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2013年9月24日火曜日

「距離感」と「パーセプション・ギャップ」-自分にとって不利となる誤解を正すためにまず認識すべきこと


2020年のオリンピック開催地が東京に決定しました。

石原慎太郎前東京知事が主導した当初は、かならずしも賛成多数というわけではありませんでしたが、決まってしまえば一件落着。これからは7年後にむけてひたすら準備に入るというステージでしょう。

決め手の一つとなったのが安倍晋三首相によるプレゼンテーションThe situation is under control. (状況はコントロールされている)と言い切ったことが大きかったようです。報道によれば、安倍首相みずからがこのフレーズをつくったのだとか。まさに自分のコトバで語ったわけですね。危機管理コミュニケーションの基本中の基本でもあります。

とはいうものの、「終わりよければすべてよし」とは言いますが、招致活動の終盤戦において日本が劣勢に立った理由を思い出してみる必要があります。

それは日本に対する質問は、直前に判明した福島原発の汚染水問題ばかりだったということです。日本サイドの甘い現状認識があらわになった瞬間でした。

日本国内、とくに関東に住んでいると、福島と東京の距離がどれくらいのものがあるか感覚的に把握できます。でも、関西や九州在住の皆さまにとっては、また距離感が異なるでしょう。

これがさらにパリやロンドンからだとすれば、福島と東京とのあいだの距離は至近距離に見えてしまうのではないでしょうか?

これは、地図の縮尺というスケール(=物差し)の問題です。距離感の問題です。

これは経営の現場に則していえば、経営者と従業員の距離でありますし、より端的にいえば人事評価などの場における、評価する側と評価される側の距離の問題でもあります。

一般的に、距離が長くなればなるほど、誤解の余地が広がります。物理法則にあてはめれば、距離の二乗に反比例して理解の度合いが小さくなると言い換えてもいいかもしれません。

しかも、距離の長い短いに関係なく、ここにパーセプション・ギャップが重なると、相互の誤解はさらに複雑化します。

パーセプション・ギャップは認識ギャップのことです。自分が無意識に前提としていることと、相手が無意識に前提していることにギャップが存在するということです。これは距離感に関係なく存在します。

誤解には二種類あります。

一般には自分にとって不利益となることをさして誤解されているといいますが、自分に有利となる誤解もあります。後者のことを、わたしは「美しき誤解」と呼んでおります。

「美しき誤解」であれば、ココロのなかで苦笑しながらもあえて否定する必要はありませんが、自分に不利になる誤解であれば、積極的に是正していかなくてはなりません。

自分に不利になる誤解を解くためには、まずは距離感とパーセプション・ギャップが存在することを認識し、それを言動によって正していかなくてなりません。

その意味では、安倍首相の発言はきわめて効果あるものであったといってよいでしょう。

もちろん、責任ある地位につく人の発言ですから、それは「公約」でもあります。公約である以上、コトバを選んで発言し、自分の発言に責任をもつことが不可欠になります。行動で示して成果を出さなくてはなりません。つまりは言行一致ということです。英語でいうインテグリティのことです。

距離感とパーセプション・ギャップを解消するには、こうしたきわめて当たり前のことを当たり前に実行していく以外に対処する方法はないのです。



<関連サイト>

「東京五輪決定」の背後であがる「フクシマ」の悲痛な叫び (『フォーサイト』 2013年9月11日)

首相の「虚言」に無批判なマスメディアの罪 (『フォーサイト』 2013年9月22日)

「汚染水」「新たな風評被害」に立ち向かう福島の浜 (『フォーサイト』 2013年9月25日)


<ブログ内関連記事>

書評 『思いが伝わる、心が動くスピーチの教科書-感動をつくる7つのプロセス-』(佐々木繁範、ダイヤモンド社、2012)-よいスピーチは事前の準備がカギ!

書評 『小泉進次郎の話す力』(佐藤綾子、幻冬舎、2010)

滝川クリステルがフランス語でプレゼンした理由

『伝え方が9割』(佐々木圭一、ダイヤモンド社、2013)-コトバのチカラだけで人を動かすには

「インテグリティ」(integrity)について考える-「ダブルスタンダード」の反対語として

2020年に東京オリンピック開催決定!-すくなくとも7年後の「目標」をもてるようになった




(2012年7月3日発売の拙著です)





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