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2013年11月28日木曜日

お寺の「経営改革」-外部環境の変化にどう対応して生き残るか?


今週月曜日(2013年11月25日)の「首都圏ニュース」をたまたま見ていたら、「檀家制度やめます」というタイトルで埼玉県熊谷市のお寺が「檀家制度」を廃止した(!)というニュースを取り上げていました。「みんなのお寺 見性院」の事例です。

なんと全国で7万以上と、4万軒あるコンビニより数の多い(!)のがお寺です、過剰感は否定できないでしょう。

お寺の経営を財務面から支えているのが「檀家(だんか)制度」。「檀家制度」とは、「葬祭供養を独占的に(!)執り行なうことを条件に結ばれた寺と檀家の関係」(wikipediaの説明)のことですが、江戸時代初期以来、徳川幕府の宗教政策として生まれ、日本仏教に定着したものです。




この檀家制度が、少子化や都市化などが原因で、基盤となる地域コミュニティーの崩壊によって維持が困難になってきております。つまり外部環境が変化しているのです。

「檀家制度」を廃止して「開かれたお寺」にし、檀家に依存しない収入構造を確立し(・・お寺を葬儀場にして葬儀コストを3割ダウンすることに成功、などなど)、お坊さんが親身になって信徒のカウンセラーを行うなどの結果、かえって信徒が増えた(!)と放送では紹介されていました。

お寺の世界はビジネスとは関係ないとおもうべきではないでしょう。経済問題、とくにキャッシュフロー問題から考えると、檀家の減少はそのままキャッシュインフローの減少という問題につながります。

わたしは、この番組をみていて、外部環境の変化に対して、いかに経営主体として環境変化に対応するかという事例で考えていました。

追い詰められて住職=経営者は真剣に考える。この住職の場合は、檀家制度を廃止してみて、はじめてそこに「市場」があると気付いたわけですね。市場の発見です。

いまなら「檀家制度廃止」は、消費者(=潜在的信徒層)にとって、きわめてアピール力のつよい「差別化要因」となるはずです。

お寺を本来の姿に戻して、コミュニティーセンターあるいはサロンとしてとらえることが大事なのだと思います。「地域密着型」業態としてのお寺の意味があらためて見直されてきたということでしょうか。

「みんなのお寺 見性院」は一歩前に踏み出した、ということですね。そうはいっても、400年近く続いてきた社会制度に風穴を開けたわけですから、なかなか向かい風も強いのではないかと思われます。

成功モデルが増えれば「お寺改革」も流れとなっていくのではないかと期待されます。ぜひ住職の橋本氏には信念を貫いていただきたいと、心から応援いたいと思います。

外部環境の変化に対応しなければ、生き残ることができないのはビジネスだけではありません。






<関連サイト」>

見性院・熊谷のぴんころ寺/日本で初めて檀家制度を廃止!宗派を超えて寺院葬儀と家族葬を承ります

遺骨を「ゆうパック」で送る時代 漂流する墓 (下) (日経ビジネスオンライン、2015年2月18日)
・・「埼玉県熊谷市にある曹洞宗・見性院には毎週のように「遺骨」が、宅配便で送られてくる。遺骨は、ペットの骨や化石などではない。れっきとした火葬後の人間の骨である・・」

(2015年2月18日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

書評 『お寺の経済学』(中島隆信、ちくま文庫、2010 単行本初版 2005)-経済学の立場からみた知的エンターテインメント

タイのあれこれ (16) ワットはアミューズメントパーク
・・タイのお寺(ワット)は地域社会のコミュニティセンターである!

「法然セミナー2011 苦楽共生」 に参加してきた-法然上人の精神はいったいどこへ?






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2013年4月1日月曜日

書評 『社長は少しバカがいい。-乱世を生き抜くリーダー鉄則-』(鈴木喬、WAVE出版、2013)-「名物社長」が語る経営論


『社長は少しバカがいい。』。なんとなくふざけた印象だが、すごく気になるタイトルだなあと感じてスルーしていたのですが、先週 「ダイヤモンド・オンライン」のインタビュー記事で、わが母校の大先輩(!)であることを知って、きゅうきょ注文して読んでみることにしたという次第。

著者は、消臭剤のエステーの会長。500人企業で500億円の売り上げをあげる一部上場企業。自らはチーフ・イノベーターと名乗っておられます。

昭和10年(1935年)生まれで戦中派の著者は、根っからの商売人の家系に生まれ育った人ですが、「いつも危機」だったといってます。敗戦後の大混乱などにくらべたら、比較するにもあたらない、と。長く生きてきた人のいうことには耳を傾けるべきですね。

危機的な状況に陥った際に、いかなる方法でそれを切り抜けてきたかが、著者自らが指揮した数々の事例で語られているので説得力があります。

大胆な発言と行動力で会社を引っ張ってきた著者も、ほんとうのところ小心者でセッカチだと正直に述べられております。

英語に play the fool という表現がありますが、日本語に直訳すれば、「バカを演じる」。この fool というのは道化のことでもありますが、「バカを演じるには」にはかなりの知性が必要でありますね。

バカを演じることのできるスゴさこそ、この本から読みとるべきしょう。ほんとうは数学が得意で、統計学のプロだそうです。保険会社でアクチュアリー(保険数理士)の資格を取得したというのだからスゴい。

その一方で、そろばん玉だけでは人はついてこない、と言い切る著者の、社員や顧客の巻き込み方、大いに学ぶべきものがあります。

経営書を読むヒマがあったら歴史書を読めというのも納得です。そしてマキャヴェッリの『君主論』が愛読書の一つというのも並みの社長ではない。リアリズムに徹すべし、と。

騙されたと思って読んでみてください。笑えます。勉強になります。

文句なしに面白い本です。元気の出る本です。あまりにも面白いので、ついつい何度も爆笑してしまいます。電車のなかで読むのは避けたほうがいいかもしれません。






目 次

はじめに
第1章 社長は社長をやれ。
 ① 社長は、高く「旗」を掲げろ。
 ② 社長はバカになって、「本気」を伝えろ。
 ③ あえて角番に立って、クソ度胸を出せ。
 ④ 経営は歴史に学べ。
 ⑤ 社長は大ボラを吹け。
 ⑥ 「運」と「勘」と「度胸」を磨け。
第2章 社長はカッコつけるな。
 ⑦ 社長は、奇麗事を言うな。
 ⑧ 暴走できるくらいの権力をもて。
 ⑨ まず、怖れられろ。慕われるのは、その後だ。
 ⑩ 社長は、常に「最悪」を考えろ
第3章 社長は「人間」を知り尽くせ。
 ⑪ 社長は「常識」をひっくり返せ。
 ⑫ 社長は「営業のプロ」であれ。
 ⑬ 数字から「現実」をつかみ出せ。
 ⑭ 働き一両、考え五両、見切り千両。
 ⑮ 反省はするな、よく寝ろ。
 ⑯ 会社には「シンボル」が必要だ。
第4章 社長は心意気をもて。
 ⑰ バカでなくて大将が務まるか。
 ⑱ 社長は群れるな、逆を行け。
 ⑲ いつでも、顔を高い所に向ける。
 ⑳ 変わり続けなければ、生き残れない。
あとがき


著者プロフィール

鈴木喬(すずき・たかし)
1935年(昭和10年)、東京で日用品の卸をしていた鈴木千蔵の四男として生まれる。戦争にかり出された兄たちにかわり、小学生のころから家業を手伝う。東京大空襲で店を焼かれ、焼け野原のなか父のゼロからの再出発も支えた。
東京都立新宿高等学校を経て、1959年一橋大学商学部を卒業。すでに、父と長兄がエステー化学(現エステー)を設立していたが、「兄貴にこき使われてはかなわない」と日本生命に入社。40代で法人営業部門を立ち上げ、年間契約高2兆円を超える「トップ営業マン」として活躍した。
1985年にエステーに出向。企画部長や営業本部首都圏営業統括部長などを経て、1998年に社長に就任。バブル期に膨らんだ「負の遺産」を大リストラするとともに、新商品開発を年間1点に限定。失敗の許されない状況で、全社の反対を押し切って発売した「消臭ポット」を大ヒットさせる。その後、「消臭力」「脱臭炭」などヒットを連発。生活雑貨業界にイノベーションを起こすとともに、社員数500人の「世界のニッチトップ企業」として、P&Gをはじめとするグローバル企業と戦う企業へと成長させた。
2005年には創業以来最高の純利益18億円を達成、売上高も社長就任時から20%増やした。07年に社長を退任し会長に就任するも、リーマン・ショック後の危機を打開するため09年に社長に復帰、現在に至る。徹底したお客様志向の商品開発、CM等の企業コミュニケーションなど、イノベーティブな企業経営が注目を集めている。
週末に軽井沢にある別荘の近くでスポーツバイクに乗って汗を流すのが息抜き。座右の銘は「運と勘と度胸」。座右の書はマキャベリの『君主論』。(出版社サイトより)



<関連サイト>

エステー・鈴木喬会長【上】我がヒット商品の発想法を語ろう好奇心、妄想、ノーメモがアイデアの沈殿物を生む (ダイヤモンドオンライン 2013年3月29日)
エステー・鈴木喬会長【中】我がヒット商品の発想法を語ろう好奇心、妄想、ノーメモがアイデアの沈殿物を生む (ダイヤモンドオンライン 2013年4月5日)


エステー株式会社 鈴木喬-私は「壊し屋」かも知れません。 (賢者.TV 2012年4月)
・・以下のプロフィールが掲載されているので引用しておきます。


氏名 鈴木 喬
会社名 エステー株式会社
出身地 東京都
出身校 一橋大学商学部
出生年 1935年
こだわり 負けることは大嫌い
趣味 自転車、スキー、水泳
特技 数学、統計学
休日の過ごし方 お店まわり
座右の銘 「運と勘と度胸」
心に残る本 『君主論』マキアヴェッリ、『戦略の本質』野中郁次郎・戸部良一他
尊敬できる人 勝海舟
現在の仕事の魅力と苦労 世界の名だたる会社と競争している緊張感が魅力です。
日本を背負う若者へのメッセージ 仕事をしている上では「命までは取られない」ので、 思い切ってチャレンジして欲しいと思います。


<ブログ内関連記事>

書評 『「できません」と云うな-オムロン創業者 立石一真-』(湯谷昇羊、新潮文庫、2011 単行本初版 2008)-技術によって社会を変革するといういうことはどういうことか?

