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2012年4月26日木曜日

書評 『マザー・テレサCEO-驚くべきリーダーシップの原則-』(ルーマ・ボース & ルー・ファウスト、近藤邦雄訳、集英社、2012)-ミッション・ビジョン・バリューが重要だ!

あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?

マザー・テレサについては、あらためて説明するまでもないと思います。バルカン半島の小村に生まれ、インドのカルカッタ(コルコタ)で貧しい人たちのための奉仕活動に一生を捧げたカトリックの修道女です。

一方、マザー・テレサには、「貧しい人びとのなかのもっとも貧しい人びとに仕える」(to serve the poorest of the poor)というミッションを掲げた「神の愛の宣教者会」(ミッショナリー・オブ・チャリティー)を、カトリック教会の内部で新規に立ち上げ、国際的な組織に育て上げたという「企業内起業家としての側面」もあります。

それが本書のタイトルにもあるマザー・テレサCEO(最高執行責任者)ということが意味するものです。

マザー・テレサの一生は、ミッション遂行のためには万難を排して献身した人生であり、けっして平坦な道ではなかったのでした。

本書は、若き日にマザー・テレサのもとで奉仕活動を行った起業家の著者が、ビジネス上のメンターとともに書き上げた、リーダーシップのあり方の原則にかんするビジネス書です。

しかし、あたらしい事業を立ち上げ、国際的な組織に育て上げるという外面的な「成功」についてのみ語った内容ではありません。

組織のリーダーとして毎日のように直面するさまざまな課題といかに正面から向き合い、ひとつひとつ解決していったかについてのマザー・テレサ実践について、読者と一緒に考えようという姿勢に貫かれた内容になっています。

マザー・テレサのマネジメントは、著者たちによって「リーダーシップの八原則」としてまとめられています(目次を参照)。

その多くは、カトリックの修道女として生きてきたマザー・テレサならではのものですが、「原則2 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ」、「原則4 疑うことを恐れるな」のように、あのマザー・テレサがそうだったのか(!)と驚くような原則も含まれています。いずれも起業家や経営リーダーならかならずぶつかる難問の数々。そこで語られるのはミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の重要性です。

マザー・テレサの八原則について、通り一遍の教科書的な理解に終わらせないためにも、ぜひ実際に読んで、自分のアタマで考えてみることをすすめたいと思います。できればディスカッションの材料として、一緒に考えてみることもいいでしょう。そのために必要なのは、マザー・テレサになったつもりでイマジネーションを働かせてみることです。

企業経営にかかわっているリーダーはもちろん、ありとあらゆる組織のリーダーにはぜひ読んでほしい本として推薦します。


<初出情報>

■bk1書評「あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?」投稿掲載(2012年4月25日)
■amazon書評「あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?」投稿掲載(2012年4月25日)





目 次


序章 マザー・テレサの原則
マザー・テレサの生涯
第1章 簡潔なビジョンを力強く伝えろ
第2章 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ
第3章 がまん強くチャンスを待て
第4章 疑うことを恐れるな
第5章 規律を楽しめ
第6章 相手が理解できる言葉でコミュニケーションしろ
第7章 底辺にも目配りしろ
第8章 沈黙の力を使え
おわりに あなたが聖人になる必要はない

著者プロフィール

ルーマ・ボース(Ruma Bose)
起業家、投資家、アドバイザー。『マザー・テレサCEO』出版時は、ホメオパシー関連商品やビタミ
ン剤を販売するスプレーオロジー社の社長兼共同CEO。1992~93年、インドのカルカッタ(現コルカタ)で「神の愛の宣教者会」のボランティアとして、マザー・テレサと奉仕活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

ルー・ファウスト(Lou Faust)
実業界で30年以上の経験をもつビジネスマン、アドバイザー。そのうち10年をソロモン・ブラザーズに勤務し、ウォール街や東京で過ごす。マネージング・ディレクターなどを務めた。『マザー・テレサCEO』出版時はエッジ・キャピタル・パートナーズLLCの共同創業者、共同経営者。大きく成長しようとする企業に経営戦略のアドバイスを行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<原書タイトル>

Mother Teresa, CEO  Unexpected Principles for Practical Leadership, 2011

原書には索引(インデックス)がついている。最初から原書で読んだほうがいいかもしれない。ただし、日本語版よりは値段が高いが・・




<書評への付記>

「汚く稼いで綺麗に使え!」。このフレーズは、ビジネス書作家・神田正典の本にはよく引用されているが、じっさいに日本に宣教で来ていたカトリック修道会の司祭のコトバである。

