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2015年7月1日水曜日

書評 『セッター思考-人と人をつなぐ技術を磨く-』(竹下佳江、PHP新書、2015)-バレーボールの「セッター」というポジションが生み出すあらたなリーダー像


    
「なでしこ」がワールドカップ2015で快進撃中ですが、女子サッカーではなく女子バレーボールの話題で。
  
『セッター思考-人と人をつなぐ技術を磨く-』(竹下佳江、PHP新書、2015)という本が新刊書として出版されています。日本女子バレーボール復活(!)の原動力の一人となった「世界最小で最強のセッター」で日本代表チームの元キャプテンによるもの。
   
世界的にみれば190cm台がはザラにいる世界で、159cm という身長はじつに小さいといわざるをえません。だがその環境のなか、身長が低いというハンディキャップがあるからこそアタマを使い、猛練習のずえ勝ち取ってきた日本代表チームのセッターというポジション。

アタッカーにトスをあげるセッターは、いわば「つなぎ目」の役割。アタッカーのような華やかさはありませんが、チームの司令塔的存在です。そのセッターも世界的だけでなく、日本でも高身長の選手が多いのです。
  
女子バレーボールというと、50年前の東京オリンピックでは「オレについてこい」という大松監督のスパルタ主義で「東洋の魔女」たちが世界の頂点に立ったのでありましたが、21世紀の現在、もはやそんなスタイルでは「誰もついてこない」ことは言うまでもありません。

そうでなくても、「オレがオレが」(・・女子選手の場合はオレではないでしょうが)という意識が強いのがアスリートというもの。それはチームスポーツであってもポジション争いがかかわる以上、当然といえば当然でしょう。

しかし、バレーボールの試合はチームでやるものであって、個人競技のように個人の力だけでできるものではありません。「個」の集まりである「チーム」全体の息があって、はじめて最大のパワーが発揮できるものです。そのためにはコミュニケーションを活発化させ、つねに観察を怠らないことがリーダーには求められます。

この本では、とくに女子選手のマネジメントについて体験から多くのことが語られていますが、男子についても、かなりの程度あてはまるのではないかな、と思います。男子だって人間である以上、ほんとは繊細なのですから。このことに気づくかどうかが、最高のパフォーマンスを発揮できるチームづくりのために必要なのではないでしょうか。

高校卒業後は大学に進学せず実業団に所属し、その後は日本でのプロ契約第一号となった著者が語る「セッター思考」は、あたらしい時代のリーダー像であり、リーダーシップの一つのモデルとなることでしょう。 

随所にビジネスでの応用の可能性について言及していることもあり、ビジネス書として読んでも面白いのではないでしょうか。もちろん、チームづくりに応用できるかどうかは、読者次第ではありますが。






<ブログ内関連記事>

書評 『女子社員マネジメントの教科書-スタッフ・部下のやる気と自立を促す45の処方箋-』(田島弓子、ダイヤモンド社、2012)-価値観の異なる人材をいかに戦力化するか
・・ダイバーシティとは「価値観の異なる」人の集まり

書評 『なでしこ力(ぢから)-さあ、一緒に世界一になろう!-』(佐々木則夫、講談社、2011)-「上から目線」でも「下から目線」でもない「横から目線」の重要性

書評 『ビジネススキル・イノベーション-時間×思考×直感 67のパワフルな技術-』(横田尚哉、プレジデント社、2012)-ビジネススキルは流行を追っかけるのではなく、本質をおさえてイノベートせよ! 
・・個人スキルのなかには、チームをマネジメントするスキルも含まれる





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2014年6月25日水曜日

「FIFAワールドカップ2014」における日本の「惨敗」-「個」の力がまだまだ弱く「組織力」に統合されていないのが日本の現実

(日刊ゲンダイ 2014年6月25日号の一面)

