『インドネシア駐在3000日 (新版)』(坂井禧夫、連合出版、2012 初版 2002)が、昨日5月31日に出版されました。
初版以来10年、このたび2006年の改訂版のさらに再改訂版として、新版になっての再登場です。
新版には、あらたに「なぜいまインドネシアか?」と題した著者の文章が15ページ加えらましたので、たんなる新装版ではありません。じつに息の長い本です。
すでにお読みの方も、ぜひもう一度手にとっていただきたいと思います。
インドネシア経済にかんする一般書やインドネシア投資にかんする実務専門書はたくさんありますが、本書の特徴は、この本が出版された時点で、なんといっても 3000日、つまり約8年以上インドネシア現地に駐在していた本人が書いた体験記であるということにあります。
しかも、日本人は著者とその家族だけという環境で、日系企業の工場を立ち上げ、軌道に乗せた3000日の記録です。
著者本人から聞いた話ですが、インドネシア駐在員の世界では、「戦前・戦後」という表現がつかわれて、「戦友」意識を高め合っているようです。もちろん、「戦前」といっても67年前の戦争のことではなく、1997年のIMFショックの翌年に発生した「インドネシア暴動」のこと。この事件をキッカケに、スハルト大統領が退陣に追い込まれた大事件でありました。
著者もまた「戦前」と「戦後」をともに現地で体験した一人ですが、著者の体験は現在のインドネシアそのものではありません。とはいえ、本書が貴重な体験記であることは否定できません。
なぜなら、フェイスブックが普及し、日本のAKB48の姉妹グループであるJKT48(・・JKTは、ジャカルタの頭文字)が結成されるなど、消費市場が立ち上がり「新興国」としてふたたび大いに注目を浴びる存在になってきているインドネシアですが、現在でも製造業立地としての意味合いが大きいことと、ジャカルタのような大都市を除けば、地方生活はそれほど大きく変化しているわけではないからです。
なによりも、著者とその家族がインドネシア人のあいだで過ごした日々は、ハンパなものではありません。
これからインドネシアに現地駐在として赴任する予定の人は、ぜひ本書を読んだうえで、カバンのなかに入れて現地に旅立ってほしいと思います。
というのも、「インドネシア語のことわざ200」が付録としてついているからです。これは、かならずや現地で役に立つことでしょう。インドネシアと日本の発想法の違いと共通点を知ることが、インドネシア理解を大いに促進してくれることになるからです。ことわざは身を助けます。
すぐに読める面白い内容ですので、インドネシアにご関心のある方はぜひ!
目 次
「なぜいまインドネシアか?」
第1章 インドネシアに赴任して-驚きと経験
第2章 ご当地生活事情-いろいろあり過ぎて
第3章 私のインドネシア語修行-自分を外から眺める機会
-インドネシア語の学習
-呼び方と人間関係
-とっさの言葉
-インドネシア風発音
-間違いやすい言葉
第4章 ご当地駐在員心得-祖国への恩返し
-旅行と駐在の違い
-信頼関係を築くために
著者プロフィール
坂井禧夫(さかい・よしお)
1966年、京都市生まれ。1982年、航空自衛隊に入隊。1992年、航空自衛隊退職。1993年、民間企業の出向者としてインドネシアに赴任。2005年、帰国。現在はインドネシアで設立した会社を日本から営業面で支援している。法政大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。インドネシアから帰国後の現在は、自然治癒力回復スペース トリアーヴ(京都市)の院長。
<関連サイト>
自然治癒力回復スペース トリアーヴ(公式サイト)
・・「インドネシアから日本に帰国した坂井 禧夫(さかい・よしお)が治療院を開院しています。これまでは「電子機器の神経」を取り扱っていましたが、これからは「人間の神経」」を取り扱うことになりました。日本国内ではまだ法制化されていないアメリカ生まれのカイロプラクティックは代替医療としてようやく100年少しの歴史を持つまでになりました。comedical(コメディカル:医師・看護士以外の医療従事者)としての坂井をどうぞよろしくお願いします」(原文のまま) http://www.wakyomall.net/doc/torierve.html
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書評 『「海洋国家」日本の戦後史』(宮城大蔵、ちくま新書、2008)
書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)
・・ともに、タイトルには直接でてこないが、日本の戦後史とインドネシアが密接な関係にあったことも重要なテーマの一つである
書評 『帰還せず-残留日本兵 60年目の証言-』(青沼陽一郎、新潮文庫、2009)
・・とくにインドネシアで大東亜戦争を闘った一般兵士たちとインドネシア独立戦争について
(2012年7月3日発売の拙著です)
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