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2011年12月2日金曜日

書評 『プロフェッショナルを演じる仕事術』(若林計志、PHPビジネス新書、2011)-「学ぶとは真似ぶなり」という先人の知恵を現代風にアレンジした本


「学ぶとは真似ぶなり」-徹底的に真似て、そのうえで真似た対象を乗り越えるための方法論とは?

 基本的に中級者以上のビジネス書です。初級者が読むと中途半端な理解になってしまう恐れがあるかもしれません。

 現状からワンランク上に上がりたいと思っている30歳代ならもちろん、最初から上を目指しているアンビシャスなビジネスパーソンなら20歳代前半でも読む価値はあるでしょう。ただし、あまり背伸びしすぎるのは禁物です。肝心なモチベーションが続きませんから。

 内容は一言で要約すればこんな感じでしょう。

 「なりたい自分」が活躍するシーンを具体的にイメージし、そのシーンが登場するストーリーをつくり、あこがれる対象としてのロールモデルを具体的に選び出し、役を演じる俳優のように徹底的に真似てみることからはじめよう、そしてそのうえで真似た対象を乗り越えることで真の自己を実現しようというストーリーです。

 正直なところ、カタカナ語がひじょうに多く、理論を詰め込みすぎではないかという気がしなくもないですが、全体的によくまとまっていると思います。豊富な具体例はビジネス以外からも多く取られており、読み応えがあります。

 心理学のモチベーション理論をよく勉強している人なので、読んでいて勉強になるのは確かです。この点はわたしの正直な感想です。

 ストーリーで考えることの重要性は言うまでもありませんね。最近の流行というだけでなく、これはもともと重要なのです。この重要性に気づいていない人は、最初から順に読んでいくといいでしょう。

 ある程度ビジネスのことがわかってきた中級者は、読むのは第Ⅱ部だけで十分だと思います。最終章の第7章「プロフェッショナルからの正しい学び方」だけは必ず読んでおきたい章ですね。この第二部が本書のキモであり、40歳代後半のわたしも大いに同感する部分です。

 日本では昔から「学ぶとは真似ぶなり」という格言がクチにさえてきました。著者自身はこの表現をつかっていませんが、本書の読者にはこの格言をぜひ知って身につけてほしいと思います。

 本書は、こういう先人の知恵を、最新の心理学用語で説得しようとした本だといえるでしょう。「新しい酒」には「古い革袋」ではなく「あたらしい革袋」が必要だということですね。これは日本語訳聖書の文言です。

 若い人にはもっと先人の知恵の結晶であるコトワザや格言を学んでほしいと思う次第です。著者が紹介する「離見の見」(世阿弥)や「守破離」もまたその一例です。


P.S. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。





目 次 

第Ⅰ部 ストーリーが人を動かす
 取調室でカツ丼を食べる謎
 ストーリーはどこからやってくるか
 プロフェッショナルのスゴさを「見える化」する
 仕事をゲームに変える方法)
第Ⅱ部 「プロフェッショナル」と「自分」をシンクロさせる
 「負ける技術」を身につける
 トイレを磨くと儲かるか
 プロフェッショナルからの正しい学び方


著者プロフィール

若林計志(わかばやし・かずし)

株式会社ビジネス・ブレークスルーボンド大学大学院ビジネススクール MBAプログラム(Bond-BBT Global Leadership MBA)リーダー。米国オルブライト大学卒業後、米シンクタンクのインターンを経て、日本紛争予防センターに参画。その後、経営コンサルタントの大前研一氏が代表を務める株式会社ビジネス・ブレークスルーに入社し、2000年より MBAプログラムの立ち上げを行い、現在まで事務局長を務める。またコロンビア大学大学院の国際協力紛争解決センター(ICCCR)のB.フィッシャー博士より認定を受け、協調的交渉術公認トレーナーとして、企業のグローバルマネージャー研修、政策学校「一新塾」などで講師を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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