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2015年1月20日火曜日

書評 『時間資本主義の到来-あなたの時間価値はどこまで高められるか?-』(松岡真宏、草思社、2014)-近代的価値観が融解するなか、幸福度の高い「時間リッチ」な人になるためのヒント


「時間資本主義」というと大げさなタイトルだが、「時間価値」といえばピンとくるかもしれません。あるいは、「カネ」ではなく「時間」そのものが「資本」となる、という意味の「時間資本」なら理解できなくはないでしょう。「主義」は余計です。

この本にはとりたてて目新しいことが書いているわけではありません。議論に生煮えの点が目立ちますし、本論とは関連性の薄い教養ひけらかし的な側面も余計だと感じられます。とはいえ、アタマの整理には役立つ本だといえます。

本書のキモは、「すきま時間」×「スマホ」=時空ビジネス という一行に尽きるといっていいかもしれない。

スマホの普及で「すきま時間」や「細切れ時間」の切り売りが可能となったことは重要ですが、ポイントを稼いで小遣いにする、「すきま時間」を利用したビジネスの実例についてもっと具体的に紹介してもらったほうがよかったでしょう。

本書には言及はありませんが、もともと大型コンピュータの時間貸しなど、固定費比率の高いビジネスが稼働率を上げるために「すきま時間」を切り売りするビジネスは存在していました。「すきま時間」を売り側にとっては固定費がカバーでき、買う側にとっては固定費負担のない適正価格での利用が可能となるので、需要サイドと供給サイドと利害が一致するわけです。

本書に登場しないものとしては、たとえばネットアンケートのマクロミルなど。あるいはアマゾンやヤフーなどに「出店」して無店舗販売で商品を売るなども、売る側の立場からみれば「すきま時間」で顧客対応するわけですから、広い意味では「すきま時間」商売のなかに加えていいような気もします。

人間というのは、自分にとっては必要悪だが、無駄と思える時間は徹底的に短縮化したいと思う一方、自分がこだわりたいものに対しては、それを無駄とはけっして考えないという傾向があります。前者が「すきま時間」ビジネス利用の動機だとすれば、後者はいわゆる「時間消費」というやつでしょう。時間は限られているのです。モノよりコトの時代なのです。

節約できる時間は徹底的に節約する、これに対応できるのはアマゾンなどの一部の大企業に絞り込まれてくる。効率性を徹底追求できるのは、企業規模が大きく飽くなき効率追求に資本投下できる企業でなくては不可能です。しかも、大企業どうしの競争は激烈なものになります。いわゆる血で血を洗う「レッドオーシャン」です。「時間競争」の勝者は一部の大企業に集中するのは当然です。

ですが一方、「時間消費」への対応は、需要サイドの個々人のニーズが個別性が高いので基本的に一対一の対応にならざるをえませんい。したがって、個別需要に対応することのできる小回りのきく小企業や個人でもプレイヤーとして活躍できるわけです。

本書は、ビジネス書というよりも、「勤勉」に代表される「近代的な価値観」が融解していくなかで生きていかなくてはならないビジネスパーソンにとっての、生き方の方向性について語った自己啓発系(?)の内容といったほうがいいでしょう。

その主要なポイントは、いかに「時間リッチ」になるか、ということにあります。

幸福の尺度を時間とカネの二軸で考えてみると面白い。それが本書151ページに登場するマトリクスです。「時間リッチ」で「マネーリッチ」(=おカネ持ち)な人だけでなく、「時間リッチ」だが「マネープア」(=おカネがない)の人も幸福度が高いのに対し、「マネーリッチ」だが「時間プア」な人も、「マネープア」でしかも「時間プア」な人もまた幸福度が低い

おカネがなくても「時間」があれば幸せ。さらにおカネがあれば、なお幸せ。おカネもちであろうとなかろうと、時間に余裕があって、自分の好きなことに時間が使える人は幸せ度合いが高いということですね。もちろん、ここでいう「時間」とは、その本人にとっての主観的なものですから、定量的に計測できる長さの時間ではありません。

