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2014年5月15日木曜日

書評 『世界の経営学者はいま何を考えているのか-知られざるビジネスの知のフロンティア-』(入山章栄、英治出版、2012)-「社会科学」としての「経営学」の有効性と限界を知った上でマネジメント書を読む


出版当時、アメリカのビジネススクールでアシスタント・プロフェッサー(准教授)の職にあった著者が書いた本です。著者は現在は日本に戻っています。

積ん読状態だったこの本は、買ってから一年以上たてからやっと読みましたが、思ってた以上にこの本は面白い。ただし、読者によって面白さの意味は違うと思います。

わたしはまず、「ドラッカーなんて誰も読まない!?  ポーターはもう通用しない!?」という帯のキャッチコピーにまず引きつけられました。


■ドラッカーに言及する「経営学者」が英語圏にはいない理由

というのも、すでにこのブログでも、2011年5月11日水曜日付けの記事で ドラッカーは時代遅れ?-物事はときには斜めから見ることも必要 と題して書いてます(・・本書が出版された2012年11月の一年半以上前です!)。ここにエビデンス(証拠)として提示致します。

わたしはちょうど 1990年から2年間、米国の大学院で M.B.A.(経営学修士号)コースにいましたが、その2年のあいだ、ドラッカーの「ド」の字も聞いたことがありませんでした。

その理由は、現実のビジネスにおいても時代遅れになっているからという側面が大きいから。大前研一氏の発言を引いてありますのでご参照いただきたいと思います。

ドラッカーは「マネジメント」という概念をつくった先駆者の一人ですが、本人はあくまでも自分のことを「社会生態学者」と規定しており、「経営学者」とは名乗っていませんでした。その本質においてドラッカーは「思想家」というべきでしょう。

『ビジョナリー・カンパニー』(日経BP社、1995)で有名なジム・コリンズはドラッカーの後継者であることを自他ともに認めていますが、現在では大学の世界からは完全に足を洗って著述家になっています。

本書の記述によれば、ドラッカーに言及する人はアメリカの「経営学者」にはまったくいないのです。ドラッカーは「思想家」としては現在でも重要ですが、最先端の経営にはもはや応用不可能である、といってもいいでしょう。

いわゆる「日本的経営」の形成に、ドラッカー経営学が与えた思想的な意味合いが大きかったことは否定できません。むしろ大いに意味があったというべきでしょう。ドラッカー経営思想が米国よりも、ここ日本においてこそ定着したことは否定できない事実です。ドラッカー自身も浮世絵の収集家でしたので、日本訪問が楽しみだったようです。

ドラッカーはマネジメントという概念をはじめて体系化した古典として読まれていくでしょうが、「経営学者にとっての経営学ではない」(!)という認識は、知っていてけっして損ではないはずです。ドラッカー命の方々も、いずらに反発するのは無意味だといえましょう。


■扱うテーマはあまりにも広すぎるのだが・・・

本書がカバーする範囲が広いのは、著者がいう「世界の経営学」においては最先端の研究テーマからトピックを網羅的に取り上げているからです。

日本人読者にも関心の高いと思われる競争戦略、イノベーション、組織学習、ソーシャル・ネットワーク、M&A、グローバル経営、国際起業、リアル・オプション、コーポレートベンチャー投資などのトピックスを取り上げ、英語の学術論文の裏付けのある議論を行っています。

わたし的には、やや総花的に過ぎるかなという印象をもちますが、最先端の研究テーマが何であるかを知るには、ちょうどいいかもしれません。もっと深掘りしてほしいテーマもありますし、全体の構成としては「理論編」と「テーマ別トピックス」に分離したほうがよかったのではないかとも思いますが。

基本的には、経営の現場では「常識」として語られている話題です。それを実証研究によって裏付けをするというのが「経営学」の役割であるということが本書を読むと理解できます。

とはいえ、「経営学」という学問は、あくまでも「跡付け」に過ぎない、という印象をぬぐい去ることができません。それがわたしの正直な感想です。「裏付け」はあくまでも「跡付け」という形でしかありえないのであり、ビジネスの「現場」とはスピード感がまったく違います。

ただし、ビジネスの現場においては試行錯誤(・・いわゆる Leaning by Doing: 失敗と成功体験から学ぶ) が可能ですが、ビジネスパーソンには過った前提に基づいた思い込みや予見といったものがつきまとうことも否定できません。そのため、意志決定を過ることが後を絶たないのも事実。

かならずしも因果関係は明らかではなくても、事象と事象のあいだに相関関係があれば実行してしてしまうというのが経営の実践の場での行動ですが、ビッグデータ時代はこれがさらに加速しています。

その意味では、経験の浅いビジネスパーソンにとっては本書は有用な読み物であるといっていいでしょう。すでにビジネスとマネジメントを現場で実践している人にとっては、「まあ、そんなもんか」と受け取る程度でよいのではないか、と思うわけです。トピックとしては知的関心をそそるものもありますが。

おなじ経営学者が書いた論文であっても、一般ビジネスパーソン向けに経営雑誌に発表される「雑誌論文」と、専門誌に査読を経て投稿される「学術論文」とは違うということです。

後者の「学術論文」は、一般のビジンスパーソンが読むことはあまりないので、「学術論文」として取り上げられたテーマを知ることができるという点に本書の意義があります。


■「経営学」は「社会科学」である-ベースは経済学・心理学・社会学

本書で強調されているのは、「経営学」は「社会科学」であるということです。

ただし、英語圏でいう「社会科学」(ソーシャル・サイエンス)は、日本でいう「社会科学」とは異なり、あくまでも「科学」であり、統計学をもちいた実証研究が中心で、理論志向の強い「学問」であるということです。

経営コンサルタントや経営評論家やジャーナリストがビジネス書と経営書で書いたり、テレビや講演でしゃべっている内容と違うのもあたりまえなのです。「経営学」はあくまでも「学問研究」であるというのはそういうことです。

本書を読むうえで気をつけなくてはいけないのは、タイトルにもなっている「世界の経営学」とは、英文論文の世界で展開されている「経営学」だということです。日本語で執筆された論文のなかで展開されている「日本の経営学」ではないということです。後者は、いわばローカルな世界ということですが、日本人が英文で発表した論文は「世界の経営学」というカテゴリーのなかに分類されることになります。

わかりやすくするために、やや図式的に描いてますが、ローカルな「日本の経営学」が事例研究を中心とした記述的なものが多いのに対し、グローバルな「世界の経営学」は統計分析で実証したエビデンス・ベースのものが多いということになります。すくなくとも事例研究中心のアプローチは「世界の経営学」では主流ではないということのようですね。

先にも書きましたが、わたしがアメリカのMBAコースで学んだ1990年初頭においても、英語圏でいう「経営学」とは基本的にそういうものでした。授業ではHBS(ハーバード・ビジネススクール)作成のケース(=事例研究)が使用されていましたが、テキストのほかに大量に読まされる論文は、まさに本書で取り上げられているようなものばかりでありました。

経営学のディシプリン(・・専門学科)は、① 経済学、② 心理学、③ 社会学 の3つのいずれかあると本書には書かれています。経営学にはそれ自身の理論体系はないのです。実践の学である以上、それは当然というべきかもしれません。実践としての政治と学問としての政治学の関係も似たようなものでしょう。

