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2013年5月2日木曜日

書評 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013)-英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではない


TVに登場して歯に衣着せない痛快な発言をしている宋文洲氏。 嫌いな人も少なくないでしょうが、わたしは大好きです。

なぜなら、発言内容があまりにも当然すぎるほど正論だから。中国人であろうが、日本人であろうが関係ありません。ただしいことを言っているので評価するのです。

そんな宋文洲氏の最新刊 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013) はいい内容です。タイトルや帯のキャッチコピー出版社がつけたのでしょう、ややどぎついですが内容はいたってまともです。

現在グローバル化が脅迫的な響きをもってさかんに叫ばれていますが、さすがに一昔前のように日本からみた先進国である英国や米国でのビジネスが「グローバル化」という意識はすでにないでしょう。

実態は、中国や東南アジアがいわゆる「グローバル化」の中心にあります。そこでつかわれている言語は、ビジネスであれば英語が共通語とはなっていますが、現地に住んでいる圧倒的多数のローカルな人たちは英語などまったく理解できません

この事実は、本書でも取り上げられているアマゾン・ジャパンと楽天の比較事例を読めば明らかでしょう。宋文洲さんによれば、米国企業アマゾン・ジャパンの社内原語は日本語です。考えてみれば当たり前の話ですね。日本人の7割は100年たっても英語中心の生活にはならないでしょう。その他の国もまた同じです。

逆に考えれば、日系企業が中国で日本語を社内共通語にしたら工場は回らなくなってしまいます。マネージャー以上は英語が共通語だとしても、ワーカーに英語や日本語を求めてもナンセンスというものです。ローカルな消費者も英語も日本語も理解しないでしょう。

いまでは英語はビジネスコミュニケーションのツールとしての意味しかないのです。しかも英語の通用範囲は思ったよりも狭いというのが世界の現実です。

もちろん英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではありません。言い換えれば、必要条件ではあるが、十分条件ではないということですね。

では、現地のローカル市場においてほんとうに必要なことはなにか? なにがもっとも必要とされるスキルであり、マインドセットであるかについては、目次を見ればたちどころに理解できるはずでしょう。

第1章 不思議な病「英語恐怖症」におびえる日本人
第2章 9割の日本人が勘違いする「グローバル化」の意味
第3章 御社がグローバル化できない本当の理由
第4章 生き残るために大切なのは「英語力」より「議論力」
第5章 日本人だけが知らない世界のコミュニケーションのルール
第6章 英語ができないあなたがグローバル社会で生き残る方法

グローバル化とは、じつは地道なローカル化なのだという宋文洲さんの指摘、これはじっくりとかみしめていただく必要があります。

日本企業にとってもっとも必要なことは、内なるグローバル化といっていいでしょう。そのキモは、オープンな企業風土をつくりあげること。わたしの表現なら「マネジメント国際化」こそが求められるということです。

リアルビジネスにおいては「グローバル化」など存在しません。あるのは国と国とのあいだの「国際化」だけなのです。

そして個々の日本人ビジネスパーソンにとって求められることは本書のなかに詳述されています。要は人間としての中身を充実させるということ。

この本には、「グローバル世界」ではあまりにも当たり前の内容なのですが、日本ではあまりにも当たり前になっていないことが書かれています。かつて評論家の竹村健一が「世界の常識 日本の非常識」とつねに語っていたことを思い出します。

この本は、カネがあれば一万冊くらい買い上げてタダで配ってもいいくらいの内容です(笑) さすがにそんなカネはありませんので、みなさまお買い求めのうえ一度目を通してみてください。





<関連サイト>

大研究 なぜ日本の企業はこんな採用をしているのか ユニクロ・楽天・グーグルほか 急増中!「英語ができて、仕事ができない」若手社員たち(「週刊現代」 2013年04月30日)
・・「就活が本格化すると、こぞってTOEICの教材を買い込む学生たち。日本の歴史や文化をよく知らないまま、英語ができるだけの「グローバル人材」となった若者たちに、仕事ができるわけはない」。

<ブログ内関連記事>

書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう
・・日本というローカル市場においては今後も日本語がメジャーであることに注意を促している

ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!-中国人の「個人主義」について考えてみる

地域密着型で成功した 「地域新聞」 というフリーペーパー(=無料紙)のビジネスモデルを知ってますか?

書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い





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2012年9月18日火曜日

書評 『日本企業が欲しがる「グローバル人材」の必須スキル』(内永ゆか子、朝日新聞出版社、2011)-あくまでも「個」をベースに考えるとことが英語よりも大事


「日本企業が欲しがる」、「グローバル人材」、「必須スキル」、刺激的なキーワードの三連続がタイtルになってますね!

