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2012年7月12日木曜日

書評 『挑む力-世界一を獲った富士通の流儀-』(片瀬京子/ 田島篤、野中郁次郎=解説、日経BP社、2012)-日本人の底力ここにあり!



富士通のスパコンが世界一になったというニュースに、ひさびさに胸躍る思いをした日本人はすくなくないと思います。

スーパーコンピュータ-「京」(けい)が世界一であった期間は、思ったよりも短かったですが、それでも世界一になったという事実を消し去ることはできません。日本人にとっては、じつにうれしい快挙でありました。

「R+ レビュープラス」から献本をいただきましたが、今回、書評を執筆したくなったのは、「外から見た富士通」という一章に寄稿された、竹内弘高ハーバード・ビジネスクール教授の文章を読みたかったからです。この一文だけでも読む価値は十分にあります。

「いまこそ日本に学べ!」と題されたこの文章のなかで、竹内教授は「失われた20年は、日本にとってはゆるやかな回復期ではなかったかもしれない」という欧米の論調の変化にふれています。

2008年のリーマンショック以後、欧州だけでなく、アメリカもまた一部のイノベーティブな企業を除いては苦しい状況にあることは言うまでもありません。そんななかで、周回遅れで再浮上してきたのが日本企業わたしたちは、もっと自信をもっていいのかもしれません。

わたしのように組織人事を専門分野としてきた人間にとっては、富士通というと、どうしても『若者はなぜ3年で辞めるのか-年功序列が奪う日本の未来-』(光文社新書、2006)などのベストセラーをつぎつぎと発表している人事コンサルタントの城繁幸氏の著作を思い出してしまいます。

成果主義の導入が、社内で混乱を招いたことを描いた『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』(光文社ペーパーバックス、2004)の印象があまりにも強烈に残っているからです。城繁幸氏は、富士通の人事部にいた人です。

しかし、本書を読む限り、英国の識者二人が指摘しているように、富士通には創業当初からの「泥臭い文化」が死なずに生き続けていることがわかって、いい意味で裏切られたような感想を抱きました。

「泥臭い」は、英語の該当表現をさがせば、down-to-earth になるようです。「地についた」という意味をもつ、なかなかなかいい響きの英語ですね。これは、解説を執筆しているナレッジマネジメント論の大家・野中郁次郎(一橋大学名誉教授)のコトバを借りれば、「現場で最善の判断を下し、実行する実践知」そのものでもあるわけです。

暴走する資本主義が見失っていたものが、まだまだ日本企業には残っているわけで、この特質はけっして失ってはならないものだと、あらためて思います。自分の強みは明確に意識する必要があるのです

本書は、実行するのが困難でかつ社会的意義の大きな8つのプロジェクトにまつわる、富士通版「プロジェクトX」の活字版といった内容ですが、それぞれのプロジェクトに携わった富士通の社員のみなさんの熱い思いが行間からにじみでる好読み物になっています。

欲をいえば、富士通の海外法人や日本法人で働いている外国人社員の活躍も声として拾って欲しかったと思います。なぜなら、富士通のバリューやミッションが、どのように全世界で浸透しているかを知りたかったからです。

とはいえ、日本人の底力がここにあると示してみせた8つのストーリーを読んで、元気を取り戻したいものですね。あきらめない気持ちを持ち続けることがいかに大事を教えてくれる一冊です。





目 次

はじめに
第1章 絶対にNo.1を目指す-スーパーコンピューター「京」
第2章 覚悟を決めて立ち向かう-株式売買システム「アローヘッド」
第3章 妄想を構想に変える-すばる望遠鏡/アルマ望遠鏡
第4章 誰よりも速く-復興支援
第5章 人を幸せにするものをつくる-「らくらくホン」シリーズ
第6章 泥にまみれる-農業クラウド
第7章 仲間の強みを活かす-次世代電子カルテ
第8章 世界を変える志を持つ-ブラジル/手のひら静脈認証
寄稿 外から見た富士通
-いまこそ日本に学べ! 竹内弘高
-変革に挑む スチュアート・クレイナー/デス・ディアラブ
おわりに
解説 野中郁次郎
受け継がれてきた言葉
謝辞


著者プロフィール

片瀬京子(かたせ・きょうこ)
1972年生まれ、東京都出身。1998年に大学院を修了し、出版社に入社。雑誌編集部勤務の後、2009年からフリー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの

田島篤(たじま・あつし)
1965年生まれ。日経BP社コンピュータ・ネットワーク局プロデューサー兼 ITpro 副編集長。1989年に日経BP社入社。日経 Linux 編集長、日経ソフトウェア編集長を経て、2011年7月から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。





<ブログ内関連記事>

書評 『経営管理』(野中郁次郎、日経文庫、1985)






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2012年4月26日木曜日

書評 『マザー・テレサCEO-驚くべきリーダーシップの原則-』(ルーマ・ボース & ルー・ファウスト、近藤邦雄訳、集英社、2012)-ミッション・ビジョン・バリューが重要だ!

あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?