会計学や貿易論など実務をベースにした「商学」が長い歴史をもっているのに対して、「経営学」はあたらしい学問であるということです。社会学じたい、まだまだ歴史のあたらしい学問ですが、経営学はそれに劣らずあたらしいということです。

著者も「第6章 「両利きの経営」」で指摘していますが、経済学、心理学、社会学という3つのディシプリン以外の周辺諸科学にも目を向けるべきだと思います。「深さ×幅の広さ」が大事なことは、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』で述べていることと同じです。

ビジネスパーソンにもっとも必要なものは、狭くて深い「専門知識」と広くて浅い「雑学」。これが、ビジネスマンとして25年以上やってきた私の実感です。「専門知識」と「雑学」のふたつが両輪になってこそ、ビジネスだけでなく人生もまた豊かになるのです。

これは、拙著の「まえがき」の最初の一文です。「学問としての経営学」でいえば、「専門」とは3つのディシプリンのいずれかであり、「雑学」とは「専門」以外の森羅万象となるわけです。後者の「雑学」の幅の広さがテーマ選定にあたってモノをいうことは言うまでもありません。


■本書で指摘されている理論的側面について

わたしが面白いと思ったテーマは以下の3つです。すなわち、「トランザクション・メモリー」と「見せかけの因果関係」、それから「経営理論とは何か」というテーマです。

読む人によって、興味の対象が異なるでしょうが、多くの人と同様に「トランザクション・メモリー」はひじょうに面白い議論だと思います。

「トランザクション・メモリー」は、第5章で取り上げられていますが、組織に「記憶」があるという文言はオカルト的ではないか(?)といいう印象をもちます。なぜなら、「記憶」はあくまでも個体のものであり、個人個人の「記憶」が集合的になっているということに過ぎません。

組織は生物学のアナロジー(比喩)で語ることはできますが、組織じたいには意志はない。そう見えるだけの話であって、あたかも組織に意志があるように見るのはオカルト的で危険な発想でしょう。あくまでもアナロジーと捉えるべきです。組織そのものにはDNAなどありません。社会学や社会心理学の立場からはあり得ない話です。

1980年代後半には、ビジネス界ではすでに「ノウハウ(know-how)よりもノウフー(know-who)だ」と言われていたことであり、「情報を知っている誰か(who)を知っていること」が重要だという発想そのものには、とくに新規性はないのです。いまどきの若い読者はそんなことはまったく知らないでしょうが。

これにくらべると、第6章で取り上げられている「見せかけの因果関係」のほうが、はるかに重要な問題です。ここでは詳しい説明は省略しますが、「内生性」(endogeneity)についての議論はきわめて重要です。ただし、英語圏では常識となっている、ヒュームの因果関係の議論についての言及がまったくないのは不思議に思いますが。

そして、第15章で取り上げられている「経営理論とはなにか?」という議論は、ビジネスには直接関係ないかもしれませんが、経営学も含めた「社会科学」の「理論」の意味を考えるうえで不可欠な議論です。ここでは、かの有名な哲学者カール・ポパーの「反証可能性」の議論が紹介されています。

このほか、概念レベルの理論と実証は別物であること、経済学の数学とは異なる「自然言語」を使用する経営学の意味、論理学と科学哲学をベースにしたトレーニングの必要など、著者の意見にはまったく賛成です。

経営学という学問が自然科学と異なるのは、経営現象はつねに現実の方が理論に先行するという点。学問が可能なのは、現実を理論的に位置づけることに限定されるのです。

後付けの学問である「経営学」の有効性と限界を知った上で、本書を読むことは意味あることです。ビジネス書ではなく、たまにはこういったマネジメント書を読んでアタマを整理するする必要があるのはそのためなのです。






目 次

この本を手にされた方へ

PARTⅠ これが世界の経営学
 第1章 経営学についての三つの勘違い
 第2章 経営学は居酒屋トークと何が違うのか
 第3章 なぜ経営学には教科書がないのか

PARTⅡ 世界の経営学の知のフロンティア
 第4章 ポーターの戦略だけでは、もう通用しない
 第5章 組織の記憶力を高めるにはどうすればよいのか
 第6章 「見せかけの経営効果」にだまされないためには
 第7章 イノベーションに求められる「両利きの経営」とは
 第8章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(1)
 第9章 経営学の三つの「ソーシャル」とは何か(2)
 第10章 日本人は本当に集団主義なのか、それはビジネスにはプラスなのか
 第11章 アントレプレナーシップ活動が国際化しつつあるのはなぜか
 第12章 不確実性の時代に事業計画はどう立てるべきか
 第13章 なぜ経営者は買収額を払い過ぎてしまうのか
 第14章 事業会社のベンチャー投資に求められることは何か
 第15章 リソース・ベースト・ビューは経営理論といえるのか

PARTⅢ 経営学に未来はあるか
 第16章 経営学は本当に役に立つのか
 第17章 それでも経営学は進化しつづける

この本を読んでくださった方へ


著者プロフィール

入山章栄(いりやま・あきえ)
1996年慶應義塾大学経済学部卒業。1998年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年よりニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサーに就任し、現在に至る。専門は経営戦略論および国際経営論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

勉強もスポーツも、基礎から学ぶとつまらない 最先端を理解した気分になることが成長の糧に(気鋭の経営学者がいま伝えたいこと 第1回) (入山章栄×琴坂将広、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー、2014年8月29日)

「ぶっちゃけ、経済学は経営学を下に見ている」 なぜ経営学と経済学の議論は噛み合わないのか(気鋭の経営学者がいま伝えたいこと 第2回)  (入山章栄×琴坂将広、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー、2014年9月1日)

現代版「ナッシュ均衡」は発掘できるのか 評価軸の明確化で生まれる可能性とリスク(気鋭の経営学者がいま伝えたいこと 第3回) (入山章栄×琴坂将広、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー、2014年9月3日)

日本の経営学が海外に劣っているわけではない 良し悪しではなく、それぞれの違いを理解する (気鋭の経営学者がいま伝えたいこと 最終回)  (入山章栄×琴坂将広、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー、2014年9月 日)



<ブログ内関連記事>

書評 『ヤバい経営学-世界のビジネスで行われている不都合な真実-』(フリーク・ヴァーミューレン、本木隆一郎/山形佳史訳、東洋経済新報社、2013)-これがビジネス世界の「現実」というものだ

「君臨する企業の法則:日本への教訓-マイケル・クスマノ MITスローンスクール教授)講演会のお知らせ(2012年1月17日:無料 事前予約)

人生の選択肢を考えるために、マックス・ウェーバーの『職業としての学問』と『職業としての政治』は、できれば社会人になる前に読んでおきたい名著
・・「実践」としての政治と「学問」としての政治学は、まったく別物である

ドラッカーは時代遅れ?-物事はときには斜めから見ることも必要

『「経済人」の終わり』(ドラッカー、原著 1939)は、「近代」の行き詰まりが生み出した「全体主義の起源」を「社会生態学」の立場から分析した社会科学の古典
・・ドラッカーは「思想家」として読むべきなのだ

レビュー 『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』(アップリンク、2010)-ドラッカー自身の肉声による思想と全体像

月刊誌 「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2013年11月号の 「特集 そして、「理系」が世界を支配する。」は必読!-数学を中心とした「文理融合」の時代なのだ
・・因果関係よりも相関関係を重視するのが統計学の世界

