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2011年11月28日月曜日

コロンビア大学ビジネススクールの心理学者シーナ・アイエンガー教授の「白熱教室」(NHK・Eテレ)が始まりました


 コロンビア大学ビジネススクール 心理学者シーナ・アイエンガー教授の「白熱教室」(NHK・Eテレ)が始まりました。「選択とはチカラ」を説く授業です。

 心理学者で 『選択の科学』(櫻井祐子訳、文藝春秋社、2010) の著者が、米国東海岸ニューヨークの名門コロンビア大学のビジネススクール(=MBAコース)で教えている授業です。学生はみな社会人、しかも日本人も含めて世界中から集まってきています。

 アイエンガー教授の『選択の科学』 は半分まで読みましたが、今回の授業はビジネススクールでのものであるにもかかわらず、どうやらビジネスクールでは当たり前の 「合理的意志決定理論」 ではカバーできない心理学の領域が授業内容のようです。

 盲目の女性で両親はシーク教徒のインド人移民、カナダのトロント生まれで現在は米国のコロンビア大学教授。これだけでもこの人はどんな「選択」を人生で行ってきたのだろうかと興味が引かれますよね。

 「NHK コロンビア白熱教室」の公式サイトから授業概要の説明を引用しておきましょう。

 この大学で今人気を集めているのが、シーナ・アイエンガー教授の講義です。厳格なシーク教徒の両親に育てられ、さらに高校のとき網膜の病気で視力を失った彼女は、選択の余地がなかった自分の運命から、逆に「選択」を研究テーマに選びました。
 動物園の動物は、たっぷりエサを与えられているのに、野生の動物に比べてなぜ寿命が短いのか? スティーブ・ジョブズは、人生においてどんな選択をすることで世界を変えたのか? 24種類のジャムを売り場に並べた時と6種類のジャムを並べた場合を比較すると、前者の売り上げは10分の1しかなかった。なぜそんなことが起こるのか?
 アイエンガー教授は、学生たちに「あなたならどちらを選ぶ?なぜ?」と投げかけながら、自分で選択することの難しさと意味を問いかけていきます。その講義は、これから人生を切り開いていく若者たちにとって大きな指針を示すとともに、ビジネスの場における実践力をも養っています。
 圧倒的に不利な環境の中でも、自分の選択によって人生を切り開いてきたアイエンガー教授のメッセージ「選択は力なり」は、何ごとも自分で決めたがらない私たち日本人を目覚めさせてくれるはずです。


 講師をつとめるシーナ・アイエンガー教授の経歴がまた「選択」そのものの人生ですね。

シーナ・アイエンガー(Sheena Iyengar)
1969年、カナダ・トロント生まれ。現在コロンビア大学ビジネススクール教授。両親はインドからの移民でシーク教徒。アメリカに移住した3才の時、眼の病気を患い、高校に上がる頃には視力を失った。シーク教徒の厳格な教義に従って育てられてきたが、アメリカの教育を受ける中で、「自分で選ぶこと」こそ、アメリカの力であると思い至り、「選択」を研究テーマにすることを思い立った。この講義は、どんな環境にあっても、自分の選択によって道は切り開けると信じてきた彼女の人生の物語でもある。


 昨日(11月27日)放送の第1回放送では「あなたの人生を決めるのは偶然?選択?」がテーマでしたが、これは英語で言うと Chance or Choice ? になります。Chance(偶然)も Choice(選択)も、同じ ch- で始まる単語なので、耳で聞くと、より効果的な「選択肢」ということになるのでしょう。

 アイエンガー教授は「選択」(choice)を「意志的な選択」の意味で使っていますが、「偶然による選択」もあるのではないか(?)と考えてしまうのは、ちょっと天の邪鬼に過ぎるでしょうか?

 ビジネスで行われる「判断」(judgement)、「選択」(choice)、そして「意志決定」(decision)。いずれも似たようなコトバですね。

 「判断」「選択」「意志決定」が、ほんとうに主体的な意志によるものになっているかどうか、反省する機会になるのではないかと、この心理学の授業には期待しています。人間は「習慣の奴隷」ですから、主体的な選択と思っているものが、じつはそうではないとはよくありそうなことですから。

 授業は全5回、以下の内容になっています。

2011年11月27日(日):第1回「あなたの人生を決めるのは偶然?選択?」
2011年12月4日(日):第2回「選択しているのは本当にあなた自身?」
2011年12月11日(日):第3回「最良の選択をする方法 選択ノートの勧め」
2011年12月18日(日):第4回「あふれる選択肢:どう選ぶか」
2011年12月25日(日):第5回「今の100ドルと1月後の120ドル どちらを選ぶ?幸福になるための技術」

 これまで放送された「ハーバード白熱授業」のサンデル教授は政治学、「スタンフォード白熱授業」のシーリグ教授は創造性開発、今度の「コロンビア白熱授業」は心理学。

 それぞれ専門分野も違いますし、授業のスタイルもそれぞれ個性的ですが、いずれも共通しているのは、一方通行のブロードキャスティング型ではないということ。インタラクティブ(=双方向)の対話を前提にした授業であるということですね。

 「対話」をつうじた相互理解のあり方のモデルとしてもとらえてみたい授業です。





PS 2014年7月10日に『選択の科学』が文春文庫から文庫化されます!