マザー・テレサについては、あらためて説明するまでもないと思います。バルカン半島の小村に生まれ、インドのカルカッタ(コルコタ)で貧しい人たちのための奉仕活動に一生を捧げたカトリックの修道女です。

一方、マザー・テレサには、「貧しい人びとのなかのもっとも貧しい人びとに仕える」(to serve the poorest of the poor)というミッションを掲げた「神の愛の宣教者会」(ミッショナリー・オブ・チャリティー)を、カトリック教会の内部で新規に立ち上げ、国際的な組織に育て上げたという「企業内起業家としての側面」もあります。

それが本書のタイトルにもあるマザー・テレサCEO(最高執行責任者)ということが意味するものです。

マザー・テレサの一生は、ミッション遂行のためには万難を排して献身した人生であり、けっして平坦な道ではなかったのでした。

本書は、若き日にマザー・テレサのもとで奉仕活動を行った起業家の著者が、ビジネス上のメンターとともに書き上げた、リーダーシップのあり方の原則にかんするビジネス書です。

しかし、あたらしい事業を立ち上げ、国際的な組織に育て上げるという外面的な「成功」についてのみ語った内容ではありません。

組織のリーダーとして毎日のように直面するさまざまな課題といかに正面から向き合い、ひとつひとつ解決していったかについてのマザー・テレサ実践について、読者と一緒に考えようという姿勢に貫かれた内容になっています。

マザー・テレサのマネジメントは、著者たちによって「リーダーシップの八原則」としてまとめられています(目次を参照)。

その多くは、カトリックの修道女として生きてきたマザー・テレサならではのものですが、「原則2 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ」、「原則4 疑うことを恐れるな」のように、あのマザー・テレサがそうだったのか(!)と驚くような原則も含まれています。いずれも起業家や経営リーダーならかならずぶつかる難問の数々。そこで語られるのはミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の重要性です。

マザー・テレサの八原則について、通り一遍の教科書的な理解に終わらせないためにも、ぜひ実際に読んで、自分のアタマで考えてみることをすすめたいと思います。できればディスカッションの材料として、一緒に考えてみることもいいでしょう。そのために必要なのは、マザー・テレサになったつもりでイマジネーションを働かせてみることです。

企業経営にかかわっているリーダーはもちろん、ありとあらゆる組織のリーダーにはぜひ読んでほしい本として推薦します。


<初出情報>

■bk1書評「あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?」投稿掲載(2012年4月25日)
■amazon書評「あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?」投稿掲載(2012年4月25日)





目 次


序章 マザー・テレサの原則
マザー・テレサの生涯
第1章 簡潔なビジョンを力強く伝えろ
第2章 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ
第3章 がまん強くチャンスを待て
第4章 疑うことを恐れるな
第5章 規律を楽しめ
第6章 相手が理解できる言葉でコミュニケーションしろ
第7章 底辺にも目配りしろ
第8章 沈黙の力を使え
おわりに あなたが聖人になる必要はない

著者プロフィール

ルーマ・ボース(Ruma Bose)
起業家、投資家、アドバイザー。『マザー・テレサCEO』出版時は、ホメオパシー関連商品やビタミ
ン剤を販売するスプレーオロジー社の社長兼共同CEO。1992~93年、インドのカルカッタ(現コルカタ)で「神の愛の宣教者会」のボランティアとして、マザー・テレサと奉仕活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

ルー・ファウスト(Lou Faust)
実業界で30年以上の経験をもつビジネスマン、アドバイザー。そのうち10年をソロモン・ブラザーズに勤務し、ウォール街や東京で過ごす。マネージング・ディレクターなどを務めた。『マザー・テレサCEO』出版時はエッジ・キャピタル・パートナーズLLCの共同創業者、共同経営者。大きく成長しようとする企業に経営戦略のアドバイスを行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<原書タイトル>

Mother Teresa, CEO  Unexpected Principles for Practical Leadership, 2011

原書には索引(インデックス)がついている。最初から原書で読んだほうがいいかもしれない。ただし、日本語版よりは値段が高いが・・




<書評への付記>

「汚く稼いで綺麗に使え!」。このフレーズは、ビジネス書作家・神田正典の本にはよく引用されているが、じっさいに日本に宣教で来ていたカトリック修道会の司祭のコトバである。

しかし、この考えはきわめて重要だ。

マザー・テレサの場合は、稼いだのではなく寄付についてだが、「かならずしもキレイではないカネ」も受け入れたという。ただし、汚いカネを美名に変換する「売名行為」というロンダリングに使用されないように、見返りはいっさい拒否したという。

ミッションにブレがなければ、「悪魔と取引」することもいとわないという姿勢、これはマザーテレサに限らず、カトリック教会の長い歴史のなかで培われた智恵であるといってよいかもしれない。

このようなモラル・ジレンマは、まさに「ハーバー白熱教室」のサンデル教授によるディスカッション・テーマをほうふつとさせるが、マザー・テレサの場合もまた同様の問題に直面していたということだ。だが、これをクリアしたのは彼女一人の決断ではないと思う。伝統のチカラもあずかっているはずだ。