書評 『1億人のための統計解析-エクセルを最強の武器にする-』(西内啓、日経BP社、2014)-ビジネスパーソンなら誰もが使えるはずのエクセルでデータ分析が可能となる

(2015年12月27日 情報追加)



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end

2011年5月11日水曜日

ドラッカーは時代遅れ?-物事はときには斜めから見ることも必要


 「ドラッカー・ブーム」というものがあります。これは出版元であるダイヤモンド社が仕掛けたものですが、今回もこのブームもまた、じつにうまく当たったといっていいでしょう。企画の勝利といってもいいですね。

 今回は、装丁を立派にした全集のような体裁で出版して、まさに「古典」というイメージを全面に出す一方、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海、ダイヤモンド社、2010)、通称『もしドラ』などという、奇想天外な設定の小説も同時にぶつけて、思わぬ(・・いや想定内の?)成功を収めました。

 『もしドラ』の著者の岩崎夏海氏はもともと、作詞家でプロデューサーの秋元康氏の下で、AKB48のプロデュースにかかわっていたらしいですね。AKB48も『もしドラ』も、ヒット商品を作り出す方法論にもとづいた作品なわけなのです。

 ドラッカーそのものは別にして、企画の成功のストーリーとしては実に興味深いものがありますね。

 わたしは前回の「ドラッカー・ブーム」のときに、ドラッカーとは本格的に出会いました。1996年頃ですから、いまから 15年前のことです。

 それまで訳者がバラバラだったドラッカーの著作を、長年ドラッカーを読み込んできた、経団連広報部にいた「上田惇生氏による個人訳で統一」、実に読みやすい日本語になって、「ドラッカー選書」というシリーズのソフトカバー廉価版として出版されました。ただし、訳語については、integrity の訳語など賛成しかねるものもなくはありませんが。

 わたしはこのエディションで、ほぼすべてを持っています(・・上掲写真)。ただし、すべてを読み込んだわけでは、もちろんありません。

 日本でこれだけドラッカーが受け入れられているのは、ドラッカーの経営思想もさることながら、この思想を普及するために、多くの人たちがかかわってきたことも大きいでしょう。

 ドラッカーの生前には、日本の経営者との交流も多く、わたしなどもリアルタイムでそういった対談など読んでいたものでした。第二次大戦後の高度成長期の日本的経営の形成にドラッカーが与えた影響はきわめて大きなものがあったといっても言い過ぎではないと思います。

 ドラッカー自身、無類の浮世絵収集家であったということも、大きいかもしれません。

 ただ、ドラッカーにかんしては、ややシニカルな見方もあることは知っておいて損はないと思います。たとえばこのようなものがあります。


■『もしドラ』を肴に語り合ったホリエモンと編集者の対話が面白い

 雑誌 BRUTUS (ブルータス) 2011年 1/15号 「特集 本-2011年、「世の中」を考える175冊。」で、ホリエモンこと堀江貴文(作家・実業家)と宇野常寛(批評家・編集者)が、『もしドラ』を俎上に乗せて、次のようなことを語り合っています。

宇野 『もしドラ』の中心読者と思われる30代サラリーマン男性は、出版業異界ではよく「ビジネス書しか読まない」と揶揄(やゆ)されます・・(略)・・
堀江 でもドラッカーの『マネジメント』なんて、普通ならわざわざ読まないよね。この表紙、とりあえず「萌えキャラ」が売れているから描いておくか、みたいなことないですか?

 『もしドラ』はドラマとしてはよくできていますが、女子高校生がドラッカーの『マネジメント』を読むなんて想定はあまりにも奇想天外という感想をもっている私には、この二人の発言、とくに堀江貴文氏の率直な反応には同感です。

 また、対談の最後では、ふたたびこのように語り合っています。

宇野 最初に言ったとおり、ドラッカーブーム自体はある程度、サラリーマンのヒーリングの側面が大きかったわけですからね。
堀江 ドラッカーなんて20世紀型社会のマネジメント手法だから、いい加減もういいんじゃないの?と僕は思ってしまいますけどね。
・・(中略)・・
堀江 勝手にみんなが自律してやってくれる。僕は、逆にマネジメントなんかしなくてもいい組織が理想なんです。個人が活躍し、また小集団がコラボして、という時代がもう来てるんだと思いますよ。

 「マネジメントなんかしなくてもいい組織が理想」とは、非常にいいことを言っているなと感心します。私はこの二人の言うこと、とくに堀江貴文氏のこの発言には全面的に賛同します。

 ただし、まだまだ理想という段階でしょう。そこまで自立しており、自律して動けるビジネスパーソンはまだまだ少ないのでは?

 先日、最高裁が上告を却下しましたので、「マネジメントなんかしなくてもいい組織」の実践ができなくなったのは、本人にとってはまことにもって不本意なことでしょう。


■「ドラッカー・ブーム」について

 ドラッカー好きの経営者といえば、ユニクロの柳井会長をあげる必要があるでしょう。愛読書はドラッカ-で、折りに触れて何度も何度も読み返しては、あらたな気づきを得ているとのことです。

 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)という共著で、大前研一氏は、この柳井氏のドラッカー発言について、かつて講演会でともにしたことが何度もあるといい敬意を表しつつも、1980年以降なぜ米国でドラッカーが読まれなくなったかについて、貴重なコメントを行っています。引用しておきましょう。

ただし、ドラッカー哲学は1980年代に入ると、アメリカの経営トレンドのなかでは次第に人気がなくなりました。なぜなら、実際の経営者は彼が定義する優れた経営者像からはほど遠く、それでいてアップルのスティーブ・ジョブスやマイクロソフトのビル・ゲイツら、ドラッカーの法則に当てはまらない "自由奔放" な経営者が続々と登場したからです。・・(中略)・・ところが賢明なドラッカーはそれをいち早く察知して、経営哲学でお説教するスタイルからイノベーションに方向転換し・・・(後略) (P.106)

 これは、わたしの実体験の裏付けになっています。わたしはちょうど 1990年から2年間、米国の大学院で M.B.A.(経営学修士号)コースにいましたが、その2年のあいだ、ドラッカーの「ド」の字も聞いたことがありませんでした。

 ドラッカー経営思想が米国ではよりも、ここ日本においてこそ定着した理由が、この発言からもうかがうことができると思います。

 つまり、日本では多くの経営者がドラッカー思想を理解し、実践したからこそ、1970年代から80年代にかけての日本がアメリカを打ち負かすまでの勢いをもったのですね。

 いわゆる「日本的経営」の形成に、ドラッカー経営学が与えた思想的な意味合いが大きかったということです。

 ドラッカーはマネジメントという概念をはじめて体系化した古典として読まれていくでしょうが、現実世界では日本的経営もすでに過去のものとなり、ドラッカーも古典となっていったわけです。

 わたしは、ドラッカーについては「経営学者」もさることながら、むしろ非営利組織の経営や、知識社会の考察といった「社会生態学者」としての業績にもっと注目が集まるべきだと考えています。その面でのドラッカーの功績はきわめて大きなものがありますので。





<ブログ内関連記事>

雑誌 BRUTUS (ブルータス) 2011年 1/15号 「特集 本-2011年、「世の中」を考える175冊。」 を読む

書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)
レビュー 『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』(アップリンク、2010)

書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)

書評 『馬の世界史』(本村凌二、中公文庫、2013、講談社現代新書 2001)-ユーラシア大陸を馬で東西に駆け巡る壮大な人類史
・・「英国ではイタリアの馬術書の影響が深まるにつれて management(マネジメント)というコトバが生まれたという事実だ。英語の management はイタリア語の maneggiare から派生したそうだが、もともとはラテン語の manus(手)に由来するという。management とは馬を手で扱うことを意味したのだそうだ。経営は馬の世話から始まったのだ!」

(2014年5月11日 情報追加)






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2011年5月7日土曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 最終回(5月6日)後に全10回のおさらい-ミッションの重要性と「顧客」は誰か?