高学歴で大企業に勤務する人が多い、「マネーリッチ」だが「時間プア」な伝統的エリートは、今後ますます給与水準は下がっていくのは、著者がいうように避けられないでしょう。いくらビジネス書を読んで勉強してまじめに働いても未来はないということです。いくらビジネス書を読んで仕事の効率性はあがっても、近代「後」に必要とされるクリエイティブな能力とはほど遠いのです。遊んでいないと、よい発想は生まれてきません。

近代的な価値観が融解したあとは、公私混同、つまりワークとライフは融合して分離不能なものとなる。アイデアを生み出すには、よい意味の公私混同が必要なことは、これまでも語られてきたことえあり、わたし自身も2012年に出版した拙著『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)に書いているとおりです。

「近代」がすでに終わっている現状について、アタマで整理するために流し読みしてみるとよいでしょう。






目 次

 いま、なぜ「時間資本主義」なのか?
第1部 時間資本主義の到来
 第1章 人類に最後に残された制約条件「時間」
 第2章 時間価値の経済学
 第3章 価値連鎖の最適化から1人ひとりの時間価値の最適化へ
第2部 時間にまつわるビジネスの諸相
 第4章 時間そのものを切り売りする
 第5章 選択の時間
 第6章 移動の時間
 第7章 交換の時間
第3部 あなたの時間価値は、どのように決まるのか
 第8章 人に会う時間を作れる人、作れない人
 第9章 公私混同の時代
 第10章 時間価値と生産性の関係
第4部 時間価値を高めるために─場所・時間・未来
 第11章 時空を超えて
 第12 章 巨大都市隆盛の時代
 第13章 思い出の総和が深遠な社会へ
結局のところ、時間資本主義とはいかなる時代なのか
あとがき
参考文献 


著者プロフィール
松岡真宏(まつおか・まさひろ)
フロンティア・マネジメント代表取締役。東京大学経済学部卒業後、野村総合研究所やUBS 証券などで、流通・小売り部門の証券アナリストとして活動。UBS 証券で株式調査部長に就任後、金融再生プログラムの一環として設立された産業再生機構に入社し、カネボウやダイエーの再生計画策定を担当。両社では取締役に就任し計画実行に携わる。2007 年に弁護士の大西正一郎氏と共同で、フロンティア・マネジメント株式会社を設立し、共同代表に就任。国内外で、経営コンサルティング、M&A 助言、企業再生を軸とした経営支援を行う。著書に『小売業の最適戦略』(日本経済新聞出版社)『百貨店が復活する日』(日経BP 社)『問屋と商社が復活する日』(同)『逆説の日本企業論』(ダイヤモンド社)、『ジャッジメントイノベーション』(同、共著)がある。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



<ブログ内関連記記事>

「ワークライフバランス」について正確に理解すべきこと。ワークはライフの対立概念ではない!?

書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう






(2012年7月3日発売の拙著です)











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2013年11月15日金曜日

書評 『道なき道を行け』(藤田浩之、小学館、2013)-アメリカで「仁義と理念」で研究開発型製造業を経営する骨太の経営者からの熱いメッセージ


こんな「骨太の日本人」がいたとはまったく知りませんでした。なんと、大統領の「一般教書演説」に日本人では初めて招待され、2013年春には商務省評議員に選出ている日本人。

その人の名は藤田浩之氏。アメリカのクリーブランドでハイテク製造業を起業し、現地で雇用をつくりだし、輸出企業としてアメリカの製造業復活に貢献している47歳の物理学者で企業経営者です。

その会社の名は QED(クオリティ・エレクトロダイナミクス)、物理学で博士号を取得した藤田氏は量子電磁力学の QED(クオンタム・エレクトロダイナミクス)から取ったそうです。事業内容は、電磁気を利用して身体の画像診断を行うMRI(核磁気共鳴画像法)のキーデバイスを製造販売する研究開発型企業

