昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の最終回みましたか?
さて、昨日(5月6日)の放送は、「みなみは高校野球に感動した」というタイトル。
クライマックスとなる「決勝戦」、ほぼ100%「青春ドラマ」になってましたね。青春ドラマですから、あまり難しいことは考えずに、「感動」に浸るのもまたいいでしょう。さすがに10回もつづけて視聴していると、アタマのなかで「♪夢ノート~」ではじまる主題歌が鳴り響くようになっています(笑)。
ドラッカーの『マネジメント』に導かれて「やるべきことをやってきた」野球部は、見事に「結果」を出しました。物語の世界、なんといってもハッピーエンドはいいものですね!
これまでの放送内容を、わたしがつけたサブタイトルをもとに振り返っておきましょう。
第1回放送:ゴール設定の重要性、真摯(しんし)さというマネージャーの資質・・
第2回放送:「組織変革」 と 「インターナル・マーケティング」のドラマ
第3回放送:マネジメントは「ヒト」を中心に!..人的資源と目標管理
第4回放送:イノベーションとはあたらしい価値をもたらす変化のこと
第5回放送:イノベーションという仮説はデータで検証する
第6回放送:「戦略実行」 のカギは 「ヒト」 という経営資源
第7回放送:成果を出すためのプロセスがマネジメント
第8回放送:セルフマネジメントと個人と組織の問題
第9回放送:マネジメントと個人のモチベーション
とはいえ、甲子園出場を「ゴール」に設定してきた野球部、目的を達成してしまったいま、これからいったいどのような「ゴール」を再設定し、どのような戦いを甲子園で展開していくのでしょうか?
キャプテンはインタビュアーの質問に対して、この問いに対して直接に解答はせず、「見る人がしてほしいような野球をやる」といってましたね。
顧客にマーケティングし、高校野球界にイノベーションをもたらすことを野球部のミッションにしているからこそ、次のゴール設定がに言及しなくて、このような発言をすることができたということができるかもしれません。
ここで、ミッションの重要性が浮上します。使命感あるいは使命。ここでいっているのは組織としての野球部の使命です。
このミッションは明文化したものではないにせよ、また理解の度合いがメンバーの間で濃淡の差があるにせよ、ミッションが明確で共有されていれば、組織にはブレがないのです。
組織にブレがなければ、戦略実行に際してもブレがなくなると同時に、臨機応変の戦術対応も可能となってくるのです。最終回にはセーフティバンドで出塁するシーンがありましたよね。バンドであっても、「ノーバンド、ノーボール」戦略には反していないのです。
ところで、ふたたび「顧客」というコトバがでてきましたが、ここでいう「顧客」とはいったい誰を指しているのでしょうか?
正直なところ、わたしからみると、このドラマはこの点が「ツメが甘い」という感じをもたざるをえません。「顧客」が誰を指しているのかはっきりしていないので、どうしても話がまた振り出しに戻ってしまいます。
外部の顧客にむけてのマーケティングなのか、内部の顧客、すなわ構成メンバーにむけてのインターナル・マーケティングなのか?
外部の顧客であれば、野球部を応援してくれる人たちなのか、選手の友人たちや父兄たちなのか、高校のある地域の人たちなのか、高校野球界全体なのか・・・。ステークホールダーという考えを導入すると、顧客が誰かという答えが明確になってくるでしょう。
いずれにせよ、「顧客の範囲」を明確にしておかないとピンぼけしてしまいます。まずは、すでに明確となっている「顕在顧客」が誰か、まだ明確になっていないがポテンシャルである「潜在顧客」はだれか、この範囲(スコープ)を明確にしておくことも重要です。「~のために」の「~」は誰かといいかえてもいいでしょう。
「顧客の定義」が明確にならないと、いくら努力しても間違った方向にマーケティグし、ピントはずれのイノベーションをしてしまう危険さえあります。それでは結果がでるどころかチームは空中分解、「何のために」とい本質論からはずれてしまいます。
高校生がここまで突き詰めてしまうと、ちょっと引いてしまうかもしれませんが・・(笑)。あくまでもドラマですから、それはそれでよしとしておきましょう。
ドラッカーの『マネジメント』に導かれた野球部のマネジメント革新は成功しましたが、実際にみなさんが自分のいる組織で応用していくためには、重要なコンセプトをひとつひとつ確認して、定義を行っておくことが不可欠です。
「顧客創造」と、そのためのマーケティングとイノベーション。これがドラッカー経営学のエッセンスですが、「顧客」とは誰をさしているのかの定義、これを抜きにしては、ほんとうのマネジメントはできない、ということは肝に銘じておいてほしいものです。
おそらく、このアニメはこれから何度も再放送されることになると思いますし、またいろんな機会でディスカッションの材料として取り上げられることもあると思います。
生きるうえで「素直さ」は大事なことですが、このドラマをみて「感動した!」で終わりにしてしまうのではなく、どんなことであれ疑問をもって、自分のアタマで考え抜いてほしいと、わたしは期待しています。
もちろん、100人いれば 100通りのものの見方があります。ここに書いたのは、あくまでもわたしのものの見方です。大事なことは、自分がかかわっている組織で「マネジメント」の考えを応用しながら、実践と理論の往復運動をつねに行うこと。
ドラッカーがいうように、「マネジメントは現代人の教養」となるべきものだからです。
マネジメントを「常識」として受取り、ドラッカーの名前をださなくても実践ができるようになったとき、そのときはじめて「マネジメント」を勉強した甲斐(かい)があったといっていいのではないでしょうか。
ともに研鑽(けんさん)を積んでいきましょう!
(終わり)
<関連サイト>
『もしドラ』(NHKアニメワールド)
<ブログ内関連記事>
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第1回放送(4月25日)のおさらい
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第2回放送(4月26日)のおさらい-「組織変革」 と 「インターナル・マーケティング」のドラマなのだ
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第3回放送(4月27日)のおさらい-マネジメントは「ヒト」を中心に!
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第4回放送(4月28日)のおさらい-イノベーションとはあたらしい価値をもたらす変化のこと
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第5回放送(4月29日)のおさらい-イノベーションという仮説はデータで検証する
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第6回放送(5月2日)のおさらい-「戦略実行」 のカギは 「ヒト」 という経営資源
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第7回放送(5月3日)のおさらい-成果を出すためのプロセスがマネジメント
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第8回放送(5月4日)のおさらい-セルフマネジメントと個人と組織の問題
NHKのアニメ 『もしドラ』 の第9回放送(5月5日)のおさらい-マネジメントと個人のモチベーション
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