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の最終回みましたか?

 さて、昨日(5月6日)の放送は、「みなみは高校野球に感動した」というタイトル。

 クライマックスとなる「決勝戦」、ほぼ100%「青春ドラマ」になってましたね。青春ドラマですから、あまり難しいことは考えずに、「感動」に浸るのもまたいいでしょう。さすがに10回もつづけて視聴していると、アタマのなかで「♪夢ノート~」ではじまる主題歌が鳴り響くようになっています(笑)。

 ドラッカーの『マネジメント』に導かれて「やるべきことをやってきた」野球部は、見事に「結果」を出しました。物語の世界、なんといってもハッピーエンドはいいものですね!

 これまでの放送内容を、わたしがつけたサブタイトルをもとに振り返っておきましょう。

第1回放送:ゴール設定の重要性、真摯(しんし)さというマネージャーの資質・・
第2回放送:「組織変革」 と 「インターナル・マーケティング」のドラマ
第3回放送:マネジメントは「ヒト」を中心に!..人的資源と目標管理
第4回放送:イノベーションとはあたらしい価値をもたらす変化のこと
第5回放送:イノベーションという仮説はデータで検証する
第6回放送:「戦略実行」 のカギは 「ヒト」 という経営資源
第7回放送:成果を出すためのプロセスがマネジメント
第8回放送:セルフマネジメントと個人と組織の問題
第9回放送:マネジメントと個人のモチベーション

 とはいえ、甲子園出場を「ゴール」に設定してきた野球部、目的を達成してしまったいま、これからいったいどのような「ゴール」を再設定し、どのような戦いを甲子園で展開していくのでしょうか? 

 キャプテンはインタビュアーの質問に対して、この問いに対して直接に解答はせず、「見る人がしてほしいような野球をやる」といってましたね。

 顧客にマーケティングし、高校野球界にイノベーションをもたらすことを野球部のミッションにしているからこそ、次のゴール設定がに言及しなくて、このような発言をすることができたということができるかもしれません。

 ここで、ミッションの重要性が浮上します。使命感あるいは使命。ここでいっているのは組織としての野球部の使命です。

 このミッションは明文化したものではないにせよ、また理解の度合いがメンバーの間で濃淡の差があるにせよ、ミッションが明確で共有されていれば、組織にはブレがないのです。

 組織にブレがなければ、戦略実行に際してもブレがなくなると同時に、臨機応変の戦術対応も可能となってくるのです。最終回にはセーフティバンドで出塁するシーンがありましたよね。バンドであっても、「ノーバンド、ノーボール」戦略には反していないのです。

 ところで、ふたたび「顧客」というコトバがでてきましたが、ここでいう「顧客」とはいったい誰を指しているのでしょうか?

 正直なところ、わたしからみると、このドラマはこの点が「ツメが甘い」という感じをもたざるをえません。「顧客」が誰を指しているのかはっきりしていないので、どうしても話がまた振り出しに戻ってしまいます。

 外部の顧客にむけてのマーケティングなのか、内部の顧客、すなわ構成メンバーにむけてのインターナル・マーケティングなのか? 

 外部の顧客であれば、野球部を応援してくれる人たちなのか、選手の友人たちや父兄たちなのか、高校のある地域の人たちなのか、高校野球界全体なのか・・・。ステークホールダーという考えを導入すると、顧客が誰かという答えが明確になってくるでしょう。

 いずれにせよ、「顧客の範囲」を明確にしておかないとピンぼけしてしまいます。まずは、すでに明確となっている「顕在顧客」が誰か、まだ明確になっていないがポテンシャルである「潜在顧客」はだれか、この範囲(スコープ)を明確にしておくことも重要です。「~のために」の「~」は誰かといいかえてもいいでしょう。

 「顧客の定義」が明確にならないと、いくら努力しても間違った方向にマーケティグし、ピントはずれのイノベーションをしてしまう危険さえあります。それでは結果がでるどころかチームは空中分解、「何のために」とい本質論からはずれてしまいます。

 高校生がここまで突き詰めてしまうと、ちょっと引いてしまうかもしれませんが・・(笑)。あくまでもドラマですから、それはそれでよしとしておきましょう。

 ドラッカーの『マネジメント』に導かれた野球部のマネジメント革新は成功しましたが、実際にみなさんが自分のいる組織で応用していくためには、重要なコンセプトをひとつひとつ確認して、定義を行っておくことが不可欠です。

 「顧客創造」と、そのためのマーケティングとイノベーション。これがドラッカー経営学のエッセンスですが、「顧客」とは誰をさしているのかの定義、これを抜きにしては、ほんとうのマネジメントはできない、ということは肝に銘じておいてほしいものです。

 おそらく、このアニメはこれから何度も再放送されることになると思いますし、またいろんな機会でディスカッションの材料として取り上げられることもあると思います。

 生きるうえで「素直さ」は大事なことですが、このドラマをみて「感動した!」で終わりにしてしまうのではなく、どんなことであれ疑問をもって、自分のアタマで考え抜いてほしいと、わたしは期待しています。

 もちろん、100人いれば 100通りのものの見方があります。ここに書いたのは、あくまでもわたしのものの見方です。大事なことは、自分がかかわっている組織で「マネジメント」の考えを応用しながら、実践と理論の往復運動をつねに行うこと。

 ドラッカーがいうように、「マネジメントは現代人の教養」となるべきものだからです。

 マネジメントを「常識」として受取り、ドラッカーの名前をださなくても実践ができるようになったとき、そのときはじめて「マネジメント」を勉強した甲斐(かい)があったといっていいのではないでしょうか。

 ともに研鑽(けんさん)を積んでいきましょう!

(終わり)






<関連サイト>

『もしドラ』(NHKアニメワールド)


<ブログ内関連記事>

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第1回放送(4月25日)のおさらい

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第2回放送(4月26日)のおさらい-「組織変革」 と 「インターナル・マーケティング」のドラマなのだ

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第3回放送(4月27日)のおさらい-マネジメントは「ヒト」を中心に!

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第4回放送(4月28日)のおさらい-イノベーションとはあたらしい価値をもたらす変化のこと

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第5回放送(4月29日)のおさらい-イノベーションという仮説はデータで検証する

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第6回放送(5月2日)のおさらい-「戦略実行」 のカギは 「ヒト」 という経営資源

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第7回放送(5月3日)のおさらい-成果を出すためのプロセスがマネジメント

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第8回放送(5月4日)のおさらい-セルフマネジメントと個人と組織の問題

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第9回放送(5月5日)のおさらい-マネジメントと個人のモチベーション


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書評 『知の巨人ドラッカー自伝』(ピーター・F.ドラッカー、牧野 洋訳・解説、日経ビジネス人文庫、2009 単行本初版 2005)


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2011年5月6日金曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第9回放送(5月5日)のおさらい-マネジメントと個人のモチベーション


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第9回放送みましたか?