著者とこの本のことは、JBプレスのインタビュー記事ではじめて知りました。「オバマ大統領に米国の未来を託された日本人 東大に2度落ち早稲田をやめたことでチャンスをつかむ」はぜひ読んでみてください。

藤田氏もまた京セラの創業者・稲盛和夫氏の「稲盛哲学」の実践者です。アメリカでもアメリカ流のMBA経営ではなく、稲盛哲学に基づいた理念経営を実践しています。

多民族国家のアメリカでも、日本発の稲盛流の理念経営が十分に通用することを自ら実践して示しているわけです。

藤田氏は、経営は「仁義と理念」でするものだと本書のなかで語っています。古臭く感じる「仁義」ですが、このキーワードは渡米して20年以上たつ藤田氏にとっては、ゆるぎない信念を生み出す源泉のようです。人の道を外してはならない、ということですね。

カネ儲けのための起業ではなく、人のために役に立ちたいという思いからの起業だということは、本書で何度も強調しています。アメリカでは当たり前のカネ儲けが目的の起業には大いに違和感を感じるのだ、と。

藤田氏は、博士号取得後に勤務した研究開発型企業が世界的大企業の GE に買収された結果、GEで働いたという経験をもっています。

極限までビジネスパーソンとしての「スケールアップ」を求められるGEで働いた経験は、みずからの成長のうえできわめて貴重なものがあったと語る一方で、重要な技術が一企業内に囲い込まれてしまうのは産業全体のためによくないという思いが起業の動機であったと語っています。

価値観重視の経営によって世界中でモデルとされることの多い GE ですが、すばらしい価値観であても、かならずしも内部の人間がすべて愚直に実践しているわけではないことを藤田氏は見抜いています。

「コミュニケーション重視!」とクチにしながら、個室にこもってしまう言行不一致のマネージャーが登場しますが、GEですら実際は大企業病の症状を示しているわけですね。このことが「他山の石」として著者の胸に刻み込まれて箇所は、ひじょうにつよい印象を受けます。

「価値観重視の経営」としてアメリカの GE流 と日本の稲盛流の二つを熟知する藤田氏の発言には耳を傾ける価値があります。日米の共通点、相違点について考える材料を与えてくれるからです。

その「稲盛哲学」もそのまま鵜呑みにするのではなく、藤田氏は自分なりに咀嚼したものを実践しているとのことです。基本原理という「軸」がブレていなければ、現実に合わせて応用するのは当然といえば当然です。

「自分のアタマで考え、自分で行動する」という「自律人」そのものですね。稲盛氏自身も材料工学のバックグラウンドをもったエンジニアですから、アメリカの大学で物理学で博士号を取得した科学者でもある藤田氏には共通するものも多いのでしょう。

アメリカ人のメンターとの交流から学んだ地域貢献、社会貢献の話も、読者として大いに学ぶべきものがあると感じます。人はなんのために生かされているのか、なんのための事業経営なのか、経営者はつねに考えていなければならないからです。

本書は、基本的に若い日本人に向けて書かれた熱いメッセージですが、アメリカにおける企業経営、とくにハイテク製造業の経営について知ることのできる本として読むこともできます。そこから学ぶことのできるヒントも多くあります。

カバーには Pathfinder という英語が記されてますが、パスファインダーとは直訳すれば「道を探す人」。まさに「道を切り拓く人」としての使命感に満ち満ちた藤田氏の生きざまは、若い人ではなくとも大いにインスパイアされるものがあると思います。

経営者のみならず、一人でも多くのビジネスパーソンに読んでいただきたい本です。




目 次

序章 一般教書演説への招待状
第1章 ずれたドット
第2章 アメリカ生活
第3章 QED誕生
第4章 社員の意識改革
第5章 二人のメンター
第6章 私のアメリカ、私のクリーブランド
第7章 日本よ、日本人よ
終章 生まれてきた証

