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2012年3月21日水曜日

永続事業の条件は、「経営能力」と「経営理念」のかけ算である


経営能力と経営理念がかけ合わさって、はじめて良好な経営結果をもたらします。

経営理念がいかに重要であるかは、このブログでもなんども書いていますが、理念だけでは経営はできません。経営は、経営者に経営能力の裏付けがあってはじめて成り立つものです。

しかし一方、経営能力があっても、ただしい経営理念がなければ、とんでもない方向にいってしまいかねません。経営理念は、ある意味では羅針盤といってもいいのです。羅針盤なき航海は、難破の最大原因なのです。

短期的にスパンなら、成功している経営者も多いでしょう。しかし、スパンをすこし長くとると、成功しつづける経営者は、かならずしも多くないことに気がつきます。

もちろん、景気変動があるので、経営も山あり谷ありがふつうですが、継続して結果を出していくためには、経営能力と経営理念が両輪となっていることが不可欠なのです。

経営能力と経営理念をもちあわせた存在といえば、なんといっても "経営の神様" とよばれた松下幸之助翁の名前を出さねばならないでしょう。

松下幸之助自身、やり手の経営者ではありましたが、あるとき経営理念の重要性に気がついたことは、このブログでは 松下幸之助の 「理念経営」 の原点- 「使命」を知った日のこと に書いておきましたので参照していただけると幸いです。

今回は、経営能力と経営理念の関係について、幸之助翁みずからが語ったいるべつの文章を引用してみたいと思います。

『私の履歴』のなかで、こんな話をしています。出典は、「第17回 甘えた「所得倍増論」に警鐘」(日経Bizアカデミーのサイトに掲載)です。太字ゴチックは引用者(=わたし)によるものです。

ここで私は、まず経営ということについてふれ、ケネディ大統領の行なうアメリカ国家の経営も、町の小さなドラッグストアの経営も、どちらも同じ経営であるということから話を始めた。すなわち、国の経営の意図するところは、その国の発展、繁栄であり、また国民の幸せである。一方、ドラッグストアの経営は、顧客のためにいろいろ注意を払い、サービスを完全にすることである。どちらも本質的には同じような意図に立っている。しかしむずかしいのは、どうすれば国民を幸せにできるか、どうすれば顧客に対するサービスが適切に行なえるかということである。

マネジメントにおいては、町のドラッグストア(・・ただしここで言われているのはチェーン量販店ではなく薬屋のことでしょう)の経営も国家経営も同じというのは、すばらしい発言ですね。あくまでも顧客を中心に据えて経営を考える姿勢。ただし、国がそれを実行しているかは、やや疑問を感じますが。

そfれはさておき、提供するサービスをつうじて顧客を幸せにするということは、経営の本質のなかでは、理念にちかい部分でしょう。経営理念を体現しているのは経営者です。

そこで非常に大きな問題になってくるのが経営者ということである。すなわち、それぞれの経営体にふさわしい適切な経営者というものが要求されてくるのである。そしてその経営者に、最も大切なことは、正しい自己評価ができるということである。かつてドイツのヒトラーは祖国の窮乏を救い、かつ強大な国家をつくりあげたという点では、偉大な人物であり、その経営力は合格点であった。しかし彼がドイツ国家の経営にとどまらず、さらに欧州全体にまでその経営を広げようとしたところに問題があった。なるほど彼は、ドイツ一国の経営者としてはすぐれていたかも知れないが、欧州全体の経営者としては、いわば適材ではなく、しかも彼のもつ経営理念というものが正しくなかったのである。

このことをお互いの経営にあてはめてみると、経営者のきびしい自己評価ということと合わせて、その経営理念がどこに置かれているかということになる。その理念が、単なる利害、単なる拡張というだけではいけない。それらのことが、いわば何が正しいかという人生観に立ち、かつ社会観、国家観、世界観さらには自然の摂理というところから芽生えてこなければならない。そうした理念がなかったところにヒトラーの失敗があったのであろう。

ヒトラーを引き合いに出すのは、読者を「おやっ!」という気持ちにさせるだけに、「つかみ」としてはなかなかのものがありますが、誤解を生みかねないものもありますので、なかなか勇気のいることだとは思います。

しかしよく読んで見みると、、「その経営力は合格点であった・・(中略)・・なるほど彼は、ドイツ一国の経営者としてはすぐれていたかも知れないが、欧州全体の経営者としては、いわば適材ではなく、しかも彼のもつ経営理念というものが正しくなかったのである」と、締めくくっています。

国の経営者としてのヒトラーは、「経営能力は合格でも、経営理念はただしくなかった」、これが幸之助翁の結論です。

つまりこのここから読み取れるのは、長いスパンをとって考えると、経営結果=「経営能力」×「経営理念」で考えなければならないということを意味しているということでしょう。

いくらすぐれた経営能力を示していても、その理念がただしくない、すなわちマイナスであれば、経営結果もマイナスになってしまう、悪しきものとなってしまうことを意味しています。

逆にみれば、いくらただしい経営理念があっても、経営能力がなければ経営結果はマイナスになってしまいます。

経営能力と経営理念はかけ算の関係にあるのです。

まず磨かねばならないのは経営能力であることは言うまでもありませんが、少しでも長く、できれば永続的な事業として経営していくためには経営理念の裏付けがあることが欠かせません

ぜひ、ミッション・ビジョン・バリューに分解できる経営理念の構築、あるいは再構築に取り組んでいただきたいと思う次第です。




<関連サイト>

"経営の神様" 松下幸之助氏が説いた「経営の要諦」- 「人が代われば組織も変えろ」 (日経ビジネス編集部、2014年9月1日)
・・1973年8月20日号よに掲載されたインタビュー記事の再掲する (注)記事中の役職、略歴は掲載当時のもの。

(2014年9月1日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

松下幸之助の 「理念経営」 の原点- 「使命」を知った日のこと





(2012年7月3日発売の拙著です)









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