 さて、昨日(5月5日)の放送は、「みなみは大切なものをなくした」というタイトル。

 クライマックスとなる「決勝戦」を前にして、かなり「青春ドラマ」濃度が濃くなってきました(^^)

 でも、「マネジメント」の観点から、コメントをしておかなくてはいけませんね。 

 決勝戦まで勝ち抜いてこれたのは、奇跡ではなくて、「やるべきことをやったからこそここまできた」という認識が、みなみとじろちゃんのあいだで確認されます。

 ドラッカーの『マネジメント』に書かれていたセオリーどおりにやってきたからこそ。もちろん、そのままストレートに野球部に応用するにはムリがありますが、試行錯誤しながらも、何をどう実行してきたかについては、第1回放送から第8回までの内容を確認していただければ理解していただけることでしょう。

 ところが、いよいよ甲子園出場ができるどうかが決着する決勝戦の前夜に、主人公であるみなみのモチベーションの源泉であった ゆうき が不治の病で亡くなってしまいます。

 物語は、トントン拍子で進行しないで、必ず起承転結の「転」がある。これは、『マネジメント』とは直接関係ありませんが、日本では「物語」作成においては不可欠の作法ですね。経営も、人生もそうですが・・・。

 ここで再び想起されるのは、「結果とプロセスはどちらが重要か?」という問いです。

 「第7回放送のおさらい」を振り返ってみましょう。みなみは、「プロセスよりも結果が重要だ」と、結論だけをクチにしました。

 問いに対する答えの内容もさることながら、なぜそうなのかについて、ドラッカーの『マネジメント』という外部の権威をもちだして説明しただけであり、自分自身の内側からでてきたコトバではない、相手をココロから納得させたのではなく、コトバで押し切っただけだ・・・。そういう後悔というか、反省がみなみにはあったのではないか、そのように受け取っておくべきかもしれません。

 コトバは武器であるが凶器にもなる。「マネジメント」におけるコトバの意味、これもじっくりと考えておきたいものですね。マネジメントはヒトを使って、ヒトを動かすことによって、目的を達成するためのプロセスなのですから。

 ヒトは、コトバと態度によって、モチベート(動機付け)される生き物です。そしてまたコトバを使って反省し、ものを考えることができるのも人間ならではのこと。

 そして決勝戦の直前のこの期に及んで、みなみが直面するのは、「何のために頑張ってきたのか?」、「自分は何のためにいまここにいるのか?」という、大目的をめぐる「そもそも論」です。「~のために」頑張ってきた、その「~」の存在がいなくなってしまったいま、喪失感とともに感じる無意味感。
 
 「そもそも論」は、個人のモチベーションにかかわる根源的な問いですから、そんな簡単に答えがでるような性格ではありません。問いの重さから思わず逃げてしまうみなみですが、ムリヤリ決勝戦という「現場」に引き戻されます。時間をかけてでも、考え続ける必要があるのが「そもそも論」です。大いに悩むべし!

 その答えは見つかるのでしょうか? そのキッカケでも見つかるのでしょうか?

 次回(5月5日)の放送はいよいよ最終回、「みなみは高校野球に感動した」というタイトルです。

 『マネジメント』にしたがって「やるべきことをやってきた」野球部は、「結果」を出せるかどうか? いよいよクライマックスです。今夜の第10回最終回は見逃せませんね。






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2011年5月5日木曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第8回放送(5月4日)のおさらい-セルフマネジメントと個人と組織の問題


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第8回放送みましたか?

 さて、昨日(5月4日)の放送は、「みなみはマネジメントのあるべき姿を考えた」というタイトル。

 いよいよ準決勝。「マネジメント」をテーマにしたドラマよりも、青春ドラマとしての色彩のほうが濃くなってきました。ついついメモを取る手を休めて見入ってしまいますが、重要なテーマがいくつか提示されていますので、書き留めておきましょう。
 
 まずは個人レベルのセルフマネジメントについて。日課の重要性。練習後の自主トレを日課にしている星出君の話。

 自主トレが「生活習慣」となると、歯磨きをしないと気持ち悪いのと同様に、自主トレを一日でも休むと気持ち悪くなってくるものですね。

 そして、試合に臨んで自覚する自らの使命(ミッション)、あるいは存在意義(レゾンデートル)。自分は何のために野球をやってきたのか、ここで逃げたら一生後悔するという意識。あえてキャプテンの座を返上して、一選手に徹してきた意味を再確認し、勝負の場に臨みます。

 失敗することの意味。ショートを守っている選手の話。

 「過つは人の性」ではありませんが、エラーをすることじたいは人間である以上、完全にゼロにすることは不可能です。失敗を怖れていては前に進まない。しかし同じ失敗を二回したのでは進歩も成長もない。

 すでに起こったことは、事実として受け止めなくてはならないわけですね。その上でどういう行動をとるかが大事です。過去から教訓を得ることは重要ですが、つねに現在と未来をみて行動していかないといけませんね。

 ここまでは個人の問題でした。

 組織として考えなければならないのは、失敗した個人の処遇、個人の失敗経験を、どう組織として捉えるかというテーマです。
 
 昨日の放送のなかでは、エラーを続けた精神力の弱い選手を使い続けるかどうかという、二者択一の選択問題でした。

 このテーマについて、野球部のマネージャーのミーティングで議論が行われます。一通り意見をいわせたあと、監督は多数決の結果ではなく、みなみの意見を取り入れて、決勝戦にもその選手を使うことを決断します。

 なぜ監督はこの決断を下したのでしょうか? 果たしてこの意志決定は正しかったのでしょうか?

 「マネジメントのあるべき姿」とは、いったいどんなものなのでしょうか?

 少なくとも、人的資源が限られているベンチャーや中小企業においては、多少の失敗には目をつむってっても使い続けることになるでしょう。その選択しかないというのが、わたしの経験上の見解です。

 ただし条件があります。組織のバリュー(価値観)に反した行動をとって失敗したのではないこと。たとえすぐれたパフォーマンスを出せる人であっても、チームの和を乱したり、行動原則に反した行動をとる人間には、辞めてやめてもらうことすらあります。

 もちろん、置かれている状況によって、異なる結論がでることもあるでしょう。たとえ使い続けるという決断をしても、当の本人が期待に応えられずに、さらなる挫折を深めてしまうかもしれません。

 これは、けっして簡単に確定した答えのでることのない、永遠に考え続けるべき問題ですね。

 みなさんも、監督の立場になったつもりで、「マネジメントのあるべき姿」について、いろいろ考えてみましょう。

 次回(5月5日)の放送は、「みなみは大切なものをなくした」というタイトルです。

 ドラマもいよいよクライマックスに近づいてきました。今夜の第9回放送が楽しみですね。






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2011年5月4日水曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第7回放送(5月3日)のおさらい-成果を出すためのプロセスがマネジメント


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第7回放送みましたか?

