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2014年10月18日土曜日

書評 『なぜローカル経済から日本は甦るのか-GとLの経済成長戦略-』(冨山和彦、PHP新書、2014)-重要なのはグローバルではなくローカルだ!


『なぜローカル経済から日本は甦るのか-GとLの経済成長戦略-』(冨山和彦、PHP新書、2014)は、ことしイチオシの経済ビジネス本といっていいのではないかと思います。
  
内容をかいつまんで見ておきましょう。
   
日本の GDP の7割以上はローカル経済が生み出しているのであり、日本の総労働人口の8割以近くがローカル経済に生きているという事実。まずはこの事実を押さえておきましょう。残りがグローバル経済ですが、グローバル経済の論理で動いている人たちは、じつは3割以下しかないということになります。

この数字は20年前よりも、むしろ現在のほうがローカル経済比率のほうが高まっていますが、それは「グローバル化のパラドックス」によるものです。

すでに世界全体のGDPの1割にも満たない日本経済は、グローバル企業からみればそれだけの意味しか持っていないのです。したがって、日本での投資は抑えられ、日本での雇用も抑制されることになるのは理の当然というものでしょう。

そしてその結果、むしろローカル経済のウェイトのほうが高まっていくのが現在の姿なのです。グローバル化が進めば進ほどローカルのウェイトが増していくというパラドックス。これは日本だけではなく、先進国に共通している現象です。
    
著者はグローバルを頭文字をとって「G」、ローカルを「L」としていますが、その意味では、「G」と「L」は共存しているだけでなく、それぞれあまり関係なく共存しているという著者の主張にはおおいに納得するものがあります。 日本はドイツと比べても輸出依存比率の低い、内需中心の経済になっていることは常識とすべきでしょう。

日本人の8割近くはL(=ローカル)の世界で生きているのです。首都の東京でさえ、人口の大半がかかわっているのはグローバルではなく、ローカルのサービス業です。東京もまた「Gの世界」と「Lの世界」が共存しているのです。東京以外では、あたりまえといってもよい状況です。

グローバル展開するメーカーは、生産コストと物流コストの観点から工場を海外に移転するのは理の当然。ローカル経済から製造業関係の労働需要が減少するのも、その意味では当然といえば当然です。これは「モノ」にかんする話です。
    
だが、「コト」にかんする話はまったく違います。在庫ができず時間消費型の「コト」を扱うサービス業は、基本的に地域密着型という性格をもっています。ローカル経済はサービス産業が中心です。

(帯のウラ)


■需給ギャップが人手不足を生み、賃金はさらに上昇する

サービス業ではますます人手不足がひどくなりつつあるのが現状です。というのも、団塊世代がリタイアしてサービス需要が増加するのに対して、若い人が減っているので労働力の供給が減少しているからです。

人件費抑制と労働生産性向上のため、以前から飲食業ではタッチパネル方式のオーダーやセルフサービスが普及してますし、エッソのセルフSSは最近とみに目にするようになっています。  
ここらへんのことは、じっさいにローカル経済で仕事をしている人には実感のある話でしょう。人手不足はアベノミクスで顕在化しましたが、けっしてアベノミクスによって引き起こされたのではないのです。

ローカル経済での地域密着サービス産業をめぐる需給ギャップに原因があり、しかもこの需給ギャップは今後20年間(!)はつづくのです。20年後には需給が均衡するので、人手不足は収束に向かうと予測されますが、それにしても今後20年間というのはけっして短い期間ではありません。人手不足のために、賃金水準はさらに上昇するのです。
   
著者は、少子高齢化が原因の人手不足は史上初めての出来事で未曾有のものだといいます。このポイントはぜひ押さえておきたいものです。日本はおなじ先進国でも欧州よりも速いスピードで進行中なのです。

人手不足による賃金上昇。高騰する賃金の負担が可能な企業は生き残り、その負担ができない企業は退出を迫られることになります。

介護や子育てを考えれば、柔軟な働き方を選択する労働者はますます増加するでしょうし、その意味では、会社に帰属する「メンバーシップ型」の働き方ではなく、同一労働同一賃金を原則とするジョブ(=職務)型の働き方が日本人の大半が選択することになるは当然というべきでしょう。流動性が高まるということです。

この結果、「個」としての労働者と「組織」としての会社が対等になっていくことが考えられます。労働生産性向上にこれまで以上に注力するとともに、いかに労働者を「囲い込む」ために魅力ある職場をつくりあげるかが、ローカル経済に生きる会社には問われることになります。


グローバルとの接点を持ちながらローカルに生きる

著者は、産業再生機構で地方の破綻企業再生をつうじて、ローカル経済の現状を熟知している人です。現在も東北のバス会社の経営にタッチしており、グローバル製造業もローカルのサービス業も、ともに熟知しているという立ち位置にあります。