書評 『京都の企業はなぜ独創的で業績がいいのか』(堀場 厚、講談社、2011)-堀場製作所の社長が語る「京都企業」の秘密

「専門家」は何も分かっていない?-いかにして 「当事者」 は 「専門家」 を使いこなすべきか




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2012年8月8日水曜日

ミッションに支えられた「思いの強さ」が勝利を導く-オリンピックをみる一つの視点


ロンドン・オリンピックで、女子サッカー日本代表チームの「なでしこ」が、準決勝でフランスを2-1で破ってメダルを確実にしました(2012年8月7日)。

しかし、オリンピックで金メダルをとることが、なでしこたちのミッションではないようです。

「耐え抜いたなでしこ 夢の2年連続世界制覇に王手」(47ニュース 2012年8月7日)には以下のように書かれています。 http://www.47news.jp/sports/olympics/london2012/400/117438.html

彼女たちは女子W杯優勝を一定の通過点としかとらえていない。日本では最も注目される五輪で勝ってこそ、真のチャンピオンとして認知してもらえると考えているからだ。女子サッカー人気を一過性のブームにとどまらせず、しっかりと根付かせたい。・・(後略)・・

目的と手段を明確に分離し、ミッションはあくまでも目的であって手段ではないことを明確に認識することは、ミッションを軸に据えた活動には不可欠といっていいでしょう。

いまは日本人として言えるのは、「なでしこガンバレ! 宿敵アメリカに勝利して金メダル獲得を!」ですが、彼女たちのなかには、さらに高い志というミッションがあることを知ると、心から応援したくなるものです。

一方、本日早朝(8月8日)、準決勝でメキシコと対戦した日本男子サッカー代表チームは、3-1でメキシコに敗れ去りました。

女子サッカーの対戦相手のフランス代表チームと同様、メキシコ代表チームもまたすさまじいまでの連続攻撃で怒濤のような勢いがありましたが、女子のなでしこは猛攻に耐え抜いたのに対し、男子は終了間際にもだめ押しの3点目を決められ完敗です。

技術力でも攻撃力でもメキシコが勝っていたという印象を、眠い目をこすりながら観戦していましたが、ミッションに支えられた「思い」の強さ、これが男子サッカーとの大きな違いであったように思われてなりません。

1968年のオリンピック開催国でありながら3位決定戦で日本に敗れ去ったメキシコ。44年前の雪辱を果たすという「思い」がきわめてつよかったメキシコ代表チーム死にものぐるいのメキシコに対し、日本はすでに「思い」のつよさで負けていたのかもしれません。

もちろん男子代表チームのメンバーはみな悔しい思いをかみしめていることでしょう。しかし、勝負というものは結果として明らかになるもの。3位決定戦の対戦相手は宿命のライバル韓国。メキシコ以上に手強い相手です。

何のために勝たなくてならないのか、その意味を一人一人が自分なりに理解しし、チームとして共有することの大事さを痛感させられます。スポーツは、まさに企業活動のアナロジーとなりうるのです。

ビジネスパーソンがオリンピックでチームスポーツをみる意味があるのは、そこにあると思うのです。


PS. 決勝戦(8月10日早朝)の結果は、2-1で日本女子代表チームはアメリカに敗れた。しかし、最後の最期まであきらめないなでしこの戦いぶりには、よくやったと声をかけてあげたい。死力を尽くしての結果であるから悔いはないだろう。負けたのは事実、負けた悔しさはぜひ未来につなげていってほしい(2012年8月10日 記す)





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2012年7月12日木曜日

書評 『挑む力-世界一を獲った富士通の流儀-』(片瀬京子/ 田島篤、野中郁次郎=解説、日経BP社、2012)-日本人の底力ここにあり!



富士通のスパコンが世界一になったというニュースに、ひさびさに胸躍る思いをした日本人はすくなくないと思います。

スーパーコンピュータ-「京」(けい)が世界一であった期間は、思ったよりも短かったですが、それでも世界一になったという事実を消し去ることはできません。日本人にとっては、じつにうれしい快挙でありました。

「R+ レビュープラス」から献本をいただきましたが、今回、書評を執筆したくなったのは、「外から見た富士通」という一章に寄稿された、竹内弘高ハーバード・ビジネスクール教授の文章を読みたかったからです。この一文だけでも読む価値は十分にあります。

「いまこそ日本に学べ!」と題されたこの文章のなかで、竹内教授は「失われた20年は、日本にとってはゆるやかな回復期ではなかったかもしれない」という欧米の論調の変化にふれています。

2008年のリーマンショック以後、欧州だけでなく、アメリカもまた一部のイノベーティブな企業を除いては苦しい状況にあることは言うまでもありません。そんななかで、周回遅れで再浮上してきたのが日本企業わたしたちは、もっと自信をもっていいのかもしれません。

わたしのように組織人事を専門分野としてきた人間にとっては、富士通というと、どうしても『若者はなぜ3年で辞めるのか-年功序列が奪う日本の未来-』(光文社新書、2006)などのベストセラーをつぎつぎと発表している人事コンサルタントの城繁幸氏の著作を思い出してしまいます。

成果主義の導入が、社内で混乱を招いたことを描いた『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』(光文社ペーパーバックス、2004)の印象があまりにも強烈に残っているからです。城繁幸氏は、富士通の人事部にいた人です。

しかし、本書を読む限り、英国の識者二人が指摘しているように、富士通には創業当初からの「泥臭い文化」が死なずに生き続けていることがわかって、いい意味で裏切られたような感想を抱きました。

「泥臭い」は、英語の該当表現をさがせば、down-to-earth になるようです。「地についた」という意味をもつ、なかなかなかいい響きの英語ですね。これは、解説を執筆しているナレッジマネジメント論の大家・野中郁次郎(一橋大学名誉教授)のコトバを借りれば、「現場で最善の判断を下し、実行する実践知」そのものでもあるわけです。

暴走する資本主義が見失っていたものが、まだまだ日本企業には残っているわけで、この特質はけっして失ってはならないものだと、あらためて思います。自分の強みは明確に意識する必要があるのです

本書は、実行するのが困難でかつ社会的意義の大きな8つのプロジェクトにまつわる、富士通版「プロジェクトX」の活字版といった内容ですが、それぞれのプロジェクトに携わった富士通の社員のみなさんの熱い思いが行間からにじみでる好読み物になっています。

欲をいえば、富士通の海外法人や日本法人で働いている外国人社員の活躍も声として拾って欲しかったと思います。なぜなら、富士通のバリューやミッションが、どのように全世界で浸透しているかを知りたかったからです。

とはいえ、日本人の底力がここにあると示してみせた8つのストーリーを読んで、元気を取り戻したいものですね。あきらめない気持ちを持ち続けることがいかに大事を教えてくれる一冊です。





目 次

はじめに
第1章 絶対にNo.1を目指す-スーパーコンピューター「京」
第2章 覚悟を決めて立ち向かう-株式売買システム「アローヘッド」
第3章 妄想を構想に変える-すばる望遠鏡/アルマ望遠鏡
第4章 誰よりも速く-復興支援
第5章 人を幸せにするものをつくる-「らくらくホン」シリーズ
第6章 泥にまみれる-農業クラウド
第7章 仲間の強みを活かす-次世代電子カルテ
第8章 世界を変える志を持つ-ブラジル/手のひら静脈認証
寄稿 外から見た富士通
-いまこそ日本に学べ! 竹内弘高
-変革に挑む スチュアート・クレイナー/デス・ディアラブ
おわりに
解説 野中郁次郎
受け継がれてきた言葉
謝辞


著者プロフィール

片瀬京子(かたせ・きょうこ)
1972年生まれ、東京都出身。1998年に大学院を修了し、出版社に入社。雑誌編集部勤務の後、2009年からフリー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの

田島篤(たじま・あつし)
1965年生まれ。日経BP社コンピュータ・ネットワーク局プロデューサー兼 ITpro 副編集長。1989年に日経BP社入社。日経 Linux 編集長、日経ソフトウェア編集長を経て、2011年7月から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。





<ブログ内関連記事>

書評 『経営管理』(野中郁次郎、日経文庫、1985)






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2012年4月26日木曜日

書評 『マザー・テレサCEO-驚くべきリーダーシップの原則-』(ルーマ・ボース & ルー・ファウスト、近藤邦雄訳、集英社、2012)-ミッション・ビジョン・バリューが重要だ!

あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?