しかし、この考えはきわめて重要だ。

マザー・テレサの場合は、稼いだのではなく寄付についてだが、「かならずしもキレイではないカネ」も受け入れたという。ただし、汚いカネを美名に変換する「売名行為」というロンダリングに使用されないように、見返りはいっさい拒否したという。

ミッションにブレがなければ、「悪魔と取引」することもいとわないという姿勢、これはマザーテレサに限らず、カトリック教会の長い歴史のなかで培われた智恵であるといってよいかもしれない。

このようなモラル・ジレンマは、まさに「ハーバー白熱教室」のサンデル教授によるディスカッション・テーマをほうふつとさせるが、マザー・テレサの場合もまた同様の問題に直面していたということだ。だが、これをクリアしたのは彼女一人の決断ではないと思う。伝統のチカラもあずかっているはずだ。

マザー・テレサが立ち上げた「神の愛の宣教会」(Missionary Of Charity)は、カトリック教会内のあたらしい修道会である。だから「企業内起業」(イントラプルナーシップ)といってよいのである。始まりはベンチャーであったのだ。この件については、ブログに書いた記事「アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド」を参照していただきたい。マザー・テレサの生涯は映画化されているので、それを見るのがいちばんだろう。

なお、序文を寄せているビジネス書作家・本田直之氏も、訳文のなかでも、「マネージメント」となっているが、これはいただけない。動詞は「マネージ」と伸ばしてもいいが、名詞になったら「マネジメント」である。

間延びしていたマネージメントではなく、アクセントは文頭の「マ」に置いたマネジメントである。原則の5にもあるように、規律あるきびきびした姿勢こそ、修道院でしつけられたマザー・テレサの生活習慣に基づいた教えである。くれぐれも間違いなきよう!

著者たちがまとめた「マザー・テレサの八原則」は以下のとおりである。

1. 簡潔なビジョンを力強く伝えろ(Dream it simple, say it strong)

2. 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ(To get to the Angels, deal with the Devil)

3. がまん強くチャンスを待て(Wait ! Then pick your moment)

4. 疑うことを恐れるな(Embrace the power of doubt)

5. 規律を楽しめ(Discover the joy of discipline)

6. 相手が理解できる言葉でコミュニケーションしろ(Communicate in a language people understand)

7. 底辺にも目配りしろ(Pay attention to the janitor)

8. 沈黙の力を使え(Use the power of silence)

*Janitor とは門番という意味。お掃除のおばさんや用務員さんなども含まれる。



<ブログ内関連記事>

アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド

クレド(Credo)とは

「祈り、かつ働け」(ora et labora)

書評 『修道院の断食-あなたの人生を豊かにする神秘の7日間-』(ベルンハルト・ミュラー著、ペーター・ゼーヴァルト編、島田道子訳、創元社、2011)

映画 『シスタースマイル ドミニクの歌』 Soeur Sourire を見てきた

書評 『バチカン株式会社-金融市場を動かす神の汚れた手-』(ジャンルイージ・ヌッツィ、竹下・ルッジェリ アンナ監訳、花本知子/鈴木真由美訳、柏書房、2010)






(2012年7月3日発売の拙著です)






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end

2011年6月20日月曜日

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ


NHK・Eテレの「スタンフォード白熱教室」。ティナ・シーリグ教授の「起業家育成コースの集中講座」(Stanford Technology Ventures Program)。まさに、シリコンバレーのテクノロジー・ベンチャーのゆりかごであるスタンフォードらしい授業ですね。

いよいよ、本日は最終回学生たちの「最終課題」のプレゼンテーションです。

まずはいつもどおり、ウォームアップから。今回のウォームアップもまたカラダとアタマをつかったものでした。カラダを動かして肩のチカラを抜いていく。アタマの回転と柔軟性はスタンバイ。

最終回は「コーヒーの新しい飲み方を考える」。公式サイトの説明は以下のとおりです。

「発想の転換を迫り、革新的な アイデアを生み出す手法」を学ぶスタンフォード大学起業家育成講座。その根底にあるのはテイナ・シーリグ先生の「創造性は誰でも学ぶことができる」という考え方です。
最終回、学生たちに与えられた課題は「コーヒーの新しい飲み方」を考えること。
これまでに学んできたブレインストーミング、チームでの作業の仕方、最高のアイデアを考えた後で最低のアイデアも考えてみること、前提を疑い、ルールを破って問題を捉え直すことなど、吸収したすべての思考ツールを駆使して課題に挑みます。
果たしてどんなアイデアが飛び出すでしょうか。


