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2011年9月20日火曜日

グンゼ株式会社の創業者・波多野鶴吉について-キリスト教の理念によって創業したソーシャル・ビジネスがその原点にあった!



 グンゼ株式会社は、大阪に本社をおく男性用肌着・インナーを主とする日本の繊維メーカーです。一部上場(東証と大証)のファッションメーカーといってもいいでしょう。

 グンゼ株式会社は、もともと郡是製絲株式会社として1896年(明治29年)に創業された会社です。グンゼ株式会社の社史によれば、創業者・波多野鶴吉(1858~1918)が地域産業振興を目的に京都府何鹿郡(現京都府綾部市)に設立した会社です。余談ですが、わたしの生まれた京都府舞鶴市にも近いので親近感を感じます。

 「群是」(ぐんぜ)とは、国に「国是」があるように、現在の綾部市を含んでいた群にも「群是」があるべきだという考えでつけられた社名のようです。国是が、国民の支持をえた国の長期政策の方向性のことであれば、群是とは、群の住民の支持をえた群の長期政策の方向性ということになりますね。

 明治時代の主要産業であった繊維業の分野で地域産業を振興し、地域を活性化しようというのが、その最大の目的であったのですね。ですから、最初から現在でいうソーシャル・ビジネス的な要素のきわめて強い性格をもっていたといっていいでしょう。

 こういう出発点の考えから、一部を除いて株式は地域の人たちに幅広くもってもらったそうです。その結果、10株以下の株主が95%を占めていたため、株式実務がたいへんだという批判もあったそうですが、波多野鶴吉は、大株主によって経営の方向がゆがめられないように、最初から株式を分散したそうです。

 また、創業当初から量より質を重んじ、顧客に対する親切第一主義を徹底したといいます。

 波多野鶴吉は、キリスト教の理念で会社経営を行った経営者です。この意味において、鐘紡(=現在のカネボウ)の武藤山治や倉敷紡績(=現在のクラボウ)の大原孫三郎ほど有名ではありませんが、もっと知られてしかるべき存在かもしれません。

 会社設立の6年前からすでに京都の同志社の伝道でキリスト教徒となっていた波多野鶴吉は、会社設立時点からキリスト教の理念にもとづいた工場経営を行っており、職工の教育にはひじょうに重点を置いており、その他の紡績工場とはまったく異なるものであったようです。

 明治42年(1909年)には、従業員の増加にともなって教育の強化する必要をつよく感じ、東京で独立伝道をしていた川合信水(かわい・しんすい)牧師を職工教師として招聘しました。川合信水(1867~1962)は、日本型キリスト教の教団である基督心宗教団を立ち上げた牧師です。「肥田式強健術」で知られる肥田春充の実兄でもあります。

 招聘(しょうへい)されてはじめて面談したとき、川合信水は波多野鶴吉にこう言ったそうです。

 「職工を善くしたいと思うなら、先ずあなたご自身がよくならなければなりません」

 まずはトップダウンで、「塊より始めよ」というこいとですね。

 その結果、波多野鶴吉は教育部長として着任した川合信水の教えを受け、自己の修養に努めたのですね。まずは「塊より始めよ」という教えは、企業経営が経営者によって大きく左右されるものを如実に示していえましょう。

 川合信水の教えを忠実に遂行した結果、会社は社長以下すべての従業員の修養団体のようになっていたそうですが、「女子寮」というコトバと実体をつくったのも波多野鶴吉が初めてのようです。

 起業から一年目はたいへんな苦労があったようですが、その後は軌道に乗り、「模範工場」としても知られていた郡是製絲株式会社は、企業成績も良好でありました。

 かの有名な 『女工哀史』(細井和喜蔵、岩波文庫、1954 改版 1980)が、最初に単行本として改造社から出版されたのが 1925年(大正14年)のことですから、波多野鶴吉のキリスト教理念を徹底した工場経営が、いかに時代をはるか先にいくものであったかが理解できるでしょう。

 波多野鶴吉の「模範工場」は、同じく紡績工場を舞台にした『あゝ野麦峠-ある製糸工女哀史-』(山本茂実、角川文庫、1977)が描いた時代よりもあとの時代になります。

 第一次世界大戦が起こった大正3年(1914年)には会社の状況が苦境に陥ったにもかかわらずが、教育部の縮小は絶対に行わなかったそうです。「人間尊重」という理念が絵に描いたものではなく、生きた理念として完全に浸透していたためでありました。

 この苦境を乗り切ったあと、大正4年(1915年)川合信水牧師(=教育部長)が作成した「至誠訓」を社訓としました。だいぶ時代がかったものですが、一部を紹介しておきましょう。