マザー・テレサについては、あらためて説明するまでもないと思います。バルカン半島の小村に生まれ、インドのカルカッタ(コルコタ)で貧しい人たちのための奉仕活動に一生を捧げたカトリックの修道女です。

一方、マザー・テレサには、「貧しい人びとのなかのもっとも貧しい人びとに仕える」(to serve the poorest of the poor)というミッションを掲げた「神の愛の宣教者会」(ミッショナリー・オブ・チャリティー)を、カトリック教会の内部で新規に立ち上げ、国際的な組織に育て上げたという「企業内起業家としての側面」もあります。

それが本書のタイトルにもあるマザー・テレサCEO(最高執行責任者)ということが意味するものです。

マザー・テレサの一生は、ミッション遂行のためには万難を排して献身した人生であり、けっして平坦な道ではなかったのでした。

本書は、若き日にマザー・テレサのもとで奉仕活動を行った起業家の著者が、ビジネス上のメンターとともに書き上げた、リーダーシップのあり方の原則にかんするビジネス書です。

しかし、あたらしい事業を立ち上げ、国際的な組織に育て上げるという外面的な「成功」についてのみ語った内容ではありません。

組織のリーダーとして毎日のように直面するさまざまな課題といかに正面から向き合い、ひとつひとつ解決していったかについてのマザー・テレサ実践について、読者と一緒に考えようという姿勢に貫かれた内容になっています。

マザー・テレサのマネジメントは、著者たちによって「リーダーシップの八原則」としてまとめられています(目次を参照)。

その多くは、カトリックの修道女として生きてきたマザー・テレサならではのものですが、「原則2 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ」、「原則4 疑うことを恐れるな」のように、あのマザー・テレサがそうだったのか(!)と驚くような原則も含まれています。いずれも起業家や経営リーダーならかならずぶつかる難問の数々。そこで語られるのはミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の重要性です。

マザー・テレサの八原則について、通り一遍の教科書的な理解に終わらせないためにも、ぜひ実際に読んで、自分のアタマで考えてみることをすすめたいと思います。できればディスカッションの材料として、一緒に考えてみることもいいでしょう。そのために必要なのは、マザー・テレサになったつもりでイマジネーションを働かせてみることです。

企業経営にかかわっているリーダーはもちろん、ありとあらゆる組織のリーダーにはぜひ読んでほしい本として推薦します。


<初出情報>

■bk1書評「あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?」投稿掲載(2012年4月25日)
■amazon書評「あたらしい修道会を立ち上げ、国際的な組織に育て上げたマザー・テレサのマネジメント手法とは?」投稿掲載(2012年4月25日)





目 次


序章 マザー・テレサの原則
マザー・テレサの生涯
第1章 簡潔なビジョンを力強く伝えろ
第2章 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ
第3章 がまん強くチャンスを待て
第4章 疑うことを恐れるな
第5章 規律を楽しめ
第6章 相手が理解できる言葉でコミュニケーションしろ
第7章 底辺にも目配りしろ
第8章 沈黙の力を使え
おわりに あなたが聖人になる必要はない

著者プロフィール

ルーマ・ボース(Ruma Bose)
起業家、投資家、アドバイザー。『マザー・テレサCEO』出版時は、ホメオパシー関連商品やビタミ
ン剤を販売するスプレーオロジー社の社長兼共同CEO。1992~93年、インドのカルカッタ(現コルカタ)で「神の愛の宣教者会」のボランティアとして、マザー・テレサと奉仕活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

ルー・ファウスト(Lou Faust)
実業界で30年以上の経験をもつビジネスマン、アドバイザー。そのうち10年をソロモン・ブラザーズに勤務し、ウォール街や東京で過ごす。マネージング・ディレクターなどを務めた。『マザー・テレサCEO』出版時はエッジ・キャピタル・パートナーズLLCの共同創業者、共同経営者。大きく成長しようとする企業に経営戦略のアドバイスを行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<原書タイトル>

Mother Teresa, CEO  Unexpected Principles for Practical Leadership, 2011

原書には索引(インデックス)がついている。最初から原書で読んだほうがいいかもしれない。ただし、日本語版よりは値段が高いが・・




<書評への付記>

「汚く稼いで綺麗に使え!」。このフレーズは、ビジネス書作家・神田正典の本にはよく引用されているが、じっさいに日本に宣教で来ていたカトリック修道会の司祭のコトバである。

しかし、この考えはきわめて重要だ。

マザー・テレサの場合は、稼いだのではなく寄付についてだが、「かならずしもキレイではないカネ」も受け入れたという。ただし、汚いカネを美名に変換する「売名行為」というロンダリングに使用されないように、見返りはいっさい拒否したという。

ミッションにブレがなければ、「悪魔と取引」することもいとわないという姿勢、これはマザーテレサに限らず、カトリック教会の長い歴史のなかで培われた智恵であるといってよいかもしれない。

このようなモラル・ジレンマは、まさに「ハーバー白熱教室」のサンデル教授によるディスカッション・テーマをほうふつとさせるが、マザー・テレサの場合もまた同様の問題に直面していたということだ。だが、これをクリアしたのは彼女一人の決断ではないと思う。伝統のチカラもあずかっているはずだ。

マザー・テレサが立ち上げた「神の愛の宣教会」(Missionary Of Charity)は、カトリック教会内のあたらしい修道会である。だから「企業内起業」(イントラプルナーシップ)といってよいのである。始まりはベンチャーであったのだ。この件については、ブログに書いた記事「アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド」を参照していただきたい。マザー・テレサの生涯は映画化されているので、それを見るのがいちばんだろう。

なお、序文を寄せているビジネス書作家・本田直之氏も、訳文のなかでも、「マネージメント」となっているが、これはいただけない。動詞は「マネージ」と伸ばしてもいいが、名詞になったら「マネジメント」である。

間延びしていたマネージメントではなく、アクセントは文頭の「マ」に置いたマネジメントである。原則の5にもあるように、規律あるきびきびした姿勢こそ、修道院でしつけられたマザー・テレサの生活習慣に基づいた教えである。くれぐれも間違いなきよう!

著者たちがまとめた「マザー・テレサの八原則」は以下のとおりである。

1. 簡潔なビジョンを力強く伝えろ(Dream it simple, say it strong)

2. 天使に会うためなら悪魔とも取引しろ(To get to the Angels, deal with the Devil)

3. がまん強くチャンスを待て(Wait ! Then pick your moment)

4. 疑うことを恐れるな(Embrace the power of doubt)

5. 規律を楽しめ(Discover the joy of discipline)

6. 相手が理解できる言葉でコミュニケーションしろ(Communicate in a language people understand)

7. 底辺にも目配りしろ(Pay attention to the janitor)

8. 沈黙の力を使え(Use the power of silence)

*Janitor とは門番という意味。お掃除のおばさんや用務員さんなども含まれる。



<ブログ内関連記事>

アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド

クレド(Credo)とは

「祈り、かつ働け」(ora et labora)

書評 『修道院の断食-あなたの人生を豊かにする神秘の7日間-』(ベルンハルト・ミュラー著、ペーター・ゼーヴァルト編、島田道子訳、創元社、2011)

映画 『シスタースマイル ドミニクの歌』 Soeur Sourire を見てきた

書評 『バチカン株式会社-金融市場を動かす神の汚れた手-』(ジャンルイージ・ヌッツィ、竹下・ルッジェリ アンナ監訳、花本知子/鈴木真由美訳、柏書房、2010)






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2012年3月21日水曜日

永続事業の条件は、「経営能力」と「経営理念」のかけ算である


経営能力と経営理念がかけ合わさって、はじめて良好な経営結果をもたらします。

経営理念がいかに重要であるかは、このブログでもなんども書いていますが、理念だけでは経営はできません。経営は、経営者に経営能力の裏付けがあってはじめて成り立つものです。

しかし一方、経営能力があっても、ただしい経営理念がなければ、とんでもない方向にいってしまいかねません。経営理念は、ある意味では羅針盤といってもいいのです。羅針盤なき航海は、難破の最大原因なのです。

短期的にスパンなら、成功している経営者も多いでしょう。しかし、スパンをすこし長くとると、成功しつづける経営者は、かならずしも多くないことに気がつきます。

もちろん、景気変動があるので、経営も山あり谷ありがふつうですが、継続して結果を出していくためには、経営能力と経営理念が両輪となっていることが不可欠なのです。

経営能力と経営理念をもちあわせた存在といえば、なんといっても "経営の神様" とよばれた松下幸之助翁の名前を出さねばならないでしょう。

松下幸之助自身、やり手の経営者ではありましたが、あるとき経営理念の重要性に気がついたことは、このブログでは 松下幸之助の 「理念経営」 の原点- 「使命」を知った日のこと に書いておきましたので参照していただけると幸いです。

今回は、経営能力と経営理念の関係について、幸之助翁みずからが語ったいるべつの文章を引用してみたいと思います。

『私の履歴』のなかで、こんな話をしています。出典は、「第17回 甘えた「所得倍増論」に警鐘」(日経Bizアカデミーのサイトに掲載)です。太字ゴチックは引用者(=わたし)によるものです。

ここで私は、まず経営ということについてふれ、ケネディ大統領の行なうアメリカ国家の経営も、町の小さなドラッグストアの経営も、どちらも同じ経営であるということから話を始めた。すなわち、国の経営の意図するところは、その国の発展、繁栄であり、また国民の幸せである。一方、ドラッグストアの経営は、顧客のためにいろいろ注意を払い、サービスを完全にすることである。どちらも本質的には同じような意図に立っている。しかしむずかしいのは、どうすれば国民を幸せにできるか、どうすれば顧客に対するサービスが適切に行なえるかということである。

マネジメントにおいては、町のドラッグストア(・・ただしここで言われているのはチェーン量販店ではなく薬屋のことでしょう)の経営も国家経営も同じというのは、すばらしい発言ですね。あくまでも顧客を中心に据えて経営を考える姿勢。ただし、国がそれを実行しているかは、やや疑問を感じますが。

そfれはさておき、提供するサービスをつうじて顧客を幸せにするということは、経営の本質のなかでは、理念にちかい部分でしょう。経営理念を体現しているのは経営者です。

そこで非常に大きな問題になってくるのが経営者ということである。すなわち、それぞれの経営体にふさわしい適切な経営者というものが要求されてくるのである。そしてその経営者に、最も大切なことは、正しい自己評価ができるということである。かつてドイツのヒトラーは祖国の窮乏を救い、かつ強大な国家をつくりあげたという点では、偉大な人物であり、その経営力は合格点であった。しかし彼がドイツ国家の経営にとどまらず、さらに欧州全体にまでその経営を広げようとしたところに問題があった。なるほど彼は、ドイツ一国の経営者としてはすぐれていたかも知れないが、欧州全体の経営者としては、いわば適材ではなく、しかも彼のもつ経営理念というものが正しくなかったのである。

