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2013年8月23日金曜日

書評 『日本人が「世界で戦う」ために必要な話し方』(北川公一、日本実業出版社、2013)-「グローバル企業」の組織内コミュニケーションのありかたとはこういうものだ


「グローバル企業」におけるコミュニケーションの重要性、とくに組織内コミュニケーションがいかに死活的に重要かについて、自らの日本企業での経験との比較をふまえて書かれたビジネス書です。

「グローバル企業」の定義が本書のどこを探してもまったく書かれていないのが気になりますが、ここでは著者にかわって、「欧米系の多国籍企業で、人材は多国籍で多文化という多様性があり、その結果として社内の共通言語が英語となっている企業」、と仮に定義しておきましょう。

「グローバル企業」における組織内コミュニケーションの重要性とは、著者が書いているように、端的にいって直属の上司、すなわちボス(boss)との関係に集約されるといっていいでしょう。これは日本企業とはきわめて大きな違いです。

「グローバル企業」では、直属の上司との上下関係は契約関係に基づいた絶対的なものなのです。したがって、それ以外の職場の人間関係はまったくのフラットなものとなるわけです。日本語のニュアンスがつきまとう「上司」よりも、「ボス」といったほうがより適切でしょう。

上司からの提案に対して意見をいうことは大いに奨励されますが、いったん決まったことはボスに全面的に従うことになるわけです。最終的な権限はすべてボスにあるわけですから、いわば上意下達の命令体系といってもいいわけです。決まったあとからブツブツと言いわけをすることの多い日本企業の上下関係とは根本的に異なる点でしょう。

この関係をマスターできれば、逆に自分がボスとして自分の部下とどういうコミュニケーションをすればいいかもわかるわけです。これはロジカルな展開といえますね。基本は上司と部下との対話。この場でマネジメントが行われるわけです。

とくに金融系の場合、中途入社が多く人材の流動性の高い職場環境でありますが、そもそも金融系にかかわらず「グローバル企業」においては、「ジョブ・ディスクリプション」(job description)に基づいた職務が明確に定義された採用である点は日本企業との大きな違いです。

専門職務(=ジョブ)については知っているのが当然という前提ですので、誰も懇切丁寧に教えてくれなどしてくれません。とにかく自分が動きまわって聞きまくり、自分の仕事は自分で覚えなくてはならない。自分が動かなければ誰も動かないのです。

つまるところ頼れるものは自分だけ日本でも職人の世界では、「技は盗むもの」とされてきましたが、「グローバル企業」でもそれは同じだといえるわけです。

著者は「グローバル企業」では「NFL」が重要と書いています。これはぜひアタマになかに入れておきましょう。

数字(number)、事実(fact)、ロジック(logic)の英語の頭文字を並べて「NFL」。「国際ビジネスの共通言語」をセットとして捉えたものですが、共通言語は英語だけではないのです。また、ロジックはロジカルシンキングとはイコールではないという著者の指摘は重要です。

結論から先に述べて理由はそのあとに続けて述べるという英語のロジックは「グローバル企業」とはきわめて親和性が高いのですが、日本語のロジックとはかならずしも相性がよくないことは、読者はおおいに意識しておく必要があるでしょう。

著者が実践してきた英語のコミュニケーションスキルを、日本企業のなかで日本語で行うには、「グローバル企業」から見れば逆に「異文化」である日本企業という「ローカル文化」の認識が不可欠です。

とはいえ、職場の人間関係を職場外に持ち出さないという姿勢はぜひ日本企業でも徹底してほしいと思う人は少なくないと思います。その点は、わたしも大いに賛成です。

盗めるものは大いに盗み実践していくこと、これは日本企業に勤務して日本語でコミュニケーションしていても絶対に必要なマインドセットです。いま日本企業でもかつてのように余裕はなくなっていますので、自分がしっかりしなければ生きていけないという点は同じかもしれません。

著者は「欧州系の金融機関」で15年間働いてきたそうですが、著者がかつて勤務したことのあるという日本の金融機関とはまさに真逆の世界なのです。そのほかの業界でも似たようなものでしょう。