著者プロフィール

藤田浩之(ふじた・ひろゆき)
1966年、奈良県生まれ。1998年、米国ケース・ウエスタン・リザーブ大学(CWRU)物理学博士課程修了。物理学博士。GEを退社後、2006年、医療機器開発製造会社クオリティー・エレクトロダイナミクス(QED)を設立、社長兼最高経営責任者。現在、非常勤でCWRU物理学部教授、医学部放射線学科教授、オーストラリアのクイーンズランド大学情報技術電気工学部教授を兼任。主な受賞に、2009年、フォーブス「米国で最も有望な新興企業20社」(11位にランクイン)、2010年、アーネスト・ヤング起業家大賞、2011年、米国政府から研究技術助成金を受け事業を大きく成長させた企業に贈られるチベット国家賞などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。

<関連サイト>

「オバマ大統領に米国の未来を託された日本人 東大に2度落ち早稲田をやめたことでチャンスをつかむ」 (JBプレス 2013年11月17日)


<ブログ内関連記事>

Where there's a Will, there's a Way. 意思あるところ道あり

書評 『俺のイタリアン、俺のフレンチ-ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方-』(坂本孝、商業界、2013)-ビジネスモデル×哲学(理念)を参入障壁にブルーオーシャンをつくりだす
・・「稲盛哲学」の実践者による新ビジネス成功までの軌跡

書評 『全員で稼ぐ組織-JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書-』(森田直行、日経BP、2014)-世界に広がり始めた「日本発の経営管理システム」を仕組みを確立した本人が解説
・・稲盛哲学と経営管理の仕組みが合体した「アメーバ経営」とは?

『週刊ダイヤモンド』の「特集 稲盛経営解剖」(2013年6月22日号)-これは要保存版の濃い内容の特集

書評 『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる-自分、人、会社-全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィー』(原 英次郎、ダイヤモンド社、2013)-メンバーの一人ひとりが「当事者意識」を持つことができれば組織は変わる

グンゼ株式会社の創業者・波多野鶴吉について-キリスト教の理念によって創業したソーシャル・ビジネスがその原点にあった!

原点としての 「HPウェイ」 -創業者の理念は度重なる経営者の交代でも生き続けているのだろうか?

TIME誌の特集記事 「メイド・イン・USA」(2013年4月11日)-アメリカでは製造業が復活してきた

(2014年6月12日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です 電子書籍版も発売中!)





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2011年9月27日火曜日

「個人と組織」の関係-「西欧型個人主義」 ではない 「アジア型個人主義」 をまずは理解することが重要!


 「日経ビジネスオンライン」に「3・11以降「自分の生活は自分で守る」が78%-日経ビジネスオンライン読者2167人が答える-」という記事がアップされています。

 内容は、「日経ビジネスオンライン」の読者へのアンケート調査結果です。


 一部を抜粋して見てみましょう。

- 66.4%が「国や政治は頼りにならない」を選択
- 24.4%、つまり4人に1人が「会社など組織に頼らない生き方について考えるようになった」

 基本的に「日経ビジネスオンライン」の読者は、知的レベルが高く、向上意欲も比較的高い人が多いと思います。

 ですから、「国や政治は頼りにならない」と思う人が増えたのは当然でしょう。これは「日経ビジネスオンライン」の読者とは想定されていない、小さな子どもをもつ母親たちのほうが高い数字がでるかもしれません。

 「会社など組織に頼らない生き方について考えるようになった」。意外に高い数値がでたと記事の筆者は感想をもらしています。そうかもしれません。

 しかし、わたしからみれば、ようやくこれで日本人も目覚めてきたか(!)という感想をもちます。

 というのは、これは、日本以外ではじつはアジアでは当たり前のことなのです。「国や政治は頼りにならない」、「会社など組織に頼らない」のは当たり前なのです。

 とかく日本人は、欧米は個人主義だ!という固定観念に基づく「常識」を振り回しがちですが、中国やインドはもちろんのこと、タイでもベトナムでも基本的に個人主義が当たり前です。

