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2015年7月1日水曜日

書評 『セッター思考-人と人をつなぐ技術を磨く-』(竹下佳江、PHP新書、2015)-バレーボールの「セッター」というポジションが生み出すあらたなリーダー像


    
「なでしこ」がワールドカップ2015で快進撃中ですが、女子サッカーではなく女子バレーボールの話題で。
  
『セッター思考-人と人をつなぐ技術を磨く-』(竹下佳江、PHP新書、2015)という本が新刊書として出版されています。日本女子バレーボール復活(!)の原動力の一人となった「世界最小で最強のセッター」で日本代表チームの元キャプテンによるもの。
   
世界的にみれば190cm台がはザラにいる世界で、159cm という身長はじつに小さいといわざるをえません。だがその環境のなか、身長が低いというハンディキャップがあるからこそアタマを使い、猛練習のずえ勝ち取ってきた日本代表チームのセッターというポジション

アタッカーにトスをあげるセッターは、いわば「つなぎ目」の役割アタッカーのような華やかさはありませんが、チームの司令塔的存在です。そのセッターも世界的だけでなく、日本でも高身長の選手が多いのです。
  
女子バレーボールというと、50年前の東京オリンピックでは「オレについてこい」という大松監督のスパルタ主義で「東洋の魔女」たちが世界の頂点に立ったのでありましたが、21世紀の現在、もはやそんなスタイルでは「誰もついてこない」ことは言うまでもありません。

そうでなくても、「オレがオレが」(・・女子選手の場合はオレではないでしょうが)という意識が強いのがアスリートというもの。それはチームスポーツであってもポジション争いがかかわる以上、当然といえば当然でしょう。

しかし、バレーボールの試合はチームでやるものであって、個人競技のように個人の力だけでできるものではありません。「個」の集まりである「チーム」全体の息があって、はじめて最大のパワーが発揮できるものです。そのためにはコミュニケーションを活発化させ、つねに観察を怠らないことがリーダーには求められます。

この本では、とくに女子選手のマネジメントについて体験から多くのことが語られていますが、男子についても、かなりの程度あてはまるのではないかな、と思います。男子だって人間である以上、ほんとは繊細なのですから。このことに気づくかどうかが、最高のパフォーマンスを発揮できるチームづくりのために必要なのではないでしょうか。

高校卒業後は大学に進学せず実業団に所属し、その後は日本でのプロ契約第一号となった著者が語る「セッター思考」は、あたらしい時代のリーダー像であり、リーダーシップの一つのモデルとなることでしょう。 

随所にビジネスでの応用の可能性について言及していることもあり、ビジネス書として読んでも面白いのではないでしょうか。もちろん、チームづくりに応用できるかどうかは、読者次第ではありますが。






<ブログ内関連記事>

書評 『女子社員マネジメントの教科書-スタッフ・部下のやる気と自立を促す45の処方箋-』(田島弓子、ダイヤモンド社、2012)-価値観の異なる人材をいかに戦力化するか
・・ダイバーシティとは「価値観の異なる」人の集まり

書評 『なでしこ力(ぢから)-さあ、一緒に世界一になろう!-』(佐々木則夫、講談社、2011)-「上から目線」でも「下から目線」でもない「横から目線」の重要性

書評 『ビジネススキル・イノベーション-時間×思考×直感 67のパワフルな技術-』(横田尚哉、プレジデント社、2012)-ビジネススキルは流行を追っかけるのではなく、本質をおさえてイノベートせよ! 
・・個人スキルのなかには、チームをマネジメントするスキルも含まれる





(2012年7月3日発売の拙著です)









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