日本企業のすべてが「グローバル化」するとは将来もありえませんが、そうはいっても、いつ自分が勤務する会社が「グローバル企業」に買収されるとも限りません。

いざそうなったときにもあわてないように、日頃から自己啓発として準備しておくことは大事なことです。本書はそのための好著だといっていいでしょう。


P.S. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。





目 次

第1章 世界標準のコミュニケーション 7つの「基本ルール」
 01 「お互い違うのが当たり前」がスタート地点
 02 相手の価値観を尊重することから始める
 03 会話で「間」があくのは放送事故だと思え
 04 「なぜ」好きか、「なぜ」嫌いかをはっきりさせる
 05 言いたいことは必ず口に出せ
 06 返事には「イエス」か「ノー」しかない
 07 世界標準のコミュニケーションが生まれる背景
第2章 グローバル企業の「組織と人間関係」を知ろう
 08 グローバル企業は個性的なプロ集団
 09 組織を貫く「縦のライン」と「横のライン」
 10 意外に強固でウェットな「縦のライン」
 11 上司であっても「名前」で呼ぶ理由
 12 上司の指示を疑い、積極的に意見せよ
 13 仕事は自分で聞いて身につける
 14 会社の人間とプライベートでは交わらない 
 15 「週末、何してた?」と聞いてはいけない理由
第3章 世界で勝ち抜くコミュニケーション「実践テクニック」
 16 人を動かす3種の神器「数字、ファクト、ロジック」
 17 「結論ファースト」を徹底する
 18 議論は「知的なスパーリング」
 19 やはり大事なエレベーターピッチ
 20 癖のある英語にどう対応する?
 21 「日本流」で叱るとパワハラ扱いされることも
 22 世界では「お客様は神様」は通じない
 23 外国人との会話に欠かせないユーモアの仕入れ方
第4章 必ず結論を出すグローバル企業の「会議」術
 24 会議は「結論を出す場」が大前提
 25 会議をスムーズに進行させる「アジェンダ」の効用
 26 資料の事前配布を徹底させる「48時間ルール」
 27 会議の資料は目的意識を持って読み込む
 28 効率的な議論を進めるための手順と注意点
 29 会議で発言するためにはトレーニングが必要
 30 会議の決定事項には逆らえない
 31 電話会議はルール厳守で行なう
第5章 グローバル企業流「メールと電話」の使い方
 32 メールは「2つの差」を埋める重要なツール
 33 メールの文章は効率を最優先する
 34 アクションにつながらないメールに意味はない
 35 英文メールは「定型」に頼りまくれ
 36 メールで不用意に議論しない
 37 メールでは安易に謝らない
 38 スマートフォンに依存し過ぎない
 39 一番気を使う上司との電話
特別付録1 グローバル企業で好まれるフレーズ
特別付録2 グローバル企業のことがよくわかるブックガイド


著者プロフィール

北山公一(きたやま・こういち)
東京大学を卒業後、国内の金融機関に就職。アメリカ支社勤務を経て、欧州系投資銀行に転職。仕事のスタイルの違いから、カルチャーショックに直面する。その後、欧州系のグローバル企業に入社し管理職として勤務。個性の強い外国人の上司、同僚、部下に揉まれながらマネジメントをしてきた結果、グローバル企業における実践的なコミュニケーション・ノウハウを身につけ、体系化した。グローバル企業勤務15年、アメリカ居住5年半の経験もあり、「日・米・欧」における仕事やライフスタイルの違いにも通じている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

『日本人が「世界で戦う」ために必要な話し方』 著書紹介公式サイト


<ブログ内関連記事>

『グローバル仕事術-ニッポン式ビジネスを変える-』 (山本 昇、明治書院、2008) で知る、グローバル企業においての「ボス」とのつきあい方
・・『日本人が「世界で戦う」ために必要な話し方』の著者は巻末で「ブックガイド」として10冊をあげていますが、それに加えてこの『グローバル仕事』をつよく推奨しておきたいと思います。英国系企業の本社で働いてきたビジネスマンは、上司との関係もふくめた組織ないコミュニケーションについて、より掘り下げた考察を行っています。

書評 『海外ビジネスを変える英文会計-経営の判断力が身につく!-』(木幡 幸弘、インテック・ジャパン監修、エヌ・エヌ・エー、2010)

なぜ「経営現地化」が必要か?-欧米の多国籍企業の歴史に学ぶ

書評 『採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの-』(伊賀泰代、ダイヤモンド社、2012)-日本人に必要なものはリーダーシップの実践能力だ