 さて、昨日(5月3日)の放送は、「みなみは成果について考えた」というタイトル。

 いよいよ甲子園にむけての予選に突入です。日本の高校野球はトーナメント方式なので、勝ち進まなければその先に進むことができません。ですから、一戦一戦が真剣勝負の連続。この段階で、「仮設検証」などと悠長なことは言ってられません。

 監督が打ち出した戦略は「ノーバンド、ノーボール」、この戦略にはいっさいブレはなし。それに加えて、積極的に攻める野球で高得点を狙ってコールドゲームに持ち込む作戦。まあ、実際は、こんなにとんとん拍子で進撃することはさすがにないと思いますが(笑)。

 ピッチャーの浅野君が、ノーアウト・走者三人状態に追い込まれて、プレッシャーの重圧でぐらついてくるシーンがありましたね。

 しかし、スタンドからの応援の甲斐もあって、「ノーバンド、ノーボール」の戦略を貫いて、ストライクで勝負を続けます。戦術面では臨機応変の対応は必要でも、基本戦略はブレてはならないという教訓が、ここから導き出せるでしょう。

 病院に ゆうき を尋ねた みなみ が、「成果」というものについて論争するシーンがありました。成果が大事か、それとも努力というプロセスが大事かという論争。

 ゆうきが、成果よりもプロセスが大事だと言うのに対し、みなみは、ドラッカーの『マネジメント』を引き合いに出しながら、努力も大事だが結果を出すことが大事で、成果のために働くことこそが重要、過去よりも未来に向けての・・こそが重要なのだと、あえて主張します。

 ドラッカーには『創造する経営者』という日本語タイトルの本があって、原題は Managing for Results というタイトルです。直訳すれば「結果を出すためにマネジメントすること」。

 プロセスが重要でないとはけっして言いません。ですが、それはあくまでも結果を出すためにプロセスが重要なのであって、プロセスそのものが重要なのではないことに気がつかねばならない。

 「一生懸命やったのに~」という泣き言(?)はよく耳にしますが、結果を出すためのプロセスが間違っていたのでは、いくら努力してもムダになってしまいます。あくまでも結果を出すことを目的にしないといけないのです。

 ただし、結果が出せないときもありますよね。その時は、十分な反省のうえ、取り組み方を練り直さないといけません。これは PDCA のサイクルですね。プラン⇒ドゥー⇒チェック⇒アクション。計画⇒実行⇒チェック⇒アクション。

 ただ、誤解がないように言っておきますが、成果を出すためのプロセスがマネジメントだといっても、成果主義とはイコールではありません。お間違いなく!

 次回(5月4日)の放送では、「みなみはマネジメントのあるべき姿を考えた」というタイトルです。マネジメントのあるべき姿とは、いったいどんなものなのでしょう?

 今夜の第8回放送が楽しみですね。








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2011年5月3日火曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第6回放送(5月2日)のおさらい-「戦略実行」 のカギは 「ヒト」 という経営資源


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第6回放送みましたか?

 さて、昨日(5月2日)の放送は、「みなみは戦略と現状について考えた」というタイトル。

 「戦略」とは何かという説明が、放送のなかではまったくされていませんでしたので、いちおう簡単な定義をしておきましょう。

 戦略とは、ある特定の目標を達成するために、(経営)資源を総合的に運用すること。

 こんなところでしょうか。厳密にいうと、「戦略」と「戦術」は異なりますが、この番組ではそこまで区別することもなさそうですね。あえて区分すれば、「戦略」は大きな方針、「戦術」はより細かいレベルにかんする対策と考えておきましょう。

 「戦略」については、すでに前回の第5回放送で、監督が打ち出した「ノーバンド、ノーボール作戦」がそれに該当しますね。「作戦」という名前が入っていますが、これは従来の常識を打ち破る「新機軸」(イノベーション)であり、きわめて戦略的なものであるということができます。

 「戦略」の定義にある「特定の目標」とは、いうまでもなくこのドラマでは、甲子園に出ること!

 ただ重要なのは、戦略は2つにわけて考えなければならないということです。このドラマでは、そこまで厳密に区分していませんが、戦略は「戦略立案」と「戦略実行」の2つにわけることが重要です。

 「戦略立案」は、すでに監督が行い、その有効性についての仮説検証も前回の放送で行われました。

 「戦略実行」、じつはこれが思ったより難しいのですね。

 たとえすぐれた戦略を立案しても、戦略を実行するのは最大の「資源」は「ヒト」です。経営資源であるヒト・モノ・カネのうち、もっとも重要なのがヒト。このドラマでは、野球部員ということになります。

 しかも、野球はチームスポーツで、厳密なルールが決まっていますので、レギュラーメンバーの人選を行い、絞り込む必要がでてくる。これはまさに「人事」の役割です。

 集まりすぎた新入部員候補を絞り込むために主人公のみなみは一対一の面談を行い、何がチームに貢献できるのか、何が志望動機なのかを、一人一人に聞いたうえで、32人の候補を12人に絞り込みました。

 ただし、新入部員が即戦力になるわけではない。すでにレギュラーになっているメンバーから、スターティングメンバー(スタメン)を選ばなければなりません。

 スタメンの選出理由は詳細にはわかりませんでしたが、この選出プロセスはきわめて重要で、かつきわめて難しい。甲子園に出る!という目的から外れてはいけないからです。

 人選は公平な観点から行っています。公平な観点から行い、選出されなかったメンバーの納得を十分に得るものでなければ、チームの結束どころか、分解さえ招いてしまう。

 「戦略実行」の要(かなめ)が、実行の担い手である担当者の人選に大きくかかっていることがよく理解できる内容でした。

 さて、この人選が実際にただしく機能するかどうか?

 次回(5月3日)の放送では、「みなみは成果について考えた 」というタイトルで、その成否が問われることになるのでしょう。

 今夜の第7回放送が楽しみですね。






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2011年4月30日土曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第5回放送(4月29日)のおさらい-イノベーションという仮説はデータで検証する


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第5回放送みましたか?

 さて、昨日(4月29日)の放送は、「みなみは過去の高校野球を捨てた」というタイトル。

 第2回と第3回の「おさらい」に書きましたが、ドラッカー経営学のエッセンスは顧客創造、そのための二本柱がマーケティングとイノベーションです。

 今回は、その 2本目の柱であるイノベーションを実地に応用するして実験してみるドラマが開始されたわけですね。

 監督が導入した「新機軸」は 「ノーバント、ノーボール作戦」。攻撃に際しては点を取るための常識であったバントはいっさいしない。守備に際してはピッチャーはストライクしか投げないという、常識やぶりの「戦略」です。

 野球についてある程度知っていればわかると思いますが、つまるところ「打たせて取る」戦術ということですね。

 そのココロは、ピッチャーの投球数をミニマム(最小)にするということ。夏の炎天下でもっとも疲弊するのがピッチャー。そのピッチャーの疲労からくる肉体的、精神的な負担をミニマムにするために、一試合の投球数を100球以内に抑える。

 これは、日本の野球よりも、アメリカのベースボールでは常識となっている考えです。大リーグでは、ピッッチャーには一試合を最後まで投げさせずに、かならず交代させますが、これはきわめて理にかなったことなのです。

 しかし、この戦術を実行するには条件があります。

 守備がしっかりしていないといけない。これは経済学でいう「トレードオフ」の関係でもありますね。あっち立てれば、こっち立たず。打たれたら取らなくてはならない。

 ピッチャー一人に依存せず、全員がそれぞれのポジションで積極的に責任を果たす。これは、日本の政治家もよく使う表現でいえば、「全員野球」ということになるでしょう。ピッチャーとキャッチャー以外の野手も、控えの選手もすべてがチームの一員として、果たすべき役割を果たすのがチームメンバーが全員参加する「全員野球」。

 さて、大学生との練習試合で実験することにした監督は、いったん打ち出した戦術を最初から最後まで変更しませんが、それはなぜでしょう?

