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2011年11月10日木曜日

書評 『未曾有と想定外-東日本大震災に学ぶ-』 (畑村洋太郎、講談社現代新書、2011)


「未曾有」や「想定外」といったあいまいな「呪文」をクチにしない、させないために

 「失敗学」の畑中洋太郎氏が、「失敗学」と「危険学」の立場から、今回の「3-11」の大地震と大津波という「自然災害」、そして原発事故という「人災」をどう考えるかについて一般向きに書きおろした本です。

 「3-11」後、とにかく耳についたのが、専門家たちがクチにする「未曾有」と「想定外」というコトバでしたね。その分野の専門家ではないわたしたちにとっては、責任放棄としか聞こえないこのコトバに対して、著者もまた本書で厳しく批判しています。あいまいさのなかに本質を隠してしまう呪文のようなコトバだからです。

 「想定」の「枠内」であれば、手順さえ間違えなければ問題解決はそれほど困難ではありません。しかし、「想定」の「枠外」になるととたんに右往左往してしまうのが専門家です。

 想定外の事象にかんしては、その場その場でイマジネーションをフルに発揮して対応しなければならないからです。ここで専門家の限界が明らかになるわけですね。

 「想定」という枠の範囲を可能な限り拡げれば、ほぼすべての事象が「想定内」となるわけですが、実際問題、予算や時間など使える資源に制約がある以上きわめて難しいのです。「想定内」の問題解決はマニュアルでも対応可能なのですが、千年に一回しか発生ししない大津波を「想定内」として対処するのは、いくら予算があっても足りる話ではありません。つまりは非現実的ということ。

 「想定内」か「想定外」かは、「想定」どう設定するか次第です。そのためには問題設定が重要だということですが、とはいえ、時間の経過とともに「想定内」の枠をめぐる環境も変化することも忘れてはいけないと著者は注意喚起しています。

 思考停止状態にならないためには、つねにみずからシミュレーションという思考訓練を行っておく必要があるのです。もちろん、カラダもすぐに動けるようにしておかねばなりませんね。

 著者の指摘で傾聴に値するのは、自然と「折り合う」ことの重要性です。

 すべてを想定内とし、防潮堤で津波をすべて防ごうとして世界有数の防潮堤を建設し、鉄壁の守りと思われていた田老町のケースにおいては、今回の大津波であっけなく防潮堤が決壊し、想定外の被害がもたらされてしまいました。

 人間のチカラで自然と全面対決するのではなく、自然災害を「いなす」、「すかす」といった対応をとってきた、昔の人々の知恵に学ぶべきではないかという教訓です。

 これはある意味では、わたしが以前このブログでも書いた、経営計画の策定と実行は、「自力」と「他力」という仏教の考えをあてはめるとスムーズにいく にも通じる知恵かもしれません。

 あらためて気づくのは、こうした日本人の先人の知恵が、漢字語ではなく「いなす」、「すかす」のように「ひらかな語」だということです。

 漢字語や英語由来のカタカナ語は、いかにも近代科学的なニュアンスを感じさせますが、自然を征服できると考えてきた近代科学の限界を痛いほど知らされたのが、今回の「3-11」の大災害であったことは真剣に反省しておきたいものですね。

 コントロール可能な範囲は管理するが、コントロール不可能なものものについては、すべてを人間のチカラで支配できるという幻想を捨てて、起こるかもしれないことを想定したうえで事前にアタマの体操というシミュレーションを行い、いざ起こったときにイマジネーションをフルに働かせて臨機応変に対応するということでしょう。

 「天災」は、日本という国にいる以上、避けて通ることはできません。

 いや、たとえ日本の外にでても自然災害や人災から逃れることができないことは、今年の10月に本格化したタイの大洪水を考えてみればわかることです。むしろ海外のほうがホ-ムグラウンドではないアウェイであるだけに対処はより困難であると言うべきでしょう。

 文明が進めば進むほど、自然災害による被害は増大するだけでなく、たとえ一部の損害であっても、すべてがシステムのなかに組み込まれている以上、その被害はシステム全体に拡がる。これは「天災は忘れた頃にやってくる」と喝破した物理学者・寺田寅彦の考えですが、著者とともに深くかみしめる必要があるでしょう。

 真摯な反省の本として、一般のビジネスパーソンだけでなく、「専門家」と呼ばれる人たちにもぜひ読んでいただきたいと思います。





目 次

第1章 津波と未曾有
第2章 原発と想定外
第3章 日本で生きるということ


著者プロフィール

畑村洋太郎(はたむら・ようたろう)

1941年生まれ。東京大学工学部機械工学科修士課程修了。東京大学大学院工学系研究科教授、工学院大学グローバルエンジニアリング学部特別専任教授を歴任。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主宰。2002年に NPO法人「失敗学会」、2007年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる。日本航空安全アドバイザリーグループ委員、JR西日本安全有識者会議委員、リコールの原因調査・分析検討委員会委員長などを務め。2011年6月より東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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「ハインリッヒの法則」 は 「ヒヤリ・ハットの法則」 (きょうのコトバ)

書評 『リスクに背を向ける日本人』(山岸俊男 + メアリー・ブリントン、講談社現代新書、2010)




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