書評 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013)-英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではない

書評 『日本企業が欲しがる「グローバル人材」の必須スキル』(内永ゆか子、朝日新聞出版社、2011)-あくまでも「個」をベースに考えるとことが英語よりも大事

書評 『スミダ式国際経営-グローバル・マネジメントの先進事例-』(桐山秀樹、 幻冬舎メディアコンサルティング、2010)

英語よりも日本語をキチンと教育してもらいたい!-「英語至上主義」と訣別し、人的資源の有効活用策を考えるべし

いかにして異なる業種業界や職種間、また組織内の異なる機能間で「共通言語」と「コンテクスト共有」によるコミュニケーションを可能とするか





(2012年7月3日発売の拙著です)





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2013年5月2日木曜日

書評 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013)-英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではない


TVに登場して歯に衣着せない痛快な発言をしている宋文洲氏。 嫌いな人も少なくないでしょうが、わたしは大好きです。

なぜなら、発言内容があまりにも当然すぎるほど正論だから。中国人であろうが、日本人であろうが関係ありません。ただしいことを言っているので評価するのです。

そんな宋文洲氏の最新刊 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013) はいい内容です。タイトルや帯のキャッチコピー出版社がつけたのでしょう、ややどぎついですが内容はいたってまともです。

現在グローバル化が脅迫的な響きをもってさかんに叫ばれていますが、さすがに一昔前のように日本からみた先進国である英国や米国でのビジネスが「グローバル化」という意識はすでにないでしょう。

実態は、中国や東南アジアがいわゆる「グローバル化」の中心にあります。そこでつかわれている言語は、ビジネスであれば英語が共通語とはなっていますが、現地に住んでいる圧倒的多数のローカルな人たちは英語などまったく理解できません

この事実は、本書でも取り上げられているアマゾン・ジャパンと楽天の比較事例を読めば明らかでしょう。宋文洲さんによれば、米国企業アマゾン・ジャパンの社内原語は日本語です。考えてみれば当たり前の話ですね。日本人の7割は100年たっても英語中心の生活にはならないでしょう。その他の国もまた同じです。

逆に考えれば、日系企業が中国で日本語を社内共通語にしたら工場は回らなくなってしまいます。マネージャー以上は英語が共通語だとしても、ワーカーに英語や日本語を求めてもナンセンスというものです。ローカルな消費者も英語も日本語も理解しないでしょう。

いまでは英語はビジネスコミュニケーションのツールとしての意味しかないのです。しかも英語の通用範囲は思ったよりも狭いというのが世界の現実です。

もちろん英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではありません。言い換えれば、必要条件ではあるが、十分条件ではないということですね。

では、現地のローカル市場においてほんとうに必要なことはなにか? なにがもっとも必要とされるスキルであり、マインドセットであるかについては、目次を見ればたちどころに理解できるはずでしょう。

第1章 不思議な病「英語恐怖症」におびえる日本人
第2章 9割の日本人が勘違いする「グローバル化」の意味
第3章 御社がグローバル化できない本当の理由
第4章 生き残るために大切なのは「英語力」より「議論力」
第5章 日本人だけが知らない世界のコミュニケーションのルール
第6章 英語ができないあなたがグローバル社会で生き残る方法

グローバル化とは、じつは地道なローカル化なのだという宋文洲さんの指摘、これはじっくりとかみしめていただく必要があります。

日本企業にとってもっとも必要なことは、内なるグローバル化といっていいでしょう。そのキモは、オープンな企業風土をつくりあげること。わたしの表現なら「マネジメント国際化」こそが求められるということです。

リアルビジネスにおいては「グローバル化」など存在しません。あるのは国と国とのあいだの「国際化」だけなのです。

そして個々の日本人ビジネスパーソンにとって求められることは本書のなかに詳述されています。要は人間としての中身を充実させるということ。

この本には、「グローバル世界」ではあまりにも当たり前の内容なのですが、日本ではあまりにも当たり前になっていないことが書かれています。かつて評論家の竹村健一が「世界の常識 日本の非常識」とつねに語っていたことを思い出します。

この本は、カネがあれば一万冊くらい買い上げてタダで配ってもいいくらいの内容です(笑) さすがにそんなカネはありませんので、みなさまお買い求めのうえ一度目を通してみてください。