<関連サイト>

「NHK コロンビア白熱教室」の公式サイト

シーナ・アイエンガー『選択の科学』|文藝春秋|特設サイト・・『選択の科学』の特設サイト。今回の「白熱授業」(Heated Debate in the Classroom)の参加者募集のポスター(英語)を見ることができます

Sheena Iyengar on the art of choosing(TED July, 2010 英語・字幕なし 24分強)
・・授業ではなく講演(talk)の映像を見ることができる。いきなり京都での研究留学時代の「緑茶に砂糖」の話からはじまる。聴衆を笑いに誘う、この「つかみ」はうまい!


<ブログ内関連記事>

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ

「ハーバード白熱教室」(NHK ETV)・・・自分のアタマでものを考えさせるための授業とは

ダイアローグ(=対話)を重視した「ソクラテス・メソッド」の本質は、一対一の対話経験を集団のなかで学びを共有するファシリテーションにある





(2012年7月3日発売の拙著です)









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2011年11月24日木曜日

映画 『マネーボール』 をみてきた-これはビジネスパーソンにとって見所の多い作品だ!


 映画『マネーボール』(Moneyball)を見てきました。ブラッド・ピットが主演だけでなく、製作者としてもかかわっているベースボール映画です。

監督: ベネット・ミラー
原作: マイケル・ルイス『マネー・ボール』
製作: マイケル・デ・ルカ、レイチェル・ホロヴィッツ、ブラッド・ピット
主演: ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル
配給:  コロンビア映画、ソニー・ピクチャーズ
上映時間 133分

 メジャーリーグ球団のひとつ、カリフォルニア州北部にフランチャイズのあるオークランド・アスレティクス(Oakland Athletics)の GM(=ゼネラル・マネージャー)として球団経営に数字とロジックを持ち込んで、劇的な V字回復を果たした44歳の中年男の実話(ture story)に基づいた映画です。

 プロスポールであるベースボールの世界では当たり前であった、「長年の勘」にもとづく球団経営ではなく、統計数字に基づく戦略理論を持ち込んだのは、ビジネスの世界でいえば科学的マネジメント手法の導入といってもいいかもしれません。しかしこれは 2002年ですから、つい 9年前(!)の話なんですね。

 ライバルのニューヨーク・メッツに比べると、予算の絶対額が、段違いに少ないという弱小球団の「制約条件」 のもとで、いかに 「最適解」 を導き出すかということは、経営工学の世界でいえば OR(=オペレーションズ・リサーチ)そのものです。

 そのためには選手を将棋の駒のように、トレードによって他球団と入れ替え差し替えするわけですが、日本人の目から見れば非人道的と映るかもしれません。

 しかし、選手だけでなく、GMも監督もみなある意味では身分が安定していないのは同じで、すべて上位者との請負契約関係にあると言っていいわけですから、これには慣れるしかないわけです。

 契約社会ですから「結果」を出さなければクビになるし、クビを事務的に告げる本人だって、いつクビになるかわからない存在です。しかし、これは慣れてしまえばなんでもありません。わたしも両方とも経験しています(笑)

 また、個々の試合の勝ち負けに一喜一憂せず、最終目的はリーグ優勝というのは、ただしい 「ゴール・セッティング」 とは何かを考えるにも示唆の多いものがあります。「個々の戦闘に勝っても戦争に負けたのでは意味がない」というのと同じことでしょう。

 そして、主人公の 「モチベーション」 が金銭というインセンティブではなく、個人の価値観や「内発的動機」 であることなども、見ていて我が意を得たりという気持ちにもなりました。人間の生き方そのものにかかわるものであるということも。

 「GM が頭をさげるのは球団オーナーと神だけ」 というセリフがありましたが、いま日本でもめているのとは、かなり違う世界ですね(笑)。アメリカの場合はオーナーは真の意味での球団の所有者、日本のように親会社のサラリーマン重役ではありません。

 この映画は、人生における「選択」の意味を考えさせてくれるものでもあります。ビジネスにおいても、人生においても、「選択」した結果は、ほかの誰でもない自分が引き受けなければならないのです。

 そしてまた「自らリスクテークする者は美しい!」ということを語った映画でもありますね。即断即決と自己責任原則。

 もちろん、観る人の立場によって、感情移入する対象が GM か、アシスタントのアナリストか、スカウトか、球団オーナーか、野球選手か、その配偶者か子どもか親かで、映画の見方は大きく異なるでしょう。

 1963年生まれのブラピが、中年男として「いい味」出している、というのはあえて言うまでもないことですね。彼の演技に「人生」を感じるのはわたしだけではないと思います。

 こういう映画です。あとはもう、映画館で見るしかありませんね。





     (原作本)


<関連サイト>

映画『マネーボール』日本版公式サイト

Moneyball Trailer 2011 HD(米国版トレーラー 英語 字幕なし)


<ブログ内関連記事>

映画 『英国王のスピーチ』(The King's Speech) を見て思う、人の上に立つ人の責任と重圧、そしてありのままの現実を受け入れる勇気

映画 『インビクタス / 負けざる者たち』(米国、2009)は、真のリーダーシップとは何かを教えてくれる味わい深い人間ドラマだ

映画 『ソーシャル・ネットワーク』 を日本公開初日(2011年1月15日)の初回に見てきた

Winning is NOT everything, but losing is NOTHING ! (勝てばいいいというものではない、だけど負けたらおしまいだ)




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