このことをお互いの経営にあてはめてみると、経営者のきびしい自己評価ということと合わせて、その経営理念がどこに置かれているかということになる。その理念が、単なる利害、単なる拡張というだけではいけない。それらのことが、いわば何が正しいかという人生観に立ち、かつ社会観、国家観、世界観さらには自然の摂理というところから芽生えてこなければならない。そうした理念がなかったところにヒトラーの失敗があったのであろう。

ヒトラーを引き合いに出すのは、読者を「おやっ!」という気持ちにさせるだけに、「つかみ」としてはなかなかのものがありますが、誤解を生みかねないものもありますので、なかなか勇気のいることだとは思います。

しかしよく読んで見みると、、「その経営力は合格点であった・・(中略)・・なるほど彼は、ドイツ一国の経営者としてはすぐれていたかも知れないが、欧州全体の経営者としては、いわば適材ではなく、しかも彼のもつ経営理念というものが正しくなかったのである」と、締めくくっています。

国の経営者としてのヒトラーは、「経営能力は合格でも、経営理念はただしくなかった」、これが幸之助翁の結論です。

つまりこのここから読み取れるのは、長いスパンをとって考えると、経営結果=「経営能力」×「経営理念」で考えなければならないということを意味しているということでしょう。

いくらすぐれた経営能力を示していても、その理念がただしくない、すなわちマイナスであれば、経営結果もマイナスになってしまう、悪しきものとなってしまうことを意味しています。

逆にみれば、いくらただしい経営理念があっても、経営能力がなければ経営結果はマイナスになってしまいます。

経営能力と経営理念はかけ算の関係にあるのです。

まず磨かねばならないのは経営能力であることは言うまでもありませんが、少しでも長く、できれば永続的な事業として経営していくためには経営理念の裏付けがあることが欠かせません

ぜひ、ミッション・ビジョン・バリューに分解できる経営理念の構築、あるいは再構築に取り組んでいただきたいと思う次第です。




<関連サイト>

"経営の神様" 松下幸之助氏が説いた「経営の要諦」- 「人が代われば組織も変えろ」 (日経ビジネス編集部、2014年9月1日)
・・1973年8月20日号よに掲載されたインタビュー記事の再掲する (注)記事中の役職、略歴は掲載当時のもの。

(2014年9月1日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

松下幸之助の 「理念経営」 の原点- 「使命」を知った日のこと





(2012年7月3日発売の拙著です)









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2012年1月25日水曜日

Captain of industry (キャプテン・オブ・インダストリー)、どんな業界であってもそうありたいもの!


わたしの母校である一橋大学は、もともと戦前には東京商科大学と称していましたが、そのミッションをむかしから "Captain of industry" というフレーズで表現してきました。

「国際的に通用する産業界のリーダーたり得る人材の育成」。これが創設以来、一橋大学がミッションとしてきたものです。

 "Captain of industry" は、19世紀英国の思想家トマス・カーライルがはじめて使ったらしいのですが、ひらたくいえば「産業界のキャプテン」ということになるでしょうか。

「産業革命」(Industrial Revolution)を生んだ英国らしい表現ですね。だとすれば、このキャプテンとは近代スポーツを生んだ英国らしく、スポーツチームのキャプテン(主将)か、あるいは世界最大の海洋国家であった大英帝国を象徴する船長のことだったのかもしれません。

いずれにせよ、産業界のトップリーダーのことを指した表現です。トップリーダーには当然のことながら、その立場にともなう責任や使命がある、という思いが "Captain of industry"という表現にこめられています。

この "Captain of industry" の対語が "Robber Baron" です。

 "Robber Baron" は、日本語でいえば「泥棒男爵」。寡占や、不公正な商習慣の追求によって莫大な私財を蓄えた実業家と銀行家を指した、19世紀米国の表現です。たとえば、 J.P.モルガン、アンドリュー・カーネギー、ジョン・D・ロックフェラーなどがそう呼ばれていました。

これらの人たちは、現在ではフィランソロピー(=慈善行為)をつうじて幅広く社会に貢献していますが、 富を蓄積している段階では、はげしく攻撃されていたわけです。

"Captain of industry" も、"Robber Baron" も、現在でもときどき使われる表現です。この二つの表現はなにがどう違うのか、よく理解しておきたいものです。

金儲けじたいは善でも悪でもありません。事業活動が、雇用創造や納税をつうじて社会に貢献していることは、"経営の神様" 松下幸之助翁もつよく強調していたことです。

しかし、それだけでは足りないものがないか? 何が足りないのか? これについて考えることも必要でしょう。松下幸之助翁も、もちろんそのことを考え続けていたわけですね。

要は、金儲けを最終目的とせず、カネはただしく社会に還元したいものです。

どんな産業や業界であれ、たとえ地域レベルの話であっても、そのトップを目指すのであれば、目指すべき方向が「産業界のキャプテン」か「泥棒男爵」のどちらであるか、言うまでもありませんね!



<関連サイト>

Captains of Industry ~知と業(わざ)のフロンティア~(一橋大学公式サイト)


<ブログ内関連記事>

「経営理念以外、聖域なし」-松下電器(当時)の「中村改革」

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2011年12月5日月曜日

組織の内外にとって明確な表現のビジョンとは?-千趣会の新ビジョン 「ウーマン・スマイル・カンパニー」


 MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は、日本では経営理念や社是と呼ばれているものを要素分解したものですが、企業によっては、たんにミッション(=使命)やビジョン(=価値観)と表現しているケースもあります。

 先日、千趣会(せんしゅかい)が 56周年目の創立記念日に「新企業ビジョン」を制定したというニュースがリリースされました。

 千趣会の新ビジョンもまた、ビジョンのなかにミッションやバリューが表現されたものになっています。

 共同通信のニュースリリース配信記事「千趣会、56周年目の創立記念日に新企業ビジョン制定」によれば、通販カタログなど幅広い事業を展開している千趣会が、新企業ビジョン『ウーマンスマイルカンパニー SENSHUKAI』を制定し、11月1日の56周年目の創立記念日に一般公開しました。

ウーマン
スマイル
カンパニー
SENSHUKAI

 じつにわかりビジョンですね!

 千趣会は、一度でも一定規模以上の組織で働いた女性なら知らない人はいないと思います。女性向けの通販カタログで社内で回覧されていることは、意外なことに男性は知らないかもしれません。

 ところが、千趣会は東証一部上場企業で、「ベルメゾン」というカタログを中核にして、ウェブ頒布会(=ネット販売)、実店舗、ウェディング事業、ペット事業など、さまざまな事業を展開しています。

 会社プロフィールをみると、発展の軌跡を知ることができます。ウェブサイトから引用させていただきましょう。

1955年、こけし人形の頒布を目的に(株)千趣会を設立。オフィスの女性グループを対象にした頒布会事業がスタートしました。その後料理カード付き月刊誌「クック」をはじめ、タオルやハンカチ、下着など女性の心をとらえたオリジナル商品の大ヒットによって業容を拡大。さらに、1976年には、カタログ誌「ベルメゾン」を発刊し、カタログ販売事業に進出しました。当時はむずかしいとされていたファッション衣料の販売からスタートし、服飾雑貨や生活雑貨、家具、インテリア用品へと取り扱いアイテムを広げるとともに、専門店型の品揃えと生活提案型の独自のカタログスタイルを確立。現在、約1200万人の会員に向けて、カタログ、ネット、店舗などのチャネルを通じて様々な商品、及びサービスを提供しています。

 千趣会は、なんとこけし人形の頒布会から始まったのですね。「千趣会」社名の由来は次のようなものだそうです。

最初の頒布会商品「こけし」を「こけし千体趣味蒐集の会」から仕入れることになり、会の名称も“千”と“趣”の文字から『千趣会』と現会長の行待が命名。そのまま現在の社名になりました。

 これは、はじめて知りました。現在はかつてほどではないとはいえ、「こけし人形」を集めるのはもともと女性が中心ですから、出発当初から女性を主対象にした会社であったわけです。

 新ビジョンに話を戻せば、プレスリリースによれば、以下のとおりです。

新企業ビジョン『ウーマンスマイルカンパニー SENSHUKAI』には、“笑顔が積み重なって、しあわせは生まれる。ひとりひとりが笑顔になれば、明日はもっと素敵になる。私たちは、女性の毎日に笑顔を届けることを通じて、世界をしあわせにしていく会社です。”という企業姿勢を表しています。

 きわめて明解なビジョンで、きわめて明解な企業姿勢を示しています。
 
 組織の外に向けての声明が、組織のなかで働いている人にもポジティブな影響としてフィードバックされる。コミュニケーションの好循環が成立しているといえるでしょう。そのお手本のような新ビジョンです。

 そしてこのビジョンには、企業のミッション(=使命)もレゾンデートル(=存在理由)もバリュー(=価値観)もすべて含まれています。

 企業の姿勢を示す MVV として、ひじょうにすぐれたものになっているといえるでしょう。



<関連サイト>

株式会社 千趣会 公式サイト

「千趣会、56周年目の創立記念日に新企業ビジョン制定」(共同通信ニュースリリース配信)

千趣会、創業56周年で新企業ビジョン「ウーマンスマイルカンパニー SENSHUKAI」制定(アドタイ 広告会議編集部)


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Facebook Principle (フェイスブックの原則) を MVV (ミッション・ビジョン・バリュー) の観点からみてみよう

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2011年10月11日火曜日

原点としての 「HPウェイ」 -創業者の理念は度重なる経営者の交代でも生き続けているのだろうか?