マザー・テレサが立ち上げた「神の愛の宣教会」(Missionary Of Charity)は、カトリック教会内のあたらしい修道会である。だから「企業内起業」(イントラプルナーシップ)といってよいのである。始まりはベンチャーであったのだ。この件については、ブログに書いた記事「アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド」を参照していただきたい。マザー・テレサの生涯は映画化されているので、それを見るのがいちばんだろう。

なお、序文を寄せているビジネス書作家・本田直之氏も、訳文のなかでも、「マネージメント」となっているが、これはいただけない。動詞は「マネージ」と伸ばしてもいいが、名詞になったら「マネジメント」である。

間延びしていたマネージメントではなく、アクセントは文頭の「マ」に置いたマネジメントである。原則の5にもあるように、規律あるきびきびした姿勢こそ、修道院でしつけられたマザー・テレサの生活習慣に基づいた教えである。くれぐれも間違いなきよう!

著者たちがまとめた「マザー・テレサの八原則」は以下のとおりである。

1. 簡潔なビジョンを力強く伝えろ(Dream it simple, say it strong)

2. 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ(To get to the Angels, deal with the Devil)

3. がまん強くチャンスを待て(Wait ! Then pick your moment)

4. 疑うことを恐れるな(Embrace the power of doubt)

5. 規律を楽しめ(Discover the joy of discipline)

6. 相手が理解できる言葉でコミュニケーションしろ(Communicate in a language people understand)

7. 底辺にも目配りしろ(Pay attention to the janitor)

8. 沈黙の力を使え(Use the power of silence)

*Janitor とは門番という意味。お掃除のおばさんや用務員さんなども含まれる。



<ブログ内関連記事>

アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド

クレド(Credo)とは

「祈り、かつ働け」(ora et labora)

書評 『修道院の断食-あなたの人生を豊かにする神秘の7日間-』(ベルンハルト・ミュラー著、ペーター・ゼーヴァルト編、島田道子訳、創元社、2011)

映画 『シスタースマイル ドミニクの歌』 Soeur Sourire を見てきた

書評 『バチカン株式会社-金融市場を動かす神の汚れた手-』(ジャンルイージ・ヌッツィ、竹下・ルッジェリ アンナ監訳、花本知子/鈴木真由美訳、柏書房、2010)






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2012年3月21日水曜日

永続事業の条件は、「経営能力」と「経営理念」のかけ算である


経営能力と経営理念がかけ合わさって、はじめて良好な経営結果をもたらします。

経営理念がいかに重要であるかは、このブログでもなんども書いていますが、理念だけでは経営はできません。経営は、経営者に経営能力の裏付けがあってはじめて成り立つものです。

しかし一方、経営能力があっても、ただしい経営理念がなければ、とんでもない方向にいってしまいかねません。経営理念は、ある意味では羅針盤といってもいいのです。羅針盤なき航海は、難破の最大原因なのです。

短期的にスパンなら、成功している経営者も多いでしょう。しかし、スパンをすこし長くとると、成功しつづける経営者は、かならずしも多くないことに気がつきます。

もちろん、景気変動があるので、経営も山あり谷ありがふつうですが、継続して結果を出していくためには、経営能力と経営理念が両輪となっていることが不可欠なのです。

経営能力と経営理念をもちあわせた存在といえば、なんといっても "経営の神様" とよばれた松下幸之助翁の名前を出さねばならないでしょう。

松下幸之助自身、やり手の経営者ではありましたが、あるとき経営理念の重要性に気がついたことは、このブログでは 松下幸之助の 「理念経営」 の原点- 「使命」を知った日のこと に書いておきましたので参照していただけると幸いです。

今回は、経営能力と経営理念の関係について、幸之助翁みずからが語ったいるべつの文章を引用してみたいと思います。

『私の履歴』のなかで、こんな話をしています。出典は、「第17回 甘えた「所得倍増論」に警鐘」(日経Bizアカデミーのサイトに掲載)です。太字ゴチックは引用者(=わたし)によるものです。

ここで私は、まず経営ということについてふれ、ケネディ大統領の行なうアメリカ国家の経営も、町の小さなドラッグストアの経営も、どちらも同じ経営であるということから話を始めた。すなわち、国の経営の意図するところは、その国の発展、繁栄であり、また国民の幸せである。一方、ドラッグストアの経営は、顧客のためにいろいろ注意を払い、サービスを完全にすることである。どちらも本質的には同じような意図に立っている。しかしむずかしいのは、どうすれば国民を幸せにできるか、どうすれば顧客に対するサービスが適切に行なえるかということである。

マネジメントにおいては、町のドラッグストア(・・ただしここで言われているのはチェーン量販店ではなく薬屋のことでしょう)の経営も国家経営も同じというのは、すばらしい発言ですね。あくまでも顧客を中心に据えて経営を考える姿勢。ただし、国がそれを実行しているかは、やや疑問を感じますが。