ニッポン惨敗。
残念だ。悔しい。

一次リーグで一勝もできなかった日本代表。最後はコロンビアに 4-1 でぼろ負け。

たしかに日本代表はベストは尽くしたが、世界との実力差はいかんともしがたい。

技術力はそれなりにある。パス回しのうまさは見ていても美しい。

だが、「個」の力がまだまだ弱い。ここぞというときの「突破力」が足りない。

たとえ「個」の力を発揮できる選手がいても、それが日本代表チームという「組織」のなかで発揮されていない。

「個」の力が「組織力」に統合されていないのが日本の現実だ。優秀な「個」がいても、「組織」として弱い日本企業にも似ている。

ヨーロッパのプロリーグで世界中からきた選手たちにもまれて鍛えられている選手たちも、日本語だけでプレイできる環境のなかで「甘え」が生じていたのではないか?

そもそも日本のファンが選手に優しすぎる。優しいのは悪いことではないが、優しさが甘さになってしまうのは論外だ。スポイルしてしまうからだ。今回の残念な結果に対しては苦言を呈すべきだ。

だが、これくらいに「惨敗」、いや「ぼろ負け」すると、抜本的な改革も進めやすいだろう。その意味では、「惜敗」などという中途半端な結果ではなくてよかったのかもしれない。甘えを断ち切ることが可能になるからだ。

まずは「現実」を見つめること、「事実」を「事実」として受け止めること。

選手たちにとっても、ファンにとっても残酷な「事実」だが、これを避けていては「次のステージ」には進めない。


(今回の参加32国の分布 wikipediaより)


負けて知る悔しさ。負けてみてはじめてわかる世界の現実。負けてみてはじめてわかる根本的欠陥。

深刻に、いや真剣に受け止める必要がある。否定しようのない「事実」を受け止めるのは「勇気」である。

かつて日本代表監督を務めながらも病に倒れたイビチャ・オシムはこう言っている。出典は『オシムの言葉』から。

夢ばかり見て後で現実に打ちのめされるより、現実を見据え、現実を徐々に良くしていくことを考えるべきだろう。

そう、厳しく「現実」を認識したうえで、ただしい方法論にもとづいて地道に改造していく以外にほかに道はない。「夢ばかり見て後で現実に打ちのめされ」たのが今回の結果である。ビッグマウスで目標を公言するだけでは、結果はついてこない。

ここで、ちょっと極端なことを考えてみるのも必要かもしれない。

たとえば、いっそのこと日本代表チームでは日本語を禁止してしまう、とか。

かならずしもロジックを重視しない日本語を使用していると、どうしても「なあなあ」になってしまう傾向があり、ロジカルなコミュニケーションが徹底できない恐れがあるからだ。日本人が日本語を使用するときは、どうしても「甘え」が発生しがちである。

「サッカーには国民性がもろに出る」と言われるが、国民性の根本にあるのは言語である。日本国民の場合は日本語である。

ヨーロッパで活躍する選手たちは、そのチームが所在する国の現地語を学んでコミュニケーションを行っている。特殊言語の場合は、少なくとも英語でチームメートやコーチとコミュニケーションを行う。局面転換の早いサッカーでは不可欠なことだ。

野球のようなスポーツの場合、たとえアメリカでプレイしても英語は必須要件ではない。だが、サッカーのようなチームスポーツにおいては、選手同士のコミュニケーションが欠かせない。野球との大きな違いである。

サッカーの日本代表選手もヨーロッパのチームでプレイしているときは英語など西洋語を使用しているが、日本代表チームでは使用言語は日本語となる。ここに「甘え」が発生する余地があるのではないか?