最終課題は、第4回の授業で示されました。NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第4回放送- 「6色ハット」 は個人レベルの思考パターンと仕事スタイルを 「見える化」 する を参照してください。

課題は、まずはコーヒーを飲むという経験は何であるか調べつくすこと。ラディカルで常識破りのアイデアを出し、試作品をつくって実際のユーザーに試飲してもらうこと。新しい飲み方を、2分間のビデオでプレゼンテーションすること。

今回の放送ではじめてわかりましたが、第4回の授業から最終回の第8回の授業まではたった1週間。この授業はいわゆる「集中講座」だったようです。限られた時間のなかでプレッシャーと戦いながら課題を実行することの重要性も同時に体感させることも意図されていたようです。

プレゼンテーションは以下の要領で行われました。

1. 3人から4人で構成された7つのチームが、チームごとに 2分間のビデオを上映
2. ビデオ上映後にデザインのプロセスを口頭で解説
3. ゲスト審査員からのコメント

ゲスト審査員は2人、スタンフォード大学教育デザイン研究所ディレクター モーリン・キャロルとスタンフォード大学デザインスクール学部ディレクター バーニー・ロス。

シーリグ教授は、事前に各グループから試作品については事前に見ているようですが、ビデオについては見ていないという前提になっていました。徹夜までして完成させたグループもあったようです。

ビデオ・プレゼンでチェックされていたのは、「コーヒーの新しい飲み方」と試作品そのものだけではなく、とくに発想のストーリーとプロセスについてでした。第2回の授業ででてきた、「Emphathize」(共感)-「Define」(定義)-「Ideate」(考察)-「Prototype」(試作)-「Test」(検証)のサイクルをどのグループも踏まえたものとなっていました。

各グループは意図したわけではないにせよ、じつにさまざまな切り口から「コーヒーの新しい飲み方」を提案していました。

コーヒーの飲み方そのもの、コーヒーを飲む場所、コーヒーの注文のしかた、コーヒーの味、コーヒーにかわる同機能の製品・・・などなど。同じ課題でも、このようにさまざまな切り口からのアプローチが可能だということですね。たいへん面白いプレゼンでした。


米国ではこのような授業はシーリグ教授のものだけではない!

このプレゼンテーションをみていて思い出したのは、わたし自身の経験です。

M.B.A.の授業が始まる前に、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)のサマー・エクステンション(夏期集中講座)に参加して、ビジネス英語の授業をとっていましたが、同じようにグループでの課題発表が最終授業で行われました。1990年のことですから、いまから21年前のことになります。

最終課題は、新しいマウスウォッシュ(口内洗浄剤)を提案してその宣伝まで考えてプレゼンテーションするというもの。なんだか「スタンフォード大学白熱授業」の最終課題と似ていますね(笑)。もしかすると、米国ではとくだん珍しい課題ではないのかもしれません。

一緒のグループになったのは、わたしを含めた日本人2人とイタリア人2にスペイン人2人の合計6人。最終的にわれわれのチームが提案したのは「ミッキー・マウス」という商品名。Mickey Mouth とは Mickey Mouse にかけたもの。これはイタリア人の発案。この彼がプレゼンテーションでも大いに手腕を発揮して、先生からはイタリア人はプレゼンがうまいと誉められていました。イタリアに戻ったらマッキンゼーに入ると言ってましたが、はたして目的は達成したのかどうか?

余談になりますが、同じグループを組んでみてわかったのは、イタリア人とスペイン人はお互いのコトバで意思疎通しあえるのに、国民性はかなり異なること。どちらも、日本人と共通している面とそうでない面がある。とくにイタリア人はふだんは徹底的に遊んでいながら、ここぞというときに集中力がすごいということでした。

アイデアはイタリア人が中心になってつぎからつぎへとだし、日本人がそれを交通整理、スペイン人は冷静に議論の行方をみながら協調するという具合に。見た目と違って面白いグループ編成になったようでした。授業が終わったあと、スペイン人の二人が「日本人はすばらしい!」と絶讃してくれたのは、なんだかこそばゆい感じもしましたが、同時にひじょうにうれしくも思いました。

M.B.A.を取得した、ニューヨーク州のレンセラー工科大学(RPI:Rensselaer Polytechnic Institute)でも、ハイテクベンチャー(Technological Entrepreneurship)の授業で似たような課題をつうじて体験しています。

