路線バスの運運転士が不足している。つり革広告の「急募」の文字がひときわ大きい。
この広告は千葉県鎌ヶ谷市に営業所のある新京成バスの広告ですが、この状況はこの会社に限定されるものではなく全国的なものでしょう。路線バスの運運転士が不足しているのは過疎地域だけではありません。
まさに地域住民の足となる路線バス。すべての人がクルマをもっているわけではない地域では、公共交通機関としての路線バスの存在はきわめて大きなものがあります。
ところが、大型免許の取得者が団塊世代の退職で労働市場から消えている、若年者のクルマ離れ(・・ましてや大型免許取得者の減少)などが、採用環境の悪化をもたらしているようです。
路線バスの運転手不足は、バス会社の問題を超えて、すでに社会問題化しているのではないでしょうか。マスコミでは建設労働者不足は話題になっていますが、サービス業全体で人手不足が深刻化しています。
上掲の広告には、「60歳以上の方も活躍しています!」とあります。たしかにシニア層に着目することは人手不足解消を考えるうえで重要なことです。
だが、だが、なぜ女性を積極的に募集・採用しないのでしょうか?
すでにタクシー運転手も、トラック運転手も、女性はけっしてめずらしい存在ではなくなってます。
「60歳以上の男性」もさることながら、「女性優遇!」としたら、人材確保の観点からもいいのにと、わたしなど思ってしまうのですが・・・。もちろん、そのための環境整備があ不可欠です。
路線バスは「地域密着型」の業種ですので、女性には向いていると思いますよ。シフトの組み方を工夫すれば、家事や子育てなど時間の制約があっても柔軟に対応できるのではないでしょうか。
大型免許(=二種免許)は女性の方が向いているという意見もあります。路線バスは、車体は大きいがスピードを出すわけではないので、細やかな心遣いのできる女性には向いているのだ、と。
シニアや女性も働きやすい環境をつくること、大型免許取得支援を行うこと。こういった施策は民間企業にもある程度までは取り組まなければならない課題でしょう。
とはいえ、人手不足のため「売り手市場」化しつつあるなか、今後はさらに賃金上昇があると考えなくてはなりません。
すでに社会問題化している以上、民間企業だけでは解決がむずかしくなっていることも否定できません。たとえば、男性自衛官もさつことながら、女性自衛官にも積極的に大型免許取得を推奨する制度を導入するなど、公的な支援策も必要かもしれません。
サービス業の人手不足状況は、今後ますますひどくなることが予想されます。バス運転士に限らず、運転手には外国人労働は期待できません。なぜなら、日本の道路標識には、漢字カナまじりの日本語しか書かれていからです。
労働者の立場から考えれば、運転手という分野は、日本語の読み書きができる人間にとっては、まず消えてなくなることのない業種であるといえます。
「大人になったらなにになりたい?」と聞かれたら、男の子は電車の運転手など、ドライバーになりたいと答えるのがあたりまえでした。
今後は、路線バスの運転士が憧れの業種となるよう、さまざまな媒体で取り上げていただくとよいと思います。女性が輝く職業なのだ、と。
そのためには、ロールモデルとなるような存在が必要でしょう。
<ブログ内関連記事>
書評 『なぜローカル経済から日本は甦るのか-GとLの経済成長戦略-』(冨山和彦、PHP新書、2014)-重要なのはグローバルではなくローカルだ!
地域密着型で成功した 「地域新聞」 というフリーペーパー(=無料紙)のビジネスモデルを知ってますか?
書評 『失われた場を探して-ロストジェネレーションの社会学-』(メアリー・ブリントン、池村千秋訳、NTT出版、2008)-ロスジェネ世代が置かれた状況を社会学的に分析
「昭和の働く女性-夢と希望と困難と-」(昭和館・東京九段下)は、見る価値ある企画展-「昭和」に限定されているのがちょっと残念だが・・
(2012年7月3日発売の拙著です)
ツイート
ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。
ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。
禁無断転載!
end