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2013年11月8日金曜日

『ドクターX 外科医・大門未知子』(テレ朝系列)が面白い-TVドラマからみえてくる大学病院という「日本型組織」の病理現象



2013年10月17日から第2シリーズが始まった 木曜午後9時のドラマ『ドクターX 外科医・大門未知子』(テレ朝系列)が面白い。主人公を演じる米倉涼子のファンならなおさら、そうではなくても内容が面白いからです。

主人公は特定の病院や医局に属さないフリーランスの女性外科医。「包丁一本さらしに巻いて」の渡り職人のような医師。正社員ではなくフリーランス。

フリーランスというワークスタイルは、以前からさまざまな業界で存在しましたが、医者の世界にも存在するというのは新鮮ですね。キャリア論の観点からも興味あります。

このドラマが面白いのは、きわめて個性のつよいフリーランスの医師の存在が、絵にかいたような典型的な日本型組織である大病院の「病理」をあぶり出すという仕掛けになっていることにあります。

本来はスキルによって評価されるべき専門家集団、とくに外科は手術の腕に大きな個人差がでるものですが、個人の能力とスキル以外の人間関係がおおきくものをいうのが風通しの悪い大病院という組織である、と。まさに「世間」としかいいようがない。

大学医学部という「医局」によって形成されている巨大なピラミッド型組織が、さまざまな要因によって崩壊がはじまっていながら、あらたな組織のあり方がいまだ見えてこない移行期の混乱をドラマとして描いています。

組織における個人の生き方が、さまざまな登場人物の言動をつうじて描かれています。当然のことながら、それぞれの登場人物たちは、それぞれの思惑のもとに、いかに自分にとって有利になるかを念頭に行動しています。

ドラマのなかで強調されているのが、たがいにコミュニケーション不全状態となっている巨大組織内部の縦割り組織の問題セクショナリズムの問題。本来はクライアントである患者の治療が最大の目的であるはずなのに、専門分野(=医局)ごとの縦割り組織がカベとなって、患者不在の縄張り争いが常態化している現状。

病院も高度の医療サービスを提供するサービス業である以上、顧客中心を徹底してほしいと思うのですが・・・。供給側の論理を需要側の立場に変えていくのは容易なことではなさそうです。

また、大学病院と医局という「組織」と、フリーランスの医師という「市場」とのコンフリクトともこのドラマの大きなテーマです。

市場」のなかで活動する「組織」のなかに、いかに「市場」を導入して折り合いをつけるか、人事管理の観点かいってなかなか難しい課題です。

正社員と非正規社員が混在している職場といえば航空業界を想起しますが、パート・アルバイトや派遣社員、そして嘱託社員などさまざまな雇用形態の異なる従業員が混在しているのは、いまやほぼすべての業種業界でも「常識」といっていいでしょう。しかも、外国人社員がいる職場もいまや珍しくもない。

主人公のキャラクターをはじめとして、ドラマ自体はやや戯画的ではありますが、日本型組織がかかえる問題点が明確に見えてくる点は、たんなるエンターテインメントを超えたものがあるといっていいかもしれません。


<関連サイト>

ドラマ『ドクターX 外科医・大門未知子』(テレ朝系列) (公式サイト)

医局崩壊!さらば、教授という”名ばかり職”もはや国立医大の教授もリストラされる時代に(ノマドドクターXは見た!)
ノマドドクターXは見た!(東洋経済オンラインの連載)
・・現役の麻酔医の女医が執筆する病院組織の病理と人事労務管理にかんする問題点が具体的で説得力がある。執筆者の筒井冨美氏は『ドクターX 外科医・大門未知子』の監修もつとめている。麻酔医にはフリーランス勤務の人が多いという


<ブログ内関連記事>

『JAL崩壊-ある客室乗務員の告白-』(日本航空・グループ2010、文春新書、2010) は、「失敗学」の観点から「反面教師」として読むべき内容の本

書評 『未完の「国鉄改革」』(葛西敬之、東洋経済新報社、2001)-JALが会社更生法に基づく法的整理対象となり、改革への「最後の一歩」を踏み出したいまこそ読むべき本

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・

書評 『医者に殺されない47の心得-医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法-』(近藤 誠、アスコム、2012)-つまるところ自分が好きなように生きるのがいちばんいいということだ

医療ドラマ 『チーム・バチスタ 3-アリアドネの糸-』 のテーマは Ai (=画像診断による死因究明)。「医学情報」の意味について異分野の人間が学んだこと




(2012年7月3日発売の拙著です)





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