映画『マネーボール』(Moneyball)を見てきました。ブラッド・ピットが主演だけでなく、製作者としてもかかわっているベースボール映画です。
監督: ベネット・ミラー
原作: マイケル・ルイス『マネー・ボール』
製作: マイケル・デ・ルカ、レイチェル・ホロヴィッツ、ブラッド・ピット
主演: ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル
配給: コロンビア映画、ソニー・ピクチャーズ
上映時間 133分
メジャーリーグ球団のひとつ、カリフォルニア州北部にフランチャイズのあるオークランド・アスレティクス(Oakland Athletics)の GM(=ゼネラル・マネージャー)として球団経営に数字とロジックを持ち込んで、劇的な V字回復を果たした44歳の中年男の実話(ture story)に基づいた映画です。
プロスポールであるベースボールの世界では当たり前であった、「長年の勘」にもとづく球団経営ではなく、統計数字に基づく戦略理論を持ち込んだのは、ビジネスの世界でいえば科学的マネジメント手法の導入といってもいいかもしれません。しかしこれは 2002年ですから、つい 9年前(!)の話なんですね。
ライバルのニューヨーク・メッツに比べると、予算の絶対額が、段違いに少ないという弱小球団の「制約条件」 のもとで、いかに 「最適解」 を導き出すかということは、経営工学の世界でいえば OR(=オペレーションズ・リサーチ)そのものです。
そのためには選手を将棋の駒のように、トレードによって他球団と入れ替え差し替えするわけですが、日本人の目から見れば非人道的と映るかもしれません。
しかし、選手だけでなく、GMも監督もみなある意味では身分が安定していないのは同じで、すべて上位者との請負契約関係にあると言っていいわけですから、これには慣れるしかないわけです。
契約社会ですから「結果」を出さなければクビになるし、クビを事務的に告げる本人だって、いつクビになるかわからない存在です。しかし、これは慣れてしまえばなんでもありません。わたしも両方とも経験しています(笑)
また、個々の試合の勝ち負けに一喜一憂せず、最終目的はリーグ優勝というのは、ただしい 「ゴール・セッティング」 とは何かを考えるにも示唆の多いものがあります。「個々の戦闘に勝っても戦争に負けたのでは意味がない」というのと同じことでしょう。
そして、主人公の 「モチベーション」 が金銭というインセンティブではなく、個人の価値観や「内発的動機」 であることなども、見ていて我が意を得たりという気持ちにもなりました。人間の生き方そのものにかかわるものであるということも。
「GM が頭をさげるのは球団オーナーと神だけ」 というセリフがありましたが、いま日本でもめているのとは、かなり違う世界ですね(笑)。アメリカの場合はオーナーは真の意味での球団の所有者、日本のように親会社のサラリーマン重役ではありません。
この映画は、人生における「選択」の意味を考えさせてくれるものでもあります。ビジネスにおいても、人生においても、「選択」した結果は、ほかの誰でもない自分が引き受けなければならないのです。
そしてまた「自らリスクテークする者は美しい!」ということを語った映画でもありますね。即断即決と自己責任原則。
もちろん、観る人の立場によって、感情移入する対象が GM か、アシスタントのアナリストか、スカウトか、球団オーナーか、野球選手か、その配偶者か子どもか親かで、映画の見方は大きく異なるでしょう。
1963年生まれのブラピが、中年男として「いい味」出している、というのはあえて言うまでもないことですね。彼の演技に「人生」を感じるのはわたしだけではないと思います。
こういう映画です。あとはもう、映画館で見るしかありませんね。
(原作本)
<関連サイト>
映画『マネーボール』日本版公式サイト
Moneyball Trailer 2011 HD(米国版トレーラー 英語 字幕なし)
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