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2013年5月15日水曜日

書評 『俺のイタリアン、俺のフレンチ-ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方-』(坂本孝、商業界、2013)-ビジネスモデル×哲学(理念)を参入障壁にブルーオーシャンをつくりだす



『俺のイタリアン、俺のフレンチ-ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方-』(坂本孝、商業界、2013)は、ブックオフ創業者のあらたな挑戦についてみずから語った本です。

「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」。雑誌やテレビ番組でも取り上げられている、いまもっとも注目を集めている「行列の絶えない飲食店」ですね。東京・銀座に集中出店している立食形式の店舗ですが、行列に並ぶのがキライなわたしは、残念ながらまだ行ったことはありませんが。

どうやったら「ぶっちぎりの競争優位性」を築くことができるか、ビジネスにかかわっていれば、誰もが関心あると思います。そのテーマについて具体的に語っている本です。

ビジネスモデルは、三ツ星クラスの店で腕を振るってきたプロの料理人をスカウトし、「原価率」を極限まで上げ、低価格だが回転数で勝負するというもの。「安くてうまい」が客を喜ばせリピート客とし、好循環をつくりあげる。

原価率を上げれば利幅が下がりますが、回転数を上げれば上げるほど利益はでる。経営のセオリーにきわめて忠実であります。スーパーマーケットのビジネスモデルを異業種である飲食業に導入した点に坂本氏の事業の天才ぶりがあらわれています。

じつに大胆な策です。シミュレーション結果をみればアタマでは理解できても、なかなか実行に踏み切れるものではないでしょう。

そしてその中核にあるのは、プロにはプロとしての仕事に専念してもらう環境をつくりだし、料理人が報われる仕組みをつくりたいというもの。

まさに、「仕組みで勝って人で圧勝する」(P.164)という坂本社長のコトバにあるように、人を中心にすえた経営ですね! 「ビジネスモデル × 哲学(理念)」で、ブルーオーシャンで参入障壁をつくりだすということになるでしょうか。

坂本孝氏の話は、ずいぶん以前になりますが、ブックオフが成長期に入って注目されていた頃に、プライベートな勉強会で話を聞いたことがあります。

中古ピアノ販売で成功されたことを話されていたことを覚えていますが、ギラギラしたところのまったくない、どちらかといって謙虚な印象を受けました。その秘密が稲盛フィロソフィーの体現者であったからだということが、この初の著者を読んではじめてわかりました。

「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」の仕組みはなかなか真似できるものではありませんが(・・だからこそ「参入障壁」となっているわけですね!)、いろいろ学ぶことの多い本だと思います。マネジメントチームのあり方や、新規出店と人材育成の関係なども含めて、読む人によってさまざまでしょう。

間違いなく読んで損はない一冊です。





目 次

はじめに
第1章 希代の繁盛店「俺のイタリアン」誕生
第2章 2勝10敗の事業家人生
第3章 ブックオフがNo.1企業になれた理由
第4章 稲盛和夫氏の教えと、私の学び
第5章 「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」は進化する
第6章 「物心両面の幸福を追求する」決意表明
第7章 業界トップとなり、革新し続ける
おわりに

著者プロフィール

坂本孝(さかもと・たかし)
1940年5月生まれ、山梨県甲府市出身。オーディオ販売や中古ピアノ販売などいくつかの事業を経て、1990年5月、「ブックオフ」を創業(1991年8月、ブックオフコーポレーション株式会社を設立)。16年間で1000店舗まで拡大し、書籍業界の流通に革命をもたらした。2009年11月、VALUE CREATE株式会社を設立し、飲食業に参入。2011年9月、東京・新橋に「俺のイタリアン」をオープン。大繁盛店となり、その後、同様のコンセプトで「俺のフレンチ」や、和食バージョンを展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>
 
VALUE CREATE株式会社 公式サイト (俺のイタリアン、俺のフレンチその他)