 「HPウェイ」というものをご存じですか?

 HP とは、Hewlett Packard の頭文字をとったもの。ヒューレット と パッカードというスタンフォード大学の二人の学生が創業した、シリコンバレー草創期のハイテク企業です。ホームページのことではありませんよ(笑)

 HPウェイ(The HP Way)とは、その HP社の従業員を大事にする研究開発型企業としてのあり方を端的にしめした表現です。

 かつて「IBM ウェイ」「HONDAウェイ」などが、ビジネス界ではたいへんもてはやされました。1980年代に日本的経営がブームになった頃、 日本的経営の要(かなめ)は、経営風土に流れる創業者のフィロソフィーである、と。ウィリアム・オオウチの『セオリーZ』などの経営書が流行った時代のことです。

 この HP が最近は迷走を続けています。創業者の理念がすばらしかっただけに、最近の迷走ぶりが余計に目につきます。「ダイヤモンド・オンライン」の最新記事「繰り返されるトップ交代-HPと米ヤフーが陥った自己喪失の罠」から一部抜粋しておきましょう。 

HPが不幸だったのは、度重なるトップ交代ドラマによって、企業としての姿がすっかり見えなくなったことである。幅広くやっているが、特化したものが見えてこない。ことにここ数年は、企業としてのメッセージを社会に届けるための余裕がなかった。特に消費者向け商品において、これは決定的なマイナス材料だ。HPのトップにまず課されるのはリカバリー(回復)だろう。信頼の回復、ブランドの回復である。

 わたしが米国に留学した1990年代初頭は、「プリンターといえば HP」というのが「常識」でした。現在はもはや使われることはありませんが、OHPのプロジェクターも HP があたりまえ。そんな環境から帰国してから出版されたのが、『HPウェイ-シリコンバレーの夜明け-』(日本経済新聞社、1995)という本でした。

 この本を読んでさらに HPは、すばらしい会社だ(!)と感嘆したことが思い出されます。

 かつて IBM Way を賞賛された IBM も、低価格化する PC の急激な普及によって苦境に陥った後、経営コンサルタント出身の外部経営者によって、ソリューション・プロバイダーとして劇的に変身を遂げ復活しました。HP もハードからソフトへという IBM流の路線をとるかにみえた矢先の経営者交代です。

 創業時のベンチャーの志(こころざし)を、後継者がいかに維持発展させることができるかは、HPにおいてもきわめて困難な課題であったことを知ると、なにやら少しさびしい気持ちにさせられます。

 上記の単行本は、『HPウェイ-シリコンバレーの夜明け-』 (日経ビジネス人文庫、2000)として文庫化されましたが、 現在は単行本も文庫版も品切れです。「HPウェイ」はもはや死語になってしまったのかもしれません。

 「創業は易し守勢は難し」という故事成語がよくクチにされますが、創業者のカリスマの継承だけでなく、ミッションの継承もまたいかに困難であるかを痛感するものです。

 もちろん、創業もかならずしも容易なものではなりませんが、事業を継承発展させていくことはさらに難しいということなわけですね。

 たとえ「現場」がしっかりとしていたとしても、組織の骨格であるミッションが生きたものとして根付いていなければ、企業としての存続も難しいものがあるかもしれません。

 まずは「原点回帰」が必要なのではないか、そんなことを考えさせてくれる事例といっていいでしょう。



P.S. 『HPウェイ[増補版]』(デービッド・パッカード、ジム・コリンズ序文、依田卓巳訳、海と月社、2011)として再刊されているが、上記の感想についてはとくに変更する必要は感じません。
 すばらしい理念をもっていた HP社はもはや過去のもの。「経営史の教科書」に登場する歴史的事例としてなら、読む価値は大いにあるでしょう。いや、むしろよく読んで、自分が属する組織には大いに活かしてほしいと思います。





<関連サイト>

「HP Way」、それはHP全社員が、誇りとともに受け継ぐ理念。(日本HPのウェブサイト)


<ブログ内関連記事>

カリスマが去ったあとの後継者はイノベーティブな組織風土を維持できるか?-アップル社のスティーブ・ジョブズが経営の第一線から引退




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2011年9月29日木曜日

「タイビジネスミッション 2011年11月」 (BOI:タイ投資委員会主催)のご案内


 「タイビジネスミッション 2011年11月」 (タイ投資委員会主催)が実施されます。

 今回の現地視察ミッションは、BOI大阪事務所が主催ですが、成田空港からも名古屋空港からも参加可能ですのでご安心ください。

 BOI とは Board Of Investment の略称で、直接投資にかんする許認可を付与するタイ王国の政府機関です。

 タイ王国に進出をご検討の方は、まずはこのミッションに参加されることを強くお奨めします。以下に、概要をそのまま転記しておきます。


◇◇---------------------------◇◇
「タイビジネスミッション 2011年11月」(タイ投資委員会主催)の
ご案内

◇◇---------------------------◇◇

 今年12月5日に国王陛下は84歳のお誕生日をお迎えになります。このおめでたい年をお祝いするためタイ投資委員会(BOI)はBOI FAIR 2011を開催することになりました。
 この博覧会ではタイのトップ企業や国際的な大企業はじめ各産業から多くの企業が出展して最新技術を紹介します。また、環境にやさしい製造技術は産業全体の更なる発展を後押しするためにも特に重点的に取り上げられております。
 つきましては、BOI大阪事務所および東京事務所はBOI FAIR開催時期に合わせてバンコクでビジネスミッション(2011年11月14日-19日)を実施します。
 このミッションは、海外進出あるいは海外取引をご検討中の日本の投資家の皆様に取りましてはタイの産業の実力と可能性をご覧いただけるよい機会です。
 さらに、同会場ではBOIとタイの各業界が連携して皆様のニーズ(合弁先、委託先、部材調達先、市場開拓など)に合わせたローカル企業とのビジネスマッチングやBOI担当官による個別相談の場もご用意しております。
 その他、ミッションプログラムは、外国人による会社設立、労働法規、税務、BOI奨励による恩典、ビザ・就労許可申請に関するセミナーや既進出企業による体験談、ローカル企業工場見学、工業団地視察、Thai METALEX 2011展見学など充実した内容で構成されております。

日時:2011年11月14日-19日
場所:タイ、バンコク
主催:タイ投資委員会(BOI)


詳細は、添付PDFファイルをご覧ください。

お申込みはこちらです。
http://intranet.boi.go.th/osaka/index.php?id=BOI


皆様のご参加を心よりお待ちしております。

◇◇---------------------------◇◇


 わたしがこのミッションへの参加を推奨する理由は、以下のとおりです。

 何といっても第1に、実際に進出するに際して各種の特典を付与する主体である BOI(タイ投資委員会)の主催であること。

 第2に、訪問先には現地進出日系企業が含まれており、自分でアポをとる必要がないこと。また、BOI をはじめとしてタイ王国の関連政府機関への訪問が組み込まれていること。

 第3に、宿泊先が高級ホテルであるにのかかわらず、政府機関の主催であるので、往復の航空運賃を含めた参加費が格安なこと。

 第4に、バンコク市内と郊外の工業団地とのあいだの移動(・・けっこう距離はあります)がすべて大型バスになるので、自分で交通機関を手配する必要がないこと。

 第5に、出発の空港から BOI の日本人スタッフも同行するので、コトバの問題含めて心配いらないこと。


 とくに、海外進出がはじめての方にはうってつけのミッションであるといっていいでしょう。





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注意! 大洪水の影響で「BOI FAIR 2011」が来年1月に延期されたことにともない、ビジネスミッションも延期の見通しのようです。最新情報の入手次第またお知らせいたします(2011年10月20日)


             


          

2011年9月9日金曜日

「使命感」をもったチームどうしの戦いは激しい-昨日(2011年9月8日)のオリンピック代表予選をみて思ったこと


 昨日(2011年9月8日)の対北朝鮮戦では、1-1の引き分けと、かなりの苦戦を強いられた「なでしこジャパン」でしたが、その後の試合で、中国がオーストラリアに敗れたことによる得点差で、一番乗りで「予選突破」することができました。

 ほっと胸をなで下ろした方も多いことでしょう。
 いよいよ、2012年のロンドンが楽しみになってきました。

 ワールドカップで世界の頂点に立ちながらモチベーションを保てたのは、「五輪でメダルを獲らなければ」という使命感があったからだ、と。キャプテンの澤穂希選手に強い「使命感」(ミッション)があることがスポーツ紙の記事には書かれています。

 わたしは昨日(9月8日)の試合はリアルタイムでみていましたが、試合の大半で北朝鮮に圧倒されっぱなしだったので歯がゆい思いをしていたのです。日本のスポーツ報道は、きちんとこの事実について語るべきです。日本人としては、なでしこジャパンに勝ってほしい気持ちは山々ですが、チームの実力についてはシビアな観察が必要です。

 けっして日本代表チームが弱いわけでなく、双方がともに技術的にはほぼ互角であるのにかかわず、北朝鮮代表チームが死にもの狂いだったのは理由があったのです。

 じつは、本日9月9日は北朝鮮の63回目の建国記念日。北朝鮮代表チーム側には、絶対に負けるわけにはいかない(!)という「使命感」が強かったのですね。

 TV報道によれば、北朝鮮の女子サッカー代表チームは、サッカーがうまいだけでなく、思想的にも "正しい" 人間でないと入団できないのだとか。

 北朝鮮の選手の一人一人に、キム・ジョンギル総書記に対する強い忠誠心があり、強い内発性の動機が「勝たねばならないという使命感」を生み出して支えているのです。けっして罰が怖いからといった外発性の動機ではないようなのです。サッダーム・フセイン独裁下のイラクのサッカー代表チームとはひじょうに異なると思われます。

 ですから、昨日の 「日本vs.北朝鮮戦」は、内発的動機に支えられた強い「使命感」をもったチームどうしの戦いだったのです! 

