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2015年1月20日火曜日

書評 『時間資本主義の到来-あなたの時間価値はどこまで高められるか?-』(松岡真宏、草思社、2014)-近代的価値観が融解するなか、幸福度の高い「時間リッチ」な人になるためのヒント


「時間資本主義」というと大げさなタイトルだが、「時間価値」といえばピンとくるかもしれません。あるいは、「カネ」ではなく「時間」そのものが「資本」となる、という意味の「時間資本」なら理解できなくはないでしょう。「主義」は余計です。

この本にはとりたてて目新しいことが書いているわけではありません。議論に生煮えの点が目立ちますし、本論とは関連性の薄い教養ひけらかし的な側面も余計だと感じられます。とはいえ、アタマの整理には役立つ本だといえます。

本書のキモは、「すきま時間」×「スマホ」=時空ビジネス という一行に尽きるといっていいかもしれない。

スマホの普及で「すきま時間」や「細切れ時間」の切り売りが可能となったことは重要ですが、ポイントを稼いで小遣いにする、「すきま時間」を利用したビジネスの実例についてもっと具体的に紹介してもらったほうがよかったでしょう。

本書には言及はありませんが、もともと大型コンピュータの時間貸しなど、固定費比率の高いビジネスが稼働率を上げるために「すきま時間」を切り売りするビジネスは存在していました。「すきま時間」を売り側にとっては固定費がカバーでき、買う側にとっては固定費負担のない適正価格での利用が可能となるので、需要サイドと供給サイドと利害が一致するわけです。

本書に登場しないものとしては、たとえばネットアンケートのマクロミルなど。あるいはアマゾンやヤフーなどに「出店」して無店舗販売で商品を売るなども、売る側の立場からみれば「すきま時間」で顧客対応するわけですから、広い意味では「すきま時間」商売のなかに加えていいような気もします。

人間というのは、自分にとっては必要悪だが、無駄と思える時間は徹底的に短縮化したいと思う一方、自分がこだわりたいものに対しては、それを無駄とはけっして考えないという傾向があります。前者が「すきま時間」ビジネス利用の動機だとすれば、後者はいわゆる「時間消費」というやつでしょう。時間は限られているのです。モノよりコトの時代なのです。

節約できる時間は徹底的に節約する、これに対応できるのはアマゾンなどの一部の大企業に絞り込まれてくる。効率性を徹底追求できるのは、企業規模が大きく飽くなき効率追求に資本投下できる企業でなくては不可能です。しかも、大企業どうしの競争は激烈なものになります。いわゆる血で血を洗う「レッドオーシャン」です。「時間競争」の勝者は一部の大企業に集中するのは当然です。

ですが一方、「時間消費」への対応は、需要サイドの個々人のニーズが個別性が高いので基本的に一対一の対応にならざるをえませんい。したがって、個別需要に対応することのできる小回りのきく小企業や個人でもプレイヤーとして活躍できるわけです。

本書は、ビジネス書というよりも、「勤勉」に代表される「近代的な価値観」が融解していくなかで生きていかなくてはならないビジネスパーソンにとっての、生き方の方向性について語った自己啓発系(?)の内容といったほうがいいでしょう。

その主要なポイントは、いかに「時間リッチ」になるか、ということにあります。

幸福の尺度を時間とカネの二軸で考えてみると面白い。それが本書151ページに登場するマトリクスです。「時間リッチ」で「マネーリッチ」(=おカネ持ち)な人だけでなく、「時間リッチ」だが「マネープア」(=おカネがない)の人も幸福度が高いのに対し、「マネーリッチ」だが「時間プア」な人も、「マネープア」でしかも「時間プア」な人もまた幸福度が低い

おカネがなくても「時間」があれば幸せ。さらにおカネがあれば、なお幸せ。おカネもちであろうとなかろうと、時間に余裕があって、自分の好きなことに時間が使える人は幸せ度合いが高いということですね。もちろん、ここでいう「時間」とは、その本人にとっての主観的なものですから、定量的に計測できる長さの時間ではありません。

