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2015年11月15日日曜日

書評 『仁義なき宅配-ヤマト vs 佐川 vs 日本郵便 vs アマゾン-』(小学館、2015)-宅配便の「送料無料」は持続可能なビジネスモデルか?



物流を専門分野にするジャーナリスト横田増生氏の新作『仁義なき宅配-ヤマト vs 佐川 vs 日本郵便 vs アマゾン-』(小学館、2015)を読んだ。

この本はじつに面白い。物流(=ロジスティクス)ほどリアルビジネスにとって重要な機能であるのにかかわらず、当事者を除けば一般的な関心が低く、そのためあまり書かれることのない分野はほかにないからだ。

これまで著者が発表してきた『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』や『ユニクロ帝国の光と影』は、物流そのものではなく、ビジネスモデルのなかに物流を組み込んでいる企業であった。だが、最新刊の『仁義なき宅配』においては副題にあるとおり、業界二強のヤマトと佐川急便、そして復活してきた日本郵便に焦点をあてて深堀りしている。

この本を読むと、アマゾンを代表とする「送料無料」モデルの業者が求める過酷な競争条件が運賃低下をもたらし、そのしわ寄せが現場に集中していることが手に取るようにわかる。運賃の低価格化は、現場労働者の賃金低下をもたらすのである。宅配便のドライバーや、配送センターの仕分け作業員の現場が疲弊する理由はここにある。

このままでは「宅配便」という社会インフラが持続可能でなくなるばかりか、「送料無料」を前提にしたビジネスモデルが見直しを図られることが間違いない。

この本に書かれている実態を知れば、誰もがそう思うのではないか? 著者自身、ヤマトの「羽田クロノゲート」にアルバイトとして1ヶ月間夜勤で働いている。企業礼賛を目的とした提灯本とはまったく異なる結論が、この潜入取材から導き出されている。

ビジネスパーソンだけでなく、宅配便を利用する側の消費者にとっても、読むに値する内容であるといってよいだろう。




目 次

まえがき
第1章 迫り来る "宅配ビッグバン"
第2章 佐川「下請けドライバー」同乗ルポ
第3章 「風雲児」佐川が成り上がるまで
第4章 ヤマトはいかにして「覇者」となったか
第5章 日本郵便「逆転の独り勝ち」の真相
第6章 宅配ドライバーの過労ブルース
第7章 ヤマト「羽田クロノゲート」潜入記
終章 宅配に "送料無料" はあり得ない
あとがき


著者プロフィール

横田増生(よこた・ますお)

1965年福岡県生まれ。アイオワ大学ジャーナリズムスクールで修士号。1993年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務め経済の水脈とも言える物流から企業を調査・評価するという技術と視点を身につけた。1999年10月にフリーランスに。2005年に発表した『潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影』ではアマゾンの物流センターで半年間実際に働き、ウェブ時代における労働の疎外を活写して話題になった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。





<関連サイト>

著者は語る(週刊文春) 物流業界の光と影 『仁義なき宅配 ヤマトvs佐川vs日本郵便vsアマゾン』 (横田増生 著)


<ブログ内関連記事>

書評 『ユニクロ帝国の光と影』(横田増生、文藝春秋社、2011)-ユニクロのビジネスモデルを物流という観点から見たビジネス・ノンフィクション

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・

『JAL崩壊-ある客室乗務員の告白-』(日本航空・グループ2010、文春新書、2010) は、「失敗学」の観点から「反面教師」として読むべき内容の本




(2012年7月3日発売の拙著です)









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2014年10月27日月曜日

路線バスの運転手不足はすでに社会問題化している-シニアだけでなく女性の活用を!


路線バスの運運転士が不足している。つり革広告の「急募」の文字がひときわ大きい。
     
この広告は千葉県鎌ヶ谷市に営業所のある新京成バスの広告ですが、この状況はこの会社に限定されるものではなく全国的なものでしょう。路線バスの運運転士が不足しているのは過疎地域だけではありません。
    
まさに地域住民の足となる路線バス。すべての人がクルマをもっているわけではない地域では、公共交通機関としての路線バスの存在はきわめて大きなものがあります。

ところが、大型免許の取得者が団塊世代の退職で労働市場から消えている、若年者のクルマ離れ(・・ましてや大型免許取得者の減少)などが、採用環境の悪化をもたらしているようです。

路線バスの運転手不足は、バス会社の問題を超えて、すでに社会問題化しているのではないでしょうか。マスコミでは建設労働者不足は話題になっていますが、サービス業全体で人手不足が深刻化しています。
    
上掲の広告には、「60歳以上の方も活躍しています!」とあります。たしかにシニア層に着目することは人手不足解消を考えるうえで重要なことです。

だが、だが、なぜ女性を積極的に募集・採用しないのでしょうか?
     