イデオロギーからではない、リアリズム(=現実主義)という姿勢。これは、見たいものしか見ないのに、それで世界観を構築している経済学者との違いでもあり、俗耳に入りやすい一部上場のグローバル製造業について書きたがるマスコミ論調との違いでもあります。

現実主義の立場から書かれたこの本は、長いあいだ日本人の「常識」となっていた固定観念をくつがえす内容であるからこそ読むに値する本であるといってよいでしょう。

グローバル化やグローバリゼーションという流行語に翻弄されるのは、もういい加減やめたほうがいいんじゃないの、日本人の大半には関係ない話なのだから、とわたしはつよく思います。

それは言い過ぎだとしても、「G」と「L」は二者択一ではなく共存可能、どちらの世界で生きるかは個人の価値観だという著書の姿勢にはい大いに共感するものがあります。ローカルに生きるわれわれは、グローバル化の成果を享受すればいいということです。

現在の日本は、「グローバル化のパラドックス」によってもたらされた世界ですが、すべての日本人がグローバル競争に巻き込まれるのはナンセンスなこと。

グローバルとの接点をもちつつ、ローカルに生きる。これが大多数の日本人にとっての幸せに生きる道であると思います。







目 次

プロローグ-労働力消滅!? 今、かつてないパラダイムシフトが起こっている
第1章 グローバル(G)とローカル(L)という二つの世界
 GとL、2つの世界の現場に携わって芽生え始めた「違和感」
 単純なイデオロギーだけで、明快な解を得ることができなかった
  ありのままの現実・・・・グローバル化のパラドックス
 経済学者がローカル型のサービス産業を嫌いな理由
 「Gの世界」と「Lの世界」それぞれを支配する経済法則とは
 「GとL」を理解すれば格差問題の実相も見えてくる
第2章 グローバル経済圏で勝ち抜くために
 グローバル経済圏のリアル
 日本のグローバルプレイヤーが長期的に交代してきた本当の理由
 目指すは「稼ぐ力のオリンピックチャンピオン」
 大企業と中小企業ではなく、グローバルとローカルで分ける 
 ・・(以下省略)・・
第3章 ローカル経済圏のリアル
 ローカル経済圏に向けられる根強い誤解
 ローカル経済圏の経済性は何で規定されるか?
 GかLかではなく、GもLもいいではないか!
 実はほとんどの産業がローカル経済圏のプレイヤー
 女性が家で子どもを育てるのは日本の淳風美徳というのは本当か 
 産業再生機構時代に手がけた日光鬼怒川温泉の再生
第4章 ローカル経済圏は穏やかな退出と集約化で寡占的安定へ
 淘汰が起きにくいローカル経済圏では「穏やかな退出による集約化」がポイント
 「県大会」上位を目指すローカル経済圏で必要なのはカリスマ経営者ではない
 「地方発のグローバル企業を育成せよ」は正しいか
 ローカル経済圏の労働移動はスムーズに進められる
 お気楽な規制緩和ではなく「スマートレギュレーション」が求められる
 「非営利ホールディングカンパニー」は規律の鍵となりうるか
第5章 集約の先にあるローカル経済圏のあるべき姿
 退出のキーとなるのは地方金融機関のデットガバナンス
 Lの世界に生きる企業の最重要KPI(主要業績指標)は労働生産性
 どんな会社が労働生産性を高める潜在力を持っているか?
 倒産法をアメリカ型にすることで「穏やかな退出」は促される
 退出によって自己破産する必要のない個人保証制度に
 ゾンビ企業が生き残る理由・・・・今こそ中小企業政策を大転換せよ!
 地方の組成は、集約によるコンパクトシティ化と駅前商店街の復活
 最終的な人口減少に備えて 
 地域住民との「共創」関係をいかにして構築するか
 Lの世界に生きる人々の「ゴール」はどこにあるか
第6章 GとLの成長戦略で日本の経済・賃金・雇用は再生する
 構造的なパラダイムシフトからは逃れられない
 このパラダイムシフトこそ経済と雇用と賃金再生の大チャンス!
 「コト」消費の時代の到来で「GもLも」戦略に追い風が吹き始めた
 「GとL」はどちらも素晴らしい・・・・個人にとっては選択の問題
エピローグ-双発なる会話
参考文献



著者プロフィール
冨山和彦(とやま・かずひこ)
 1960年生まれ。経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。ボストン・コンサルティング・グループ入社後、コーポレイト・ディレクション社設立に参画、後に代表取締役社長に就任。産業再生機構設立時にCOOに就任。(現職)オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、中日本高速道路社外監査役、みちのりホールディングス取締役、経済同友会副代表幹事、財務省・財政投融資に関する基本問題検討会委員、内閣府・税制調査会特別委員、文部科学省・国立大学法人評価委員会専門委員、国土交通省・下水道政策研究委員会委員、経済産業省・新ものづくり研究会委員等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