高学歴で大企業に勤務する人が多い、「マネーリッチ」だが「時間プア」な伝統的エリートは、今後ますます給与水準は下がっていくのは、著者がいうように避けられないでしょう。いくらビジネス書を読んで勉強してまじめに働いても未来はないということです。いくらビジネス書を読んで仕事の効率性はあがっても、近代「後」に必要とされるクリエイティブな能力とはほど遠いのです。遊んでいないと、よい発想は生まれてきません。

近代的な価値観が融解したあとは、公私混同、つまりワークとライフは融合して分離不能なものとなる。アイデアを生み出すには、よい意味の公私混同が必要なことは、これまでも語られてきたことえあり、わたし自身も2012年に出版した拙著『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)に書いているとおりです。

「近代」がすでに終わっている現状について、アタマで整理するために流し読みしてみるとよいでしょう。






目 次

 いま、なぜ「時間資本主義」なのか?
第1部 時間資本主義の到来
 第1章 人類に最後に残された制約条件「時間」
 第2章 時間価値の経済学
 第3章 価値連鎖の最適化から1人ひとりの時間価値の最適化へ
第2部 時間にまつわるビジネスの諸相
 第4章 時間そのものを切り売りする
 第5章 選択の時間
 第6章 移動の時間
 第7章 交換の時間
第3部 あなたの時間価値は、どのように決まるのか
 第8章 人に会う時間を作れる人、作れない人
 第9章 公私混同の時代
 第10章 時間価値と生産性の関係
第4部 時間価値を高めるために─場所・時間・未来
 第11章 時空を超えて
 第12 章 巨大都市隆盛の時代
 第13章 思い出の総和が深遠な社会へ
結局のところ、時間資本主義とはいかなる時代なのか
あとがき
参考文献 


著者プロフィール
松岡真宏(まつおか・まさひろ)
フロンティア・マネジメント代表取締役。東京大学経済学部卒業後、野村総合研究所やUBS 証券などで、流通・小売り部門の証券アナリストとして活動。UBS 証券で株式調査部長に就任後、金融再生プログラムの一環として設立された産業再生機構に入社し、カネボウやダイエーの再生計画策定を担当。両社では取締役に就任し計画実行に携わる。2007 年に弁護士の大西正一郎氏と共同で、フロンティア・マネジメント株式会社を設立し、共同代表に就任。国内外で、経営コンサルティング、M&A 助言、企業再生を軸とした経営支援を行う。著書に『小売業の最適戦略』(日本経済新聞出版社)『百貨店が復活する日』(日経BP 社)『問屋と商社が復活する日』(同)『逆説の日本企業論』(ダイヤモンド社)、『ジャッジメントイノベーション』(同、共著)がある。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



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書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう






(2012年7月3日発売の拙著です)











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2015年1月18日日曜日

深夜のマクドナルドは「社会インフラ」である!-これがほんとの「社会貢献」ではないか?


先週のことだが、都内某所にて終電を逃したので、始発電車を待つために駅前ののマクドナルドで「防寒対策」を行うこととしました。ただし、アルコールは一滴も飲んでいなかったので念のため。仕事が長引いたためです。

マクドナルドに入っての会話です。

「何時までやってますか?」
「24時間営業ですよ。でも床掃除のため、ご利用できるのはカウンター席だけです」

マニュアルどおりの対応でしょうが、深夜に働くアルバイト女子の受け答えです。こういうのはマニュアルどおりだからこそ、ありがたいのです。無理いってお願いしているわけではありませんので。
  
マクドナルドでは、もっぱらビッグマックをセットメニューを注文するわたしですが(・・年に数回、困ったことに無性にジャンクフードを食べたくなる)、今回はとりたててお腹がすいているわけではないので、支払いはミニマムに押さえたいと思い格安メニューを探してみました。
      