そfれはさておき、提供するサービスをつうじて顧客を幸せにするということは、経営の本質のなかでは、理念にちかい部分でしょう。経営理念を体現しているのは経営者です。

そこで非常に大きな問題になってくるのが経営者ということである。すなわち、それぞれの経営体にふさわしい適切な経営者というものが要求されてくるのである。そしてその経営者に、最も大切なことは、正しい自己評価ができるということである。かつてドイツのヒトラーは祖国の窮乏を救い、かつ強大な国家をつくりあげたという点では、偉大な人物であり、その経営力は合格点であった。しかし彼がドイツ国家の経営にとどまらず、さらに欧州全体にまでその経営を広げようとしたところに問題があった。なるほど彼は、ドイツ一国の経営者としてはすぐれていたかも知れないが、欧州全体の経営者としては、いわば適材ではなく、しかも彼のもつ経営理念というものが正しくなかったのである。

このことをお互いの経営にあてはめてみると、経営者のきびしい自己評価ということと合わせて、その経営理念がどこに置かれているかということになる。その理念が、単なる利害、単なる拡張というだけではいけない。それらのことが、いわば何が正しいかという人生観に立ち、かつ社会観、国家観、世界観さらには自然の摂理というところから芽生えてこなければならない。そうした理念がなかったところにヒトラーの失敗があったのであろう。

ヒトラーを引き合いに出すのは、読者を「おやっ!」という気持ちにさせるだけに、「つかみ」としてはなかなかのものがありますが、誤解を生みかねないものもありますので、なかなか勇気のいることだとは思います。

しかしよく読んで見みると、、「その経営力は合格点であった・・(中略)・・なるほど彼は、ドイツ一国の経営者としてはすぐれていたかも知れないが、欧州全体の経営者としては、いわば適材ではなく、しかも彼のもつ経営理念というものが正しくなかったのである」と、締めくくっています。

国の経営者としてのヒトラーは、「経営能力は合格でも、経営理念はただしくなかった」、これが幸之助翁の結論です。

つまりこのここから読み取れるのは、長いスパンをとって考えると、経営結果=「経営能力」×「経営理念」で考えなければならないということを意味しているということでしょう。

いくらすぐれた経営能力を示していても、その理念がただしくない、すなわちマイナスであれば、経営結果もマイナスになってしまう、悪しきものとなってしまうことを意味しています。

逆にみれば、いくらただしい経営理念があっても、経営能力がなければ経営結果はマイナスになってしまいます。

経営能力と経営理念はかけ算の関係にあるのです。

まず磨かねばならないのは経営能力であることは言うまでもありませんが、少しでも長く、できれば永続的な事業として経営していくためには経営理念の裏付けがあることが欠かせません

ぜひ、ミッション・ビジョン・バリューに分解できる経営理念の構築、あるいは再構築に取り組んでいただきたいと思う次第です。




<関連サイト>

"経営の神様" 松下幸之助氏が説いた「経営の要諦」- 「人が代われば組織も変えろ」 (日経ビジネス編集部、2014年9月1日)
・・1973年8月20日号よに掲載されたインタビュー記事の再掲する (注)記事中の役職、略歴は掲載当時のもの。

(2014年9月1日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

松下幸之助の 「理念経営」 の原点- 「使命」を知った日のこと





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2011年12月5日月曜日

組織の内外にとって明確な表現のビジョンとは?-千趣会の新ビジョン 「ウーマン・スマイル・カンパニー」


 MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は、日本では経営理念や社是と呼ばれているものを要素分解したものですが、企業によっては、たんにミッション(=使命)やビジョン(=価値観)と表現しているケースもあります。

 先日、千趣会(せんしゅかい)が 56周年目の創立記念日に「新企業ビジョン」を制定したというニュースがリリースされました。

 千趣会の新ビジョンもまた、ビジョンのなかにミッションやバリューが表現されたものになっています。

 共同通信のニュースリリース配信記事「千趣会、56周年目の創立記念日に新企業ビジョン制定」によれば、通販カタログなど幅広い事業を展開している千趣会が、新企業ビジョン『ウーマンスマイルカンパニー SENSHUKAI』を制定し、11月1日の56周年目の創立記念日に一般公開しました。

ウーマン
スマイル
カンパニー
SENSHUKAI

 じつにわかりビジョンですね!

 千趣会は、一度でも一定規模以上の組織で働いた女性なら知らない人はいないと思います。女性向けの通販カタログで社内で回覧されていることは、意外なことに男性は知らないかもしれません。

 ところが、千趣会は東証一部上場企業で、「ベルメゾン」というカタログを中核にして、ウェブ頒布会(=ネット販売)、実店舗、ウェディング事業、ペット事業など、さまざまな事業を展開しています。

 会社プロフィールをみると、発展の軌跡を知ることができます。ウェブサイトから引用させていただきましょう。

1955年、こけし人形の頒布を目的に(株)千趣会を設立。オフィスの女性グループを対象にした頒布会事業がスタートしました。その後料理カード付き月刊誌「クック」をはじめ、タオルやハンカチ、下着など女性の心をとらえたオリジナル商品の大ヒットによって業容を拡大。さらに、1976年には、カタログ誌「ベルメゾン」を発刊し、カタログ販売事業に進出しました。当時はむずかしいとされていたファッション衣料の販売からスタートし、服飾雑貨や生活雑貨、家具、インテリア用品へと取り扱いアイテムを広げるとともに、専門店型の品揃えと生活提案型の独自のカタログスタイルを確立。現在、約1200万人の会員に向けて、カタログ、ネット、店舗などのチャネルを通じて様々な商品、及びサービスを提供しています。