冨山和彦・なぜローカル経済から日本は甦るのか (PHP BiZ Online、2014年7月31日)

「ローカル企業の年収100万円アップ」戦略【1】 -対談:経営共創基盤CEO 冨山和彦×田原総一朗 田原総一朗の「この人に聞きたい!」 (PRESIDENT 2014年10月13日号)

「ローカル企業の年収100万円アップ」戦略【2】 -対談:経営共創基盤CEO 冨山和彦×田原総一朗 田原総一朗の「この人に聞きたい!」 (PRESIDENT 2014年10月13日号)
・・「【冨山】そうです。日本のGDPは、いま世界の中で7%を切っています。グローバル企業がそれに合わせて自社の設備や人員を配分するとしたら、日本に割り当てるのはせいぜい1割でしょう。そういった企業が日本で大きな雇用を新たに創出するのは考えにくい。つまりグローバル化が進むほど、ローカル産業でメシを食う国民の比率が高まっていくというパラドックスが起きるのです。これは日本だけでなく、成熟した先進国に共通した傾向です。アメリカやドイツでもローカル経済の比率は高まっているし、早晩、中国や韓国でも同じことが起きるでしょう。」

時代は好景気か不景気か? 人手不足対策の本丸は「何もしないこと」  冨山和彦 × 原田 泰 (ウェッジ、2014年10月25日)


我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性-今回の議論に際し通底的に持つべき問題意識について (2014年10月7日(火) 株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山和彦) (文部科学省 「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第1回) 配付資料」 Pdf資料) 

Population Decline and the Great Economic Reversal (George Friedman, Geopolitical Weekly STRATFOR, FEBRUARY 17, 2015)
・・先進国における「人口減少問題」は、500年つづいた「近代」の終焉とその後を示している。人口減少スピードの早い先進国では資本よりも労働力のほうが希少財となる

(2015年2月18日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

書評 『挫折力-一流になれる50の思考・行動術-』(冨山和彦、PHPビジネス新書、2011)-「むしろ積極的に挫折せよ!」という著者の熱いメッセージを真っ正面から受け止めよう


ローカル経済と地域密着型ビジネス

地域密着型で成功した 「地域新聞」 というフリーペーパー(=無料紙)のビジネスモデルを知ってますか?

お寺の「経営改革」-外部環境の変化にどう対応して生き残るか?

書評 『跡取り娘の経営学 (NB online books)』(白河桃子、日経BP社、2008)-「跡取り娘」たちが背負う日本の中小企業の未来

ふなっしーにとって「非公認」こそ増殖する「ゆるキャラ」のなかでの "勲章" であり "差別化" ポイントだ


ローカルは「ジョブ」(=職務)が仕事のベース

アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみよう

「就活生」はもっと中小企業に目を向けるべき-「就活生」と中小企業とのあいだに存在するパーセプション・ギャップを解消せよ!

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・

書評 『失われた場を探して-ロストジェネレーションの社会学-』(メアリー・ブリントン、池村千秋訳、NTT出版、2008)-ロスジェネ世代が置かれた状況を社会学的に分析

「就活生」はもっと中小企業に目を向けるべき-「就活生」と中小企業とのあいだに存在するパーセプション・ギャップを解消せよ!

書評 『キャリア教育のウソ』(児美川孝一郎、ちくまプリマー新書、2013)-キャリアは自分のアタマで考えて自分でデザインしていくもの

書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう
・・日本人としての強みを正確に把握したうえで、それなりの英語能力があれば生き抜いていくことはできる

書評 『大学とは何か』(吉見俊哉、岩波新書、2011)-特権的地位を失い「二度目の死」を迎えた「知の媒介者としての大学」は「再生」可能か?
・・大学が「実学志向」になるのは受容者サイドの要請


日本人の大半に英語は不要

英語よりも日本語をキチンと教育してもらいたい!-「英語至上主義」と訣別し、人的資源の有効活用策を考えるべし

書評 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013)-英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではない

書評 『日本語は亡びない』(金谷武洋、ちくま新書、2010)-圧倒的多数の日本人にとって「日本語が亡びる」などという発想はまったく無縁


グローバル化のパラドックス

書評 『終わりなき危機-君はグローバリゼーションの真実を見たか-』(水野和夫、日本経済新聞出版社、2011)-西欧主導の近代資本主義500年の歴史は終わり、「長い21世紀」を生き抜かねばならない

(2014年10月23日、2015年4月15日 情報追加)





(2012年7月3日発売の拙著です)











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