 ブレない姿勢で臨んだのは、選手を動揺させないという精神的意味もあったでしょうが、監督の目的があたらしい戦術という「仮説」を、実地で「検証」することにあったからですね。そのプロセスのなかで、実験結果は、スコアブックに記入されたデータのなかに如実にあらわれてくる。

 試合には負けても、「仮説検証」という目的は十分に実現できたわけですね。仮説検証はかならずデータと実際をつき合わせて行う。数字で考えることの重要性。


 また、主人公みなみの役割についても重要なシーンがありました。

 それは、プレイイング・マネージャーという立ち位置ではないみなみが果たしている役割について。

 変化をもたらしたが変化の主体ではない。しかし、変化を起こす触媒(カタリスト)として機能しているという「気づき」です。

 これはまさに「社内コンサルタント」の重要な機能です。この機能をもつ存在は、きわめて重要な存在です。命令系統のなかにいなくても、組織に変化を起こすことはできる。

 「触媒」というコトバは使ってませんが、このことに気がついたことは、本人にとっても、チーム全体にとっても、大きな収穫であったといえるでしょう。

 この物語の最初からあった「ネジレ」が、ようやく意味のあるものであることがわかってきました。


 さて、次回(5月2日)の放送では、「みなみは戦略と現状について考えた」というタイトルでストーリーが進行していきます。

 来週月曜日もまた楽しみですね。






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2011年4月29日金曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第4回放送(4月28日)のおさらい-イノベーションとはあたらしい価値をもたらす変化のこと


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第4回放送みましたか?

 さて、昨日(4月28日)の放送は、「みなみはイノベーションに取り組んだ」というタイトル。

 第2回と第3回の「おさらい」に書きましたが、ドラッカー経営学のエッセンスは顧客創造、そのための二本柱がマーケティングとイノベーションです。

 今回は、その 2本目の柱であるイノベーションについてドラマが展開し始めたわけですね。

 イノベーションというと、経済学者シュンペーターを思い出しますが、ドラッカーはマネジメントの観点からイノベーションについて一冊の本にまとめています。

 『イノベーションと起業家精神 上下-その原理と方法-』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、1997)という本です。日本のビジネス界では、イノベーションとは「技術開発」を指していることが多いのですが、ドラッカーはこのように言っています。

イノベーションは技術に限ったものではない。モノである必要さえない。それどころか、社会に与える影響力において、新聞や保険をはじめとする社会的イノベーションに匹敵するイノベーションはない。(上巻 P.46)

 このように述べたあと、ドラッカーは明治以降の近代日本を社会的イノベーションの格好の事例だとして2ページ以上を費やして説明しています。興味のある人は直接読んでみるといいでしょう。



 イノベーションは、より大きな価値、新たな価値や行動を生み出し、市場や社会に変化を与えるものである。このように捉えると、とくにビジネスの世界に限定して考える必要がないことがわかります。

 さて、昨日の放送では、野球部の練習方法に導入されたイノベーションから、高校野球界全体を変革するようなイノベーションの話までふくれあがりました。ビジネスでいえば業界全体に該当しますね。

 練習方法にかんしては、みなみがかかわることになった、陸上部や柔道部など、野球部以外の部活にとって「価値を提供」することをつうじて「巻き込み」、お互いにとって相乗効果(シナジー)をもたらすということがなされることになりました。

 高校野球界全体をにイノベーションをもたらすとは、具体的な例でいえば、かつて徳島県立池田高校と取手二高があげられていましたが、いずれも従来の、スパルタ野球の常識を打ち破る考えを導入したことで、弱小チームを甲子園に出場させただけでなく優勝までもたらしました。

 この2つの高校が導入した「新機軸」は、その後の高校野球の世界を一大変化させたのですね。その「新機軸」こそがイノベーションです。

 ここでまた、『イノベーションと起業家精神』から引用を行っておきましょう。

イノベーションとは、意識的かつ組織的に変化を探すことである。それらの変化が提供する経済的、社会的イノベーションの機会を体系的に分析することである。(上巻 P.51)


 本日(4月28日)の放送では、「みなみは過去の高校野球を捨てた」というタイトルでストーリーが進行していきます。

 さて、どのようなイノベーションが野球部に導入されることになるのでしょうか? 楽しみですね。







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2011年4月28日木曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第3回放送(4月27日)のおさらい-マネジメントは「ヒト」を中心に!


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第3回放送みましたか?

 さて、昨日(4月27日)の放送は、「みなみは人の強みを生かそうとした」というタイトル。

 日本では、ヒト・モノ・カネをもって「経営三資源」という言い方をします。ヒト・モノ・カネ、これに情報をくわえて「経営四資源」という言い方もしますが、いずれにせよ順番からいって、ヒトがもっとも重要だということを意味しています。

 ドラッカーも、マネジメントにおいては、何よりもヒトが重要であるといっています。おそらく、この点が、ドラッカーが活動した米国はさておき、日本でもっとも受け入れられた理由の一つでしょう。そしてまた復活した理由でもあるでしょう。

 米国では、みなさんもご存じのように、カネを中心にする傾向がなきにしもあらずです。カネを中心とするから「資本主義」。これに対して日本では、ヒトを中心にするから「人本主義」(じんぽんしゅぎ)であると、かつて日本を代表する経営学者の一人である伊丹敬之教授が命名したこともあります。

 米国でも、「人的資源」という言い方で、「ヒトを中心にすえた経営」を論じることもありますが、実はこの流れはそれほど古いものではありません。「人的資源」(human resource:ヒューマン・リソース)論は、1980年代以降に日本を徹底研究して生まれてきたものです。この時代の日本的経営は、日本企業の実践とドラッカーの主張が合致してできあがったという言い方も不可能ではないでしょう。

 「人的資源」は、最近では「人的資本」(human capital:ヒューマン・キャピタル)という言い方をする人もいます。財務諸表には資本として記載されませんが、もっとも重要な資本はヒトであるという意味ですね


 さて、第3回の放送のテーマである、一人一人のメンバーのやる気を出すにはどうしたらいいのでしょうかか?

 昨日の放送では、信頼して、責任をもたせて、まかせることの重要性が指摘されていました。要らない人なんか誰もいない、と。
 
 大きな共通の目標にむけてチームをまとめていく一方、練習にやる気をもたせるために競争原理を導入することの意味も語られていました。

 「目標管理」というコトバもでてきましたね。「目標管理」(MBO:Management by Objective:マネジメント・バイ・オブジェクティブ)とは、企業金融の世界でいうMBO(Managemnet Buy-Out:マネジメント・バイアウト)のことではありません。個人個人が自ら達成すべき目標をたてて、PDCAサイクルを回しながら達成にむけて邁進することを意味しています。

 目標管理の重要性を最初に主張したのもまたドラッカーでした。

 
 ただ、2回目の放送の「おさらい」にも書きましたが、野球部のマネージャーがマネジメントを誤解したことから始まった物語、やはり最初から「ネジレ」があることは否定できません。

 主人公の みなみは、プレイイング・マネージャーではありませんね。組織のメンバーだが、プレイヤーそのものではない。この立ち位置は、会社組織のなかでは、プロフィット部門ではなく、コスト部門である間接部門のスタッフという位置づけです。