 千趣会は、なんとこけし人形の頒布会から始まったのですね。「千趣会」社名の由来は次のようなものだそうです。

最初の頒布会商品「こけし」を「こけし千体趣味蒐集の会」から仕入れることになり、会の名称も“千”と“趣”の文字から『千趣会』と現会長の行待が命名。そのまま現在の社名になりました。

 これは、はじめて知りました。現在はかつてほどではないとはいえ、「こけし人形」を集めるのはもともと女性が中心ですから、出発当初から女性を主対象にした会社であったわけです。

 新ビジョンに話を戻せば、プレスリリースによれば、以下のとおりです。

新企業ビジョン『ウーマンスマイルカンパニー SENSHUKAI』には、“笑顔が積み重なって、しあわせは生まれる。ひとりひとりが笑顔になれば、明日はもっと素敵になる。私たちは、女性の毎日に笑顔を届けることを通じて、世界をしあわせにしていく会社です。”という企業姿勢を表しています。

 きわめて明解なビジョンで、きわめて明解な企業姿勢を示しています。
 
 組織の外に向けての声明が、組織のなかで働いている人にもポジティブな影響としてフィードバックされる。コミュニケーションの好循環が成立しているといえるでしょう。そのお手本のような新ビジョンです。

 そしてこのビジョンには、企業のミッション(=使命)もレゾンデートル(=存在理由)もバリュー(=価値観)もすべて含まれています。

 企業の姿勢を示す MVV として、ひじょうにすぐれたものになっているといえるでしょう。



<関連サイト>

株式会社 千趣会 公式サイト

「千趣会、56周年目の創立記念日に新企業ビジョン制定」(共同通信ニュースリリース配信)

千趣会、創業56周年で新企業ビジョン「ウーマンスマイルカンパニー SENSHUKAI」制定(アドタイ 広告会議編集部)


<ブログ内関連記事>

Facebook Principle (フェイスブックの原則) を MVV (ミッション・ビジョン・バリュー) の観点からみてみよう

「自然エネルギー財団」設立に際して示した、ソフトバンク孫正義氏の 「使命」、「ビジョン」、「バリュー」・・・




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2011年10月6日木曜日

巨星墜つ-アップル社のスティーブ・ジョブズ会長が死去 享年56歳 (1955 - 2011)


 アップル社の会長スティーブ・ジョブズ氏が亡くなりました。1955年生まれの享年56歳。がんを患って闘病中とのことでしたが、あまりにも若い死が惜しまれます。

 アップル製品の愛用者ではない私にとっても、スティーブ・ジョブズの存在はきわて大きなものでした。まさに文字通りのビジョネア(Visionaire :ビジョンを示す人)でした。

 ビジョンのもつチカラを信じ、万難を排して実行しぬいた人でした。

 パーソナル・コンピュータ(PC)のマッキントッシュで大きな成功をおさめながら、自ら立ち上げた会社の取締役会から追放されるという大きな挫折を体験しながら、そしてまたよみがえったジョブズ氏の姿に、自分を投影してしまう人も少なくないことでしょう。

 起業、企業再建、そしてさらなる企業成長を実現した経営者としても、きわめて非凡で、まさに文字通りのカリスマであったことは言うまでもありません。

 おそらく自らの死期を悟っていたためでしょう、BCP(=企業の事業継続)の観点から、着々と経営の引き継ぎを行ったスゴさもまたつよく感じています。経営者としても、人間としてもじつに大きな存在でした。

 ご冥福を祈ります。合掌。 



<関連サイト>

アップル社(米国本社)の公式サイト

Steve Jobs Stanford Commencement Speech 2005 (スタンフォード大学での卒業祝辞スピーチ動画 英語・字幕なし)。
 スピーチの英語原文はスタンフォード大学オフィシャルサイトに掲載。
・・ジョブズ氏の死生観も語られている

1984 Apple's Macintosh Commercial
・・若い人たちにとっては、なんといっても iPhone や iPad、あるいは iPod だろうが、わたしの世代ではマッキントッシュのほうがはるかにインパクトが大きかった。『ブレードランナー』の監督リドリー・スコットによる CM がインパクトが大きかった。ジョージ・オーウェルが描いたディスユートピア『1984』を踏まえたもの。その思想は、ジョン・レノンのPower to the People(人々にチカラを)に端的に表現される。