 そういう観点からみたら、日本代表チームはかなり善戦をしたといっていいかもしれません。

 サッカーもまた、たんなる技術だけではなく、内発的動機にもとづいた、勝とうという強い信念と強い使命感に支えられてこそ勝利をつかみ取ることができるものなのです。


P.S. 結局、日本が一位、北朝鮮が二位でアジア予選を突破しました。本大会でも北朝鮮は要注意ですね(2011年9月12日 追記)


<ブログ内関連記事>

「NHKスペシャル「なでしこ​ジャパン 世界一への道」 (2011年7月25日) を見ながら考えたこと

女子サッカー・ワールドカップで 「なでしこジャパン」 がついに世界一に!(2011年7月18日) 

書評 『なでしこ力(ぢから)-さあ、一緒に世界一になろう!-』(佐々木則夫、講談社、2011)
・・監督の目からみたなでしこジャパン

「サッカー日本代表チーム」を「プロジェクト・チーム」として考えてみる

『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク、大前研一訳、講談社、2010) は、「やる気=ドライブ」に着目した、「内発的動機付け」に基づく、21世紀の先進国型モチベーションのあり方を探求する本




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2011年8月24日水曜日

ミッション(使命)が明確でなくなった組織に存在意義はあるか?-「週刊 ダイヤモンド 2011年 8月27日号 特集:経産省解体!」


 組織というものは、ミッション(使命)が明確であると存在意義も社会から認めてもらえます

 存在意義(=レゾンデートル)のなくなった組織がもたらす弊害として、経済産業省も挙げることができるのではないでしょうか。

 だいぶ以前から「通産省(=経産省)無用論」がありました。もともと、通産省は敗戦後に白洲次郎によって「通商」と「産業」が合体してあたらしく再編されたもので、その使命はすでに終えて久しいといっても言い過ぎではないようです

 今週(2011年8月27日号)の「週刊ダイヤモンド」の特集は「経産省解体!」。刺激的なタイトルですね。

 民間企業は、つねに競争にさらされているので、ある程度まで自浄作用や自然淘汰が働きますが、役所の場合はミッションを喪失しても存続してしまうのが大きな問題。

 官僚組織は、組織のミッション(使命)を全面的に見直すか、そうでなければ再編されるのも仕方ないというべきでしょう。  

 みなさんはどう思われますか?


目 次

特集 「経産省」解体!

Part 1 組織編 経産省解体への序曲
 保安院分離で蠢く解体シナリオ
 新・中央省庁再編案
 天下り先増殖のあきれたカラクリ
 経済産業省の組織
 Interview 古賀茂明●経済産業省大臣官房付
 Interview 海江田万里●経済産業大臣

Part 2 政策編 産業政策の無為無策
 出だしからつまずくインフラ輸出
 競争力向上目指す産業政策の愚
 死屍累々の大プロジェクト政策
 経済産業省の歴史
 経産省が電力会社に屈した日
 Interview 松永和夫●前経済産業事務次官

Part 3 人材編 経産官僚の本質
 有能な若手の流出で小粒化
 血で血を洗う派閥抗争の内幕
 経済産業省 出世スゴロク
 組織にはびこる根深い体質
 経産官僚と財務官僚の気質の差








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2011年6月8日水曜日

Facebook Principle (フェイスブックの原則) を MVV (ミッション・ビジョン・バリュー) の観点からみてみよう


 軸、中心軸、背骨、プリンシプル、原理原則・・・

 いろんな言い方が可能ですが、原理原則がしっかりしていれば、海外進出にあたってはローカル市場の特性にあわせてローカライズできる部分はそうすればいい、カスタマイズできる部分はそうすればいい

 そして、ローカライゼーションは現地の担当者にまかせる

 米国でうまれたフェイスブックもまた、その定石を愚直なまでに貫いています。

 日本での事業展開にあたって、フェイスブックの海外戦略担当者がインタビューに答えた記事がありました。「独占インタビュー! 絶好調のFacebook・海外戦略担当者が語った、日本攻略への布石」 (日経トレンディ)。

ミクシィなどの SNS が先行する日本市場ですが、フェイスブックは 「実名主義」や「顔出し」といった原則を絶対に(!)曲げようとしません。

 もともと、大学の顔写真入り新入生紹介本であるフェイスブック(・・直訳すると「顔本」(笑)ですね)を、オンライン化したのがフェイスブックですから、当然といえば当然でしょう。

 それだけでなく、事業家というよりは社会革命家のような創業経営者マーク・ザッカーバーグの、人生における基本姿勢、信念といったものが、事業経営にもストレートに反映しているようです。そのため、現在にいたるまでさまざまな物議をかもしながらも突き進んでいるのは、みなさんご承知のことでしょう。

 「実名主義」や「顔出し」という、頑(かたくな)なというか、ゴーマンにも見えるこの原理原則を受け入れるか、受け入れないか、この原理原則は日本人にはまだまだ高いハードルなのかもしれません。

 しかし、フェイスブックに参加することを意志決定した日本人は、みなこの原則をさいしょは抵抗がありながらも受け入れ、ある意味ではマーク・ザッカーバーグの思想に共鳴していくということも体験していくことになるのでしょう。

 フェイスブックの言語はいうまでもなく英語ですが、日本で普及がはじまった最大の要因は、「いいね!」ではないかと考えています。

 英語では 「Like !」、これを直訳して 「好き!」 などという表現にせず、「いいね!」という日本語を採用したのは、ほんとうに天才的なヒラメキです。これぞカスタマイゼーションの極地というべきでしょう。

 このほか、日本語環境むけにさまざまなカスタマイゼーションを行っていることは、フェイスブックの伝道者の方々が積極的に情報発信していますので、あらためてわたしが指摘することはありません。

 以下に、Facebook Principle (フェイスブックの原則)を転載しておきます。
http://www.facebook.com/principles.php

 日本語と英語のニュアンスに注意を払いながら読んでみてください。

1. 情報を共有し、つながりになる自由 (Freedom to Share and Connect)
2. 情報の所有と管理 (Ownership and Control of Information)
3. 情報の自由な流れ (Free Flow of Information)
4. 基本的平等 (Fundamental Equality)
5. 社会的価値 (Social Value)
6. オープンなプラットフォームと標準 (Open Platforms and Standards)
7. 基本的サービス (Fundamental Service)
8. 公共の福利 (Common Welfare)
9. 透明性のあるプロセス (Transparent Process)
10. 1つの世界 (One World)



Facebook Principles (フェイスブックの原則)

Facebookは、世界のオープン性と透明性を高めることを目的として構築されています。これにより、優れた理解とつながりが生まれると弊社は考えています。Facebookは、個人が共有し、つながりを持つことができる優れた機能を提供することで、オープン性と透明性を推進しますが、これらの目標を達成するうえで、特定の原則がFacebookの指針となります。これらの原則の達成の制約となるのは、法律、テクノロジー、進化する社会規範の制限のみであるべきです。したがって、Facebookサービス内におけるそれらの権利および責任の基盤として、これらの原則を確立するものとします。


Facebook Principles

We are building Facebook to make the world more open and transparent, which we believe will create greater understanding and connection. Facebook promotes openness and transparency by giving individuals greater power to share and connect, and certain principles guide Facebook in pursuing these goals. Achieving these principles should be constrained only by limitations of law, technology, and evolving social norms. We therefore establish these Principles as the foundation of the rights and responsibilities of those within the Facebook Service.


1. 情報を共有し、つながりになる自由 (Freedom to Share and Connect)
人は、欲しい情報が何であれ、それをあらゆる媒体および形式で共有する自由を持ち、また、当事者同士が同意している限り、いかなる人、組織、サービスともオンラインでつながりになる権利を有するべきです。

People should have the freedom to share whatever information they want, in any medium and any format, and have the right to connect online with anyone - any person, organization or service - as long as they both consent to the connection.


2. 情報の所有と管理 (Ownership and Control of Information)
人は自分の情報を所有すべきです。また、それを好きな人と共有し、好きな場所へ持ち運ぶ(Facebookサービスから削除する行為を含む)自由、さらに、自分の情報を共有する相手を選び、そのような選択を保護するプライバシーコントロールを設定する自由を持つべきです。ただし、Facebookサービスの外部では特に、そのような自由によって、情報を受け取った人がその情報をどのように使用するかを制限することはできません。

People should own their information. They should have the freedom to share it with anyone they want and take it with them anywhere they want, including removing it from the Facebook Service. People should have the freedom to decide with whom they will share their information, and to set privacy controls to protect those choices. Those controls, however, are not capable of limiting how those who have received information may use it, particularly outside the Facebook Service.


3. 情報の自由な流れ (Free Flow of Information)
人は、他の人によって参照可能となったすべての情報にアクセスする自由を持つべきです。また、この情報の共有とアクセスを簡単、迅速、かつ効率的にする実用的なツールも持つべきです。

People should have the freedom to access all of the information made available to them by others. People should also have practical tools that make it easy, quick, and efficient to share and access this information.


4. 基本的平等 (Fundamental Equality)
個人か、広告主か、開発者か、組織か、その他の団体かを問わず、あらゆる人は、自分の主な活動が何かに関係なく、Facebookサービス内で自由に表現し、配信内容および情報にアクセスすることができるべきです。Facebookサービスを使用するすべての人に適用される一連の原則、権利、責任が存在すべきです。

Every Person - whether individual, advertiser, developer, organization, or other entity - should have representation and access to distribution and information within the Facebook Service, regardless of the Person's primary activity. There should be a single set of principles, rights, and responsibilities that should apply to all People using the Facebook Service.


