日本人初の「レゴ認定プロビルダー」に選出された東大大学院生の本。
現役東大生をうたった本にはよくありがちな「合格テクニック本」や「勉強本」ではありません。レゴ・ブロックでさまざまなものを造形する方法から、創造性をつちかうエッセンスを抽出したものです。
空間的思考法とは、立体思考法であり、三次元思考法と言い換えてもいいでしょう。
「空間的思考法」とは、著者自身のコトバを借りれば「物事を多面的なものであることを前提として、状況や情報を的確に読み取り、やるべきことを自分の頭でしっかりと考え抜くための力」(P.182)ということになります。
グラビアで紹介されているレゴによる作品集は、これはすごいなあという驚きだけでなく、見ていてじつに楽しいものです。
三次元の立体構築物のレゴを二次元の平面写真で表現することにはそもそもムリがあるのですが、見る側がイマジネーションを働かせながらアタマのなかで多面的に見ればいいわけです。
そうです、同じことを日常生活のなかでも実行すればいいのです。二次元の平面でしか把握できないのが人間ですから、さまざまな面からみてイマジネーションを働かせて奥行きを見るのです。
そういえば、自分も子どもの頃はよくレゴをつかって、何かをつくっては壊しを繰り返していたなあ、と思い出します。著者がふつうの子どもとは違っていたのは、レゴにのめり込んだことでしょう。それだけの違いですが、その違いはじつに大きい。
著者が本文に書いてあることは、できる子はみんな同じだなあと感じながら読みましたが、基本は、「好きこそものの上手なれ」です。「遊びが学び」といってもいいでしょう。
とくべつに変わっているわけでも、とんがっているわけでもなく、のびのびと育った男の子という感じがでていてひじょうに好感を感じます。
とくに面白かったのは、スペシャルコンテンツ1河森正治×三井淳平(=著者)の「空間的レゴブロック思考対談」。
1960年生まれのアニメーション監督と1987年生まれの、世代的にいえば親子ほど違う二人が語る内容が、お互いに響き合い、ひじょうに重要なことはいつの時代でも重要なのだということが伝わってきます。多面的なものの見方で重要なのは、なんといっても現地で現物を見るということ。いまのような時代だからこそ、それを徹底すべきなのである、と。
スキルやノウハウばかりを求めがちの現代日本人であるが、ほんとうに重要なのは多角的に見るという「ものの見方」とそのための「マインドセット」なのだということを示してくれる内容の一冊。
著者と同世代の20歳代のビジネスパーソンだけでなく、親世代のビジネスパーソンにもすすめたい本です。
<初出情報>
■bk1書評「物事を平面的ではなく、さまざまな距離や角度から多面的に見るクセをつけることの重要性」投稿掲載(2012年3月24日)
■amazon書評「物事を平面的ではなく、さまざまな距離や角度から多面的に見るクセをつけることの重要性」投稿掲載(2012年3月24日)
目 次
三井淳平作品集
序章 自分では意識したことがなかった「空間的思考法」
第1章 レゴブロックから学んだこと
第2章 空間的思考法につながった力
第3章 空間的思考法の実践
スペシャルコンテンツ1 河森正治×三井淳平―空間的レゴブロック思考対談
スペシャルコンテンツ2 ご両親インタビュー―三井家の子育て
著者プロフィール
三井淳平(みつい・じゅんぺい)
兵庫県明石市出身。1987年生まれ。2005年、テレビ番組の「レゴブロック王選手権」準優勝で注目を浴びる。直後に灘高校から、東京大学理科一類に現役合格。入学後に東大レゴ部を創部。2010年、レゴブロックを素材とした作品制作や関連する課外活動における社会貢献により、「東京大学総長賞」を個人受賞。2011年、「世界最高レベルのレゴブロック作品制作能力を持つ一般人」とレゴ社が認める「レゴ認定プロビルダー」に最年少で選出される(日本人初、世界でも13人目の快挙)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
<関連サイト>
ケンブリッジ大、「レゴ学」教授のポスト新設へ (NNA、2015年6月16日)
(2015年6月16日 項目新設)
<ブログ内関連記事>
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・・ビジネスパーソン向けのものの見方=発想法、についての本
書評 『伝説の灘校教師が教える一生役立つ学ぶ力』(橋本 武、日本実業出版社、2012)-「すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる」!
・・「学びは遊び」!
(2012年7月3日発売の拙著です)
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