わたしが思うに、日本代表チームが抱える問題は、たんにフィジカルの問題ではない。マインドセットの問題でもあるが、プレイ以外のスキルも関わってくる。

たしかにサッカー先進国ヨーロッパの選手たちにくらべると体格面では劣ることは事実である。だが、ヨーロッパのプロリーグで活躍している日本人選手を見ていると、かならずしもサッカー選手として劣っているわけではないことがわかる。

かねてから言われているが、「言語技術」の問題ではないか? ロジカルなサッカーができていないのではないか? これは自分で考えて自分で実行するための基礎の基礎である。

もちろん、共感力や共鳴力、共振力といってものが、日本人のアドバンテージであることはゲームをみていればよくわかることだ。これは今後も大いに活かしていく必要がある。

パス回しのうまさは、自律性のある選手どうしで「息が合わせる」ことができるからこそ可能になっている。チャンスをつくることもできている。

だが、誰かがカウンター攻撃で、ドリブルで突破するということをチームという「組織」の了解事項としておくことも必要だろう。必要なのは点を取るという気迫と突破力である。そしてそれをアシストする体制でもある。不必要にパス回しにこだわって、決定的なチャンスに突破力が発揮できていないのではナンセンスだ。

「個」の強さと「組織」においての協調性、この両立はまさに「個と組織」においての最大テーマである。まだまだサッカー先進国ヨーロッパに学ぶべきものは多い。

ゼロから出直しだ。原点回帰が必要だ。一人一人が自立して自律できるリーダーになる必要がある。強いオーナーシップ(=当事者意識)が必要だ。強いリーダーにおんぶにだっこではいけない。

この課題は、企業組織においてもまた同じである。サッカー日本代表の大改造から学ぶべきものは多いはずだ。今後4年間、注視していくべきである。

以上、議論としては生煮えではあるが、現時点での所感をつづってみた。「敗戦」というチャンスで覚醒し、かならずや次への思考とアクションにつなげていきたいものである。前向きに!








<関連記事>

米陸軍初の日本人教官が伝授、スーパーエリートの育て方  米陸軍士官学校にみるリーダー教育と日米の未来 (日経ビジネスオンライン、2014年6月25日)
・・サッカーでも企業組織でもないが、自分で考え自分で実行する強い「個」を前提とした米軍組織のリーダーシップ教育に学ぶべきものは多い。日本人の強みを活かし、かつ弱点を克服するために



PS 準決勝に進んだブラジルが対戦相手のドイツに 7-1 で大敗

惨敗というべきだろう。いや殺戮というべきか。準々決勝でネイマールを骨折負傷のため欠き、ディフェンスの要のキャプテンを警告の累積で欠き、万全の体勢ではなかったとはいえ、あまりにも無惨すぎる負け方。見るに忍びない試合であった。開催地のホームで敗退するという「悲劇」、ブラジルはまた繰り返してしまった。だからといって日本とブラジルを一緒くたにしてはいけない (2014年7月9日 記す)。


PS 2014FIFAワールドカップ ブラジル大会の決勝戦にみるドイツの強さ

決勝戦のドイツ対アルゼンチンは延長戦の後半でドイツが1点先取して優勝。ドイツにはアルゼンチンのメッシのようなスーパー選手はいなくても、組織力の高さで今回の代表チームのなあkではピカイチであったことが証明された。だが、「組織力」とはいっても日本とは段違いである。ドイツは個々の選手の技量も士気も高く、あくまでも「個を基盤とした組織力」である点が強く印象に残った。現在ドイツのプロリーグででプレイする日本人選手も多いこともあり、日本に求められているのは、ふたたびドイツを模範にすべきではないかとも思うのだが・・ (2014年7月14日 記す)



<ブログ内関連記事>

Winning is NOT everything, but losing is NOTHING ! (勝てばいいいというものではない、だけど負けたらおしまいだ)

コトバのチカラ-『オシムの言葉-フィールドの向こうに人生が見える-』(木村元彦、集英社インターナショナル、2005)より

書評 『「言語技術」が日本のサッカーを変える』(田嶋幸三、光文社新書、2007)-「論理力」と「言語力」こそ、いま最も日本人に必要なスキル

梅棹忠夫の「日本語論」をよむ (2) - 『日本語の将来-ローマ字表記で国際化を-』(NHKブックス、2004)