しかも、著者は語学学校の老舗ベルリッツのCEOで、前職は日本IBMでは初の女性取締役を歴任というキャリアの持ち主。本文は、日本語だけでなく、ところどころに英文が入るため、最初から最後まで「横組み」です。

しかし、この本は英語の勉強法を説いた本ではありませんグローバル時代に不可欠なマインドセットと世界標準の仕事のやり方について書かれた内容です。

ビジネスパーソンにとって必要なことは英語学習が目的ではなく、あくまでも英語をつかってビジネス・コミュニケーションを行うことによって、成果を出すことにあるのです。

しかも、英語じたいも、話し手がネイティブよりもノン・ネイティブが比率的には3:7と圧倒的になった時代、アメリカや英国をモデルにした英語学習は、時代の流れにはまったく合っていないのです。

もちろん英語も重要ですが、大事なことはあくまでも「個」をベースに考えるということ。たとえ会社や組織に属していても「個」をベースに考え、ネットワークも「個」を中心につくるのが当たり前となってきたのです。これが世界標準というべきでしょう。

そんな時代のパーソナル・ネットワーク構築には、豊富な「引き出し」が必要だという著者の発言には、おおいに我が意を得たりと思ったものです。

グローバルビジネスでは、パーソナル・ネットワークが重要になると書きました。パーソナル・ネットワークとは組織のポジション(肩書きや役職)に頼らない人間関係のことですから、ビジネス以外の引き出しをどれだけ豊富にもっているかも問われるわけです(P.85)。

拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)を執筆していた時点では、本書の存在を知らなかったのが残念です。もし読んでいれば、「グローバル人材」養成という要素も「引き出し」を増やさなければならない理由の一つとして強調できたのではないかと思いました。基本的に、拙著に引用した藤田田(ふじた・でん)の発言と同じ趣旨を述べてますね。 ⇒ http://www.kou-shobo.co.jp/files/sample/1074.pdf 参照

つねに「なぜ?」という疑問をもち自問自答し、臆せず質問し、ロジカルに筋道たてて考えて発言をするという生活習慣をもつこと、これがグローバル社会のなかで生き抜くために絶対不可欠な「自分のアタマで考え抜くチカラ」をつくります。これはわたしがに書いたことと基本的に同じです。

著者は、男社会が優勢であるビジネス社会のなかで、日本IBMで女性初の取締役に就任した人ですが、その人がマイノリティであることのデメリットだけでなくメリットについて語っていることは、おおいに感銘を受けました。グローバル社会のなかでは、男性であっても日本人はあくまでもマイノリティなのですから。

海外勤務であろうがなかろうが、こういうマインドセットをもって生きていくことが、これからの時代のビジネスパーソンには不可欠なのです。

ぜひお読みいただきたい一冊として推奨いたします。





目 次

はじめに

プロローグ 「変わる」ことを恐れているヒマはない!

勝てるのは「カタストロフィック・ジャンプ」を起こした者だけ
悔しい経験が「大転換」を生んだ
自分次第でチャンスはいくらでもある時代

第1章 民族大移動-「あうんの呼吸」が通用しない!

「帰らざる橋」を渡りはじめた日本企業
M&A事業を担えるPMIリーダーを求む
TOEICのハイスコアよりマインドセットが大事
BOPビジネスにグローバル化のカギあり
欲しい人材は「世界に通用する経営者」だけ
外国人社員と対等に競える力を磨け
現場レベルで判断できるリーダー求む
海外への武者修行が奇抜な製品を生んだ
「家族以外はすべて変えよう」

第2章 内永流・世界と渡り合う人材になるための6つの条件

アクションが決まれば、あとはツールを磨くだけ
①「論理力」―「英語」を超える世界最強ツール
②ゼロベース・コミュニケーション-脱「あうんの呼吸」
③「違い」を理解する力
④「そこそこ」の英語力
⑤「自分」を語る力
⑥名刺なしで付き合える人脈

第3章 どこでも使える人材になるために

沈黙は「金」ではなく「禁」!?
ハイコンテクストvs.ローコンテクスト
「自分」を知ることが第一歩
「通じない」のが当たり前
「グッド・オールド・ボーイズ・ネットワーク」は過去の遺物

第4章「国際試合」の基本ルールを学ぼう

正しいトレーニングを選ぶ
3秒ルール
No bad question!
Be assertive!
エレベーターピッチ
Simple is the best!
DOs & DON'Tsリスト
「日常会話」をあなどるべからず

第5章 これが「使える」英語だ!-内永流・実践テクニック

明日から即使える、シチュエーション別ビジネス英語
会議を進行する-ファシリテーターに指名されても怖くない!
会議に参加する-アクティブ・コミュニケーターを目指そう
電話会議に出席する-苦手意識はこう克服するべし!
プレゼンテーションをする-ビジュアル・コミュニケーションのコツも学ぼう
交渉をする-いかに有利な条件を引き出すか

第6章 ブレない「個」を作る「強く」「早く」決断した者だけが生き残る

震災で外国人教師が
いっせいに帰国してしまった
揺らがない「軸」が決断を支える
「古典」と向き合うことから生まれる力
一風変わったセミナー
古典にグローバルリーダーのあり方を見る
長期的なロードマップを描く
グローバルチームの一員として生きる

エピローグ 「Execution」あるのみ!