 もちろん、個人主義者の中国人には中国人なりの人間関係の仕組みがありますし、インド人もまた同様です。仏教徒のタイ人すら個人主義です。個人主義と家族主義が両立しているのです。

 重要なのは、個人が中心でそのまわりに家族があるのが基本中の基本ということです。そしてそのまわりに一族がある。つまり、まずは「個人があって、組織がある」という考えが当たり前なのです。図式的にいえば、「個人(≑家族)>組織」という不等式の関係ですね。

 日本人のように、「個人よりも組織」という心情は生まれようもないというのが当たり前なのです。ですから、欧米とは異なる意味の個人主義なのですが、組織との関係でいえば個人主義であることにはかわりありませんん。

 あくまでも自分が主体、そのうえで自己実現を組織で図っていくというのが、「個人と組織」のいい関係なのではないでしょうか? ようやく日本人もこの方向に進みつつあるのかと思うと、わたしとしては感慨深く思うものがあるのです。

 ただし、誤解してほしくないのは、「個人主義=利己主義」ではない(!)ということです。あくまでも「自分」が主体として考え、行動する人間が世界標準だといいたいのです。

 日本的な美質は保持しながらも、日本は世界のなかでは非常識なのだ、ということしかとアタマのなかにたたき込んでおいていただきたいと思います。

 これが、日本以外の国で成功するための最低条件であり、その経験をまた日本にフィードバックして、自らの「個人と組織の関係」を見直してほしいと思うのです。



<ブログ内関連記事>

■中国人の「個人主義」

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!-中国人の「個人主義」について考えてみる
・・さらに加えて、孫文の『三民主義』や『小室直樹の中国論』をてがかりに中国人の個人主義について考えてみる

書評 『中国市場で成功する人材マネジメント-広汽ホンダとカネボウ化粧品中国に学ぶ -』(町田秀樹、ダイヤモンド社、2010)-グローバル・マネジメントにおける人材マネジメントについて

「修身斉家治国平天下」(礼記) と 「知彼知己者百戦不殆」(孫子)-「自分」を軸に据えて思考し行動するということ

■インド人の「個人主義」

書評 『巨象インドの憂鬱-赤の回廊と宗教テロル-』(武藤友治、出帆新社、2010)


モンゴル人の「個人主義」

書評 『朝青龍はなぜ強いのか?-日本人のためのモンゴル学-』(宮脇淳子、WAC、2008)-モンゴルという日本人にとっての「異文化」を知る上で、信頼できる手頃な入門書


■タイ人の個人主義

タイのあれこれ (20) BITECという展示会場-タイ人の行動パターンと仕事ぶりについて
・・タイ人もまた「個人主義」

今年も参加した「ウェーサーカ祭・釈尊祝祭日 2010」-アジアの上座仏教圏で仕事をする人は・・

「3-11」後の個人の価値観の変化に組織は対応できていますか?-個人には「組織からの退出」というオプションもある




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2011年9月12日月曜日

「3-11」後の個人の価値観の変化に組織は対応できていますか?-個人には「組織からの退出」というオプションもある


 女性誌 『CREA』 の女性向け総合メディアサイト CREA Web に「300人緊急アンケート! 3.11以後の価値観3.11でアナタの人生への価値観はどう変わった?」というアンケートの結果が掲載されています。

 アンケート対象は、この雑誌の読者層である20歳台と30歳台の女性が中心です。
 設問は以下の二つです。

Q1 仕事に対する考え方は変わりましたか?
Q2 震災がきっかけで転職を考えましたか?