研究開発の成果を商業化(commercialize)するというプロジェクト。これはセメスター3ヶ月かけてのプロジェクトですが、かなり実践的な内容の授業でした。アメリカ人男性とスペイン人(・・正確にいうとカタロニア人)女性の三人でチームを組みましたが、われわれのチームが選んだのは、大学の工学部教授が開発した「心臓にたまった水を外部から測定する機器」。

これを製品化するための調査とマーケティングプランの作成を行い、最終プレゼンテーションでは優勝!最後のプレゼンは大教室で、外部からの審査員も出席したもので、緊張しながらも充実した思い出が残りました。

このような実践を念頭においた体験型授業、対話授業というものは、レクチャー主体の授業とは違って、受講者にとっては自分が主体的にかかわっただけに印象が強く、長く記憶に残るということですね。

シーリグ教授の「起業家育成コースの集中講座」もまた同じですね。米国の教育方法ではけっして例外ではないのです。日本の教育もそろそろ、「勉強」から脱して、体験と対話をつうじての「学び」に移行していくべきでしょう。大人向けも子ども向けも。


全8回の授業のまとめとおさらい

プレゼンテーションが終わったあと、シーリグ教授から、全体のまとめとおさらいが行われました。

「創造性は誰でも学ぶことができる」
・・これは全体をつうじてのシーリグ教授の一貫した主張です。全8回の集中コースをつうじて、参加者だけでなく視聴者もみな実感したことでしょう。

「観察」(Observation)
・・これは何度強調してもしすぎることはないでしょう。自然科学にかぎらず、ビジネスでもすべての分野で絶対に必要なマインドセットですね。

「前提を疑う」
・・マインドマップをつかったブレーンストーミングを実行しましたよね。また「最高のアイデアと最低のアイデア」の演習も面白かったです。誇張することで問題を「見える化」するわけです。

「メタファー」(Metaphor)
・・「関連性のない問題を組みあわせてみる」。このメタファーというコトバそのものが重要です。

「問題を定義し直す」(Redifine)
・・問題の違う角度からみて捉え直すことですね。シーリグ教授が引き合いにだしていた「無重力空間でも書けるペンの話」は興味深い例ですね。機能が明確になればエンピツでいいじゃないかというロシア人の発想が紹介されていました。

「空間の重要性」
・・創造性に適した空間が重要であることは、日本でも幼稚園と小学校以上を比べてみるとよくわかりますよね。米国の先端企業がこれにいかにチカラをかけているか、グーグルやフェイスブックを引き合いにだすまでもありません。この「起業家育成コースの集中講座」じたいが、かなり意識した空間設計がなされていました。

「チームの重要性」
・・第4回の授業でやった「6色ハット」など、創造性を発揮させるための最適の組み合わせについても重要ですね。一人ではなくチームで、しかも最適の組み合わせを考えて。

「時間の重要性」
・・時間的制約のもとでかかるプレッシャー。これが創造性には意外と重要であるということ。ビジネスパーソンであれば実感できることでしょう。

「実験する姿勢をもつ」
・・試作品は最初から完璧をもとめず、その都度ためして早い段階から失敗することを繰り返す。


最後にシーリグ教授が強調していたのは、Creativity Tools だけでなく、Attitude と Creative Culture の重要性。

創造性を開発するさまざまな「技法」(ツール)にばかり注目が集まりがちなのは、日本だけでなく米国でも同じようですね。

技法はもちろん重要ですが、創造性を発揮するための「姿勢」と「カルチャー」。この3つが合わさって、創造性が大いに発揮されること、これはぜひアタマのなかにいれておきたいものです。


学びも多いが、集中力も要求される中身のきわめて濃い授業。これほど濃い 1時間もないのでは? そんな感想をもつ番組でした。







<関連サイト>


「スタンフォード白熱教室」番組概要(NHK)

自分で自分を社長にする(Tina Seelig:ティナ・シーリグ)(YouTube 映像)


<全8回の授業内容>

5月1日(日) 第1回 「ブレーンストーミングで可能性を探れ!」
5月8日(日)第2回 「名札をめぐる冒険」
5月15日(日)第3回 「最悪の家族旅行を考える」
5月22日(日)第4回 「6つの考える帽子」
5月29日(日)第5回 「30分で新製品を作る」
6月4日(日)第6回 「トランプで創造性を学ぶ」
6月12日(日)第7回 「あこがれの起業家に学ぶ」
6月19日(日)第8回 「コーヒーの「新しい飲み方」を考える」


<ブログ内関連記事>

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 全8回 が始まりました

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第2回放送-「問題解決」の前に「問題発見」! 急がば回れ!

