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急激に寒くなったためか、不覚にも風邪を引いてしまった。
鼻からのど、そしてのどから胸に降りてきて息苦しいが、日中は風邪薬は飲めないから、こんなときはこれに限る! ヴィックス・ヴェポラップ。塗る風邪薬。
ドラッグストアで風邪薬のコーナーをさがしてようやく見つけた。「♫ ヴィ~ックス・ヴェポラップ」の節回しの CM ソングが耳に焼き付いている。アタマのなかでこの音楽を鳴らしながら、ドラッグストアで探していたのだ。
さっそく買って持ち帰って、塗ってみる。匂いだけならタイガーバームとそれほど変わるわけではない。ふと箱に目をやったら、なんと「鷲のマークの大正製薬」 になっている。
なんと、ヴィックス・ヴェポラップ(Vicks Vaporub)は買収されていたのか!
だが、製品ブランドとしては生き残ったわけだ。これは、ブランド戦略の観点からいって、たいへん賢明な意志決定といえる。
ところが、大正製薬はヴィックス社(Vicks)から製品ブランドを直接購入したわけではないようだ。
そんな話をフェイスブックでつぶやいてみたら、ヴィックス・ヴェポラップは P&G(=プロクター&ギャンブル)が買収したはずだったという指摘をもらった。
さっそく調べてみたら、wikipedia の「日本ヴィックス」にはこんな記述があることがわかった。日本ヴィックスじたいは、いまはもう存在しない会社のようだ。
日本ヴィックス株式会社(非上場会社)は、かつて存在した日本法人の合弁企業で、アメリカの製薬会社・リチャードソン・ヴィックス社と日本の伊藤忠商事との共同で設立された医薬品会社。一般用医薬品(大衆薬)・健康食品専業。
沿革(抜粋)
1966年 ヴィックス製品を輸入販売していた阪急共栄物産(現・阪食)より分離・独立で設立。
1979年 日本ヴィックス株式会社に復名。
1985年 経営が悪化した米国リチャードソン・ヴィックス社に対してユニリーバがTOBによる買収を画策。この時、ユニリーバとの経営統合を嫌った経営陣がプロクター・アンド・ギャンブル (P&G) へ救済を求め、P&G傘下となる。
1988年 P&G傘下となっていた日本ヴィックスが社名を「プロクター・アンド・ギャンブル・ヘルスケア株式会社(呼称・P&Gヘルスケア)」に変更。
1994年 P&GヘルスケアはP&G傘下となったマックスファクター(現・P&Gマックスファクター合同会社)と合併し、「マックスファクター株式会社・P&Gヘルスケア事業部」に組織変更。
1997年 便秘薬「コーラック」の日本での事業を大正製薬へ譲渡。
1998年 哺乳瓶消毒剤「ミルトン」の日本での事業を杏林製薬へ譲渡。
2000年 ニキビ治療薬「クレアラシル」の日本を含めた全世界の事業をブーツ・ヘルスケアへ譲渡。
2002年 塗布風邪薬「ヴィックス ヴェポラッブ」、のど薬「ヴィックス コフドロップ」の日本での事業を大正製薬へ譲渡し、P&Gは日本での大衆薬事業から撤退した。
なお、日本以外のP&Gにおける大衆薬事業は「クレアラシル」を除いて引き続き行われている。
そうだったのか!
ヴィックスは、P&Gに身売りし、そして日本国内では、P&G はさらに、製品ブランドを大正製薬や杏林製薬などに切り売りしたというわけなのだ。
だが、製品ブランドを事業ごと買収した大正製薬は、現在でもヴィックス・ヴェポラップのブランドは使用し続けている。日本以外での販売権はヴィックス本社などが所有しているようだ
日本国内にかんしていうと、「♫ ヴィ~ックス・ヴェポラップ」の節回しは、日本人の耳にこびりついている。ブランドは、資産としては買収した企業が所有していても、ブランドそのものは、あくまでも顧客のアタマのなかに存在するものだからだ。
だから、このブランドを捨てて、あえてあらたなブランド名をつけるのは無意味なことなのである。
新たなブランドをゼロから立ち上げるよりも、既存のブランドを買収して、ランニングコストを支出しててブランドのメンテナンスにつとめるのであれば、そのほうが安くつくことは当然である。
ただし、あたらなファン(=顧客)を開拓しなければ、いずれそのブランドは尻つぼみになっていく。今後は、ヴィックス・ヴェポラップも、追加投資によってテコ入れする必要もでてくることだろう。
ファンとしては、このブランドがいつまでも生き続けてほしいものだと思う。顧客もまたブランドの持ち主なのである。
<関連サイト>
ヴィックス・ヴェポラップ(Vicks 本社のサイト)
ヴィックス・ヴェポラップ(大正製薬のウェブサイトの製品ブランドのページ)
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