが、製造現場における労働状況にかんするものである。ただしく労働者が扱われているかどうかも含めた監査が、いわゆる「ソーシャル・コンプライアンス監査」であり、米国の大企業は風評被害や、レピュテーション・リスクをミニマムにし、ブランド毀損を防ぐため、「ソーシャル・コンプライアンス監査」を行っていることを強調せざるを得ないのである。
 「SA8000」は、ソーシャル・アカウンタビリティー・インターナショナル (Social Accountability International, SAI) による、就労環境評価の国際規格のことである。世界人権宣言や児童の権利に関する条約、国際労働機関 (ILO) の諸条約を基に作成したものである。主に、消費財分野の米欧の世界的大企業が参加している。

 正確にいうと、日本企業でも米国と同様のオフショアリングは行っている。誤解を生んだらいけないので補足しておくが(・・ハーニーの本は、華南の軽工業について書いているので、私もウッカリしていた)、たとえば、日本でもJTが生産委託していて問題になった冷凍餃子の例があるように、食品製造の分野では例が多い。また、「100円ショップ」のダイソーなども同様に、中国の下請けメーカーに製造を委託している。このほか、日本企業が中国メーカーに生産委託している例は無数にあるが、少なくとも世界的なブランド企業の日本メーカーで、米国企業のように完全にファブレスに徹しているものはないといってよい。
 日本のハイテクメーカーや家電メーカーは、中国においても自社工場での製造が中心で、協力工場に生産委託することがあっても、労務問題でトラブルにならないように細心の注意を払っているのが実情である。これがコスト高の要因となっているといわれることもあるが、日本企業は比較的誠実にやっているといっていいだろう。

 米国企業のとるオフショアリング戦略という国際分業については、一長一短があるが、製造業における中国との国際分業だけでなく、ソフトウェアの分野ではインドとあいだで国際分業が行われていることは比較的よく知られていることだろう。
 このオフショアリングが、いい悪いは別にして、米国企業の(・・米国ではなく、あくまで米国企業の)競争優位性を作り出していることは特記しておかねばならない。
 日本企業も過度に「ものつくり」を強調しすぎないことも必要なのではないだろうか。

 オフショアリングについては、また別途取り上げることとしたい。日本企業が研究すべき、重要な経営手法であることは否定できないからだ。



         

2010年5月3日月曜日

書評 『拝金社会主義中国』(遠藤 誉、ちくま新書、2010)

 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは前回に引き続き 上海万博 です。
 今回は、「中国のいま」を扱った本の紹介を行います。



「向前看」(カンチェンカン)時代にひたすら前進することをたたき込まれた中国人は、「向銭看」(カンチェンカン)の合言葉のもと、ひたすらゼニに向かって驀進する欲望全開時代の中国人

 本書は、「改革開放」以降の中国と中国人の変貌を、科学者の眼と建国前後からのインサイダーならではの視点で描いた中国社会論である。
 著者は経済の専門家ではないとはいえ、物理学で鍛えられた科学者の精神でもって、中国社会の急激な変容ぶりを冷静に見つめる目は、中国と中国人への深い理解とあいまって、並大抵の中国本にはない深みを与えている。事象の表層だけを追った中国本とはまったく性格を異にする。
 本書はもともと「日経BPオンライン」に連載された・・・

(このつづきは http://e-satoken.blogspot.com/2010/05/2010.html にて)




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2010年5月1日土曜日

上海万博開幕!(2010年5月1日)


 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一 です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメント加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは 上海万博 です。


 万博のテーマ曲が岡本真夜のパクリだった件など、開幕直前になって赤っ恥さらしまくりの上海万博でありましたが、本日午前10時に無事開幕にこぎつけたことは、素直に祝福したいと思います。

 ◆パクられた原曲:岡本真夜 「そのままの君でいて」 http://www.youtube.com/watch?v=OiOSIcJe1ek 



中国人の面子(メンツ)は絶対につぶさないこと

 それにしても岡本真夜サイドの対応は見事でした。中国サイドに不必要に面子(メンツ)をつぶさせることは回避しただけでなく、すべて飲み込んだうえでビジネス拡大に活用してしまったわけですからね。水面下の交渉の内容は知りませんが、岡本真夜サイドには莫大な収入となることでしょう。まさに「棚からぼた餅」でウハウハ状態でしょう。
 中国人の作曲家がいまだに悪あがきをしているようですが、みっともないですね。
 この件は中国のネットユーザーからわき上がった盗作倒錯の声に押されて、万博サイドでも早期収拾に動いたようです。一般大衆の声がネットに反映される時代、思ったより健全な中国人の声に眼を開かれた人も少なくないのではないでしょうか。



東京オリンピック(1964年)と大阪万博(1970年)で日本は高度成長した-この成長モデルを徹底研究し活用して、韓国も中国も大きく飛躍した
 
 1970年の大阪万博から始まって、つくば万博、愛知万博、海外では太田(テジョン)万博にもいきましたが、私にとっては何といっても大阪万博に尽きます。
 1964年の東京オリンピックは記憶にありませんが、1970年の大阪万博はすごかった。1945年の敗戦からたった25年であそこまでこぎつけたというのは、あの当時の日本人がいかに猛烈だったか、という隔世の感にもとらわれますね。「おー、モーレツ!」という CM もありました。
 太陽の塔はいうまでもなく、アポロ号が採集してきた月の石を展示したアメリカ館などなど。ものすごい人出で、ほんの少ししか入れませんでしたね。記憶しているのは、ソビエト館、ベルギー館、ビルマ館ぐらいです。すいていたので入れました。