注文カウンターでメニューをしらみつぶしに探した結論は、「100円バーガー」+「マックカフェ」(100円)=200円也。これで深夜1時から早朝5時までの4時間を過ごすことにしました。4時間を200円、1時間あたり50円のエントリーフィー(=入場料)。この金額で寒さをしのいで、4時間滞在できるわけです。

ネットカフェやマンガ喫茶ではないので、ネットに接続したパソコンもマンガもおいてないのが残念ですが、ネットカフェよりはるかに滞在費が安い。座る席が限定されて、しかもボリュームいっぱいに音楽が流れていますが、寒さをしのげるのはじつにありがたい。
  
深夜の時間帯は、ほとんど来客がないので、アルバイトの人件費と光熱費以上の稼ぎがあるとは思えないので、けっして経営効率がいいとは思えません。とはいえ、利用客からみれば、24時間営業しているコンビニと同様、マクドナルドの店舗もまた「社会インフラ」としての機能は果たしているといっていいかもしれないですね。

雨露をしのぐ、寒さから身を守る。そのためのシェルターであり、つまるところ社会インフラであるわけですね。ある意味、企業の社会貢献になっているのかな、と。

マクドナルドの店内には、社会貢献についての姿勢がビジュアルで掲示されていますが、わたしは「深夜時間帯に店を開けている」ということ事態が、その店舗が立地しているコミュニティにとっての最大の社会貢献なのではないかと思いました。深夜も明かりがついていることは防犯対策になります。

ちなみに味はといえば、「100円バーガー」は正直いってあまりうまいとは思いませんでした。ピクルスがはさまてないので。ですが、「マックカフェ」(100円)は、味は悪くなかったです。
  
コンビニの入れたてコーヒーコーナーの普及で、いまこの国は「本格コーヒー激戦時代」となっていますが、コーヒーにかんしてはマクドナルドもイケてると感じた次第。

異物混入問題でバッシングされているマクドナルドですが、是々非々の態度で臨みたいものですね。「深夜時間帯に店を開ける」という「陰徳」を実践しているわけですから。






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原点としての 「HPウェイ」 -創業者の理念は度重なる経営者の交代でも生き続けているのだろうか?

(2015年4月20日 情報追加)



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2015年1月16日金曜日

書評 『がんばると迷惑な人』(太田肇、新潮新書、2014)-過ぎたるは及ばざるがごとし。自営業集団のプロジェクトチームに学べ!


『がんばると迷惑な人』(太田肇、新潮新書、2014)は、昨年(2014年)末に出版されたばかりの本です。
     
帯には、「合理的手抜きが成果をあげる!」とある。「手抜き」というといっけんネガティブなニュアンスを感じるかもしれませんが、それが「合理的」であるならばポジティブな響きをもってきます。「合理的手抜き」とは、要は「がんばり過ぎない」ということです。
     
日本人は、とかく「がんばり過ぎる」傾向があります。「がんばる」こと自体はよいことであり、けっして悪いことではないわけですが、とはいえ、たとえがんばっても間違った方向に突き進んでしまったのであれば、それはかえって残念な結果をもたらしてしまいますね。「がんばり」も量より質ということになります。もちろん一定量以上の「がんばり」は必要不可欠ですが。
  
著者が「がんばり過ぎない」モデルとしてあげているのは、「番組製作」や「建築」の世界。あるいは「商店街のイベント」です。
   
その心はなにかといえば、専門を異にする異質な人材が、共通のゴールに向けてまとまるチームということにあります。参加するメンバーはそれぞれ専門をもった自営業者やフリーランスが多い世界で、著者は、あるべきチームワークの姿がそこにある、としています。この指摘にはおおいに賛成です。

わたし的に言い換えれば、これらはみなプロジェクト型の仕事ということになります。プロジェクトとは始まりがあって終わりがある仕事のこと。期間限定の仕事ということですね。
   
