2010年6月2日水曜日
本日(2010年6月2日)鳩山首相が退陣-「デッドライン」の意味について
みなさんお元気ですか。
こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一(さとう・けんいち) です。
本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメントを加えていきたいと思います。
では、本日のテーマは、今回の「民主党の鳩山首相が退陣を表明」(2010年6月2日)についてです。
ビジネスパーソンにとっての基本中の基本である「デッドライン」(納期、締め切り)について、あらためて考えたいと思います。
■民主党の鳩山首相が退陣を表明■
本日(2010年6月2日)、民主党の鳩山首相が退陣を表明した。
沖縄の普天間基地問題解決を、5月31日のデッドラインまでに実現すると公約(・・口約)し、結局約束を守れず、さらに逆戻りするような結果を招いたことに対する、国民の不信感が支持率20%前後という結果を招いたためである。
連立政権を組んでいた社民党の福島党首(・・消費者担当相として入閣)が、米国との共同署名を拒否したため罷免されたことが、社民党の離脱の引き金となった。
もともと安全保障問題にかんする共通認識のない「野合」的な連立だったことから、いずれこの事態になることが当初から予想されたのであるが、鳩山首相が自ら設定したデッドラインには、公約がともなわないまま時間切れとなったことが、連立解消の原因となった。
しかし、この政権はいったい何だったのだろうか、という想いがしないわけでもない。
2009年の8月の総選挙での地滑り的勝利で「政権交代」に成功した功績は大きい。そのとき党首であった鳩山氏は「政権交代」の漢字熟語4文字で選挙を戦い抜いたのであった。
しかし、首相の器ではなかったということだ。一言で片付けてしまえば。
今回の一連の事件について、有権者としての立場はさておき、ビジネスマンの観点からコメントしておきたいことがある。
「人の上に立つ人」のあり方についてだ。
もちろん、同じリーダーだとはいっても、民主主義下の政治家と経営者には共通点もさることながら、相違点も大きい。同族企業ではない大企業の場合は、経営トップは、競争という名の、ある種の権力闘争を勝ち抜いている。選挙で選ばれる政治家であっても、政党内の権力闘争を勝ち抜いてきた党首には共通点がある。
ここでは、リーダーとしての共通点に焦点をあててみたい。
■デッドライン(締め切り、納期)感覚と約束の重さ■
ビジネスであればつねに「デッドライン」が設定されている。どんな部署においても一番多いのは「納期」であろう。「締め切り」といいかえてもよい。
20歳台前半でビジネス界に入って、まず最初にたたきこまれるのが、この「デッドライン」感覚である。
何があろうと、メシを抜こうが、徹夜しようが、これだけは絶対に守らなければならない。でなければ・・・
私のビジネス人生のなかでも、納期を守れずに「逃げた」人間を二人知っている。
一人は、報告会までにプレゼン資料を完成させることができずに、報告会にあらわれなかった人。この人は、私が直接仕事をしていたわけではないので、ウワサ話なのであるが、こうしたウワサは一気に拡がるものである。
「納期を守れず、逃げた男」というレッテルは一生はがれることがない。
もう一人は、連載中の原稿が書けずに、消息を断ってしまった人の話。同じプロジェクトで仕事をしていなかったのが不幸中の幸いだが、しかしいったんこういうことをやってしまうと、もう二度と声がかかることはないだろう。
ビジネスとは、その意味では厳しいものがある。
生産管理の世界では「後工程(あとこうてい)はお客様」というビジネス格言がある。いま自分が担当している作業工程(プロセス)が終わらないと、次の工程(プロセス)に支障がでてくるということなのだ。
ビジネスの世界にいれば当たり前のこんなことが、なぜ一国の首相ともあろう人が守らないのか、という国民の怒りの声は、しごく真っ当なものである。
できなければ最初から約束するな!
これがビジネス界の掟であり、常識的な人間が守るべきルールである。
また約束にあたっては、とくに「人の上に立つ人」は、自らの発言の重みを自覚しなくてはならない、ということだ。
「人の上に立つ人」でありながら「結果を出せなかった人」は、当然のことながら、その職からは辞職するしかないだろう。
20歳台の駆け出しのビジネスパーソンではないのである。
同じフィールドでは再起は難しい。敗者復活に際しては、活躍の場は別に求めなければなるまい。
「失敗は若いうちにたくさんしておけ!」というのはそういう意味だ。失敗をおそれずにやることと、できもしない無謀な約束を空想して公約し、その結果が失敗に終わることとはまったく別である。
「人の上に立つ人」は、「反面教師」として、「他山の石」として、今回の鳩山首相退陣劇を考える必要があろうかと思う。
「人の上に立つ人」のコトバは、それだけ重いのである。
(2012年7月3日発売の拙著です)
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