<関連サイト>

大研究 なぜ日本の企業はこんな採用をしているのか ユニクロ・楽天・グーグルほか 急増中!「英語ができて、仕事ができない」若手社員たち(「週刊現代」 2013年04月30日)
・・「就活が本格化すると、こぞってTOEICの教材を買い込む学生たち。日本の歴史や文化をよく知らないまま、英語ができるだけの「グローバル人材」となった若者たちに、仕事ができるわけはない」。

<ブログ内関連記事>

書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう
・・日本というローカル市場においては今後も日本語がメジャーであることに注意を促している

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!-中国人の「個人主義」について考えてみる

地域密着型で成功した 「地域新聞」 というフリーペーパー(=無料紙)のビジネスモデルを知ってますか?

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い





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2013年4月24日水曜日

書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう



10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう。そんな感想を抱かせてくれる内容の好著。

一言で要約すれば、「人にかかわる仕事で技能集約、あるいは知識集約型の仕事が今後も生き残る」といってよいでしょう。コンピュータという「機械(マシン)との競争」を回避することができる分野で、かつ日本語を母語とする日本人が日本で生き残ることのできる領域は、結局はそこにしかないと思われます。

先日のことですが、海外留学経験もある有識者と会話をしていたとき、「これからはグローバル対応しないと日本人は生き残れないのに、最近の男の子ときたら外国に行こうとしない・・・」という、愚痴ともつかぬ問いかけがありました。

それに対してわたしが答えたのは、「2040年になっても日本の人口はまだ1億人を越えているのですよ。そのときでも、おそらく日本人の7割は英語を日常言語にすることなどないでしょう。植民地にでもならないかぎり、その状況は100年たっても変わらないと思いますよ(笑)」。

つまりグローバル経済がいかに進展しようと、日本市場はあくまでもローカル市場としての性格は変化しないということです。日本に暮らす日本人の大半は今後も英語ではなく日本語で日々の生活を送るであろうということ。

これは日系企業の海外進出を考えてみればわかることです。

日系企業は現地では「外資系」(!)ですが、ローカル従業員はローカル言語をしゃべる人たち。日本語を使用言語にするというのはコスト的にみて現実的ではありません。

これを逆に日本にあてはめてみれば、たとえ資本が外資系になろうとも、ローカル日本人(!)の言語は日本語です。日本市場でビジネスをやろうと思えば日本語の運用能力のレベルが高くないと相手にしてもらえない、というわけですね。

そんな会話をしたあと、近所の本屋で目に飛び込んできたのが平積みにされていたこの本。 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(渡邉正裕、東洋経済新報社、2012)。わたしが回答したことを、より詳細なレベルで語った本でした。

もちろん、10年後の予測など完全には当たるものではありませんが、人にかかわる仕事で技能集約、あるいは知識集約型の仕事が今後も生き残るわけです。

(『10年後に食える仕事 食えない仕事』に所収のマトリックス)


たとえば営業でも、いわゆるソルジャー型営業は日本人である必要はないが、コンサルティングセールスなど高度な日本語能力が必要とされる仕事は生き残る。お客さんは日本語でコミュニケーションをとるローカルの日本人ですから。

ですから、「恐れるに足らず、しかし準備を怠ることなく」というマインドが必要ですね。

いわゆるアベノミクスによって円安基調となっていますが、今後も円安が定着するようであれば、外資に買収される日本企業もも増えてくると思います。

その場合でも、買収する側はあくまでも「資本の論理」に基づいていますから、想定している収益があがればそれ以外のことにまで介入してくることはないでしょう。外資といえども社員全員に英語をしゃべろなどとアホな要求をすることはあり得ません。

ただし、その場合でも、マネージャーは英語でレポーティングする必要がでてくるので、英語能力がないと社内では生き残れない可能性はでてくるでしょうね。

ですから、著者のいう「グローカル」というカテゴリーが今後は目指すべきフィールドとなるわけです。日本人としての強みを正確に把握したうえで、それなりの英語能力があれば生き抜いていくことはできるということになります。

出版されて1年以上たってますが、6章の政策提言の内容ははさておき、方向性はそのとおりだと思います。まだ読んでない人は、突っ込み入れながら読んでみるといいでしょう。