すでにタクシー運転手も、トラック運転手も、女性はけっしてめずらしい存在ではなくなってます。
    
「60歳以上の男性」もさることながら、「女性優遇!」としたら、人材確保の観点からもいいのにと、わたしなど思ってしまうのですが・・・。もちろん、そのための環境整備があ不可欠です。
     
路線バスは「地域密着型」の業種ですので、女性には向いていると思いますよ。シフトの組み方を工夫すれば、家事や子育てなど時間の制約があっても柔軟に対応できるのではないでしょうか。

大型免許(=二種免許)は女性の方が向いているという意見もあります。路線バスは、車体は大きいがスピードを出すわけではないので、細やかな心遣いのできる女性には向いているのだ、と。

シニアや女性も働きやすい環境をつくること、大型免許取得支援を行うこと。こういった施策は民間企業にもある程度までは取り組まなければならない課題でしょう。

とはいえ、人手不足のため「売り手市場」化しつつあるなか、今後はさらに賃金上昇があると考えなくてはなりません。

すでに社会問題化している以上、民間企業だけでは解決がむずかしくなっていることも否定できません。たとえば、男性自衛官もさつことながら、女性自衛官にも積極的に大型免許取得を推奨する制度を導入するなど、公的な支援策も必要かもしれません。

サービス業の人手不足状況は、今後ますますひどくなることが予想されます。バス運転士に限らず、運転手には外国人労働は期待できません。なぜなら、日本の道路標識には、漢字カナまじりの日本語しか書かれていからです。

労働者の立場から考えれば、運転手という分野は、日本語の読み書きができる人間にとっては、まず消えてなくなることのない業種であるといえます。

「大人になったらなにになりたい?」と聞かれたら、男の子は電車の運転手など、ドライバーになりたいと答えるのがあたりまえでした。

今後は、路線バスの運転士が憧れの業種となるよう、さまざまな媒体で取り上げていただくとよいと思います。女性が輝く職業なのだ、と。

そのためには、ロールモデルとなるような存在が必要でしょう。






<ブログ内関連記事>

書評 『なぜローカル経済から日本は甦るのか-GとLの経済成長戦略-』(冨山和彦、PHP新書、2014)-重要なのはグローバルではなくローカルだ!

地域密着型で成功した 「地域新聞」 というフリーペーパー(=無料紙)のビジネスモデルを知ってますか?

書評 『失われた場を探して-ロストジェネレーションの社会学-』(メアリー・ブリントン、池村千秋訳、NTT出版、2008)-ロスジェネ世代が置かれた状況を社会学的に分析

「昭和の働く女性-夢と希望と困難と-」(昭和館・東京九段下)は、見る価値ある企画展-「昭和」に限定されているのがちょっと残念だが・・




(2012年7月3日発売の拙著です)










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2011年4月1日金曜日

機会均等(きょうのコトバ)-「男女雇用機会均等法」施行から25年

  
 本日は、1986年4月1日に 「男女雇用機会均等法」(通称 均等法)が施行されてから 25年になります。

 なんと、もう四半世紀(!)がたちました。「均等法」が成立した年に社会人になり、「組織人事」からキャリアをスタートした私には、じつに感慨深いものがあります。

 とくに「雇用における機会均等」は、「教育における機会均等」とならんで重要ですね。

 スタートラインの時点で差別することなく、きちんとチャンスを保証すれば、あとは本人の努力と運次第。そういう基本的な哲学が、 「機会均等」(equal opportunity)というコトバの背景にあるわけです。

 「男女雇用機会均等法」は、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」が正式名称ですが、1999年4月1日の改正により、募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇において、男女差をつけることが禁止となりました。

 すでに「雇用における機会均等」はあたりまえのことですが、25年前はまだまだこの法律に反対する人たちが多くいたということを知ってほしいと思います。

 あらためて法律制定の意味について考える機会となれば幸いです。


<関連サイト>

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(法務省 法令データ提供システム フレーム版)

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和六十一年一月二十七日労働省令第二号)(法務省)


P.S. ご挨拶

 ケン・マネジメント設立から本日で満1年になります。
 今後もよろしくお願いいたします。




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