■「最強の中年男」を目指したい人に!
ジェームズ・ボンドはいうまでもなく英国秘密情報部部員。日本では「ゼロゼロセブン」として知られている『007』(ダブルオーセブン)シリーズの主人公。
ボンドの特徴は、パブリックスクールのイートン校出身でオックスフォード大卒という設定のアッパークラス。つねに一流を好み、美女にはモテモテ・・・ じつにうらやましかぎりですね。
といっても本書は、インテリジェンスの世界の入門書ではありません。仕事で一貫して英国とかかわってきた著者が語る、英国流の仕事術とライフスタイルにかんする読み物です。
ジェームズ・ボンドはもちろん架空の人物ですが、これほど、ステレオタイプの英国紳士像を保持しながらも、戦後世界のキャラクターとして生き続けた存在はないでしょう。同じ英国でも、シャーロック・ホームズよりも、意識したい存在でありますね。
著者が最初に勤務したのは日本に参入したばかりのヴァージン航空。なんと新卒第一号だそうです。ヴァージンといえば創業者リチャード・ブランソンの、「人を重視した破天荒な経営スタイル」と数々の冒険で有名ですが、本書で紹介されているブランソンの数々の言動は、ジェームズ・ボンドのセリフに劣らず、すばらしいものがあります。
その後は、英国ファッションを日本で販売する仕事に従事して、現在は英国グローブ・トロッター社取締役副社長です。英国企業の本社の取締役会も体験している人ならではの描写は読む価値があります。
「最強の中年男になりたいなら・・」、という帯のコピーが刺さります(笑)
目次から一部引用しておきましょう。
●ルールは自分で決める
●値段のわかるものを身につけない
●ウンチクは語らない
●冒険なくして、得るものなし
●つまらない人生を面白くする技術
●敵に弱みは見せるな
●何のためにボンドは働くのか
●女性の上司との付き合い方
●チームワークを絶対視しない
●プライベートは語らない
私は20歳代までアメリカかぶれでしたが、じっさいにアメリカに住んでみてからは、かならずしもそうならなくなりました。富士山と同じですね。
世界のビジネスの中心はいまでもアメリカですが、さすがにライフスタイルをアメリカ流にしたいとはいまは思いません。いまから思い出してみれば、高校時代は英国にあこがれていたのでした。
中年になるとふたたび英国流にあこがれるようになってくるものですね。数学者の藤原正彦氏も同じようなことを言ってますが、英国人自身も若い日は伝統に反抗しながらも、中年になったら伝統(トラディッショナル)に戻っていく存在なのかもしれません。
西洋文明を全面的に受け入れた日本も、また中年になったら英国流ということでしょうか。ともに伝統文化のなかに生きてきたことにおいては、英国人も日本人も似たようなものとと言っていいかもしれません。
戦前から英国スタイルが憧れの存在であった日本ですが、戦後はアメリカ流の大量生産一点張り、バブル期はイタリア流。しかし、英国ファッションを日本に紹介するビジネスに従事する著者によれば、イタリアスタイルは英国流のエッセンスを換骨奪胎したものなのだとか。
ひたすら若さばかり強調するアメリカには、いい「中年のモデル」がないのに対し、英国や欧州には「渋い中年」が多いのは、やはり「伝統」のなせるわざかもしれません。「大人の文化」がしっかりと根付いているということでしょう。
個人的には、なんといっても初代ジェームズ・ボンドのショーン・コネリーがいちばん「渋い」(cool)と思いますが、みなさんはいかがでしょうか?
なにはともあれ、人生カッコよく行きたいものです。英国流のモノの考えを、さまざまなエピソードや英語のフレーズをつうじて語った本書をおすすめします。
目 次
はじめに
第1章 ジェームズ・ボンドが教えてくれること
第2章 ジェームズ・ボんドの考え方
第3章 ジェームズ・ボンドの仕事術
第4章 ジェームズ・ボンドのファッション術
あとがき
参考文献
著者プロフィール
田窪寿保(たくぼ・としやす)
1966年、東京都生まれ。青山学院大学大学院国際経営学修士(MBA)修了。英国グローブ・トロッター社取締役副社長(日本支社社長兼任)、ブリティッシュ・ラグジュアリー・ブランド・グループ(BLBG)株式会社代表取締役、英国ターンブル・アッサー社、スウェイン・アドニー&ブリッグ社、スマイソン社、フォックス・アンブレラズ社、パトリック・コックス社などの日本代表、在日英国商工会議所(BCCJ)会員。1989年、英国ヴァージンアトランティック航空日本支社の就航時、オープニングメンバーとして入社(初の新卒採用)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
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