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2010年5月1日土曜日

上海万博開幕!(2010年5月1日)


 みなさんお元気ですか。

 こんにちは、ケン・マネジメントの佐藤賢一 です。

 本日も時事ネタを扱いながら、B&M(ビジネスとマネジメント)の観点からコメント加えていきたいと思います。

 では、本日のテーマは 上海万博 です。


 万博のテーマ曲が岡本真夜のパクリだった件など、開幕直前になって赤っ恥さらしまくりの上海万博でありましたが、本日午前10時に無事開幕にこぎつけたことは、素直に祝福したいと思います。

 ◆パクられた原曲:岡本真夜 「そのままの君でいて」 http://www.youtube.com/watch?v=OiOSIcJe1ek 



中国人の面子(メンツ)は絶対につぶさないこと

 それにしても岡本真夜サイドの対応は見事でした。中国サイドに不必要に面子(メンツ)をつぶさせることは回避しただけでなく、すべて飲み込んだうえでビジネス拡大に活用してしまったわけですからね。水面下の交渉の内容は知りませんが、岡本真夜サイドには莫大な収入となることでしょう。まさに「棚からぼた餅」でウハウハ状態でしょう。
 中国人の作曲家がいまだに悪あがきをしているようですが、みっともないですね。
 この件は中国のネットユーザーからわき上がった盗作倒錯の声に押されて、万博サイドでも早期収拾に動いたようです。一般大衆の声がネットに反映される時代、思ったより健全な中国人の声に眼を開かれた人も少なくないのではないでしょうか。



東京オリンピック(1964年)と大阪万博(1970年)で日本は高度成長した-この成長モデルを徹底研究し活用して、韓国も中国も大きく飛躍した
 
 1970年の大阪万博から始まって、つくば万博、愛知万博、海外では太田(テジョン)万博にもいきましたが、私にとっては何といっても大阪万博に尽きます。
 1964年の東京オリンピックは記憶にありませんが、1970年の大阪万博はすごかった。1945年の敗戦からたった25年であそこまでこぎつけたというのは、あの当時の日本人がいかに猛烈だったか、という隔世の感にもとらわれますね。「おー、モーレツ!」という CM もありました。
 太陽の塔はいうまでもなく、アポロ号が採集してきた月の石を展示したアメリカ館などなど。ものすごい人出で、ほんの少ししか入れませんでしたね。記憶しているのは、ソビエト館、ベルギー館、ビルマ館ぐらいです。すいていたので入れました。

 大阪万博当時の1970年の日本、上海万博開催当時の2010年の中国
 熱気に満ちた、これから飛躍するぞ!という活力に満ちた国と国民、こういう姿を見るのは決してわるいことではありません。
 しかも日本の場合はオリンピック開催から6年後であったのに対して、中国は北京オリンピックの熱気も冷めないうちに翌年に万博をぶつけてくるという、息も尽かせぬ波状攻撃で内外に向かって躍進する中国を演出するという作戦で臨んでいるのがまたすごいところ。
 オリンピックと万博で、ホップ・ステップ・ジャンプというのは、まず日本が作り出した経済発展モデルですが、東アジアではこれにつづいて韓国、そして中国となったわけです。

 上海万博計画についてはじめて聞いたのは、いまから20年以上も前の話です。むかし金融系コンサルティング会社にいたとき、親会社の銀行で開発案件にコミットしてプロジェクトファイナンスを実行する部隊に人から聞きました。
 万博規模のプロジェクトは構想から開催まで20年以上の年月がかかるものなんですね。正確な計画内容については知りませんが、「改革開放」政策に舵を切ってから30年、かなり早い段階から北京オリンピックと上海万博のセットで大きく飛躍するという構想を描いていたのでしょう。当時から中国は日本を徹底研究していましたから。
 上海万博計画の話を聞いたときに、大阪万博の総合プロデューサーを務めた堺屋太一が顧問としてかかわっているという話も聞きました。堺屋太一は大阪万博当時は通産省(現在の経済産業省)の役人だったといのですから、その当時の役人には本当の意味で国家全体のことを考える人がいたわけなんですね。
 堺屋太一はいまだ現役でうが、私が在籍していたコンサルティングファームの親会社はである銀行は、いまではそのままの形では存在していないので、果たして承継した銀行が上海万博にコミットしているのかどかは知りません。



愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ■
 
 現在は上海万博歓迎ムード一色ですが、ただちょっと懸念することはあります。

 1970年の大阪万博は高度成長期のある意味ではピークの時期でもありました。高度成長と工業国としての急速な開発にともなう国土破壊と公害問題(・・現在では環境問題)、大学紛争などなど。
 大阪万博のテーマが「人類の進歩と調和」であったように、混沌とした状況のなか、なんとか高度成長と社会問題の緩和を両立しようとした時期でもありました。
 しかし1973年のオイルショックの到来で、「明るい未来」には一気に陰がさしました。狂乱物価とよばれた状況のなか、トイレットペーパー買い占め事件などが発生しました。
 日本はこのオイルショックを乗り切り、軌跡の経済成長を遂げたわけですが、かならずしもリニア(=直線的)に経済成長してきたわけではありませんし、1990年以降はずっと停滞状況が続いています。いやむしろ社会的には閉塞状況が続いているといってもいい過ぎではないでしょう。

 中国も日本と同じだとまではいいませんが、中国が今後も直線的に成長していくと考えるのは楽観的に過ぎるというよりも、ナンセンスというべきでしょう。
 もちろん短期的には経済は成長する。しかし同時に急速な経済成長が生み出したひずみが経済成長を鈍化させる要因ともなりかねない。
 考えてみれば当たり前のことですが、長いスパンをとってものを見ると、どこの国であれ、一直線に成長した国はないし、かならずどこかの時点でカベにぶつかるのです。
 中国も例外ではないでしょう。

 少し前までは中国悲観論というものがあって、「北京オリンピックまではもつだろう」、「いや上海万博までは・・・」という論調はいくらでもありました。
 「上海万博は成功してるじゃないか、悲観論なんて気分の問題だ」、と勝ち誇るようにいう人もいるでしょう。
 しかしながら、景気変動は必ず存在しますし、そもそも歴史というものは短期波動、中期波動、長期波動の組み合わせです。たしかに中国は長期波動の波に乗ってはいますが、短期的な揺り戻しは当然のことながらありうる。こう考えるのが自然というものでしょう。

 これを機会に、大阪万博以降の日本のあゆみを振り返りながら、中国のこれからについても、いろいろ考えてみてはいかがでしょうか。

 おそらく日本の経験で類推できる部分と、すでに未体験ゾーンに突入している中国の事実は日本人の常識を越えて理解不能な部分もあることがわかると思います。事実は事実として受け止めるしかないのです。

 しかも、中国も「改革開放」以降だけをみていては本当に理解することはできないはずです。すくなくともアヘン戦争以降の近現代史をしっかりと押さえておくことが不可欠であると、私は考えています。

 1930年代の上海は、その当時「東洋一の大都会」といわれていました。世界中の富が集まり、東京よりもはるかに巨大な都市でありました。
 2010年の上海は、万博で全世界の注目を浴びています。
 そして、2030年の上海は・・・20年先の話など誰にもわからないと答えるのが正直というものです。
 2010年に上海万博がこのように無事開催されると確信をもって断言できる人はいったいどれだけいたでしょうか・・・

 先を読むには、虚心坦懐に歴史を振り返るしかないのです。







<ブログ内参考記事>

■中国関連

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!

書評 『中国動漫新人類-日本のアニメと漫画が中国を動かす-』(遠藤 誉、日経BP社、2008)

『取締役 島耕作』 全8巻を一気読み

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)

書評 『中国市場で成功する人材マネジメント-広汽ホンダとカネボウ化粧品中国に学ぶ -』(町田秀樹、ダイヤモンド社、2010)

書評 『100年予測-世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図-』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、早川書房、2009)



■1970年代以降の日本

書評 『現代日本の転機-「自由」と「安定」のジレンマ-』(高原基彰、NHKブックス、2009)

書評 『田中角栄 封じられた資源戦略-石油、ウラン、そしてアメリカとの闘い-』(山岡淳一郎、草思社、2009)




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