4割でいいからやってみよう
行動に移してわかることがある

付録 APPENDIX

世界中どこにいても会話が弾む11のコツ
会議で扱いにくい参加者のタイプと、その対処法
電話会議(テレカンファレンス)のDOs&DON'Tsリスト
会議で必ず役立つキー・フレーズ
ファシリテーション(進行)に絶対役立つキーフレーズ
プレゼンテーションで必ず役立つキーフレーズ
ネゴシエーション(交渉)で必ず役立つキーフレーズ
POWER WORDS
ブレない軸を作る「古典」リスト


著者プロフィール
内永ゆか子(うちなが・ゆかこ)
ベルリッツコーポレーションCEO(最高経営責任者)、株式会社ベネッセホールディングス取締役副社長を兼務。1946年生まれ。1971年東京大学理学部物理学科卒業、同年日本IBMに入社。長年ソフトウエア開発にたずさわり、1995年に同社で初の女性取締役に就任。2008年4月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


<ブログ内関連記事>

なぜ日本人現地派遣者の評価が現地で低いのか?-それは英語など語学以前の問題だ!






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2012年9月12日水曜日

なぜ日本人現地派遣者の評価が現地で低いのか?-それは英語など語学以前の問題だ!



「日本人のアジア派遣者調査 現地の評価は、なぜ低い(前編)」という記事が、日経Tech-On に出ています。http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20120906/238295/ および http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20120906/238296/?ref=ML

「海外派遣者が現地人スタッフにどれだけ受け入れられているか。これが、現地法人の士気を高め、業績を高める重要な要素であることは言うまでもない」。

まったく異議ありません。

記事のなかには、中国人を対象に中国で実施した調査結果が紹介されています。引用してみます。

部課長クラスの日本人上司が同格の中国人上司の評価を統計的に有意に上回ったのは、「数字分析に強い」「専門知識が豊富である」など3項目だけだった。
逆に、中国人上司よりも評価が下回った設問は、20項目に上る。際立つのは、「意思決定が速い」「仕事の優先順位が明確である」など、業務遂行やリーダーシップに関わる項目での評価の低さである。
部下育成能力に関連する項目でも、「部下育成のためのチャンスを与えている」など多くの項目で 中国人上司の評価が高かった。

聞き捨てならない内容ではありませんか!?

拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』の副題にもあるように、「専門知識は豊富でもツマラナイやつに明日はない!」そのものですね!! 専門知識だけではビジネスパーソンとして成功とはいえません。

「専門知識は豊富でもツマラナイやつに明日はない!」。いや、「明日はない」どころか、ローカル社員のココロをつかんでいないということは「今日がない」ということ。これでは、現地のマネジメントがうまくいくはずがありません。

そもそも日本国内での組織風土や仕事のやり方に問題があるのではないでしょうか?「意思決定が速い」、「仕事の優先順位が明確である」など、英語などの語学以前の問題です。

日本国内で「マネジメント国際化」を徹底しないと日本企業は生き残れない。あらためてつよく思う次第です。

みなさまの会社ではいかがですか?


<ブログ内関連記事>

アジア進出に際しては「失敗事例」を押さえたうえで「成功方法」を考えよう-『なぜ中小企業の中国・アジア進出はうまくいかないのか?』 と 『アジアで成功する企業家の知恵』を読む


なぜ「経営現地化」が必要か?-欧米の多国籍企業の歴史に学ぶ

『グローバル仕事術-ニッポン式ビジネスを変える-』 (山本 昇、明治書院、2008) で知る、グローバル企業においての「ボス」とのつきあい方

「個人と組織」の関係-「西欧型個人主義」 ではない 「アジア型個人主義」 をまずは理解することが重要!

アジアでは MBA がモノを言う!-これもまた「日本の常識は世界の非常識」

書評 『インドネシア駐在3000日 (新版)』(坂井禧夫、連合出版、2012)-インドネシアといえばこの一冊。付録のインドネシア語のことわざ200も面白い




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