5. 社会的価値 (Social Value)
人は、自分のアイデンティティとつながりを通じて、信頼と評判を築く自由を持つべきであり、Facebookの利用規約で述べられている内容以外の理由で、Facebookサービス上の自分の情報が削除されることがあってはなりません。

People should have the freedom to build trust and reputation through their identity and connections, and should not have their presence on the Facebook Service removed for reasons other than those described in Facebook's Statement of Rights and Responsibilities.


6. オープンなプラットフォームと標準 (Open Platforms and Standards)
人は、利用可能な情報にアクセスするためのプログラマティックインターフェイスを持つべきです。これらのインターフェイスの仕様は、すべての人に公開され、すべての人が利用およびアクセスできるべきです。

People should have programmatic interfaces for sharing and accessing the information available to them. The specifications for these interfaces should be published and made available and accessible to everyone.


7. 基本的サービス (Fundamental Service)
人は、自分の存在を確立し、他の人とつながりを持ち、情報を共有するために、Facebookを無料で利用できるべきです。参加または貢献の度合いに関係なく、すべての人がFacebookサービスを利用できるべきです。

People should be able to use Facebook for free to establish a presence, connect with others, and share information with them. Every Person should be able to use the Facebook Service regardless of his or her level of participation or contribution.


8. 公共の福利 (Common Welfare)
Facebookとその利用者の権利および責任は、利用規約に記載されているべきであり、その内容と本原則に矛盾があってはなりません。

The rights and responsibilities of Facebook and the People that use it should be described in a Statement of Rights and Responsibilities, which should not be inconsistent with these Principles.


9. 透明性のあるプロセス (Transparent Process)
Facebookは、その目的、計画、ポリシー、運用に関する情報を公開すべきです。また、通知およびコメントのタウンホールプロセスと、本原則または利用規約の修正に関する入力および会話を促す投票システムを持つべきです。

Facebook should publicly make available information about its purpose, plans, policies, and operations. Facebook should have a town hall process of notice and comment and a system of voting to encourage input and discourse on amendments to these Principles or to the Rights and Responsibilities.


10. 1つの世界 (One World)
Facebookサービスは、地理的境界および国境を越えて、世界中であらゆる人が利用できるべきです。

The Facebook Service should transcend geographic and national boundaries and be available to everyone in the world.



 もちろん、これらの原理原則は最初からあったものではなく、事業展開をしていくなかで試行錯誤を続けながら練り上げていったものだと思います。

 個人でも組織でも、原理原則を明確にもつことの重要性をしめしているのが、ザッカーバーグであり、フェイスブックであるといっていいでしょう。まだまだ物議をかもす存在ではありますが、それは原理原則を貫く姿勢ゆえ。批判をものともせずに突き進む姿勢。

 使命感をもった経営者と企業は、ほんとうに強い。



<ブログ内関連記事>

書評 『フェイスブック 若き天才の野望-5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた-』(デビッド・カークパトリック、滑川海彦 / 高橋信夫訳、日経BP社、2011)

シェリル・サンドバーグという 「ナンバー2」 としての生き方-今週の Bloomberg BusinessWeek (ビジネスウィーク) のカバーストーリーから

書評 『Facebook(フェイスブック)をビジネスに使う本-お金をかけずに集客する最強のツール-』(熊坂仁美、ダイヤモンド社、2010)




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2011年5月7日土曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 最終回(5月6日)後に全10回のおさらい-ミッションの重要性と「顧客」は誰か?


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の最終回みましたか?

 さて、昨日(5月6日)の放送は、「みなみは高校野球に感動した」というタイトル。

 クライマックスとなる「決勝戦」、ほぼ100%「青春ドラマ」になってましたね。青春ドラマですから、あまり難しいことは考えずに、「感動」に浸るのもまたいいでしょう。さすがに10回もつづけて視聴していると、アタマのなかで「♪夢ノート~」ではじまる主題歌が鳴り響くようになっています(笑)。

 ドラッカーの『マネジメント』に導かれて「やるべきことをやってきた」野球部は、見事に「結果」を出しました。物語の世界、なんといってもハッピーエンドはいいものですね!

 これまでの放送内容を、わたしがつけたサブタイトルをもとに振り返っておきましょう。

第1回放送:ゴール設定の重要性、真摯(しんし)さというマネージャーの資質・・
第2回放送:「組織変革」 と 「インターナル・マーケティング」のドラマ
第3回放送:マネジメントは「ヒト」を中心に!..人的資源と目標管理
第4回放送:イノベーションとはあたらしい価値をもたらす変化のこと
第5回放送:イノベーションという仮説はデータで検証する
第6回放送:「戦略実行」 のカギは 「ヒト」 という経営資源
第7回放送:成果を出すためのプロセスがマネジメント
第8回放送:セルフマネジメントと個人と組織の問題
第9回放送:マネジメントと個人のモチベーション

 とはいえ、甲子園出場を「ゴール」に設定してきた野球部、目的を達成してしまったいま、これからいったいどのような「ゴール」を再設定し、どのような戦いを甲子園で展開していくのでしょうか? 

 キャプテンはインタビュアーの質問に対して、この問いに対して直接に解答はせず、「見る人がしてほしいような野球をやる」といってましたね。

 顧客にマーケティングし、高校野球界にイノベーションをもたらすことを野球部のミッションにしているからこそ、次のゴール設定がに言及しなくて、このような発言をすることができたということができるかもしれません。

 ここで、ミッションの重要性が浮上します。使命感あるいは使命。ここでいっているのは組織としての野球部の使命です。

 このミッションは明文化したものではないにせよ、また理解の度合いがメンバーの間で濃淡の差があるにせよ、ミッションが明確で共有されていれば、組織にはブレがないのです。

 組織にブレがなければ、戦略実行に際してもブレがなくなると同時に、臨機応変の戦術対応も可能となってくるのです。最終回にはセーフティバンドで出塁するシーンがありましたよね。バンドであっても、「ノーバンド、ノーボール」戦略には反していないのです。

 ところで、ふたたび「顧客」というコトバがでてきましたが、ここでいう「顧客」とはいったい誰を指しているのでしょうか?

 正直なところ、わたしからみると、このドラマはこの点が「ツメが甘い」という感じをもたざるをえません。「顧客」が誰を指しているのかはっきりしていないので、どうしても話がまた振り出しに戻ってしまいます。

 外部の顧客にむけてのマーケティングなのか、内部の顧客、すなわ構成メンバーにむけてのインターナル・マーケティングなのか? 

 外部の顧客であれば、野球部を応援してくれる人たちなのか、選手の友人たちや父兄たちなのか、高校のある地域の人たちなのか、高校野球界全体なのか・・・。ステークホールダーという考えを導入すると、顧客が誰かという答えが明確になってくるでしょう。

 いずれにせよ、「顧客の範囲」を明確にしておかないとピンぼけしてしまいます。まずは、すでに明確となっている「顕在顧客」が誰か、まだ明確になっていないがポテンシャルである「潜在顧客」はだれか、この範囲(スコープ)を明確にしておくことも重要です。「~のために」の「~」は誰かといいかえてもいいでしょう。

 「顧客の定義」が明確にならないと、いくら努力しても間違った方向にマーケティグし、ピントはずれのイノベーションをしてしまう危険さえあります。それでは結果がでるどころかチームは空中分解、「何のために」とい本質論からはずれてしまいます。

 高校生がここまで突き詰めてしまうと、ちょっと引いてしまうかもしれませんが・・(笑)。あくまでもドラマですから、それはそれでよしとしておきましょう。

 ドラッカーの『マネジメント』に導かれた野球部のマネジメント革新は成功しましたが、実際にみなさんが自分のいる組織で応用していくためには、重要なコンセプトをひとつひとつ確認して、定義を行っておくことが不可欠です。

 「顧客創造」と、そのためのマーケティングとイノベーション。これがドラッカー経営学のエッセンスですが、「顧客」とは誰をさしているのかの定義、これを抜きにしては、ほんとうのマネジメントはできない、ということは肝に銘じておいてほしいものです。

 おそらく、このアニメはこれから何度も再放送されることになると思いますし、またいろんな機会でディスカッションの材料として取り上げられることもあると思います。

 生きるうえで「素直さ」は大事なことですが、このドラマをみて「感動した!」で終わりにしてしまうのではなく、どんなことであれ疑問をもって、自分のアタマで考え抜いてほしいと、わたしは期待しています。

 もちろん、100人いれば 100通りのものの見方があります。ここに書いたのは、あくまでもわたしのものの見方です。大事なことは、自分がかかわっている組織で「マネジメント」の考えを応用しながら、実践と理論の往復運動をつねに行うこと

 ドラッカーがいうように、「マネジメントは現代人の教養」となるべきものだからです。

 マネジメントを「常識」として受取り、ドラッカーの名前をださなくても実践ができるようになったとき、そのときはじめて「マネジメント」を勉強した甲斐(かい)があったといっていいのではないでしょうか。

 ともに研鑽(けんさん)を積んでいきましょう!

(終わり)






<関連サイト>

『もしドラ』(NHKアニメワールド)


<ブログ内関連記事>

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第1回放送(4月25日)のおさらい

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第2回放送(4月26日)のおさらい-「組織変革」 と 「インターナル・マーケティング」のドラマなのだ

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第3回放送(4月27日)のおさらい-マネジメントは「ヒト」を中心に!