商業界 書籍販売サイト


<ブログ内関連記事>

書評 『社長は少しバカがいい。-乱世を生き抜くリーダー鉄則-』(鈴木喬、WAVE出版、2013)-「名物社長」が語る経営論

書評 『経営の教科書-社長が押さえておくべき30の基礎科目-』(新 将命、ダイヤモンド社、2009)

書評 『全員で稼ぐ組織-JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書-』(森田直行、日経BP、2014)-世界に広がり始めた「日本発の経営管理システム」を仕組みを確立した本人が解説
・・稲盛哲学と経営管理の仕組みが合体した「アメーバ経営」とは?

(2014年6月12日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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2013年3月4日月曜日

最高の「ナンバー2」とは?-もう一人のホンダ創業者・藤沢武夫に学ぶ


「ナンバー1」を目指すのはすばらしいことです。どんな小さな分野でも一番になれば自信がつきますし、極めれば第一人者としてリスペクトされるようになります。

ここでいう「ナンバー2」とは、その意味ではありません。二番手に甘んじろといっているわけではけっしてありません。

トップがいればそのつぎのポジションにつく者がいる。それを営利であれ、非営利であれ、「組織の「ナンバー2」といいます。参謀や補佐役、右腕とよばれることもあります。

戦国時代の軍師や政治の世界はさておき、経営の世界でいえば、なんといってもホンダの藤沢武夫氏(故人)が最高の「ナンバー2」といっていいでしょう。むかしから尊敬してやまない人です。

ホンダの創業経営者の一人ですが、本田宗一郎という天才エンジニアにほれ込み、その能力を完全に「引き出し」てあげたいという思いから、あえて「ナンバー2」のポジションを25年間まっとうしたすばらしい経営者。

聞き書きを一冊にした 『経営に終わりはない』(文春文庫、1998 初版 1986) は、ぜったいに読むべきビジネス書として筆頭にあげたいもの。

その以前に出版された 『松明(たいまつ)は自分で持て』(PHP、2009 初版 1974)と内容はかなりかぶりますが、どちらか一冊はかならず読んでおきたいものです。

とくに創業期においては、「ナンバー1」は突出した能力やとんがったものがあれば、多少の欠点はあってもかまわないのですが、かならず優秀な「ナンバー2」をもっていることが必要です。そういう存在がいれば、なんども訪れる難局はかならず乗り切れるものです。

藤沢武夫氏は、技術以外の財務や販売など経営にかかわることはすべて引き受けて、「ナンバー2」に徹し切った経営者です。本人も述懐しているように、経営者としては本田宗一郎よりもうえであったのにかかわらず、あえて「ナンバー2」に徹したところがすごいのです。抑制力、あるいは自己コントロールのできる人だったのでしょう。

わたし自身も「ナンバー2」を約7年間やりました。野球でいえばピッチャーではなくキャッチャーのポジションに近いかもしれないなと思いました。華やかではないものの、きわめて重要なポジションです。そういえば、野村克也監督もキャッチャーでしたね。

多くの日本企業で、意識的に「ナンバー2」のポジションをつくってほしいいものだとつよく思います。

とはいっても、人間には相性というものがありますので、なかなかにしてむずかしいものがありますが。わたしも、うまくいっていない例はさんざん見てきました。

wikipedia には以下のようなエピソードがありますので紹介しておきましょう。

舞台や音楽鑑賞を趣味とした藤沢に対し、本田はゴルフなどの行動的な趣味を持っていた事から、不仲説が浮上したことがあった。しかし当人たちは、互いが当時住んでいた地名の「下落合」(本田)、「六本木」(藤沢)と呼びあうなど良好な関係だった。「いつも手をつないで一緒にいるのを仲良しとは呼ばない。私達は離れていても、今この瞬間、相手が何を考え、どうするかが、手に取るように分かる。」とも語っている。