 本来なら、野球部のキャプテンがマネージャーの位置にあり、監督は専門家というよりもジェネラル・マネージャー(GM)の位置にあるのがフツーでしょう。

 しかも、コーチでもない。ちょっと距離をおいたスタンスは、「社内コンサルタント」のスタンスに近いかもしれません。
 
 また、野球部のメンバーを「顧客」と見るという視点は、実は応用編の発想であって、すこし理解するのが難しいことは否定できません。「インターナル・マーケティング」ととらえたほうがムリがないことは、再2回のおさらいでも指摘しました。

 本来なら、応援してくれるであろう、同じ高校の生徒や父兄、地域社会の人たちを「顧客」、あるいは「ステークホールダー」としてとらえるほうが、マネジメントの観点からいったら素直な発想です。
 
 ここが、わたしのようなマネジメントの専門職からみると、やや違和感が残るところではありますね。


 本日(4月28日)の放送では、「みなみはイノベーションに取り組んだ」が取り上げられます。

 第2回の「おさらい」に書きましたが、ドラッカー経営学のエッセンスは顧客創造、そのための二本柱がマーケティングとイノベーションです。次回はその2本目の柱であるイノベーションについてドラマが展開するわけですね。

 さて、これからどのようなイノベーションが導入されることになるのでしょう? 楽しみですね。







<関連サイト>

『もしドラ』(NHKアニメワールド)


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NHKのアニメ 『もしドラ』 の第1回放送(4月25日)のおさらい

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第2回放送(4月26日)のおさらい-「組織変革」 と 「インターナル・マーケティング」のドラマなのだ


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2011年4月27日水曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第2回放送(4月26日)のおさらい-「組織変革」 と 「インターナル・マーケティング」のドラマなのだ


 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第2回放送みましたか?

 さて、昨日(4月26日)の放送は、「みなみはマーケティングに取り組んだ」というタイトル。

 ドラッカー経営学のエッセンスは、「顧客創造」。そのための方法論は、「マーケティング」と「イノベーション」の二つしかない、というものですが、今回はその「マーケティング」がテーマ。

 「マーケティング」(marketing)とは「セリング」(selling:販売)をなくすことである、というのがドラッカーの有名なテーゼですが、今回の番組を見ている限りでは、どうもその意味では使っていないようですね。一般で使っている「マーケティング」とはちょっと違うニュアンスのようです。

 むしろ、みなみが取り組もうとしたのは、組織内のメンバーを「顧客」ととらえた、組織内のメンバーに向けた「インターナル・マーケティング」のことだと考えたほうがいいでしょう。
 
 「インターナル・マーケティング」(internal marketing)というコトバはあまり聞いたことがないかもしれませんが、一言でいってしまえば、組織内のメンバーとの双方向のコミュニケーションのことです。別の言い方をすれば「対話」(ダイアローグ)をつうじて、組織を目標達成にむけて行うものと言っていいかもしれません。

 みなみが、「マネージャー」の役割は「専門家」の言うことを「翻訳」してメンバーに伝えることであると解釈していたようですが、つまるところは、専門家が言うことをそのまま伝言ゲームでメンバーに伝えるのではなく、自分のコトバでかみ砕いて伝えるということですね。しかも一方方向の伝達ではなく、双方向のコミュニケーション。

 ですから、わたしからみると、このドラマは一般的な意味の「マーケティング」というよりも、「組織変革」のドラマといったほうが適切です。

 このドラマを「組織変革」ととらえると、まず取り組んだのがメンバーの一人一人との面談調査であるということは、きわめてセオリーどおりの手順を踏んだことになります。一般にヒアリングというコトバを日本ではつかっているようですが、正確にいうとインタビュー調査ですね。

 病室のなかという、比較的リラックスできる(?)空間のなかで、話を「引き出し」やすいように、工夫していることろは見事なものです。また、コミュニケーション・スキルの高さがうかがわれます。

 実は、今回の放送で扱っていた内容は、組織変革コンサルタントが実際に行っている方法論そのものなのです。

 実際には、聴き取った内容をどう整理して解釈するか、そのフェースが難しいのですが、問題解決のヒントは「つねに現場にある」。これはもっとも重要なことです。

 主人公の みなみは、プレイイング・マネージャーではありませんね。組織のメンバーだが、プレイヤーそのものではない。この立ち位置は、会社組織のなかでは、プロフィット部門ではなく、コスト部門である間接部門のスタッフという位置づけです。

 ドラッカーの『マネジメント』をすべて読み込んで、それを現実にあてはめたというよりも、「知らないからみんなの意見をきかせて!」というスタンスが重要なことを示しているといってもいいでしょう。



 本日(4月27日)の放送では、「みなみは人の強みをいかそうとした」が取り上げられます。

 個人が集まっただけではたんなる集団に過ぎません。その集団を同じ一つの目的を共有した「組織」にどう変身させるのか、その一つの方法論が「個人個人の強み」を引き出し、活かすということ。

 さて、これからドラマの展開はどうなるのでしょうか? 楽しみですね。







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『もしドラ』(NHKアニメワールド)


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2011年4月26日火曜日

NHKのアニメ 『もしドラ』 の第1回放送(4月25日)のおさらい-ゴール設定の重要性、真摯(しんし)さというマネージャーの資質、組織の定義・・


 
 昨夜、NHKのアニメ「もしドラ」の第1回みましたか?

 なかなか面白い設定になっているので、大学生むけの経営学の授業には使えそうですね。高校生という設定は、やはりちょっと難しいような気もしないではありませんが・・。

 最初のナレーションにあった「ドラッカーの『マネジメント』は現代ビジネスマンのバイブル」、というのは、残念ながら事実誤認としては正しくありません。なにやらウォール街のような光景がバックに登場していましたが。

 ドラッカーは「マネジメント」産みの親ではありますが、主著である『マネジメント』は、すでに「読まれざる古典」というべきでしょう。すくなくとも、わたしの周辺では、ドラッカーの『マネジメント』を読んだという人は、ほとんど聞いたことはりません。

 とはいえ、「マネジメント」(という概念)の産みの親であるドラッカーですから、現在ではほとんど常識となっている(はずの)マネジメントの基本は押さえているといていいですね。古典の古典たるゆえんといましょうか。

 ドラッカー自身も、「経営学は現代人にとっての常識」といってますから、日本がお得意のアニメでマネジメントの基礎を勉強するのは、「楽しくて役に立つ」という王道を歩いているといっていいでしょう。



 
 さて、昨日(4月25日)の放送では、以下のポイントが紹介されていました。 

 ●ゴール設定 ⇒ 甲子園で優勝するというゴール。ビジョンや目標といってもいいでしょうか。
 ●マネージャーの資質 ⇒ スキルではなく、真摯(しんし)であること。
 ●組織の定義 ⇒ 野球部の定義、存在意義。
 ●顧客の定義 ⇒ 野球部の顧客とは?

 メモとるのを忘れた箇所があるかもしれません。ほかのことしながら、「ながら」で見てましたので。

 もちろん、マネジャーやマネジメントという概念はこれほど単純なものではありませんが、その昔、部活のマネージャーと会社のマネージャーは同じか、違うのかという疑問をもったことのある私としても、面白いものを感じました。

 本日(4月26日)の放送では、「マーケティング」が取り上げられます。

 「マーケティング」は、ドラッカー経営学のなかでは中核をなす概念です。

 『もしドラ』では、どう料理されるのか?? きょうの放送が楽しみですね。







<関連サイト>

『もしドラ』(NHKアニメワールド)


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