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2013年10月31日木曜日

書評 『反省させると犯罪者になります』(岡本茂樹、新潮新書、2013)-この本をいかにマネジメントの現場に応用するか考えるべき



『反省させると犯罪者になります』(岡本茂樹、新潮新書、2013)は、読む価値のある本です。

受刑者の更生に長年かかわってきた著者は、臨床教育学を専攻する大学教授。ロールレタリングという手法で、被害者ではなく加害者自身に心情を考えさせ、「更生」に導いてきました。

多くのケースにかかわっているなかで著者がわかってきたのは、犯罪者にすぐ「反省」を求めるのは逆効果をもたらすということ。出所してもまた累犯者となってしまうのは、「反省」することがうまくなるだけで、ほんとうは「反省」などしていないからなのだ、と。

なぜこの本をマネジメント関係者に推薦するのか? まずは「目次」をみてもらうのがよいでしょう。

第1章 それは本当に反省ですか?
第2章 「反省文」は抑圧を生む危ない方法
第3章 被害者の心情を考えさせると逆効果
第4章 頑張る「しつけ」が犯罪者をつくる
第5章 我が子と自分を犯罪者にしないために

「反省」させることじたいが目的ではないのです。二度と同じ犯罪や事故を起こさせないことが目的であるはず。

うわべだけの「反省」はむしろ有害だというのが著者の見解ですが、たしかに自分にあてはめて考えてみても、うなづくことの多い内容です。

ある意味では「逆転の発想」です。常識の真逆であり、常識の盲点を突くといってよいでしょう。

JR西日本・福知山線の脱線事故は多くの死傷者がでた大事故でしたが、職員の乗務中のミスを「日勤教育」という労務管理の手法で「反省」させていたことを想起させるものがあります。「日勤教育」とは、精神論にもとづいた非人間的な「反省」を強いる手法でありました。

毎日のように有名な大企業で大きな不祥事が発生していますが、マスコミをつうじて表明される一般世間向けに行われる「謝罪」がほんとうに不祥事の再発防止につながっているのか、よくよく考えてみる必要がありそうですね。

この本をいかに教育の「現場」やマネジメントの「現場」にあてはめて応用できるかを考えてみることは、まずはみずからの日々の言動を「反省」するよい機会ともなるでしょう。

わたしとしては、企業内教育でもつかわれることのある「内観療法」の問題点を指摘(P.113)していることに注目したいと思いました。

自分とは異なる世界での体験を、どう自分の世界にあてはめて考えるか。これは大事なことです。自分の体験にも照らし合わせながら考えてみることです。そのためにはまず、自分とは異なる世界の経験を「一般化」し、それを自分の世界に「応用」してみることが大事ですが、この「一般化」というプロセスは訓練しないとできないかもしれません。

教育関係者や企業関係者にとって、読むとさまざまな気づきや示唆を受けることのできる本だと思います。ぜひ読んでみてください。





目 次

まえがき
第1章 それは本当に反省ですか?
第2章 「反省文」は抑圧を生む危ない方法
第3章 被害者の心情を考えさせると逆効果
第4章 頑張る「しつけ」が犯罪者をつくる
第5章 我が子と自分を犯罪者にしないために
あとがき

著者プロフィール

岡本茂樹(おかもと・しげき)
1958(昭和33)年、兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部教授。臨床教育学博士。中学・高校で英語教員を務めた後、武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科博士課程を修了。日本ロールレタリング学会理事長。刑務所での累犯受刑者の更生支援にも関わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

<関連サイト>

立命館大学 産業社会学部 現代社会学科 岡本 茂樹 (教員紹介サイト)

「現在の刑務所は罰を与えるだけで更生する場になっていない」 ホリエモンが語る刑務所からの"社会復帰" 岡本茂樹 × 堀江貴文 【前編】 (現代ビジネス 2013年12月17日)



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(2012年7月3日発売の拙著です)





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