目 次

はじめに-正しい航海図を持とう

1章:いま、何が起きつつあるのか
 新卒採用のグローバル化
 サービス業の海外移転
 事業再編にともなう中高年クビ切り

2章:「日本人メリット」で食える仕事の条件
 独自カルチャー依存
 チームワーク&サービス
 チームワーク力
 サービス力
 信用&コミュニケーション
 ハイレベルな日本語
 国による参入規制
 ヒトの流入規制

3章:各エリアの職業とその特徴
 「重力の世界」-重力のように収斂されるエリア
 「無国籍ジャングル」-世界中の人がライバル
 「ジャパンプレミアム」-日本人らしさで生き抜く
 「グローカル」-日本市場のプロとして

4章:判定チャート-10年後、あなたの仕事はどうなるのか?
 【Q1】公務員・議員だ(国による決定的な参入規制がある)
 【Q2】日本語ネイティブでないと成果が出ない職業だ
 【Q3】日本の伝統的なカルチャーを扱う職業だ
 【Q4】日本独自の商慣習、雇用慣行がカギを握る職業だ
 【Q5】日本的なチームワーク、サービス精神が強みとなる職業だ
 【Q6】高度な技術の組織的蓄積がある
 【Q7】同じ日本人としての信用と相互理解が決定的に不可欠な職業だ
 【Q8】職務遂行に高度な知識や資格が必要だ
 【Q9】知識集約的で生来の才能と無限に挑戦する努力が不可欠な職業
 【Q10】IT技術により世界中どこでも場所を選ばずできる職業になった
 【Q11】一次・二次産業で高い技術力は必要なく時間の制約もない職業だ

5章:10年後の生き残りかた
 エンジニア系
 セールス系
 バックオフィス系

6章:10年後の「日本人の雇用」
 (1) 「無国籍ジャングル人材」の優遇
 (2) 経済的規制の撤廃
 (3) “負の雇用貢献税”で雇用を国内化する
 (4) 単純労働者はギリギリまで受け入れない
 (5) 「負の所得税」による再配分
 (6)  政治のリーダーシップで雇用を守る

おわりに-「頼れるのは自分だけ」の社会で

著者プロフィール

渡邉正裕(わたなべ・まさひろ)
1972年東京生まれ。独立系ニュースサイト MyNewsJapan のオーナー兼編集長、自らもジャーナリストとして雇用・労働問題を中心に『企業ミシュラン』シリーズの執筆を続ける。慶應義塾大学(SFC)卒、日本経済新聞記者、日本IBMのコンサルタントを経て、ジャーナリズムに特化したインターネット新聞社を創業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

株式会社MyNewsJapan 代表取締役 渡邉正裕さん(インタビュー記事)

日本でも、中間層の仕事がなくなる? 『ワーク・シフト』著者、リンダ・グラットン氏に聞く 渡邉 正裕 :My News Japan編集長

エリート以外の99%はコミュニティが仕事場藤原和博(その1)


<ブログ内関連記事>

書評 『コンピュータが仕事を奪う』(新井紀子、日本経済新聞出版社、2010)-現代社会になぜ数学が不可欠かを説明してくれる本

書評 『日本企業が欲しがる「グローバル人材」の必須スキル』(内永ゆか子、朝日新聞出版社、2011)-あくまでも「個」をベースに考えるとことが英語よりも大事

書評 『採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの-』(伊賀泰代、ダイヤモンド社、2012)-日本人に必要なものはリーダーシップの実践能力だ




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2012年9月18日火曜日

書評 『日本企業が欲しがる「グローバル人材」の必須スキル』(内永ゆか子、朝日新聞出版社、2011)-あくまでも「個」をベースに考えるとことが英語よりも大事


「日本企業が欲しがる」、「グローバル人材」、「必須スキル」、刺激的なキーワードの三連続がタイtルになってますね!