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第3回放送-「ブレインストーミングには悪いアイデアはない!」

NHK・ETV 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第4回放送- 「6色ハット」 は個人レベルの思考パターンと仕事スタイルを 「見える化」 する

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第5回放送-プレゼンは「つかみ」と「ストーリー」、そして限られた時間でアイデアをカタチにする

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第6回放送-創造性はだれでも、どんな環境でも、発揮することができる!

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第7回放送-シリコンバレーで働く 4人のゲストに聞く、創造性にまつわる 7つの質問




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2011年6月13日月曜日

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第7回放送-シリコンバレーで働く 4人のゲストに聞く、創造性にまつわる 7つの質問


 NHK・Eテレの「スタンフォード白熱教室」。ティナ・シーリグ教授の「起業家育成コースの集中講座」(Stanford Technology Ventures Program)。まさに、シリコンバレーのテクノロジー・ベンチャーのゆりかごであるスタンフォードらしい授業ですね。

 すでに授業は第7回目、いよいよ最終回の全8回の授業までのこり1回となってしまいました。

 まずはいつもどおり、ウォームアップから。今回のウォームアップはメンバーを 2つのチームをわけて、2分間でチーム名をきめてダンスの振り付けまで考えるというもの。このチームがそのまま、今回の授業ではそのまま対抗戦のチームとなります。

 カラダを動かして肩のチカラを抜いていく。しかも今回はダンスですから、カラダのほぐれかたも違いますね。アタマの回転と柔軟性はスタンバイ。

 今回(6月12日)のテーマは「あこがれの起業家に学ぶ」。公式サイトの説明は以下のとおりです。

 実際の企業の中で、創造性はどう発揮されているのか。今回は、フェイスブックの若手リーダーやスマートフォンの原型を提案した起業家などビジネスの第一線で活躍している 4人のゲストを招き、クイズ形式でそれぞれの企業の創造性の秘密を探り出していきます。
採用面接で創造性をどう見抜くのか、創造性を高めるためのチームの編成方法、空間の使い方の工夫、アイデアを出すための時間は仕事の何パーセントか、アイデアを実行する決定権は誰にあるのかなどさまざまな設問を通して、学生たちはクリエイテイブな企業文化を創るには多様なアプローチがあることを学びます。 


 今回の授業は、パネル形式で4人のゲストに、シーリグ教授がモデレーターとして質問し、その解答がホントかウソかを学生のチームに判定させて勝敗を競わせるというゲーム形式

 ゲストスピーカーを読んでスピーチをしてもらい、その後の質疑応答をつうじてディスカッションするという形式は、米国だけでなく日本でも行われますが、質疑応答のセッションそのものをゲームにしてしまうというのは、じつにクリエイティブな授業になっていますね。

 今回招かれたゲストは以下の4人です。

ジェフ・ジョーキンス
 スマートフォンの原型を開発
 1992年パーム社(Palm)を設立
 情報携帯端末(PDA)を開発
 脳神経科学に基づくソフトウェア開発も

ドナ・ノビツキー
 会社立ち上げのスペシャリスト
 ウェブ制作会社の CEO などを歴任
 ベンチャーキャピタル(VC)の経験から16社以上の起業にたずさわる

ジュリー・ズー
 「いいね!」ボタンをつくった人
 2006年スタンフォード大学卒業(シーリグ教授の授業を受講)、フェイスブック入社
 現在はプロダクトデザイン・マネージャー

ブレンダン・ボイル
 150以上のオモチャを発明
 世界に支社をもつデザイン会社 IDEO社オモチャ部門リーダー

 起業家が二人(うちひとりはベンチャー・キャピタリスト)、デザイン関係者が二人と、面白い組み合わせになってます。こういう人たちを授業に呼べるのも、スタンフォード大学が立地するシリコンバレーならではですね。

 起業クイズのルールは以下のとおりです。

●ゲストはほんとうのことを答えるかどうかわからない
●ウソかホントかを見抜けたら1ポイント、間違えたら相手チームに1ポイント

 学生チームに質問を考えさせてでてきた質問とあわせて、シーリグ教授がモデレーターとなって7つの質問をし、質問のそれぞれにゲストの4人がひとりづつ解答をするという形です。ゲストは赤いソファに腰掛けてリラックスした状態で質問に答えます。

 ゲストに対する質問を列挙しておきましょう。

(Q1)面接で創造性をどう見抜く
(Q2)創造性を高めるチームの変成方法は?
(Q3)創造性を高めるためのオフィス空間の工夫は?
(Q4)アイデア出しに使う時間は仕事の何%?
(Q5)アイデアを実行する決定権は誰に?
(Q6)アイデアを出すための道具やシステムは?
(Q7)クリエイティブな空間は誰がつくっている?

