TVに登場して歯に衣着せない痛快な発言をしている宋文洲氏。 嫌いな人も少なくないでしょうが、わたしは大好きです。
なぜなら、発言内容があまりにも当然すぎるほど正論だから。中国人であろうが、日本人であろうが関係ありません。ただしいことを言っているので評価するのです。
そんな宋文洲氏の最新刊 『英語だけできる残念な人々-日本人だけが知らない「世界基準」の仕事術-』(宋文洲、中経出版、2013) はいい内容です。タイトルや帯のキャッチコピー出版社がつけたのでしょう、ややどぎついですが内容はいたってまともです。
現在グローバル化が脅迫的な響きをもってさかんに叫ばれていますが、さすがに一昔前のように日本からみた先進国である英国や米国でのビジネスが「グローバル化」という意識はすでにないでしょう。
実態は、中国や東南アジアがいわゆる「グローバル化」の中心にあります。そこでつかわれている言語は、ビジネスであれば英語が共通語とはなっていますが、現地に住んでいる圧倒的多数のローカルな人たちは英語などまったく理解できません。
この事実は、本書でも取り上げられているアマゾン・ジャパンと楽天の比較事例を読めば明らかでしょう。宋文洲さんによれば、米国企業アマゾン・ジャパンの社内原語は日本語です。考えてみれば当たり前の話ですね。日本人の7割は100年たっても英語中心の生活にはならないでしょう。その他の国もまた同じです。
逆に考えれば、日系企業が中国で日本語を社内共通語にしたら工場は回らなくなってしまいます。マネージャー以上は英語が共通語だとしても、ワーカーに英語や日本語を求めてもナンセンスというものです。ローカルな消費者も英語も日本語も理解しないでしょう。
いまでは英語はビジネスコミュニケーションのツールとしての意味しかないのです。しかも英語の通用範囲は思ったよりも狭いというのが世界の現実です。
もちろん英語はできたほうがいいが、英語ができればいいというものではありません。言い換えれば、必要条件ではあるが、十分条件ではないということですね。
では、現地のローカル市場においてほんとうに必要なことはなにか? なにがもっとも必要とされるスキルであり、マインドセットであるかについては、目次を見ればたちどころに理解できるはずでしょう。
第1章 不思議な病「英語恐怖症」におびえる日本人
第2章 9割の日本人が勘違いする「グローバル化」の意味
第3章 御社がグローバル化できない本当の理由
第4章 生き残るために大切なのは「英語力」より「議論力」
第5章 日本人だけが知らない世界のコミュニケーションのルール
第6章 英語ができないあなたがグローバル社会で生き残る方法
グローバル化とは、じつは地道なローカル化なのだという宋文洲さんの指摘、これはじっくりとかみしめていただく必要があります。
リアルビジネスにおいては「グローバル化」など存在しません。あるのは国と国とのあいだの「国際化」だけなのです。
そして個々の日本人ビジネスパーソンにとって求められることは本書のなかに詳述されています。要は人間としての中身を充実させるということ。
この本には、「グローバル世界」ではあまりにも当たり前の内容なのですが、日本ではあまりにも当たり前になっていないことが書かれています。かつて評論家の竹村健一が「世界の常識 日本の非常識」とつねに語っていたことを思い出します。
この本は、カネがあれば一万冊くらい買い上げてタダで配ってもいいくらいの内容です(笑) さすがにそんなカネはありませんので、みなさまお買い求めのうえ一度目を通してみてください。
<関連サイト>
大研究 なぜ日本の企業はこんな採用をしているのか ユニクロ・楽天・グーグルほか 急増中!「英語ができて、仕事ができない」若手社員たち(「週刊現代」 2013年04月30日)
・・「就活が本格化すると、こぞってTOEICの教材を買い込む学生たち。日本の歴史や文化をよく知らないまま、英語ができるだけの「グローバル人材」となった若者たちに、仕事ができるわけはない」。
<ブログ内関連記事>
書評 『10年後に食える仕事 食えない仕事』(東洋経済新報社、2012)-10年後の予測など完全には当たるものではないが、方向性としてはその通りだろう
・・日本というローカル市場においては今後も日本語がメジャーであることに注意を促している
ひさびさに宋文洲さんの話をライブで聞いてきた!-中国人の「個人主義」について考えてみる
地域密着型で成功した 「地域新聞」 というフリーペーパー(=無料紙)のビジネスモデルを知ってますか?
書評 『誰も語らなかったアジアの見えないリスク-痛い目に遭う前に読む本-』(越 純一郎=編著、日刊工業新聞、2012)-「アウェイ」でのビジネスはチャンスも大きいがリスクも高い
(2012年7月3日発売の拙著です)
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