しかも、著者は語学学校の老舗ベルリッツのCEOで、前職は日本IBMでは初の女性取締役を歴任というキャリアの持ち主。本文は、日本語だけでなく、ところどころに英文が入るため、最初から最後まで「横組み」です。

しかし、この本は英語の勉強法を説いた本ではありませんグローバル時代に不可欠なマインドセットと世界標準の仕事のやり方について書かれた内容です。

ビジネスパーソンにとって必要なことは英語学習が目的ではなく、あくまでも英語をつかってビジネス・コミュニケーションを行うことによって、成果を出すことにあるのです。

しかも、英語じたいも、話し手がネイティブよりもノン・ネイティブが比率的には3:7と圧倒的になった時代、アメリカや英国をモデルにした英語学習は、時代の流れにはまったく合っていないのです。

もちろん英語も重要ですが、大事なことはあくまでも「個」をベースに考えるということ。たとえ会社や組織に属していても「個」をベースに考え、ネットワークも「個」を中心につくるのが当たり前となってきたのです。これが世界標準というべきでしょう。

そんな時代のパーソナル・ネットワーク構築には、豊富な「引き出し」が必要だという著者の発言には、おおいに我が意を得たりと思ったものです。

グローバルビジネスでは、パーソナル・ネットワークが重要になると書きました。パーソナル・ネットワークとは組織のポジション(肩書きや役職)に頼らない人間関係のことですから、ビジネス以外の引き出しをどれだけ豊富にもっているかも問われるわけです(P.85)。

拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)を執筆していた時点では、本書の存在を知らなかったのが残念です。もし読んでいれば、「グローバル人材」養成という要素も「引き出し」を増やさなければならない理由の一つとして強調できたのではないかと思いました。基本的に、拙著に引用した藤田田(ふじた・でん)の発言と同じ趣旨を述べてますね。 ⇒ http://www.kou-shobo.co.jp/files/sample/1074.pdf 参照

つねに「なぜ?」という疑問をもち自問自答し、臆せず質問し、ロジカルに筋道たてて考えて発言をするという生活習慣をもつこと、これがグローバル社会のなかで生き抜くために絶対不可欠な「自分のアタマで考え抜くチカラ」をつくります。これはわたしがに書いたことと基本的に同じです。

著者は、男社会が優勢であるビジネス社会のなかで、日本IBMで女性初の取締役に就任した人ですが、その人がマイノリティであることのデメリットだけでなくメリットについて語っていることは、おおいに感銘を受けました。グローバル社会のなかでは、男性であっても日本人はあくまでもマイノリティなのですから。

海外勤務であろうがなかろうが、こういうマインドセットをもって生きていくことが、これからの時代のビジネスパーソンには不可欠なのです。

ぜひお読みいただきたい一冊として推奨いたします。





目 次

はじめに

プロローグ 「変わる」ことを恐れているヒマはない!

勝てるのは「カタストロフィック・ジャンプ」を起こした者だけ
悔しい経験が「大転換」を生んだ
自分次第でチャンスはいくらでもある時代

第1章 民族大移動-「あうんの呼吸」が通用しない!

「帰らざる橋」を渡りはじめた日本企業
M&A事業を担えるPMIリーダーを求む
TOEICのハイスコアよりマインドセットが大事
BOPビジネスにグローバル化のカギあり
欲しい人材は「世界に通用する経営者」だけ
外国人社員と対等に競える力を磨け
現場レベルで判断できるリーダー求む
海外への武者修行が奇抜な製品を生んだ
「家族以外はすべて変えよう」

第2章 内永流・世界と渡り合う人材になるための6つの条件

アクションが決まれば、あとはツールを磨くだけ
①「論理力」―「英語」を超える世界最強ツール
②ゼロベース・コミュニケーション-脱「あうんの呼吸」
③「違い」を理解する力
④「そこそこ」の英語力
⑤「自分」を語る力
⑥名刺なしで付き合える人脈

第3章 どこでも使える人材になるために

沈黙は「金」ではなく「禁」!?
ハイコンテクストvs.ローコンテクスト
「自分」を知ることが第一歩
「通じない」のが当たり前
「グッド・オールド・ボーイズ・ネットワーク」は過去の遺物

第4章「国際試合」の基本ルールを学ぼう

正しいトレーニングを選ぶ
3秒ルール
No bad question!
Be assertive!
エレベーターピッチ
Simple is the best!
DOs & DON'Tsリスト
「日常会話」をあなどるべからず

