このたび、4月1日のエープリルフール(=四月馬鹿)に会社を設立した、株式会社ケン・マネジメント代表の佐藤賢一(さとう・けんいち)です。
このブログをお読みいただき、ありがとうございます。
エープリルフールといっても、「会社設立」自体はジョークではありませんよ。なんなら登記所で調べてもらってかまいません(笑)。4月1日に会社設立登記申請受理、4月7日に会社登記完了。
つまるところ、4月1日に会社登記がなされた、ということです。
ではなぜ、4月1日のエープリルフールに会社登記なのか?
けっして奇をてらったわけではありません。
これには、少し深い理由(わけ)があります。
それは、決算と会計年度の問題です。もし3月31日に会社登記してしまったら、その最後の1日のために決算しなくてはならない、というそれこそフール(=馬鹿な)ことが起きかねないからです。
なぜなら、日本では会計年度は4月1日から翌年の3月31日まで、という会社が大半ですからね。大半の人のアタマのなかで、これがマインドセット、ひらたくいえば固定観念になっています。
日本以外は、1月1日から同年の12月31日というケースが多く、日本でも外資系企業はこのパターンが大半ですね。中国は法律でそう決まっています、タイも法律で決まっているわけではないですが、このパターンが多い。さらに1997年のアジア金融危機にともなうIMFショック後は、国際会計基準とほぼ完全にコンプライアンスの体制になっています。
その意味では、遅れているのは日本だ!ということも可能ですが、会計年度は個別企業で選択可能ですので、4月1日から翌年の3月31日のパターンであってまったく問題ないですし、海外展開する企業でも、ムリに1月1日から3月31日パターンにあわせる必要もありません。
というわけで、登記所へのもちこみが4月1日以降になるようにスケジュール調整を行いました。
「佐藤さん、早く会社つくってくださいよー」、という声も昨年から根強くありましたが、こういった声は申し訳ございませんが、いっさい聞き流し、4月1日までひたすら忍の一字で、塹壕のなかで待ち続けてきたのは、こういうわけなのであります。
まあ会社設立しても、3ヶ月くらいなら自分で決算してもいいですが、さすがに私は会計税務の専門家ではないし、もしその面で経費が発生すると、無駄カネになりかねない。起業したら、カネにシビアになるのは当然のことですよね。
あともう一つ理由がありました。
マイクロソフト日本法人社長を務め、その後独立して投資ファンドの株式会社インスパイアを創業した成毛真の『会社のつくりかた-成毛流「起業心得」-』(日経文庫、2005)という本を読んでいたこともあります。
46歳で起業した成毛氏のこの本は、非常に実践的な内容です。出版から5年たっていますが、起業の心得を説いているこの本は、多くのひとにすすめたいと思います。とくに「第5章 四〇代で会社をつくる」は、その他の年齢層の章ともあわせて、たいへん参考になりました。値千金に該当するアドバイスになっておりました。
この本のなかで、成毛氏は非常に興味深いことを指摘しています。
具体的には、「第7章 事業計画をつくる」の「5. 会社設立のベストシーズン」で次のようなことをいっています。(*太字ゴチックは引用者による)
さて何月に会社を設立すべきなのか、悩むところです。実は、設立を何月にするかの違いは、創業間もない会社にとって意外なほど大きな影響があります。
・・(中略)・・
そうしたことを勘案していくと、会社設立の時期としては四月中旬に立ち上げるのが一番都合がいいといえるでしょう。そうすると、創業して最初の三ヶ月間、時間をフルに使うことができます。何よりも、春というのは人の気分も明るくなっています。(P.107)
というわけで、私はこの教えに忠実に従い(笑)、4月12日(大安)に新規開業のスケジュールを組みました。4月1日に会社設立登記申請というのは、だから理に適っているわけなのです。ちょっと後付けっぽい説明ではありますが・・・
しかし、今年の春は天候不順で、ポカポカ陽気になったと思ったら、また冬の寒さに戻ったりと、北風と太陽が交互に繰り返す・・・な状況です。それでも、冬に比べたら、なんといっても心もウキウキしてうれしくなってくるのは、小学校を始めとする学校の入学式にも重なる時期だからでしょう。
もともと日本でも、明治時代の後半まで、入学式は欧米式に9月だったらしいというのは、司馬遼太郎の小説のなかで読んだ記憶があります。近代西欧の制度が日本化される過程で、入学式が桜咲く時期に変わっていったというのは面白い事実です。
また、「誕生の秘密」というコトバがあります。外交官の法学者・色摩力夫(しかま・りきを)がよく使っていた表現で、もともと18世紀ヨーロッパの万能人ライプニッツが使っていたコトバのようですが、「出生の秘密」(status nascens)とは、物事の紀元に何をもってくるか、その紀元の本質が何であるか、によってその後の「歴史」はすべて決定されてくる、という・・です。皇紀2670年の「紀元節」に、暦(カレンダー)について考えてみるを参照。