 ゲストはそれぞれ、ウソかホントかわからないが、いかにもありそうなもっともらしい話をしていましたね。学生たちは真剣に考えてましたが、そのそも世の中のすべてはウソかホントか完全に班別できないもの。当事者以外は知らないのは当然といえば当然ですね。

 詳細は省略しますが、最後にシーリグ教授によって、本日のゲストからの「学び」がまとめられていたので、ゲストごとに列挙しておきましょう。今度の順番はソファに座った、こちらからみて左側から。

ジェリー・ズー(フェイスブック)

●大きな組織は「クリエイティブ」という尺度だけで人は管理できない
●膨大な数のユーザーに向けて製品の品質を検証する人たちの比重が大きい
●創造性のある会社の雰囲気づくりは採用から始まる


ジェフ・ホーキンス(2社のIPOを実現後、現在は3社目を立ち上げ中)

●自分のつかっているものの不満点を徹底的に洗い出す
●どんなに悪い製品でも必ず一つは学ぶべき点がある


ドナ・ノビツキー(ベンチャー・キャピタリスト)

●メンバーが刺激を受けるようなユニークな会議のあり方を提案する
●チーム編成のときにはなるべくセクションのちがう人を組み合わせる


ブレンダン・ボイル(IDEO社おもちゃ部門リーダー)

●チーム編成は「熱意」だけではできない
●100%クリエイティブはありえない。売ることも重要
●クリエイティブなアイデアの選択には多数決は効果的でない場合もある

 ジェリー・ズー(フェイスブック)の発言については、フェイスブックも映画『ソーシャルネットワーク』の立ち上げ期ははるか昔の話、現在ではインド、中国の人口についで多い5億人のユーザーにむけて、3,000人超の社員が働いている大組織となっているわけですね。

 ジェフ・ホーキンス(2社のIPOを実現後、現在は3社目を立ち上げ中)の発言については、エンジニアとして製品開発にかかわってきただけに、説得力がありますね。

 ドナ・ノビツキー(ベンチャー・キャピタリスト)は、自らも起業体験をもっているベンチャー・キャピタリストならではの発言。

 ブレンダン・ボイル(IDEO社おもちゃ部門リーダー)の発言については、デザインの重要性は日本企業ももっと意識すべきしょう。企業活動におけるクリエイティブはアートではないとはいえ、ある種の直観も必要ということですね。

 ゲストの発言のまとめとそれに対するあたさいの感想を書いてみましたが、まあそんなものかという感想もあるかもしれませんね。ただ、教訓というものは、あくまでも実際に取り組んでいるプロセスのなかではじめて納得できることですし、実際に試行錯誤してみないと体感できないことでも多々あることでしょう。

 学生のあいだにこういう話を聞いておくと、実際に働き出してから、かならず思い出すものですね。そのときにはじめて、ゲストの言っていたことはこうだたのか、教授の言っていたことはそういうことだったのかとわかったりするものです。

 何ごとも実際にやってみないと、ほんとうのことはわかりません。

  ............................................................
 
 いよいよ、次回の全8回の授業は最終回。学生たちの「最終課題」のプレゼンテーションが楽しみですね!

5月1日(日) 第1回 「ブレーンストーミングで可能性を探れ!」
5月8日(日)第2回 「名札をめぐる冒険」
5月15日(日)第3回 「最悪の家族旅行を考える」
5月22日(日)第4回 「6つの考える帽子」
5月29日(日)第5回 「30分で新製品を作る」
6月4日(日)第6回 「トランプで創造性を学ぶ」
6月12日(日)第7回 「あこがれの起業家に学ぶ」
6月19日(日)第8回 「コーヒーの「新しい飲み方」を考える」

 学びも多いが、集中力も要求される中身のきわめて濃い授業。これほど濃い 1時間もないのでは? そんな感想をもつ番組です。最終回もお見逃しなく!