第5章 これが「使える」英語だ!-内永流・実践テクニック

明日から即使える、シチュエーション別ビジネス英語
会議を進行する-ファシリテーターに指名されても怖くない!
会議に参加する-アクティブ・コミュニケーターを目指そう
電話会議に出席する-苦手意識はこう克服するべし!
プレゼンテーションをする-ビジュアル・コミュニケーションのコツも学ぼう
交渉をする-いかに有利な条件を引き出すか

第6章 ブレない「個」を作る「強く」「早く」決断した者だけが生き残る

震災で外国人教師が
いっせいに帰国してしまった
揺らがない「軸」が決断を支える
「古典」と向き合うことから生まれる力
一風変わったセミナー
古典にグローバルリーダーのあり方を見る
長期的なロードマップを描く
グローバルチームの一員として生きる

エピローグ 「Execution」あるのみ!

4割でいいからやってみよう
行動に移してわかることがある

付録 APPENDIX

世界中どこにいても会話が弾む11のコツ
会議で扱いにくい参加者のタイプと、その対処法
電話会議(テレカンファレンス)のDOs&DON'Tsリスト
会議で必ず役立つキー・フレーズ
ファシリテーション(進行)に絶対役立つキーフレーズ
プレゼンテーションで必ず役立つキーフレーズ
ネゴシエーション(交渉)で必ず役立つキーフレーズ
POWER WORDS
ブレない軸を作る「古典」リスト


著者プロフィール
内永ゆか子(うちなが・ゆかこ)
ベルリッツコーポレーションCEO(最高経営責任者)、株式会社ベネッセホールディングス取締役副社長を兼務。1946年生まれ。1971年東京大学理学部物理学科卒業、同年日本IBMに入社。長年ソフトウエア開発にたずさわり、1995年に同社で初の女性取締役に就任。2008年4月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


<ブログ内関連記事>

なぜ日本人現地派遣者の評価が現地で低いのか?-それは英語など語学以前の問題だ!






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2011年7月16日土曜日

The Greatest Salesman In the World (『地上最強の商人』) -英語の原書をさがしてよむとアタマを使った節約になる!


 『地上最強の商人』(オグ・マンディーノ著)という本があります。日本経済新聞に広告がよくでているので目にしている人も多いでしょう。

 日本経営合理化協会から日本語訳が出版されて、京セラ創業者の稲盛和夫さんなどによる絶讃のコトバが紹介されていますが、なんと1万円(!)を越える高額本です。

 広告にでるたびに気にはなるものの、中身を読んだことがないという人も多いのではないでしょうか。

 ネットであるブログの記事(?)を読んでいたら、原本のタイトルが The Greatest Salesman In the World であることを知って、amazon で検索してみたら、出てくるは出てくるは。しかも、とても1万円なんて高額本ではありません。

 さまざまなエディションのなかから、Gift Edition の古本を購入してみたら、送料250円をふくめてもたったの477円。アタマをつかえば9,500円は節約できるという実例です。

 さっそく読んでみたら、これがなかなか面白い内容。なるほど日本でもビジネス界のセレブが推奨してきただけの内容がある本だとわかりました。2001年のギフト・エディションの表紙に書かれているのは、1,400万部突破のロングセラーとあります。1968年にはじめて出版されてから43年、じつに息の長いロングセラーですね。

 基本的にこれは自己啓発本。英語では inspirational というカテゴリーに分類されています。個人のやる気を inspire するという意味ですね。つまるところ(自己)啓発。

 設定は、おそらくイエス・キリストが生まれる前のパレスチナ。ダマスカスやパルミラ、エルサレムやベスレヘムといった地名にピンとくるのは、キリスト教徒や新約聖書、あるいは中近東古代史を熟知されている方でしょう。
 
 この本は一言で言ってしまえば寓話です。年老いた成功した商人(=地上最強の商人)が引退し、つぎの後継者が現るのをまって、自分が受け継いだ「成功の知恵」を継承していくというもの。物語のパターンとしては、老賢者が青二才の若者に秘伝を伝授するという、自己啓発書ではよくあるものですね。というよりも、わたしはこの分野はくわしくありませんが、この『地上最強の商人』もある意味では、原型のひとつとなっているのでしょう。

 『地上最強の商人』においては、老賢者は成功した地上最強の商人、かれ自身もまた若き日に老賢者(=地上最強の商人)から教えを受けた人という設定。つまり、順繰り順繰りで秘伝としての知恵が伝承されていく。