 設問の答えは、 「300人緊急アンケート! 3.11以後の価値観3.11でアナタの人生への価値観はどう変わった?」を直接ごらんいただきたいと思いますが、「仕事に対する考え方」の変化が、「転職」を実行したり、じっさいに転職を検討したりしていることにつながっていることが読み取れます。

 「3-11」によって、個人の消費意識と行動が変化していることは、比較的多く指摘されているので目にすることもあるかと思いますが、タイムラグをおいて「働き方の意識」に変化が生じていることにも注意を払わなくてはなりません。

 ひと言でいえば、「3-11」の前後で個人の価値観に大きな変化が生じているのです。男性にくらべて感受性の強い女性の意識の変化は、先行指標として注目する必要があるでしょう。

 個人の価値観(バリュー)の変化は、当然のことながら組織の価値観にも影響を及ぼします。個人が組織に影響を及ぼす選択肢(オプション)は大きく分けて2つあります。経済学者のアルバート・ハーシュマンによる有名な分類です。

 まずは、Voice(=声)。組織内での異議申し立てです。意見をいって組織内改善を志向するものです。つぎに Exit(=退出)組織からの退出です。つまり転職ですね。
 
 上記のアンケート結果からも、この2つのオプションを読み取ることができると思います。

 どんなポジションに就いているのであれ、組織のマネジメントにたずさわる人は、「3-11」後の個人の価値観(バリュー)の変化には敏感であってほしいと思います。

 組織としてゆずれない原理原則がミッションやバリューとしては存在しても、時代の変化を敏感に感じ取り、組織の価値観を微調整していくことも必要なのです。

 そうでないと、貴重な人材を失うことにもつながりかねませんし、顧客からも見放されることにもなりかねません。

 「3-11」によって個人の価値観は大きく変化しているのです。あらためてこの事実を強調しておきたいと思います。





<関連サイト>

「300人緊急アンケート! 3.11以後の価値観3.11でアナタの人生への価値観はどう変わった?」|CREA WEB(クレア ウェブ 多くの人々の価値観を変えた、今回の震災。仕事、恋愛、そして人生。みんなの思いを緊急アンケート!)




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2011年8月3日水曜日

書評 『クルマを売りたいなら、クルマの話はやめなさい!』(高塚苑美、すばる舎、2011)-時代のキーワードは「共感」


時代のキーワードは「共感」。「価値観の共有」が信頼関係をつくり、お客様の財布を開かせることにもなる

 「成約率8割超 トップセールスウーマンの営業スタイル」と表紙に書かれています。

 イタリアの高級車アルファ・ロメオのトップディーラーである著者によって、女性のセールスパーソン向けに書かれた本ですが、男性が読んでも、いろいろと反省させられることも多いことに気がつかされます。

 大事なのは、タイトルそのものズバリ。自分が売りたい商品の話をしていては、モノやサービスは売れませんよ!ということですね。もちろん、商品説明は重要ですが、お客様の目線にたって、相手の「共感」を引き出さないとココロはつかめないということ。

 商品知識以外に、お客様が「共感」できる「共感ポイント」を「引き出し」として自分のなかに蓄えておくことが大事です。しかもその「引き出し」は、適切なときに、適切なしかたで出すことのできる能力が求められるということでしょう。

 「共感」というものは、たんなる感情の問題ではなく、人間関係をつくるためのマインドセットにかかわるものです。良好な人間関係をつくって、お客様の財布を開いてもらうためには、「共感ポイント」を見つけて、「価値観を共有」することです。それが「共感」を信頼関係にまでたかめる重要なことですね。

 自分をもっと出す、自分の体験をコトバにすること、「対話」に質問形式を入れるなど、やんわりと客様のホンネを引き出すための、具体的なスキルやテクニックが惜しげもなく語られています。

 「共感」がキーワードとなる時代ですが、男性の場合は、どうしても専門の話をオタク的にしがちな傾向があるのは否定できないと思います。

 本書でも、クルマが好きで仕方ないという男性がクルマのセールスの仕事についても、かならずしも成功しないという実例がでています。

 「好きこそものの上手なれ」というのは趣味の世界にはあてはまっても、結果を出すことが求められる仕事では、かならずしも通用しないのかもしれません。

 この本は、人間力とかそういう難しい話ではなく、相手からしてもらったらうれしい小さなことを積み重ねていくことが、信頼関係をつくりあげるうえでいかに大切かという、生きるうえで大切なことを気づかせてくれる本でもあります。

 「女性ならではの視点」といってしまうと、それで終わりになってしまいます。読者対象となっている女性セールスパーソンはもちろんのこと、男性もまたさりげない風を装って、本書から貪欲に吸収してみたらいかがでしょうか? 

