(広島セミナーにて)
「出版記念イベント」 として企画した、鹿児島から始まって京都まで移動した「西日本縦断ツアー」2012年10月27日~11月2日)の全日程を終了しました。
おかげさまで、一部でにわか雨がちらつくことがあったものの全行程で好天に恵まれ、事故もなく過ごすことができたことを感謝いたします。
鹿児島までは航空機で「空」から入りましたが(・・今回はじめてANAのB787を体験できました!)、鹿児島から京都、そして京都からの帰還は、広島と松山のあいだのフェリーによる「海」路をのぞいて、すべて高速バスによって「陸」路で移動しました。
いわば「陸海空」すべての移動手段で、東京以西の地方都市をめぐったこととなりました。
■地方都市とはなにかについて考える
地方出身であるとはいえ、現在は千葉県を活動拠点としている関係上、どうしてもわたしは東京中心の活動と、それにともない東京中心の視点になりがちです。
しかし、10日間連続で地方都市をめぐり、そこに居住して仕事をしているビジネスパーソンの方々と交流し、意見を交わす機会をもったことで、わたし自身の視野もあらためて拡がることができたのではないかと思っています。
アメリカでもニューヨークは別格の存在ですし、タイにおいてもバンコクは別格の存在です。同様に日本においても東京はその他の地方都市よりも規模的に大きいだけでなく、人口減少のつづく現在の日本にあっても、いまだに人口流入が続いている点においても別格の存在であることがわかります。
この日本において、「地方都市」の存在とは何であるかを考えることは、日本の将来について考えるうえで、きわめて重要な意味をもっているといっていいと思います。
■地方都市の性格と構造の共通性-路面電車が走る城下町
今回のツアーでは、「地方都市」の性格と構造について知る機会ともなりました。
千年の古都であった京都は別にして、今回訪問した鹿児島、広島、松山、岡山に共通するものがあることが、旅を続けるフィールドワークのなかで確認することができました。
それは、いずれも「路面電車が走る城下町」である、ということです。
各都市をバラバラに回っていたときには気がつきませんでしたが、こうやって連続して訪問することによって見えてきたのが、「路面電車が走る城下町」という性格です。
(鹿児島市内 天文館)
もちろん、現在では路面電車が廃線になってしまった都市も少なくありませんが、西日本では現在でも路面電車が市民の足としてフル稼働している都市が少なくありません。
(広島市内 宇品港)
ヨーロッパでは路面電車(tram)は当たり前の風景ですが、残念ながら東京では一つを残して全面廃止、大阪でも京都でも一部で路面電車的な存在があるに過ぎません。
(松山市内 松山市駅前)
路面電車が都市の性格と個性をつくりあげているということは、おおいに認識しておくべきことでしょう。
(岡山市内 城下)
また、地方都市がいずれも城下町であるという点。これもまた、バラバラで回っていると忘れがちですが、連続して回っていると気がつく点です。
地方都市が城下町であるということは、つまり前近代社会において日本は封建制であったということを意味しています。
封建制においては、土地を基本として封建領主のもとで産業振興が図られたわけですが、その意味において近代化を達成できたのが、ヨーロッパと日本であることはアタマに入れておくべきことなのです。
封建制があったからこそ、日本は近代化をスムーズに進展させることができたのです。
■地方都市の個性を活かし積極的に打って出る
日本の未来を考える際、もちろん少子高齢化という人口減少が中心的テーマにくることは否定できませんが、都市の個性について認識し、古き良きものは残しつつ、積極的に革新的な取り組みを行うことが必要なことは言うまでもありません。
その意味では、明治維新後、東京への遷都によって衰退した京都がいかに復活したか、そして観光以外の産業においても独自の存在を示しているかは、「京都モデル」が大いに参考になるでしょう。
「京都モデル」については、このブログでは、書評 『京都の企業はなぜ独創的で業績がいいのか』(堀場 厚、講談社、2011)-堀場製作所の社長が語る「京都企業」の秘密 に書いておきました。
「京都モデル」のエッセンスとは、「狭い地域で共存共栄していくためには、お互いの領域を侵犯することなく、自らの強みに特化して、市場は海外もふくめた京都以外に求め」ることからでてきたものです。
これは京都だからこそできたとは思いません。東京以外の地方都市には、いずれも背景は共通したものだとわたしは考えています。東京を見るよりも、京都を見るべきであり、さらにいえば日本の外を見るべきだということです。
今回の「縦断ツアー」では、日本の地方都市のすべてを訪問したわけではありませんし、地域的にも西日本だけですので一般化はできませんが、「京都モデル」は日本の地方都市で応用可能であるという認識を強めることができました。
このほかにも、地方都市に生きている皆様との交流をつうじて得た気づきや学びはたくさんありますが、今後さまざまな形で書いていきたいと考えております。
以上、とりあえず簡単ながら「西日本縦断ツアー」(2012年10月27日~11月2日)の報告とさせていただきます。
今回訪問した鹿児島、広島、松山、岡山、京都の各地方都市の皆様、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。そう遠くないうちに再会できることを楽しみにしております。
また、上記以外の地方都市にもセミナーや講演会、あるいはコンサルティング等をつうじて、ぜひ訪問したいと考えております。気軽にお声がけしていただければ幸いです。
お問い合わせは、http://kensatoken.com/contact.htm をご参照ください。
<ブログ内関連記事>
「出版記念イベント」 として 「公開セミナー」の「西日本縦断ツアー」(鹿児島から京都まで)を実行します(2012年10月27日~11月2日)
書評 『京都の企業はなぜ独創的で業績がいいのか』(堀場 厚、講談社、2011)-堀場製作所の社長が語る「京都企業」の秘密
梅棹忠夫の『文明の生態史観』は日本人必読の現代の古典である!
書評 『封建制の文明史観-近代化をもたらした歴史の遺産-』(今谷明、PHP新書、2008)-「封建制」があったからこそ日本は近代化した!
(amazon で 2012年7月3日発売の拙著です)
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