すべての組織体は、軍隊であれ、学校であれ、会社であれ、その紀元が何であったのかによって大きな、ときに致命的な影響をのちのちまで及ぼす、こう考えると、会社設立日も、あだやおろそかにするわけにはまいりません。
さて、実際に会社設立にあたって、非常に役に立った本を紹介しておきましょう。成毛氏の本は、心得を知るには必読書ですが、実際の会社設立は実務そのものですので、ハウツー本は必携ですね。
イチオシは、『日本一わかりやすい会社のつくり方-コレだけやれば大丈夫!あなたもできる 新会社法でびっくりするほどカンタン!-』(坂上仁志、小笠原耕司=監修、中経出版、2006)です。この本には、ほんとうに役に立ちました。
会社設立は、会社法改正で本当に簡単になりました。この本を手元において、ぜひみなさんも自分で会社を作ってみてください。そんなに難しいことではありませんよ。会社設立には、会社の印鑑作成、公証人による定款認証に9万円、登記所での登記料15万円などいろいろ経費もかかります。節約できるとこは、徹底的に節約しましょう。
では、実際に私がどういうスケジュールで会社設立したか、ドキュメントとして紹介しておきます。ツイッターに投稿した「つぶやき」を時系列(タイムライン)にしたがって再録しておきましょう。
2010年03月30日(火)
【ドキュメント会社設立】 法務局に定款内容の相談にいってきた。次の工程は、公証人役場での認証だ。いよいよ会社設立に向けて最終局面に突入が始まった。
posted at 14:56:07
2010年03月31日(水)
【ドキュメント会社設立】 定款の認証のために公証役場にいってきた。しかし痛恨のケアレスミスが判明、「訂正印押して修正したらOKですよ」といわれたが、やっぱり定款は綺麗なほうがいいので持ち帰って訂正して明日もってゆくことに。明日は、公証されたら、その足で法務局にいって登記申請してくるぜっ!
posted at 16:01:32
2010年04月01日(木)
【ドキュメント会社設立】 きょう午後、定款が公証人によって無事認証されたので、その足で法務局にいって会社設立登記を申請受理された。一連の会社設立プロセスはこの3日で完了、あとは法務局から何もいってこないことを祈る1週間。何事も自分でやってみるもんだね。現場主義に徹すべし。
posted at 15:51:03
2010年04月07日(水)
【ドキュメント会社設立】 さきほど法務局に電話確認。補正事項なく無事に登記完了。よって、次の工程に入る。開業予定日は4月12日。気が引き締まる思いだ。
posted at 08:45:50
【ドキュメント会社設立】 お名前.com にてドメイン名確保。 http://www.onamae.com/ 安い、早い、うまい?
posted at 10:21:19
【ドキュメント会社設立】 さっそく法務局にいって印鑑カードの交付を受ける。登記謄本と会社の印鑑証明をとってから、その足で税務署へ。法人設立届け出書などの書類を提出。会社が設立されたのだなあ、という実感。
posted at 16:38:01
2010年04月08日(木)
【ドキュメント会社設立】 法人口座を開設。これから引きこもって、会社ウェブサイトの構築のつづきを行う。せっかくの晴天なのだが・・・
posted at 11:09:19
2010年04月12日(月)
【ケン・マネジメント】 お世話になります。本日、株式会社ケン・マネジメント 新規開業いたします。とくにアジアでグローバル展開する 中堅中小企業の経営を、企業参謀として全面的にバックアップいたします。今後ともよろしくお願いいたします。 http://kensatoken.com/
posted at 09:06:30
【ドキュメント会社設立】 日本で会社つくったのは今回が初めてだが、えらい簡単なのにビックリした。発起人が1人でもいいというのは画期的。以前、タイで会社作ったときは発起人が7人も必要だったので苦労した。現在はタイも商法改正で3人になったが、それでもまだまだだな。
posted at 10:30:37
最後の「つぶやき」にあるように、私にとって会社をつくるのは初めてではありません。日本で作ったのが初めてであって、以前にはタイ王国で会社をつくった経験があります。
もちろん、タイ語もあまりよくできず、いわんやタイ語の法律文書なんか自分で作成できるわけがないので、会社設立にかんする文書作成業務は、現地のコンサルティング会社に全面的にお願いしましたが、会社設立のプロセスそのものには全面的にかかわっていましたので、こういう感慨がでてきたわけでもあるのです。 タイ語の公文書を英語に一文一文訳して貰いながら、だいたいのところは把握できました。タイ語の法律文書は専門家でないと、タイ人にとっても理解しにくいようです。