「いつも手をつないで一緒にいるのを仲良しとは呼ばない・・」。耳を傾けるべきではないでしょうか。

藤沢武夫氏自身は、創業から最初の2年間ほどは徹底的に話こんでいたが、そのあとはほとんど一緒にいることはなくても問題なかったと語っています。徹底的に権限移譲を進め、経営上の大きな問題が起こったときには経営者が全面にでるわけです。

本田宗一郎+藤沢武夫のコンビは稀有な組み合わせかもしれませんが、一つの「理想形」として知っておくことが重要なのです。「ナンバー2」は、藤沢武夫をベンチマークとしながら自らの言動を省みることができるからです。

まずはぜひ『経営に終わりはない』 『松明(たいまつ)は自分で持て』 のいずれか一冊には目を通していただきたいと思う次第です。






『経営に終わりはない』  目 次

1 生命をあずかる仕事
2 思いがけぬ危機
3 本業以外に手を出すな
4 万物流転の法則
5 経営者の心構え
6 模索と学習の日々
7 たいまつは自分で持て
8 海のむこうへ
9 頭の切り替え
10 本田かぶれ





『松明(たいまつ)は自分で持て』  目 次

第1章 本田宗一郎との出会い
第2章 スーパーカブ誕生そして世界へ
第3章 学んだこと、思うこと


藤沢 武夫(ふじさわ・たけお)
1910年~1988年。実業家。東京市出身(本籍は父の出身地である茨城県結城市)。本田宗一郎と共に本田技研工業(ホンダ)を世界的な大企業に育て上げた。wikipeia情報による。


<関連サイト>

本田宗一郎氏、"野人哲学" を大いに語る  "社長交代" もたついてはみっともねェ (日経ビジネス編集部、2014年9月3日)
・・1973年9月3日号の記事の再録



<ブログ内関連記事>

書評 『No.2理論-最も大切な成功法則-』(西田文郎、現代書林、2012)-「ナンバー2」がなぜ発展期の企業には必要か?

シェリル・サンドバーグという 「ナンバー2」 としての生き方-今週の Bloomberg BusinessWeek (ビジネスウィーク) のカバーストーリーから

「長靴をはいた猫」 は 「ナンバー2」なのだった!-シャルル・ペローの 「大人の童話」 の一つの読み方

官房長官は実質的に政権「ナンバー2」-政治と企業経営の共通点について考えてみる

「世襲」という 「事業承継」 はけっして容易ではない-それは「権力」をめぐる「覚悟」と「納得」と「信頼」の問題だ!

書評 『挫折力-一流になれる50の思考・行動術-』(冨山和彦、PHPビジネス新書、2011)

「人間尊重」という理念、そして「士魂商才」-"民族系" 石油会社・出光興産の創業者・出光佐三という日本人
・・ホンダもまた「人間尊重」を理念としている

書評 『「無分別」のすすめ-創出をみちびく知恵-』(久米是志、岩波アクティブ新書、2002)-「自他未分離」状態の意識から仏教の「悟り」も技術開発の「創出」も生み出される
・・ホンダ第三代目社長経験者による技術開発を中心とした「創発」メカニズムの解明

(2014年8月21日、11月3日 情報追加)





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2012年7月12日木曜日

書評 『挑む力-世界一を獲った富士通の流儀-』(片瀬京子/ 田島篤、野中郁次郎=解説、日経BP社、2012)-日本人の底力ここにあり!



富士通のスパコンが世界一になったというニュースに、ひさびさに胸躍る思いをした日本人はすくなくないと思います。

スーパーコンピュータ-「京」(けい)が世界一であった期間は、思ったよりも短かったですが、それでも世界一になったという事実を消し去ることはできません。日本人にとっては、じつにうれしい快挙でありました。

「R+ レビュープラス」から献本をいただきましたが、今回、書評を執筆したくなったのは、「外から見た富士通」という一章に寄稿された、竹内弘高ハーバード・ビジネスクール教授の文章を読みたかったからです。この一文だけでも読む価値は十分にあります。