1983 Apple Keynote-The "1984" Ad Introduction
・・上記の TV・CM を発表した際のジョブズのキーノート・スピーチ。若々しく自信に充ち満ちた姿。巨人ゴリアテを前にした少年ダビデのようなものだろか


<ブログ内関連記事>

カリスマが去ったあとの後継者はイノベーティブな組織風土を維持できるか?-アップル社のスティーブ・ジョブズが経営の第一線から引退




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2011年6月8日水曜日

Facebook Principle (フェイスブックの原則) を MVV (ミッション・ビジョン・バリュー) の観点からみてみよう


 軸、中心軸、背骨、プリンシプル、原理原則・・・

 いろんな言い方が可能ですが、原理原則がしっかりしていれば、海外進出にあたってはローカル市場の特性にあわせてローカライズできる部分はそうすればいい、カスタマイズできる部分はそうすればいい

 そして、ローカライゼーションは現地の担当者にまかせる

 米国でうまれたフェイスブックもまた、その定石を愚直なまでに貫いています。

 日本での事業展開にあたって、フェイスブックの海外戦略担当者がインタビューに答えた記事がありました。「独占インタビュー! 絶好調のFacebook・海外戦略担当者が語った、日本攻略への布石」 (日経トレンディ)。

ミクシィなどの SNS が先行する日本市場ですが、フェイスブックは 「実名主義」や「顔出し」といった原則を絶対に(!)曲げようとしません。

 もともと、大学の顔写真入り新入生紹介本であるフェイスブック(・・直訳すると「顔本」(笑)ですね)を、オンライン化したのがフェイスブックですから、当然といえば当然でしょう。

 それだけでなく、事業家というよりは社会革命家のような創業経営者マーク・ザッカーバーグの、人生における基本姿勢、信念といったものが、事業経営にもストレートに反映しているようです。そのため、現在にいたるまでさまざまな物議をかもしながらも突き進んでいるのは、みなさんご承知のことでしょう。

 「実名主義」や「顔出し」という、頑(かたくな)なというか、ゴーマンにも見えるこの原理原則を受け入れるか、受け入れないか、この原理原則は日本人にはまだまだ高いハードルなのかもしれません。

 しかし、フェイスブックに参加することを意志決定した日本人は、みなこの原則をさいしょは抵抗がありながらも受け入れ、ある意味ではマーク・ザッカーバーグの思想に共鳴していくということも体験していくことになるのでしょう。

 フェイスブックの言語はいうまでもなく英語ですが、日本で普及がはじまった最大の要因は、「いいね!」ではないかと考えています。

 英語では 「Like !」、これを直訳して 「好き!」 などという表現にせず、「いいね!」という日本語を採用したのは、ほんとうに天才的なヒラメキです。これぞカスタマイゼーションの極地というべきでしょう。

 このほか、日本語環境むけにさまざまなカスタマイゼーションを行っていることは、フェイスブックの伝道者の方々が積極的に情報発信していますので、あらためてわたしが指摘することはありません。

 以下に、Facebook Principle (フェイスブックの原則)を転載しておきます。
http://www.facebook.com/principles.php

 日本語と英語のニュアンスに注意を払いながら読んでみてください。

1. 情報を共有し、つながりになる自由 (Freedom to Share and Connect)
2. 情報の所有と管理 (Ownership and Control of Information)
3. 情報の自由な流れ (Free Flow of Information)
4. 基本的平等 (Fundamental Equality)
5. 社会的価値 (Social Value)
6. オープンなプラットフォームと標準 (Open Platforms and Standards)
7. 基本的サービス (Fundamental Service)
8. 公共の福利 (Common Welfare)
9. 透明性のあるプロセス (Transparent Process)
10. 1つの世界 (One World)



Facebook Principles (フェイスブックの原則)

Facebookは、世界のオープン性と透明性を高めることを目的として構築されています。これにより、優れた理解とつながりが生まれると弊社は考えています。Facebookは、個人が共有し、つながりを持つことができる優れた機能を提供することで、オープン性と透明性を推進しますが、これらの目標を達成するうえで、特定の原則がFacebookの指針となります。これらの原則の達成の制約となるのは、法律、テクノロジー、進化する社会規範の制限のみであるべきです。したがって、Facebookサービス内におけるそれらの権利および責任の基盤として、これらの原則を確立するものとします。


Facebook Principles

We are building Facebook to make the world more open and transparent, which we believe will create greater understanding and connection. Facebook promotes openness and transparency by giving individuals greater power to share and connect, and certain principles guide Facebook in pursuing these goals. Achieving these principles should be constrained only by limitations of law, technology, and evolving social norms. We therefore establish these Principles as the foundation of the rights and responsibilities of those within the Facebook Service.


1. 情報を共有し、つながりになる自由 (Freedom to Share and Connect)
人は、欲しい情報が何であれ、それをあらゆる媒体および形式で共有する自由を持ち、また、当事者同士が同意している限り、いかなる人、組織、サービスともオンラインでつながりになる権利を有するべきです。

People should have the freedom to share whatever information they want, in any medium and any format, and have the right to connect online with anyone - any person, organization or service - as long as they both consent to the connection.


