「日経ビジネスオンライン」に「3・11以降「自分の生活は自分で守る」が78%-日経ビジネスオンライン読者2167人が答える-」という記事がアップされています。
内容は、「日経ビジネスオンライン」の読者へのアンケート調査結果です。
一部を抜粋して見てみましょう。
- 66.4%が「国や政治は頼りにならない」を選択
- 24.4%、つまり4人に1人が「会社など組織に頼らない生き方について考えるようになった」
基本的に「日経ビジネスオンライン」の読者は、知的レベルが高く、向上意欲も比較的高い人が多いと思います。
ですから、「国や政治は頼りにならない」と思う人が増えたのは当然でしょう。これは「日経ビジネスオンライン」の読者とは想定されていない、小さな子どもをもつ母親たちのほうが高い数字がでるかもしれません。
「会社など組織に頼らない生き方について考えるようになった」。意外に高い数値がでたと記事の筆者は感想をもらしています。そうかもしれません。
しかし、わたしからみれば、ようやくこれで日本人も目覚めてきたか(!)という感想をもちます。
というのは、これは、日本以外ではじつはアジアでは当たり前のことなのです。「国や政治は頼りにならない」、「会社など組織に頼らない」のは当たり前なのです。
とかく日本人は、欧米は個人主義だ!という固定観念に基づく「常識」を振り回しがちですが、中国やインドはもちろんのこと、タイでもベトナムでも基本的に個人主義が当たり前です。
もちろん、個人主義者の中国人には中国人なりの人間関係の仕組みがありますし、インド人もまた同様です。仏教徒のタイ人すら個人主義です。個人主義と家族主義が両立しているのです。
重要なのは、個人が中心でそのまわりに家族があるのが基本中の基本ということです。そしてそのまわりに一族がある。つまり、まずは「個人があって、組織がある」という考えが当たり前なのです。図式的にいえば、「個人(≑家族)>組織」という不等式の関係ですね。
日本人のように、「個人よりも組織」という心情は生まれようもないというのが当たり前なのです。ですから、欧米とは異なる意味の個人主義なのですが、組織との関係でいえば個人主義であることにはかわりありませんん。
あくまでも自分が主体、そのうえで自己実現を組織で図っていくというのが、「個人と組織」のいい関係なのではないでしょうか? ようやく日本人もこの方向に進みつつあるのかと思うと、わたしとしては感慨深く思うものがあるのです。
ただし、誤解してほしくないのは、「個人主義=利己主義」ではない(!)ということです。あくまでも「自分」が主体として考え、行動する人間が世界標準だといいたいのです。
日本的な美質は保持しながらも、日本は世界のなかでは非常識なのだ、ということしかとアタマのなかにたたき込んでおいていただきたいと思います。
これが、日本以外の国で成功するための最低条件であり、その経験をまた日本にフィードバックして、自らの「個人と組織の関係」を見直してほしいと思うのです。
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