 B2C(=一般消費者むけの消費財)販売に限らず、B2B(=法人向けビジネス)でも、基本はセールスパーソンとお客様との、人と人との関係です。さまざななセールシーンに応用可能な、対話スキルとマインドセットが書き込まれた一冊になっています。

 おすすめの一冊です。




目 次

はじめに
1章 売りたいなら、商品説明はNGです!-求められているのは「知識」じゃなく「共感」
2章 セールスポイントの代わりに、こんなアプローチ!-商品説明がなくても魅力は120%伝わります
3章 「どんなモノをお探しですか?」は、もうやめましょう!-“やんわり”とホンネを引き出す質問のコツ
4章 これだけで「お客様との関係」は180度変わる!-「ちょっとしたこと」が、距離をグッと縮める
5章 あなたの「見た目」も立派な商品です!-セールスパーソンは商品の広告塔
おわりに


著者プロフィール

高塚苑美(たかつか・そのみ)

1977年静岡県浜松市生まれ。フィアット・アルファロメオ浜松マネージャー。1999年同志社大学経済学部卒業後、単身ニュージーランドへ。2000年の帰国直前、数ヶ月のアルバイト気分で父の会社に入社。小さなフランス車ディーラーで「お留守番」を始める。半年後、月に10台販売したのをきっかけに、本格的にセールスを始める。以後、無名だった店舗の販売を立て直し、優秀ディーラー賞3年連続受賞を達成。2006年フィアット・アルファロメオ浜松へ配属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

アルファロメオ オフィシャルサイト (日本語)


<ブログ内関連記事>

The Greatest Salesman In the World (『地上最強の商人』) -英語の原書をさがしてよむとアタマを使った節約になる!

【アタマの引き出し】のつくりかたワークショップ (2011年7月5日 19時 東京八重洲) を開催しました






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2011年4月3日日曜日

ダチョウ症候群 (きょうのコトバ)



 「ダチョウ症候群」というコトバ知ってますか?

 「ダチョウ症候群」(オストリッチ・シンドローム:ostrich syndrome)は、空を飛べないダチョウが、 危険が近づいてくるとアタマを砂に突っ込み、何も見ないで危険が通り過ぎるのを待つことから来たものです。

 図体の大きなダチョウのことですから、端から見ると日本語でいう「アタマ隠して、シリ隠さず」という、実に滑稽(こっけい)な無様な姿をさらしているのですが、当の本人はまったくそれに気づいていない。

 「ダチョウ症候群」は、日本ではあまり使われない表現ですが、日本人得意の「見えていても、見ていない振りをする」という行為にそっくりですね。

 もしかして、今回の「大地震」と「大津波」と「原発事故」の激甚災害を、一過性の事件だと思って、やり過ごせばいいと思っている方がいるかもしれませんか?

 すでに3週間前からここで書いていますが、今回の「非常時」は一過性のものではありません。第二次大戦での「敗戦」以来の「国難」です。

 認めようが認めまいが、「3-11」以後の世の中は、価値観も含めてすべてがひっくり返ったのです。とても、「3-11」以前では当たり前であった、これまでのような「やり過ごし」ではとても対応できないような性格をもっていることに、一刻も早く気がつかなければなりません。

 日々のオペレーションを着実にこなすことは当然のこととして、万難を排してでも考える時間を作って、「何がどう変わったのか」、「何が変わってはいけないのか」、じっくり考えてみてほしいと思います。




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