「いまこそ日本に学べ!」と題されたこの文章のなかで、竹内教授は「失われた20年は、日本にとってはゆるやかな回復期ではなかったかもしれない」という欧米の論調の変化にふれています。

2008年のリーマンショック以後、欧州だけでなく、アメリカもまた一部のイノベーティブな企業を除いては苦しい状況にあることは言うまでもありません。そんななかで、周回遅れで再浮上してきたのが日本企業わたしたちは、もっと自信をもっていいのかもしれません。

わたしのように組織人事を専門分野としてきた人間にとっては、富士通というと、どうしても『若者はなぜ3年で辞めるのか-年功序列が奪う日本の未来-』(光文社新書、2006)などのベストセラーをつぎつぎと発表している人事コンサルタントの城繁幸氏の著作を思い出してしまいます。

成果主義の導入が、社内で混乱を招いたことを描いた『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』(光文社ペーパーバックス、2004)の印象があまりにも強烈に残っているからです。城繁幸氏は、富士通の人事部にいた人です。

しかし、本書を読む限り、英国の識者二人が指摘しているように、富士通には創業当初からの「泥臭い文化」が死なずに生き続けていることがわかって、いい意味で裏切られたような感想を抱きました。

「泥臭い」は、英語の該当表現をさがせば、down-to-earth になるようです。「地についた」という意味をもつ、なかなかなかいい響きの英語ですね。これは、解説を執筆しているナレッジマネジメント論の大家・野中郁次郎(一橋大学名誉教授)のコトバを借りれば、「現場で最善の判断を下し、実行する実践知」そのものでもあるわけです。

暴走する資本主義が見失っていたものが、まだまだ日本企業には残っているわけで、この特質はけっして失ってはならないものだと、あらためて思います。自分の強みは明確に意識する必要があるのです

本書は、実行するのが困難でかつ社会的意義の大きな8つのプロジェクトにまつわる、富士通版「プロジェクトX」の活字版といった内容ですが、それぞれのプロジェクトに携わった富士通の社員のみなさんの熱い思いが行間からにじみでる好読み物になっています。

欲をいえば、富士通の海外法人や日本法人で働いている外国人社員の活躍も声として拾って欲しかったと思います。なぜなら、富士通のバリューやミッションが、どのように全世界で浸透しているかを知りたかったからです。

とはいえ、日本人の底力がここにあると示してみせた8つのストーリーを読んで、元気を取り戻したいものですね。あきらめない気持ちを持ち続けることがいかに大事を教えてくれる一冊です。





目 次

はじめに
第1章 絶対にNo.1を目指す-スーパーコンピューター「京」
第2章 覚悟を決めて立ち向かう-株式売買システム「アローヘッド」
第3章 妄想を構想に変える-すばる望遠鏡/アルマ望遠鏡
第4章 誰よりも速く-復興支援
第5章 人を幸せにするものをつくる-「らくらくホン」シリーズ
第6章 泥にまみれる-農業クラウド
第7章 仲間の強みを活かす-次世代電子カルテ
第8章 世界を変える志を持つ-ブラジル/手のひら静脈認証
寄稿 外から見た富士通
-いまこそ日本に学べ! 竹内弘高
-変革に挑む スチュアート・クレイナー/デス・ディアラブ
おわりに
解説 野中郁次郎
受け継がれてきた言葉
謝辞


著者プロフィール

片瀬京子(かたせ・きょうこ)
1972年生まれ、東京都出身。1998年に大学院を修了し、出版社に入社。雑誌編集部勤務の後、2009年からフリー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの

田島篤(たじま・あつし)
1965年生まれ。日経BP社コンピュータ・ネットワーク局プロデューサー兼 ITpro 副編集長。1989年に日経BP社入社。日経 Linux 編集長、日経ソフトウェア編集長を経て、2011年7月から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。





<ブログ内関連記事>

書評 『経営管理』(野中郁次郎、日経文庫、1985)






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