 大阪万博当時の1970年の日本、上海万博開催当時の2010年の中国
 熱気に満ちた、これから飛躍するぞ!という活力に満ちた国と国民、こういう姿を見るのは決してわるいことではありません。
 しかも日本の場合はオリンピック開催から6年後であったのに対して、中国は北京オリンピックの熱気も冷めないうちに翌年に万博をぶつけてくるという、息も尽かせぬ波状攻撃で内外に向かって躍進する中国を演出するという作戦で臨んでいるのがまたすごいところ。
 オリンピックと万博で、ホップ・ステップ・ジャンプというのは、まず日本が作り出した経済発展モデルですが、東アジアではこれにつづいて韓国、そして中国となったわけです。

 上海万博計画についてはじめて聞いたのは、いまから20年以上も前の話です。むかし金融系コンサルティング会社にいたとき、親会社の銀行で開発案件にコミットしてプロジェクトファイナンスを実行する部隊に人から聞きました。
 万博規模のプロジェクトは構想から開催まで20年以上の年月がかかるものなんですね。正確な計画内容については知りませんが、「改革開放」政策に舵を切ってから30年、かなり早い段階から北京オリンピックと上海万博のセットで大きく飛躍するという構想を描いていたのでしょう。当時から中国は日本を徹底研究していましたから。
 上海万博計画の話を聞いたときに、大阪万博の総合プロデューサーを務めた堺屋太一が顧問としてかかわっているという話も聞きました。堺屋太一は大阪万博当時は通産省(現在の経済産業省)の役人だったといのですから、その当時の役人には本当の意味で国家全体のことを考える人がいたわけなんですね。
 堺屋太一はいまだ現役でうが、私が在籍していたコンサルティングファームの親会社はである銀行は、いまではそのままの形では存在していないので、果たして承継した銀行が上海万博にコミットしているのかどかは知りません。



愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ■
 
 現在は上海万博歓迎ムード一色ですが、ただちょっと懸念することはあります。

 1970年の大阪万博は高度成長期のある意味ではピークの時期でもありました。高度成長と工業国としての急速な開発にともなう国土破壊と公害問題(・・現在では環境問題)、大学紛争などなど。
 大阪万博のテーマが「人類の進歩と調和」であったように、混沌とした状況のなか、なんとか高度成長と社会問題の緩和を両立しようとした時期でもありました。
 しかし1973年のオイルショックの到来で、「明るい未来」には一気に陰がさしました。狂乱物価とよばれた状況のなか、トイレットペーパー買い占め事件などが発生しました。
 日本はこのオイルショックを乗り切り、軌跡の経済成長を遂げたわけですが、かならずしもリニア(=直線的)に経済成長してきたわけではありませんし、1990年以降はずっと停滞状況が続いています。いやむしろ社会的には閉塞状況が続いているといってもいい過ぎではないでしょう。

 中国も日本と同じだとまではいいませんが、中国が今後も直線的に成長していくと考えるのは楽観的に過ぎるというよりも、ナンセンスというべきでしょう。
 もちろん短期的には経済は成長する。しかし同時に急速な経済成長が生み出したひずみが経済成長を鈍化させる要因ともなりかねない。
 考えてみれば当たり前のことですが、長いスパンをとってものを見ると、どこの国であれ、一直線に成長した国はないし、かならずどこかの時点でカベにぶつかるのです。
 中国も例外ではないでしょう。

 少し前までは中国悲観論というものがあって、「北京オリンピックまではもつだろう」、「いや上海万博までは・・・」という論調はいくらでもありました。
 「上海万博は成功してるじゃないか、悲観論なんて気分の問題だ」、と勝ち誇るようにいう人もいるでしょう。
 しかしながら、景気変動は必ず存在しますし、そもそも歴史というものは短期波動、中期波動、長期波動の組み合わせです。たしかに中国は長期波動の波に乗ってはいますが、短期的な揺り戻しは当然のことながらありうる。こう考えるのが自然というものでしょう。

 これを機会に、大阪万博以降の日本のあゆみを振り返りながら、中国のこれからについても、いろいろ考えてみてはいかがでしょうか。

 おそらく日本の経験で類推できる部分と、すでに未体験ゾーンに突入している中国の事実は日本人の常識を越えて理解不能な部分もあることがわかると思います。事実は事実として受け止めるしかないのです。

 しかも、中国も「改革開放」以降だけをみていては本当に理解することはできないはずです。すくなくともアヘン戦争以降の近現代史をしっかりと押さえておくことが不可欠であると、私は考えています。

 1930年代の上海は、その当時「東洋一の大都会」といわれていました。世界中の富が集まり、東京よりもはるかに巨大な都市でありました。
 2010年の上海は、万博で全世界の注目を浴びています。
 そして、2030年の上海は・・・20年先の話など誰にもわからないと答えるのが正直というものです。
 2010年に上海万博がこのように無事開催されると確信をもって断言できる人はいったいどれだけいたでしょうか・・・

 先を読むには、虚心坦懐に歴史を振り返るしかないのです。







<ブログ内参考記事>

■中国関連

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!

書評 『中国動漫新人類-日本のアニメと漫画が中国を動かす-』(遠藤 誉、日経BP社、2008)

『取締役 島耕作』 全8巻を一気読み

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)

書評 『中国市場で成功する人材マネジメント-広汽ホンダとカネボウ化粧品中国に学ぶ -』(町田秀樹、ダイヤモンド社、2010)

書評 『100年予測-世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図-』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、早川書房、2009)



■1970年代以降の日本

書評 『現代日本の転機-「自由」と「安定」のジレンマ-』(高原基彰、NHKブックス、2009)

書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)




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