<関連サイト>

「スタンフォード白熱教室」番組概要(NHK)

自分で自分を社長にする(Tina Seelig:ティナ・シーリグ)(YouTube 映像)


<関連情報>

 ゲストの一人が在籍している IDEO社はシリコンバレーのどまんなか、スタンフォード大学が立地するパロアルト市を本拠地とするデザイン会社です。トム・ピーターズも惚れ込んでいるイノベーティブな会社。

 『発想する会社!-世界最高のデザイン・ファーム IDEO に学ぶイノベーションの技法』(トム・ケリー / ジョナサン・リットマン、鈴木主税/秀岡尚子訳、早川書房、2002)は、創業経営者がみずから書いたプロダクト・デザインに重点をおいたイノベーションの教科書。日本でもロングセラーです。

目 次

はじめに-トム・ピーターズ
第1章 イノベーションの頂点
第2章 草創期の翼で飛びつづける
第3章 イノベーションは見ることから始まる
第4章 究極のブレインストーミング
第5章 クールな企業にはホットなグループが必要だ
第6章 プロトタイプ製作はイノベーションへの近道
第7章 温室をつくろう
第8章 予想外のことを予想する
第9章 バリアを飛び越える
第10章 楽しい経験をつくりだす
第11章 時速100キロのイノベーション
第12章 枠をはみだして色を塗る
第13章 「ウェットナップ」インタフェースを探して
第14章 未来を生きる
第15章 完璧なスイングを身につける
謝辞

 IDEO社は、シーリグ教授が「スタンフォード白熱授業」で強調してきた、ブレーンストーミングや試作品(プロトタイプ)つくりをすべて実現している会社です。
 カラー写真が満載の、見て読んで楽しい本です。デザイン思考とイノベーションを学ぶためにぜひお薦めします。





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2010年7月12日月曜日

起業家が政治家になる、ということ


 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは、「起業家が政治家になる、ということ」についてです。成功した起業家に誘いがかかる政治家への道、その是非について、考えてみたいと思います。



参議院選挙で松田公太氏が当選
             
 昨日(2010年7月11日)に行われた参議院選挙で、みんなの党から東京選挙区から立候補した松田公太氏が当選した。激戦区の東京での当選であるからたいしたものである。めでたいことだ。
 松田公太氏は1964年生まれ、三和銀行の銀行員を経て、タリーズコーヒー・ジャパンを創業し成功させたストーリーは、自ら執筆した『一杯のコーヒーから』(新潮文庫)に失敗も包み隠さず、赤裸々に語られている。

 私は、昨年12月に行われた講演会でお会いして、その場で購入した文庫本にサインしてもらって、ちょっと会話したことがあるが、この件については以前にブログに書いたとおりである。講演会「原点回帰と変革の経営」で、松田公太氏とゾマホン氏の話を聞いてきた を参照。
 日本での起業を成功に導いた松田氏は、次の目標としてアジアで日本のサービス業を海外展開させるミッションを遂行しているとの話だった。
 シンガポールか香港か迷った末にシンガポールをベースキャンプに選んだ着眼点の鋭さを私は口頭で賞賛したのだった。
 シンガポールでは、山野ビューティそのほかの海外現地法人のマネジメントに関与しているという講演内容でったので、成功した起業家でしかも海外でも起業している松田氏のような人に政治を変えて貰いたいのは私だけではないと思う。
 著書にサインしてもらった彼の座右の銘 No Fun No Gain は、子供時代から長く海外で過ごしてきた彼の人生観そのものだろう。

 ただ、彼は本拠地をシンガポールに移していたから、日本での代議士活動とビジネスは両立可能なのか疑問もないわけではない。詳しくは知らないので、あくまでも憶測に過ぎないが。
 起業家で成功した人はそれなりに財産もあり、また部下の人材もいるだろうから、ビジネスは彼ら腹心にまかせて、自分は政治活動に専念するのも一つの手だろう。
 成功した起業家としての能力を政治に活用する、トヨタ流にいえば「ヨコ展開」することは、大いに期待されることである。



成功した起業家が政治家になった例

 もちろん、成功した起業家が政治家になるというケースは日本でも少なくはない。政治にカネがかかる以上、資金調達を自らの企業をつうじて行うのは、けっして不思議なことではない。
 たとえば、自民党の代議士・田中角栄は成功した土建業者だったし、河本敏夫は三光汽船のオーナー社長でもあった。

 問題は、政治活動を自分のビジネスに利用しているのではないか、という疑念を抱かれることだ。一般人は持ち上げても、なにか問題がおこると、あっというまに平気で祭り捨てるものである。
 田中角栄は、ロッキード事件という汚職事件を仕掛けられて失脚し、河本敏夫は、自らの企業の破綻で政治生命も絶たれることとなった。いまだに当選していないが、羽柴秀吉という青森の起業家もまた政治家になりたい起業家の一人である。

