■「企画=記憶の複合」と説く人気プロデューサーの発想術は「気づき」力のことだ
「気づき」の感度を高めるために何をすべきか、どういうマインドセットをもつべきか、どういう生活習慣をつくりあげるべきかについて、人気プロデューサーが随想的に記した本である。
著者は、「成功する人は一秒前に気づいている」と言う。「企画は記憶の複合」であるというのは著者がよく使うフレーズのようだが、ここでいう「記憶」が「気づき」の「記憶」のことであるならば、いい企画をつくるためには、人より多く「気づき」を積み重ねなければならない。
なぜなら、小さな「気づき」と別の小さな「気づき」を組み合わせ、複合させることで誰も思いつかなかった画期的なアイデアが生み出されることになるからだ。それがひいては「成功」につながってゆくのだ、と。
人より多く「気づき」を「記憶」としてアタマになかに蓄えておくためには、「気づく」ための生活習慣づくりと、さまざまなツールやテクニックがあると著者は書いているのだが、一つ一つをみれば、いずれも突飛なように見えても絶対にマネできないというたぐいのものではない。ただ、これらすべてを実行するのは難しい。
著者が書いているなかでわたしが面白いと思ったのは、そうした生活習慣よりも「ものの見方」にかんするものである。著者が成功したプロデューサーであるのは、なんといっても「ものの見方」が人とは少し違うからにほかならない。
第2章で「寄り」と「引き」で世間をザッピングすると書いている。「寄り」と「引き」というのは、カメラ撮影のズームインとズームアウトに該当するものだろう。日本人は案外、この「寄り」(ズームイン)をふつうにやっていながら、同時に「引き」(ズームアウト)ができていないのではないかと思うのだが、ある意味ではのめり込みつつ冷めているという二つの異なる態度を取る修練が必要なのかもしれない。
このほか「タイムテーブルは「円」ではなく「球」をイメージ」など独特なものの見方も含め、まずは通読して自分に刺さってくるものから、どんどん積極的に盗んでみることだろう。
自分にフィットするものは自分に定着し、そうでないものは忘れ去る。本書の読み方はそんなものでいいと思う。だが、読み捨ててはもったいないものの見方が散りばめられているのは確かである。
<初出情報>
■bk1書評「「企画=記憶の複合」と説く人気プロデューサーの発想術は「気づき」力のことだ」投稿掲載(2012年1月25日)
■amazon書評「 「企画=記憶の複合」と説く人気プロデューサーの発想術は「気づき」力のことだ 」投稿掲載(2012年1月25日)
目 次
第1章 ウォームアップ-「気づく」ことで、成功スイッチが入る
第2章 ホップ-日常を変え「気づける体」をつくる
第3章 ステップ-「気づける人」になるためのツール&テクニック
第4章 ジャンプ-「気づきの感度」をさらに高める15の鉄則
第5章 ゴール-「気づき」で、あなたの人生が変わる
著者プロフィール おち まさと
1965年、東京都生まれ。プロデューサー。1987年「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の放送作家オーディションに合格し、番組の総合演出家・テリー伊藤氏に師事し放送作家デビュー。「学校へ行こう!」などの企画や「仕立屋工場」「空飛ぶグータン」など数々のヒット番組で企画・演出・プロデュースを手がける。WEBサイトや SNSゲーム、ファッションからマンションまで、さまざまな分野で、企業ブランディングやコラボ企画のプロデュース、デザインを行うなど、ジャンルを超えて幅広く活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
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