2. 情報の所有と管理 (Ownership and Control of Information)
人は自分の情報を所有すべきです。また、それを好きな人と共有し、好きな場所へ持ち運ぶ(Facebookサービスから削除する行為を含む)自由、さらに、自分の情報を共有する相手を選び、そのような選択を保護するプライバシーコントロールを設定する自由を持つべきです。ただし、Facebookサービスの外部では特に、そのような自由によって、情報を受け取った人がその情報をどのように使用するかを制限することはできません。

People should own their information. They should have the freedom to share it with anyone they want and take it with them anywhere they want, including removing it from the Facebook Service. People should have the freedom to decide with whom they will share their information, and to set privacy controls to protect those choices. Those controls, however, are not capable of limiting how those who have received information may use it, particularly outside the Facebook Service.


3. 情報の自由な流れ (Free Flow of Information)
人は、他の人によって参照可能となったすべての情報にアクセスする自由を持つべきです。また、この情報の共有とアクセスを簡単、迅速、かつ効率的にする実用的なツールも持つべきです。

People should have the freedom to access all of the information made available to them by others. People should also have practical tools that make it easy, quick, and efficient to share and access this information.


4. 基本的平等 (Fundamental Equality)
個人か、広告主か、開発者か、組織か、その他の団体かを問わず、あらゆる人は、自分の主な活動が何かに関係なく、Facebookサービス内で自由に表現し、配信内容および情報にアクセスすることができるべきです。Facebookサービスを使用するすべての人に適用される一連の原則、権利、責任が存在すべきです。

Every Person - whether individual, advertiser, developer, organization, or other entity - should have representation and access to distribution and information within the Facebook Service, regardless of the Person's primary activity. There should be a single set of principles, rights, and responsibilities that should apply to all People using the Facebook Service.


5. 社会的価値 (Social Value)
人は、自分のアイデンティティとつながりを通じて、信頼と評判を築く自由を持つべきであり、Facebookの利用規約で述べられている内容以外の理由で、Facebookサービス上の自分の情報が削除されることがあってはなりません。

People should have the freedom to build trust and reputation through their identity and connections, and should not have their presence on the Facebook Service removed for reasons other than those described in Facebook's Statement of Rights and Responsibilities.


6. オープンなプラットフォームと標準 (Open Platforms and Standards)
人は、利用可能な情報にアクセスするためのプログラマティックインターフェイスを持つべきです。これらのインターフェイスの仕様は、すべての人に公開され、すべての人が利用およびアクセスできるべきです。

People should have programmatic interfaces for sharing and accessing the information available to them. The specifications for these interfaces should be published and made available and accessible to everyone.


7. 基本的サービス (Fundamental Service)
人は、自分の存在を確立し、他の人とつながりを持ち、情報を共有するために、Facebookを無料で利用できるべきです。参加または貢献の度合いに関係なく、すべての人がFacebookサービスを利用できるべきです。

People should be able to use Facebook for free to establish a presence, connect with others, and share information with them. Every Person should be able to use the Facebook Service regardless of his or her level of participation or contribution.


8. 公共の福利 (Common Welfare)
Facebookとその利用者の権利および責任は、利用規約に記載されているべきであり、その内容と本原則に矛盾があってはなりません。

The rights and responsibilities of Facebook and the People that use it should be described in a Statement of Rights and Responsibilities, which should not be inconsistent with these Principles.


9. 透明性のあるプロセス (Transparent Process)
Facebookは、その目的、計画、ポリシー、運用に関する情報を公開すべきです。また、通知およびコメントのタウンホールプロセスと、本原則または利用規約の修正に関する入力および会話を促す投票システムを持つべきです。

Facebook should publicly make available information about its purpose, plans, policies, and operations. Facebook should have a town hall process of notice and comment and a system of voting to encourage input and discourse on amendments to these Principles or to the Rights and Responsibilities.


10. 1つの世界 (One World)
Facebookサービスは、地理的境界および国境を越えて、世界中であらゆる人が利用できるべきです。

The Facebook Service should transcend geographic and national boundaries and be available to everyone in the world.



 もちろん、これらの原理原則は最初からあったものではなく、事業展開をしていくなかで試行錯誤を続けながら練り上げていったものだと思います。

 個人でも組織でも、原理原則を明確にもつことの重要性をしめしているのが、ザッカーバーグであり、フェイスブックであるといっていいでしょう。まだまだ物議をかもす存在ではありますが、それは原理原則を貫く姿勢ゆえ。批判をものともせずに突き進む姿勢。

 使命感をもった経営者と企業は、ほんとうに強い。



<ブログ内関連記事>

書評 『フェイスブック 若き天才の野望-5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた-』(デビッド・カークパトリック、滑川海彦 / 高橋信夫訳、日経BP社、2011)

シェリル・サンドバーグという 「ナンバー2」 としての生き方-今週の Bloomberg BusinessWeek (ビジネスウィーク) のカバーストーリーから

書評 『Facebook(フェイスブック)をビジネスに使う本-お金をかけずに集客する最強のツール-』(熊坂仁美、ダイヤモンド社、2010)