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第4回放送(4月28日)のおさらい-イノベーションとはあたらしい価値をもたらす変化のこと

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第5回放送(4月29日)のおさらい-イノベーションという仮説はデータで検証する

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第6回放送(5月2日)のおさらい-「戦略実行」 のカギは 「ヒト」 という経営資源

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第7回放送(5月3日)のおさらい-成果を出すためのプロセスがマネジメント

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第8回放送(5月4日)のおさらい-セルフマネジメントと個人と組織の問題

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第9回放送(5月5日)のおさらい-マネジメントと個人のモチベーション


レビュー 『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』(アップリンク、2010)

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)


PDCA (きょうのコトバ)  

  
レビュー 『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』(アップリンク、2010)

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)




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2011年5月2日月曜日

「自然エネルギー財団」設立に際して示した、ソフトバンク孫正義氏の 「使命」、「ビジョン」、「バリュー」・・・


 先週、ソフトバンク創業者で会長の孫正義氏が、またあらたなミッションに乗り出しました。

 4月22日、ソフトバンク本社で行われた「自由報道協会」主催の会見で、孫さんは、原子力にかわる「自然エネルギー開発」のために財団つくりのため、私財から 10億円を投じることを発表しました。

 「生まれてきた使命を果たす」ソフトバンク・孫正義氏"自然エネルギー財団"設立 という記事から、その概要を引用しておきましょう。

2011年をエネルギー政策転換の年と位置付け、個人としての寄付10億円で自然エネルギー財団を設立いたします。10億で足りないことはわかっていますが、これはスタートの原資として、世界100名のトップ科学者との意見交換の場を作る。議論のきっかけを作るための財団。シンクタンクのようなもの。自然エネルギー発電にはいろいろある。どれがいいのかはこれから勉強して行く。太陽光発電だが、電気使用のピークは日中。電力の消費量が最も多いときに太陽は出ている。そこに当ててはどうか? 太陽光発電を否定する意見の多くは、曇りや雨のとき、発電出来ないというもの。しかし、天気の悪いときには、火力発電を使えばいい。バッファとして考えている・・(以下略)・・

 先日も、大震災と大津波の被災者のために 100億円の私財と今後の報酬のすべてを提供すると発表して大きな話題をさらった孫さんですが、今回の「新エネルギー財団」構想と私財からの 10億円の資金提供もまた、日本と世界に向けての大きな一歩となることは間違いないでしょう。

 わたしは、趣旨には全面的に賛同します。「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類の歴史にとっては大きな一歩だ」という、はじめて月面に着陸した、アポロ11号のアームストロング船長のコトバも思い出します。

 引き続き、質疑応答の内容の一部を引用しておきましょう。

Q:孫さんの正義感とはどういった言葉の定義?
A:ソフトバンクの長期的な理念は「情報革命で人々を幸せに」それに向けて情報革命を一直線にやってきた。今、日本の人が一番不幸せだとおもっているのが原発問題ではないか。
 究極の選択として、「情報革命」「人々の幸せ」どちらを追い求めるかを選べと言われたら、平時であれば両方追い求める。国難の時に、情報革命だけ追っていればいいのか。それで生まれてきた使命を果たせるのか、正義はあるのか。毎日悩んでいる。お前に政府は動かせるのか、力を過信しているのではと言われる。だけど、できるかできんかわからんけど、やらないかんことがある

 現時点では脱原発は非現実であるとしても、将来的には自然エネルギーで代替させようとというビジョン、これくらいの「大風呂敷」を広げて構想をぶちあげなければ、何も変化しないといっても言い過ぎではないでしょう。日本人が大好きな「改善」ではけっして対応できないのです。

 おそらく、いわゆるエネルギー問題の「専門家」の多くは、非現実的だといて切って捨てるか、無視するかのいずれかでしょう。ですが、「意思あるところ道あり」、現時点ではコスト的な面から非現実的とみえる新エネルギーも、本腰入れて取り組めばまったく実現可能性がないと、いったい誰にいえるのでしょうか?

 もちろん、本人は現時点では否定していますが、エネルギー投資がビジネス的にみても意味あるものであることは、ながく IT業界に身を置いている経営者であれば当然というべきですね。

 膨大な数のサーバー稼働させているグーグルが、早い段階から電力問題解決のために本腰をいれて取り組んでいることはよく知られていることです。この点については、わたしも、書評 『グーグルのグリーン戦略』(新井宏征、インプレスR&D、2010)に書きましたのでご参照いただけると幸いです。

 ビジネスパーソンが、自らのビジネスにまったく縁がなくはない分野で、社会貢献のための投資を行うこと、これはけっして非難すべきことではありません。早い段階での新エネルギー開発のロードマップを示すことができれば、世論も大きく変わっていくことでしょう。

 自らのミッション(使命感・使命・任務)を明確にし、生き様をバリュー(価値観)として態度で示し、壮大な構想をビジョン(将来像)として示して見せる

 営利事業と非営利事業の垣根が低くなり、すべての事業がソーシャル・ビジネスへと収斂(しゅれん)し、進化していく現在、当事者にはいろいろと思惑もあるでしょうが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明確にしてこと臨むことが、今後ますます重要になるだけでなく、むしろ Must になるといっても言い過ぎではないでしょう。

 「新エネルギー財団」の活動は、今後も要注目です。


<関連サイト>

「生まれてきた使命を果たす」ソフトバンク・孫正義氏"自然エネルギー財団"設立
・・会見動画とプレゼン資料つき。

エネルギー政策の転換に向けて(2011年4月22日 ソフトバンク株式会社 代表取締役社長 孫正義)・・プレゼン資料

孫正義氏、脱原発財団へ私財10億円(漫画新聞 2011年4月27日)

書評 『グーグルのグリーン戦略』(新井宏征、インプレスR&D、2010)

スリーマイル島「原発事故」から 32年のきょう(2011年3月28日)、『原子炉時限爆弾-大地震におびえる日本列島-』(広瀬隆、ダイヤモンド社、2010) を読む




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2011年4月15日金曜日

「誇り」と「頑張り」の源泉は、「ミッション」(使命感)が明確だから


 「大地震」と「大津波」の被災地や、「原発事故」の避難地域で必死の努力を続けている医療関係者、警察、消防署、自衛隊のみなさんの「誇り」と「頑張り」の源泉は、「ミッション」(使命感)が明確だからでしょう。

 職業にともなうミッション(使命感)が、所属する組織としてのミッション(使命感)が、ほぼ完全に個人に「内面化」されているからなのです。そして、行動規範である「バリュー」(価値観)が、「内面化」されているからなのです。

 だから、無意識のうちに独りでにカラダが動いてしまう、このミッション(任務)を遂行しなければ一生後悔するという気持ちになるのです。

 米海兵隊では、Once a Marine, always a Marine.(いったん海兵隊員になったら一生海兵隊員)と言われているそうですが、それだけミッションとバリューが、アタマだけではなく、カラダをつうじて徹底的にタタキこまれているということなのです。

 医療関係者、警察、消防署、自衛隊のみなさんほんとうにアタマが下がります。カラダには気をつけて頑張ってほしいものです。

 彼らの行動から、営利企業としても教訓をくみ取るべきでしょう。




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2011年4月11日月曜日

ビジネスパーソンにもぜひ視聴することをすすめたい、国際基督教大学(ICU)毛利勝彦教授の「白熱教室JAPAN」(NHK・ETV)



 ETVで 国際基督教大学(ICU)毛利勝彦教授担当の教養学部「国際関係学特別研究III」の授業がNHK教育テレビ「白熱教室JAPAN」で放送されています。

 白熱教室JAPAN 第2回目(4月10日)をみてみました。18時から ETVにて。リベラルアーツ(=教養)を軸にした ICU の授業はどのようなものでしょうか? 

 以下に ETV による解説を引用しておきましょう。
 
国際基督教大学教養学部、毛利勝彦教授の「国際関係学」の講義を取り上げます。毛利教授は、ケース・メソッド法による対話型の授業を進めており、この4回の授業では、紛争・人権侵害・貧困・環境破壊など、現在の国際社会が直面する問題にどのように取り組んでいくべきか、実際にその現場にいる国際NGOが直面した壁や難問を題材に、対話・討論を通じて問題解決のための方策を探っていきます。
グローバル社会における政府や市場の失敗を乗り越え、「国際社会の新しい民主化」を担うと期待される国際NGO の現場感覚を仮想体験しながら、民主的リーダーシップに必要な論理的・批判的思考力とコミュニケーション力を高めるのがこの授業の目的です。

 第2回の授業では、非営利組織のブランド戦略について取り上げられました。

 テーマは、「グローバル化の中で対応に遅れをとり、会員数の減少という問題に直面した国際人権 NGO が、生き残りをかけて検討したブランドイメージ戦略とは?」というものです。

 取り上げられたのは、アムネスティ・インターナショナル。国際人権擁護団体のなかでは知名度の高い、歴史ある存在です。

 アムネスティ、というと敬遠してしまう人が企業関係者もいるかもしれませんが、英語で書かれたHBS(ハーバード・ビジネス・スクール)のケースを使用して、日本語で行った大学生たちのディスカッションです。

 ディスカッション内容は、「ブランド・マネジメント」の王道ともいえる内容でした。アムネスティがブランド・アイデンティティの確認と新規会員募集のためにコンサル会社に依頼した内容についてのディスカッション。

 非営利組織にも営利組織で行われる「ブランド・マネジメント」の応用が可能というよりも、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)にかんしては、非営利組織のほうが先行しているといえるかもしれません。

 ケースメソッドによる対話型授業による、学生たちのディスカッションのあとには、アムネスティの日本代表の方からコメントがありました。アムネスティ内部で実際に行われたディスカッションの要点も解説され、NGO の組織マネジメントについての理解も得られるという内容でした。

 知識の詰め込みではない、ものを考えるための授業とはどういうものか、日本では一般的なセミナーに飽き足らない人には、非常に刺激的な内容になっていると思います。

 見逃した方は、ぜひ再放送をご覧ください。第2回の再放送は、4月17日(日)0:20~1:20(≒土曜日深夜)です。


<関連サイト>

白熱教室 JAPAN

ICU 国際基督教大学 | ニュースとお知らせ | NHK教育テレビ「白熱教室JAPAN」でICUの授業を放送

AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN(アムネスティ・インターナショナル・ジャパン) 公式サイト


<ブログ内関連記事>

慶応大学ビジネススクール 高木晴夫教授の「白熱教室」(NHK・ETV)




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