What if ~ ? から始まる論理的思考の「型」を身につけ、そして自分なりの「型」をつくること-『慧眼-問題を解決する思考-』(大前研一、ビジネスブレークスルー出版、2010)


■「個」と「組織」

「サッカー日本代表チーム」を「プロジェクト・チーム」として考えてみる

日体大の『集団行動』は、「自律型個人」と「自律型組織」のインタラクティブな関係を教えてくれる好例

書評 『星野リゾートの事件簿-なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?-』(中沢康彦、日経トップリーダー編、日経BP社、2009)-「現場」がみずから考え実行する組織はどうやったらつくれるのか

書評 『個を動かす-新浪剛史 ローソン作り直しの10年-』(池田信太郎、日経BP社、2012)-「個」が重要な時代に取り組んだ「組織変革」の軌跡

書評 『爆速経営-新生ヤフーの500日-』(蛯谷 敏、日経BP社、2013)-現在進行中の「組織変革」ドキュメント第1章とその前夜の舞台裏

アムンセンが南極に到達してから100年-西堀榮三郎博士が説くアムンセンとスコットの運命を分けたチームワークとリーダーシップの違い
・・自律型人材によるチームワークとリーダーシップ

書評 『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダン・セノール & シャウル・シンゲル、宮本喜一訳、ダイヤモンド社、2012)-イノベーションが生み出される風土とは?
・・「日本人からすると、議論が何よりも好きで、アクの強さではインド人以上に辟易するであろうイスラエル人ですが、「自分で考え、自分で行動する」究極のイノベーターの姿がそこにあるといってよいでしょう。こと議論するという点になると、たとえ軍隊内であろうと上下は関係ないという組織風土こそ、究極の「水平社会イスラエル」を象徴するもの」 とことん徹底的に議論するからこそ、最終的な結論がでたときには意志統一がされているのである。アメリカ人も驚くイスラエル人から学ぶべきものはそれだ

書評 『オーケストラの経営学』(大木裕子、東洋経済新報社、2008)-ビジネス以外の異分野のプロフェッショナル集団からいかに「学ぶ」かについて考えてみる
・・「(フラットな組織である)オーケストラにおいては、個々の演奏者が、いかに他の演奏者とのハーモニーをつくり出すことができるかということであり、別の表現をつかえば、いかにチームワークを作りあげるかということになる。「もともと日本には、教会の響きのなかで賛美歌を歌いながらハーモニー(調和・和声)を創っていくという習慣がない。そのため、お互いの音を聴き合ってハーモニーを創っていくという意識が、どうしても低くなっているようにみえる」(P.157~158)」 日本と西欧との大きな違い






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2013年12月5日木曜日

書評 『星野リゾートの事件簿-なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?-』(中沢康彦、日経トップリーダー編、日経BP社、2009)-「現場」がみずから考え実行する組織はどうやったらつくれるのか


星野リゾートもまた「自律分散型組織」の実践例。「現場」に権限委譲して、「現場」のチカラを最大限に引き出す経営スタイルを行っています。

もともとは家業であった中小の旅館業であったがゆえに、人の採用が難しい、採用しても定着しない、大卒を採用して育ててもいずれ辞めてしまうといった、人材にかかわる問題を社長の星野佳路氏は抱えていたとのこと。

だからこそ、トップダウンのスタイルの限界に気づいて経営スタイルを転換、思い切って「現場」に大幅に権限委譲して、「任せて見守る」経営スタイルに転換した結果、現在に至ったということのようです。

「現場が考えて現場で決めて動ける組織」に変え、多様な働き方ができるように対応、しかもその制度が持続可能なものとなるような工夫の数々。「現場」が考え実行する組織はどうやったらできるのか、そのヒントがナマの形でちりばめられた本。