「誠」ヲ一貫シテ
「完全ノ天道」ヲ尊崇シ常ニ謙(へりくだ)リテ
一. 完全ノ信仰ヲ養ヒ
二. 完全ノ人格ヲ修メ
三. 完全ノ勤労ヲ尽シ
四. 完全ノ貢献ヲ為スコトヲ祈願シ実行ス

 この「社訓」に、キリスト教の理念による会社経営と従業員教育が軌道に乗ったと、創業者・波多野鶴吉が実感されていたことがうかがえます。

 その後の歴史については、グンゼ株式会社のウェブサイトに「社史」がアップされているのでご覧いただきたいと思いますが。創業者・波多野鶴吉については書かれているものの、キリスト教の理念によって経営されていたことには触れられていません。現在は、そういったキリスト教色が薄れているためでしょう。

 現在の企業理念は以下のようになっています。

グンゼでは、創業の精神(人間尊重・優良品の提供・共存共栄)を経糸(たていと)に、社是の実践を通じて、社会からの期待に誠意をもって柔軟に応えることを緯糸(よこいと)に、社会に貢献しています。
●創業の精神
人間尊重と優良品の生産を基礎として、会社をめぐるすべての関係者との共存共栄をはかる。
●社呈
1.優良品の提供に徹し社会に貢献する
1.誠意をつくし信頼の輪をひろげる
1.若さと創意をいかし世界の一流をめざす

 現在の社是からはキリスト教色は薄れてますが、創業者の精神が息づいていることがわかります。

  「どんな大企業でも最初はベンチャーだった」と喝破したのは経営学者の米倉誠一郎・一橋大学教授ですが、グンゼもまた当初のベンチャー時代は、かぎりなくソーシャル・ベンチャーに近い存在であったのでした。


<参考文献>

『日本経営理念史(新装復刻版)』(土屋喬雄、麗澤大学出版会、2002 原著 1964・1967)
・・とくに、「第三部 キリスト教倫理を基本とする経営理念」 の 「第二章 波多野鶴吉の経営理念」

●グンゼ株式会社の公式ウェブサイト
・・「沿革・社史」「グンゼの歩み」

*なお、冒頭に掲げた波多野鶴吉の写真は、同社のウェブサイトにアップされているもの





PS 読みやすさの向上につとめるため、字句の一部を修正し、あらたにリンクを張った。多数のアクセスに感謝したい。 (2014年8月27日 記す)


<ブログ内関連記事>

『鉄人を創る肥田式強健術 (ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)』(高木一行、学研、1986)-カラダを鍛えればココロもアタマも強くなる!
・・「肥田式強健術」を全面的に取り入れたのが郡是製絲株式会社(=グンゼ)、そのミッシングリンクが郡是製絲株式会社に教育部長として招かれた川合信水牧師だったのでした。川合信水の実弟が肥田春充(ひだ・はるみち)。人脈をたぐりよせると、見えない「つながり」が見えてくるという面白い話でもあります。 

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)-日本への宣教(=キリスト教布教)を「異文化マーケティグ」を考えるヒントに

書評 『新島襄-良心之全身ニ充満シタル丈夫-(ミネルヴァ日本評伝選)』(太田雄三、ミネルヴァ書房、2005) -「教育事業家」としての新島襄
・・波多野鶴吉は、京都の同志社の伝道でキリスト教徒になった

内村鑑三の 『後世への最大遺物』(1894年)は、キリスト教の立場からする「実学」と「実践」の重要性を説いた名講演である
・・内村鑑三は「カネを残せ」と主張した。もちろん、稼いだカネを正しい目的で使えという趣旨であるが、アメリカに学ぶべきは実業家のフィランスロピーであることを主張している

「信仰と商売の両立」の実践-”建築家”ヴォーリズ-
・・伝道という「事業」を軌道にのせるための財政基盤をつくるために、営利事業を立ち上げる。


「人間尊重」という経営理念

「人間尊重」という理念、そして「士魂商才」-"民族系" 石油会社・出光興産の創業者・出光佐三という日本人
・・出光佐三は日本と日本人全体のことをつねに考えていた人であった

ソーシャルビジネス

書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)
・・シャーシャルビジネスの事例

書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010)
・・"Patient Capital" というソーシャルファンドについて


自前の思想

「いまこそ高橋亀吉の実践経済学」(東洋経済新報社創立115周年記念シンポジウム第二弾) に参加してきた-「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
・・・・亀吉や鶴吉といった、動物を含む名前は明治時代には少なくなかった

(2014年3月24日、8月14日、27日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)









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