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2011年5月2日月曜日

「自然エネルギー財団」設立に際して示した、ソフトバンク孫正義氏の 「使命」、「ビジョン」、「バリュー」・・・


 先週、ソフトバンク創業者で会長の孫正義氏が、またあらたなミッションに乗り出しました。

 4月22日、ソフトバンク本社で行われた「自由報道協会」主催の会見で、孫さんは、原子力にかわる「自然エネルギー開発」のために財団つくりのため、私財から 10億円を投じることを発表しました。

 「生まれてきた使命を果たす」ソフトバンク・孫正義氏"自然エネルギー財団"設立 という記事から、その概要を引用しておきましょう。

2011年をエネルギー政策転換の年と位置付け、個人としての寄付10億円で自然エネルギー財団を設立いたします。10億で足りないことはわかっていますが、これはスタートの原資として、世界100名のトップ科学者との意見交換の場を作る。議論のきっかけを作るための財団。シンクタンクのようなもの。自然エネルギー発電にはいろいろある。どれがいいのかはこれから勉強して行く。太陽光発電だが、電気使用のピークは日中。電力の消費量が最も多いときに太陽は出ている。そこに当ててはどうか? 太陽光発電を否定する意見の多くは、曇りや雨のとき、発電出来ないというもの。しかし、天気の悪いときには、火力発電を使えばいい。バッファとして考えている・・(以下略)・・

 先日も、大震災と大津波の被災者のために 100億円の私財と今後の報酬のすべてを提供すると発表して大きな話題をさらった孫さんですが、今回の「新エネルギー財団」構想と私財からの 10億円の資金提供もまた、日本と世界に向けての大きな一歩となることは間違いないでしょう。

 わたしは、趣旨には全面的に賛同します。「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類の歴史にとっては大きな一歩だ」という、はじめて月面に着陸した、アポロ11号のアームストロング船長のコトバも思い出します。

 引き続き、質疑応答の内容の一部を引用しておきましょう。

Q:孫さんの正義感とはどういった言葉の定義?
A:ソフトバンクの長期的な理念は「情報革命で人々を幸せに」それに向けて情報革命を一直線にやってきた。今、日本の人が一番不幸せだとおもっているのが原発問題ではないか。
 究極の選択として、「情報革命」「人々の幸せ」どちらを追い求めるかを選べと言われたら、平時であれば両方追い求める。国難の時に、情報革命だけ追っていればいいのか。それで生まれてきた使命を果たせるのか、正義はあるのか。毎日悩んでいる。お前に政府は動かせるのか、力を過信しているのではと言われる。だけど、できるかできんかわからんけど、やらないかんことがある

 現時点では脱原発は非現実であるとしても、将来的には自然エネルギーで代替させようとというビジョン、これくらいの「大風呂敷」を広げて構想をぶちあげなければ、何も変化しないといっても言い過ぎではないでしょう。日本人が大好きな「改善」ではけっして対応できないのです。

 おそらく、いわゆるエネルギー問題の「専門家」の多くは、非現実的だといて切って捨てるか、無視するかのいずれかでしょう。ですが、「意思あるところ道あり」、現時点ではコスト的な面から非現実的とみえる新エネルギーも、本腰入れて取り組めばまったく実現可能性がないと、いったい誰にいえるのでしょうか?

 もちろん、本人は現時点では否定していますが、エネルギー投資がビジネス的にみても意味あるものであることは、ながく IT業界に身を置いている経営者であれば当然というべきですね。

 膨大な数のサーバー稼働させているグーグルが、早い段階から電力問題解決のために本腰をいれて取り組んでいることはよく知られていることです。この点については、わたしも、書評 『グーグルのグリーン戦略』(新井宏征、インプレスR&D、2010)に書きましたのでご参照いただけると幸いです。

 ビジネスパーソンが、自らのビジネスにまったく縁がなくはない分野で、社会貢献のための投資を行うこと、これはけっして非難すべきことではありません。早い段階での新エネルギー開発のロードマップを示すことができれば、世論も大きく変わっていくことでしょう。

 自らのミッション(使命感・使命・任務)を明確にし、生き様をバリュー(価値観)として態度で示し、壮大な構想をビジョン(将来像)として示して見せる

 営利事業と非営利事業の垣根が低くなり、すべての事業がソーシャル・ビジネスへと収斂(しゅれん)し、進化していく現在、当事者にはいろいろと思惑もあるでしょうが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明確にしてこと臨むことが、今後ますます重要になるだけでなく、むしろ Must になるといっても言い過ぎではないでしょう。

 「新エネルギー財団」の活動は、今後も要注目です。


<関連サイト>

「生まれてきた使命を果たす」ソフトバンク・孫正義氏"自然エネルギー財団"設立
・・会見動画とプレゼン資料つき。

エネルギー政策の転換に向けて(2011年4月22日 ソフトバンク株式会社 代表取締役社長 孫正義)・・プレゼン資料

孫正義氏、脱原発財団へ私財10億円(漫画新聞 2011年4月27日)

書評 『グーグルのグリーン戦略』(新井宏征、インプレスR&D、2010)

スリーマイル島「原発事故」から 32年のきょう(2011年3月28日)、『原子炉時限爆弾-大地震におびえる日本列島-』(広瀬隆、ダイヤモンド社、2010) を読む




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