 そに知恵は、この寓話では10巻の巻物となっています。日本でいえば、宮本武蔵の『五輪書』か、いわゆる「虎の巻」といったところでしょうか。この巻物を伝授するに値する若者が出現したとき、渡されることになるというものです。

 第8章から第17章までが、そえぞれ巻物の一巻一巻に該当しています。

 書かれている内容は、虚心坦懐に読めば、江戸時代いらいの商人の実践倫理にも近いので、日本人が読んでもそれほど違和感がありません。儒教の孟子が説く「惻隠(そくいん)の情」や、禅仏教で説く「いまここで」の教えなど。実践倫理にかんしては、洋の東西をこえて共通しているといってよいのかもしれません。

 また、日本のビジネス研修でもよく使用される『てんびんの詩(うた)』という、近江商人を描いたビデオ作品も思い出します。本書には「三方よし」は登場しませんが、「利益の50%は貧しい人たちに分け与えよ」という教えは、「地上最強」というよりも「地上最高」のセールスマンであるべきことを教えています。常日頃から施しを行っていれば、タイムラグがありながらも、回り回って自分に戻ってくるという利益のループ構造。

 このうえにさらに、生活習慣となるまでに反復して繰り返すこと(a habit in living)や、感情をコントロールすることや、他の誰でも唯一無二の「自分」を強調すること、明日でも昨日でもなく「今日が最後の日」と思え(I will live this day as if it is my last.)など、重要な教訓が散りばめられています。

 ただし、すばらしい教えが書かれた10巻の巻物を読んだあとの最後の18章は、キリスト教徒ではない日本人にとっては、とってつけたような内容で、別の物語にしたほうがいいのではと、正直いって思います。サウロが回心してパウロになったなど。原始キリスト教の知識があれば、それなりに楽しめるでしょうが。ネタバレになってはいけないので、詳細は省略します。

 日本語訳は先にも書いたように、一万円を越える高額本なので中身を見たことがありませんが、英語の原文で読んだ限りでは、上記のような感想をもちました。日本語版として出すなら、設定も変えて、翻訳ではなく翻案としたほうがいいのでは、というのがわたしの感想です。

 英語の原文で読んでみて思ったのは、日本語訳で「商人」となっている単語が salesman(セールスマン)となっていることです。 salesman と merchant とほぼ同じ意味でつかっていますが、1968年の出版であり、読者対象のセールスマン(・・現在なら salesperson:セールスパーソンとすべき)に向けて書かれた本であることがよくわかります。しかも、コミッション制のセールスです。こういうところは、著者はうまいなと思います。日本語訳がそうなっているかは知りません。

 英語については、時代設定を新約聖書時代のパレスチナに設定している関係からか、やや古風な表現を意図的に使っているようで、高校程度の英語能力でも、慣れないと読みにくいかも。King James Version(欽定訳聖書)の文体でしょう。Thou(汝)などの人称表現や、lest などのやや古風な構文。また、sir ではなく sire など。

 こういうことを踏まえたうえで、英語の原文で読むのであれば、大幅に節約もできるのでオススメする次第です。
 
 もちろん、大枚一万円を「自己投資」することが「成功への近道」だと説かれるのであれば、もちろんわたしとしても、意義申したてすることはいたしません。

 中身がわかればそえでいいという合理主義に徹するか、自己投資と割り切って、上製本を手元に置いて繰り返し読み込むか。これはマインドの問題だといっていいでしょう。





<関連サイト>

オグ・マンディーノ・・wikipedia(日本語版)の記述。
・・最初の著書である『地上最強の商人』(1968年)出版までに人生はこれを参照。ただし、Introduction に書かれていることに同じ。人生においてさまざまな苦労を経験しながらも、保険のセールスマンとして成功し、ついには最初の志(こころざし)を失わずに著者になったエピソードじたいが、自己啓発本の著者にはふさわしい内容。




PS なんと角川文庫から格安版が出版

2014年11月に山川紘矢&山川 亜希子の訳で角川文庫から出版されました。消費税込みで、なんと562円! スピリチュアアル系の自己啓発書の翻訳で有名な翻訳者によるものなので、訳文にはとくに問題はないと思われます。もはや、大枚払ってありがたがる必要もなくなったということですね。(2015年2月7日 記す)





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