 日本以外でも、タイ王国のタクシン前首相は、IT関連で巨大な財をなした起業家であるが、彼がクーデタによって政治的に失脚して亡命を余儀なくされたのは、自社の持ち株をシンガポール市場で売り抜け、法律を自分の都合のいいよういねじ曲げて租税回避を図った疑いをかけられたからである。
 イタリアの首相でメディア王ベルルスコーニもまた、自分に対する訴訟を葬り去るために、政治家としてのチカラを行使して法律の改正を行っている。彼もまた、いつまでも安泰であるとはいえないだろう。



何事もメリットとデメリットがある

 このように書いていると、起業家出身の政治家は問題だといいたいのかと問われそうだが、私がいいたいのは何事もアドバンテージとディスアドバンテージがあるということだ。プラスとマイナス、あるいはメリットとデメリットといってもいいだろうか。
 起業家として成功したノウハウや識見を政治に活かすのは、大いにウェルカムである。
 しかし、ビジネスを続けながら政治家をやっていると、どうしても中途半端になることもあるし、また金銭がらみのスキャンダルを仕掛けられやすいことも否定できない。

 ほんとうは、起業家を卒業してから政治家になるのが、後腐れのなくてベストなのだが、いろいろな事情もあろうから、なかなかそうもいくまい。
 身辺をできるだけキレイにしておくことが、危機管理(クライシス・マネジメント)の観点から絶対不可欠であろう。どんなことでスキャンダルをでっちあげられて、政治生命を失ったり、ましてや本業のビジネスに大影響がでないとも限らないからだ。


経営者としての起業家と選挙で選ばれる政治家は根本的に異なる存在だ

 とくに政治家というのは、一般人が投票という行為をつうじて選出する性格をもっており、自ら起業して経営者となった起業家とは、根本的に異なる存在なのである。経営者は選挙で選ばれたわけでなく、自らの意思で起業し、経営者になるのである。
 開発途上国では、軍人が政治家になることも多いが、軍服を脱がずに政治家になるとどうしても独裁者になりやすい。シビリアン・コントロールの観点から、軍服を脱いでから、すなわち退役してから政治家になることが成功の秘訣である。

 同様に、起業家ももてる能力を大いに発揮して欲しいと願うのだが、ケジメをどのような形でつけるのか、ケースバイケースでもあるのできわめて難しい。
 30歳台の起業家には政治家を志している人も少なくないようだが、このことだけは肝に銘じておいていただきたいと思う。


 まあ辛口のコメントを書いたが、松田氏には大いに手腕を発揮してもらいたいし、成功を祈る次第である。





PS 松田公太氏の当選後については、いろいろと紆余曲折があるようだが、政治家になった初心を忘れずに初志貫徹していただきたいと思う。(2015年10月25日 記す)

PS2 参議院選挙に出馬せず1期6年の任期をもって政界引退を決意した松田公太氏。ビジネスで培った手法が通じない政治の世界にうんざりしたようだ。実験は、最終的に失敗であったということか。政治家経験を有効に活かして、つぎの活動に進んで欲しいものだ。 (2016年7月22日 記す)


<関連サイト>

政治家・松田公太に達成感なし “愚か者”と言われても、「第三極」を貫く (日経ビジネスオンライン、2016年3月15日)
・・「国会議員としての6年間を「大きな達成感は得られなかった」と振り返る。」現状報告と抱負

静かに政界を去るタリーズ創業者・松田公太氏 「PDCAがない世界、私のいるべき場所ではない」(日経ビジネスオンライン、2016年7月22日)
・・参議院選挙に出馬せず1期6年の任期をもって政界引退を決意した松田公太氏のインタビュー記事。「1つ目は事業管理手法のPDCAサイクルの発想がないこと、2つ目は契約を順守する考えが欠如していることだと指摘する」

(2016年3月15日 項目新設)
(2016年7月22日 情報追加)





<ブログ内関連記事>

来日中のタクシン元首相の講演会(2011年8月23日)に参加してきた
・・在職中は「CEO型首相」と呼ばれていたタクシン元タイ首相は、通信事業を核に一台企業グループを作り上げた人。政権を終われてからは国外逃亡生活を続けている

書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)-「エネルギー自主独立路線」を貫こうとして敗れた田中角栄の闘い
・・土建業から起業し、ビジネスを成功させたのち政治家になった田中角栄




(2012年7月3日発売の拙著です)










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