プロジェクト開始前にチームが結成され、キックオフとともに仕事が始まり、プロジェクト完了とともにチームは解散する。そこで必要とされるのは、専門に応じたプロジェクトへの貢献と、プロジェクト・マネジメント能力です。

建設業の現場はハードウェア、番組製作の現場はソフトウェアという違いはありますが、いずれも「モノづくり」の現場であり、プロジェクトの成果物はカタチとして最終消費者から評価されることになることは共通しています。責任者からの評価もさることながら、最終的に自分たちの仕事の評価者が誰かということがわかっているわけです。
   
この本は学者が書いているので、ちょっとピントがずれているのではないかな(?)と思うことも若干はありますが、大学の研究者もまた自営業者的存在である(!)という著者の発言には納得です。その意味では説得力があるといっていいでしょう。
   
出版社の宣伝コピーにあるほど「画期的」とは思いませんが、なぜ「がんばって」もうまくいかないか悩んでいるビジネスパーソンにとっては、モチベーションを高める人事表彰制度や部下の承認欲求に応える管理術など「考えるヒント」がいっぱい詰まっている入っている本であるといってよいでしょう。
  
きょうも一日、頑張ろう! ただし、正しい方向性で。しかも、頑張り過ぎることなく。





目 次
第1章 なぜ「がんばり」が通用しなくなったのか?
第2章 「がんばる」と、なぜ迷惑になるのか?
第3章 がんばらないで成果を出す方法とは?
第4章 これからのチームワークは、どうあるべきか?

著者プロフィール
太田肇(おおた・はじめ)
1954(昭和29)年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。滋賀大学教授などを経て、現職。専門は個人を尊重する組織の研究。『個人尊重の組織論』『承認欲求』『公務員革命』『「見せかけの勤勉」の正体』など、著作多数。講演やメディアでの登場も多い。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

早死したくないなら「仕事に本気にならない」こと  養老孟司×隈研吾 日本人はどう死ぬべきか? 第5回(日経ビジネスオンライン、2015年1月9日)


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「ワークライフバランス」について正確に理解すべきこと。ワークはライフの対立概念ではない!?

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)-空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「実践経営語録」

PDCA (きょうのコトバ)

書評 『会社で心を病むということ』(松崎一葉、新潮文庫、2010 単行本初版 2007)-社員のメンタルヘルス状態が改善すれば生産性も向上する。急がば回れ!

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・

「自分の庭を耕やせ」と 18世紀フランスの啓蒙思想家ヴォルテールは言った-『カンディード』 を読む
・・「理屈をこねずに働こう。人生を耐えられるものにする手立ては、これしかありません」、「それぞれが自分の才能を発揮しはじめた・・役に立たない者はいなかった」。じつに説得力のある仕事とチームワークのあり方についてのセリフ

マンガ 『プロデューサーになりたい』(磯山晶、講談社、1995)-人気TVドラマを生み出してきた現役プロデューサーがみずから描いた仕事マンガ

『前田建設ファンタジー営業部』(前田建設工業株式会社、幻冬舎、2004)で、ゼネコンの知られざる仕事内容を知る

コンラッド『闇の奥』(Heart of Darkness)より、「仕事」について・・・そして「地獄の黙示録」、旧「ベルギー領コンゴ」(ザイール)
・・「ただ僕にはね、仕事のなかにあるもの--つまり、自分というものを発見するチャンスだな、それが好きなんだよ」(『闇の奥』の主人公のセリフ)

書評 『河合隼雄-心理療法家の誕生-』(大塚信一、トランスビュー、2009)-メイキング・オブ・河合隼雄、そして新しい時代の「岩波文化人」たち・・・

(2015年3月10日 情報追加)




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2015年1月9日金曜日

書評 『夢、死ね!-若者を殺す「自己実現」という嘘-』(中川淳一郎、星海社新書、2014)-「夢」とか「自己実現」などという空疎なコトバをクチにするのはやめることだ