これは日本の場合も同じですね。法律用語は日本語とはいいながら、およそ日常用語とはかけはなれた用語がまかりとおっていましたので。現在では、口語体に直す作業が進んでいるのでだいぶわかりやすくなりました。それでも意味をとりにくい悪文が多いことは否定できません。
日本でも改正前の商法による会社設立には、発起人が最低3人必要でしたが、取締役一人で機構設計すれば発起人も一人で済むわけですね。
発起人(promoter)は、法律概念上の「自然人」(natural person)と「法人」(juristic person)をつなぐ存在なわけなのです。
法人というのは、いってみればバーチャルな存在ですから、呼吸したりご飯食べたりする自然人ではない。発起人が会社設立を発起(promote)し、登記所に登記(register)することによって、はじめて生命をもつことになる。もちろん生命をもつといってもリアルワールドでの物理的存在ではなく、あくまでも情報としての存在です。企業実体(business entity)という表現が税法にありますが、これは物理的実体ではなく、公的に認証され、登記された存在としての情報が存在するということです。
自然人と法人の関係は、むかし大学学部の教養課程に、民法総則で勉強したときに初めて知りましたが、なんやら不思議な感覚にとらわれたものです。会社っていったい何なんだろうか、と。この関係については、作家・橘玲(たちばな・あきら)の一連の著作を読むといいでしょう。
また、「公証人」(notary public)という存在も面白いですね。古代ローマまで起源をさかのぼることのできるもので、ローマ私法に基づく制度です。wikipedia の項目から、「公証人の歴史」を、そのまま引用させていただきましょう(*2010年4月15日現在の記述、太字ゴチックは引用者による)。
その起源についてはローマ法に由来するとされ、中世の神聖ローマ帝国(ドイツ・イタリア)が始まりと言われている。12世紀とされるが詳細は不明。当初は皇帝やローマ教皇の免許を要したが、後に自治都市内のギルドに資格授与権が下賜されるようになった。
当初は商業上の契約や帳簿など広範の私的文書作成を担当してきたが、14世紀以後商人達の識字率向上や複式簿記の発達などに伴って専ら法的文書の作成に従事するようになる。
公証人には当時一般的だった厳しい徒弟制度が存在せず、教養人にとって必須だったラテン語の知識が求められた事などから、自由を求めるルネサンス時代の都市教養人にとっては憧れの職業となった。逆に言えば、ひとかどの教養のある人であれば、誰でも公証人の資格が取れた。その頃のピサやジェノヴァ、フィレンツェでは、人口200人に1人以上の割合で公証人がいたと言われている。
だが、同時に悪質な公証人が現れる危険性も増大したため、1512年に当時の皇帝が「帝国公証人法」を定めてその公的性格と公平中立の義務、国家による監督という基本原則が定められた。
現在多くの国では、公証人は法曹あるいはそれに準ずる資格の保持者であることが多いが、一方アメリカではわずかな講習で容易にその資格が取得でき、学校や郵便局などあらゆる場所に総計400万人もの公証人がいて、その権限もおおむね署名の認証に限られているなど、国々によってその権限はかなり異なる。
Wikipedia の記述によれば、公証人は、日本ではたった 530人しかいないそうです。法務大臣が任命する、準公務員扱いとのこと。
会社設立のようなポシティブな話よりも、ネガティブとまではいわないが遺産相続関連の話が多いようで、私が公証役場にいって認証もらったときも、遺産相続の件で来所されているお客さんが多数いました。
会社設立のための「会社定款」(かいしゃていかん memorandum and articles of association)認証に際しては、アシスタントの女性がニコニコと対応していただいたのは、ポジティブな内容だったからなのでしょうか。
大学時代、ヨーロッパ中世史を専攻した私は、公証人制度の歴史を思い浮かべながら、いろいろ感慨にふけったのでありました。
<結論>
会社設立は思っているよりも簡単なので、ぜひ自分でやってみるのがいいでしょう。なんといっても現場・現物・現実の「三現主義」、実際に自分でやってみると、いろいろ発見があるし面白いですよ。勉強にもなりますしね。
以上、備忘録のつもりで書いておきました。忙しくなったら忘れてしまいますからね。「鉄は熱いうちに打て」といいますし。
ではまた。
株式会社ケン・マネジメント
代表取締役社長 佐藤賢一(さとう・けんいち)
URL: http://kensatoken.com
e-mail: ken@kensatoken.com