ネットの世界では「ストライサンド効果」(Streisand Effect)と呼ばれる現象があります。
インターネット上に公開された情報を、個人や企業が封じ込めようとすればするほど、かえってその情報が拡散してしまうという、「行為の意図せざる結果」がもたらされてしまう現象のことをさしたものです。
「ストライサンド」とは、米国を代表するエンターテイナー、ハリウッド女優で歌手であるバーブラ・ストラインド(Barbra Streisand)の名前からきたものです。
wikipedia(英語版)の記述によれば、ネット上に掲載された米カリフォルニア州の高級住宅街マリブにある自分の豪邸がうつっている写真を、プライバシー保護の観点から削除を求めて、2003年に起こした裁判からきています。
ストライサンドが提訴したことが明らかになると、かえって世の中の注目を集めることになってしまい、その翌月にはなんと42万人(!)がその写真を見るためにサイトを訪れたそうです。
もともとその写真は、カリフォルニアの海岸を空中撮影した12,000枚の写真の一枚。海岸浸食状況を記録するためのプロジェクトの一環で、一般公開されていたものでした。結局、ストライサンドはこの裁判では敗訴になったようです。
世の中には、このように「行為の意図せざる結果」が多く観察されます。
禁止すればするほど、かえって知りたくなる、やってみたくなる。
否定すればするほど、かえって真相を隠しているのではと疑うようになる。
推奨すればするほど、かえってあやしいではないかと邪推するようになる。
現在、「3-11」以後の日本でもっとも大きな問題である「原発事故」についても、すでに翌日の2011年3月12日にはメルトダウン(炉心溶融)していたのにかかわらず、二ヶ月もたってからはじめてその事実を認める発表がなされました。
メルトダウンしていたことは、いまになってから「事実」として認めたわけですが、「原発事故」の当初、国民に不安を与えないために政府関係者が「大丈夫だ、大丈夫だ」と何度も繰り返していました。しかし、そう言えば言うほど、国民の側では疑心暗鬼が強まり、不安感や不信感が増していくという負のループ。
まさに「行為の意図せざる結果」ですね。
国民を安心させるために情報を封じ込めよう、封じ込めようとすればするほど、かえって歪んだ形で情報が拡散していく。さらには、「風評被害」という形で実損害も増大していく。
企業活動においても、事実は封じ込めずに、悪い情報もふくめて正確に発表し、いちはやく謝罪した方が、短期的には損失になっても、中長期的には信頼感を増すことにつながります。一時的に、企業の評判(レピュテーション)が下がるかもしれませんが、すぐに元に戻るはずです。
ネットに限らず、リアルの社会においても、自分にとっていっけん都合の悪い情報も隠さずきちんとディスクローズしたほうがプラスになることが多いのです。このように首尾一貫した言動を行うことが、じつはもっとも大事なことなのです。
P.S. 余談ですが、わたしはむかしからのバーブラ・ストライサンドのファンです。もっとも有名な作品は『追憶』(The Way We Were)。わたしがもっとも好きな作品は『愛のイェントル』。この作品は、主演・監督・プロデュース・歌唱まですべて自演自作。この映画については、本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987) に書いておきました。バーブラは、じつにマルチタレントなエンターテイナーですね。
(2012年7月3日発売の拙著です)
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