明けましておめでとうございます。ことしもよろしくお願いします。

と書きましたが、すでに本日は2015年1月9日(金)。もうすでにお正月も終わってますね。まだ「お正月気分」が消えない人はいませんか? そんな人は、この本でも読んでみるといいでしょう。
 
『夢、死ね!-若者を殺す「自己実現」という嘘-』(中川淳一郎、星海社新書、2014)。著者は、広告代理店の世界では業界ナンバー2の博報堂を4年で辞めた、フリーのネットニュース編集者。
 
内容はこのタイトルに尽きるといっていいでしょう。

仕事は「ほめられたい」といったポジティブなものよりも、「怒られるのがイヤ」だからするものだというのは、かなり本質的なポイントを突いていると思います。

部下は上司から怒られるのがイヤ、営業担当者はクライアントから怒られるのがイヤ・・・。まったくその通りだな、と納得。別の言い方をすれば「後ろ指を指されない」こと。なんといっても、顧客からクレームがつくことは避けたいと思うのは人間の自然な感情でしょう。これは組織を離れたフリーランスでも同じことですね。
 
まともに組織人として働いた経験のあるオトナなら、大いにうなづける内容だと思います。なんといっても内容は面白い。ただし、著者は「個」を殺せとは一言もいってません。「組織」とは、「会社」とはそんなものだ、と言っているだけです。冷めた認識といってよいでしょう。


   
「夢」とか「自己実現」などという空疎なコトバをクチにするのはやめること。まったく同感です。仕事で「夢」をもつこと自体を否定するわけではありませんが、非現実的な「夢」は考え物です。

仕事は「プレイ」であると考えれば、ワーク・ライフ・アンバランスでいいという考えも同感します。
  
臨床心理学者の河合隼雄氏も、「自己実現」なんて、ほとんどの人ができないことだ、とつねづね語っていました。マズローがつかって有名になったコトバですが、マズロー自身もおなじようにいってます。日本では自己実現というコトバは安易に使い過ぎなのです。
    
「夢」は「夢」のまままでは実現しない、「目標」に落とし込まなくては実現するはずがないというのは、ある意味ではまっとうな主張です。

また突出した人物になってしまえば、組織で働くことほど楽しいものはないというのも同感です。
  
えげつないタイトルで、中身も身も蓋もない内容だと思われるかもしれません。まったくその通りだといっていいでしょう。ポジティブ系ではなく、ネガティブ系のような印象もありますが、タテマエではなくホンネのみで語った内容は、つまらない自己啓発書よりはるかにに面白い。
 
読んで損はないと思いますよ。経験あるオトナが若者に読ませて目を覚まさせてあげるべき本だといっていいかもしれません。





目 次

はじめに
第1章 【夢、死ね】
第2章 【あまりにトホホな仕事の現場】
第3章 【個人を潰して事なかれ主義に走る、 絶望的な仕事の現場】
第4章 【仕事はかくも尊く、人生を左右する】


著者プロフィール

中川 淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
ライター、編集者、PRプランナー 1973年生まれ。東京都立川市出身。一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターになり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、当時主流だったネット礼賛主義を真っ向から否定しベストセラーとなった『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)などがある。割りと頻繁に物議を醸す、歯に衣着せぬ物言いに定評がある。口癖は「うんこ食ってろ!」。ビール党で、水以上の頻度でサッポロ黒ラベルを飲む。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

早死したくないなら「仕事に本気にならない」こと  養老孟司×隈研吾 日本人はどう死ぬべきか? 第5回(日経ビジネスオンライン、2015年1月9日)


<ブログ内関連記事>

キング牧師の "I have a dream"(わたしには夢がある)から50年-ビジョンをコトバで語るということ
・・政治的指導者や経営者には夢は必要だろうが、あまり非現実でも現実的すぎてもビジョンとしては不適切だ

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書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)-空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「実践経営語録」

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