ポルシェのトラクターを見たことがありますか?
写真はポルシェの真っ赤なトラクターです。
はい、あのスポーツカーで有名なポルシェのディーゼル・エンジンのトラクターです。ホンモノですよ。
ドイツ南部のシュトゥットガルトにはポルシェ(Porsche)の本社工場と研究所がありますが、数年前に訪問したついでに、近くにあるポルシェの大型ショールームに展示されているものを撮影したものです。
スポーツカーといっしょに展示されてますが、驚いているのは日本人のわたしだけで、地元の人たちは 「当たり前」 と受け止めているようでありました。
調べてみると 50年前には日本にもポルシェのトラクターが輸入されて、日本の農村でも稼働していたようです。wikipedia 日本語版には、以下のような説明があります。
日本では、1962年から1966年にかけて井関農機が一部のポルシェトラクターを輸入販売し、その後ポルシェトラクターを参考に日本の気候や風土に合わせたヰセキオリジナルのトラクター「ヰセキトラクターTBシリーズ」を開発し、1964年に販売を開始した。
うーむ、ポルシェとイセキ(ヰセキ)というのは、アタマのなかではなかなか結びつきませんねえ(笑) トラクターをつうじてポルシェとイセキに関係があったとは、まったく知りませんでした。
1960年代半ば当時の日本では、まだスポーツカーとしてのポルシェのブランドイメージは確立していなかったでしょうか?
しかし、よくよく考えてみれば、ポルシェはエンジンが命の自動車メーカーですから、ポルシェがトラクターを開発していても不思議でもなんでもありませんね。これはポルシェの企業博物館を見学するとよく理解できます。
また、ドイツではむかしから扱っているので不思議でもなんでもないのでしょう。トラクターがポルシェのブランド価値を毀損(きそん)しているということは、すくなくともドイツではなさそうです。
ホンダも芝刈り機(lawn moaner)をやっていて米国では有名ですし、トヨタもフォークリフトをやっています。農業関係者や物流関係者など、狭い業界内部では当たり前のことでも、一般人が知らないことは、けっこう多いものですよね。業務用と一般用の違いといってもいいでしょう。あるいは、B2B と B2C の違い。
高級車の世界では、ホンダはアキュラ(Acura)、トヨタはレクサス(Lexus)というブランドを別途たちあげましたが、ポルシェのブランド戦略とはまったく異なることがわかります。
おそらくこれは、自動車開発の歴史と密接な関係があるのでしょう。後発国の日本では、輸入代替から国内開発が始まりましたので、欧州と比べると自動車開発の歴史は短いだけでなく、一般車のイメージが固定していると、高級車ではそのブランドがそのままでは使えないということですね。
日本ではポルシェというとスポーツカーといブランドイメージが定着していますから、ポルシェがトラクターもやっているということは、意外性をもって受け止められるかもしれません。
北海道を除けば、農地面積がドイツのように広くない日本の風土には、かならずしもあってないかもしれませんが、かっこいいファーマー目指して、ポルシェのトラクターで耕作するのもいいかもしれませんね。
<関連サイト>
ポルシェ社 公式サイト(日本法人)
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