解決策はつねに現場にある、経営の役割は方針を決めて、あとは現場にまかせること。自律性ある従業員による組織は、一方では高度なマネジメント能力と裏合わせでないとうまくいかないのです。しかし、自律性ある従業員による組織は、一方では高度なマネジメント能力の裏づけがないとうまくいかないことが、わかる人にはわかるのでしょう。

この本は、「現場」のスタッフたちが顧客満足度(CS)を向上させるために自分たちで考え、自分たちで話し合い、自分たちで決めたことを自分たちで実行するなかで発生した具体的な「事件」を、従業員視線と経営者視線の両面を、等距離の立場で第三者である記者が書いたものです。

TVなどのマスコミで有名な星野リゾートですが、あらためて活字の形で考えながら読むと、さまざまな「気づき」を得ることができるでしょう。

サービス業に従事する人のあいだではすでにバイブル的な本ですが、実践の記録である本書は、旅館業やホテル業、そしてサービス業だけでなく、サービス経済化が進むすべての業界で応用可能なものをもっています。読者が自分の現場に則して、どこまで「気づき」を得ることができるかにかかっているといっていいでしょう。

たとえば、いかに「慣性の法則」にとらわれたベテラン従業員を意識変革に促すか、企業理念の原理主義者である「新人」のもつ意味、現場の「気づき」をうながす質問力のあり方、ファシリテーター型のリーダーシップとは、イノベーティブな組織であるために不可欠なフラットな人間関係などなど。

経営者の星野氏自身も「解説」という形で寄稿していますが、基本的に「当事者」ではない第三者である記者が従業員の活動と経営者の活動を等距離で見ていますので、読者が得る「気づき」は経営者が書いた経営書よりも多いかもしれません。

「当事者」ではない第三者というスタンスはコンサルタントなどとも共通するものがありますが、組織のなかにいるとなかなか気づきにくいものです。

経営者にとっても、現場のスタッフにとっても、それぞれの立場で読んで得るものの多い本です。まだ読んでない方は、ぜひ読むことをおすすめします。



目 次

はじめに
頂上駅の雲海 アルファリゾート・トマム(北海道占冠村)
踊る超名門旅館 古牧温泉 青森屋(青森県三沢市)
新入社員のブチ切れメール アルツ磐梯(福島県磐梯町)
一枚のもりそば 村民食堂(長野県軽井沢町)
地下室のプロフェッショナル 星のや 軽井沢(長野県軽井沢町)
先代社長の遺産 ホテル ブレストンコート(長野県軽井沢町)
地ビールの復活 ヤッホー・ブルーイング(長野県軽井沢町)
常識との決別 リゾナーレ(山梨県北杜市)
スキー場なきスキーリゾート リゾナーレ(山梨県北杜市)
激論する未経験スタッフ アンジン(静岡県伊東市)
名おかみの決断 蓬莱(静岡県熱海市)
あとがきにかえて 社員が辞めない会社になる
解説 事件が会社を強くする 星野佳路 星野リゾート社長




著者プロフィール

中沢康彦(なかざわ・やすひこ)
1966年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。新聞社記者を経て日経BP社に入社。「日経ビジネス」記者などを経て、現在、「日経トップリーダー」副編集長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの



・・活力あふれる企業風土の背景には、現場のリーダーシップと経営のリーダーシップを融合させた、チームスポーツ型の組織運営がある。

「あ、失敗しちゃった」という人が現場で信頼されるワケ 第4回 星野佳路・星野リゾート社長(中) (日経ビジネスオンライン 2013年11月6日)
・・「人間関係がフラットじゃないと、コミュニケーションはうまくいきません。」(星野氏)  この短いコトバこそキモのキモ。

フラットな組織にするためのヒントは以下の発言に。

「大学の新卒組というのは、社会人の経験がないから、良い意味でも悪い意味でも超フラットなんです。サークルの延長線上で会社に入ってきますから。彼らを地方の再生現場に送ると、まず衝突します。「星野リゾートなんだから、こういうことをするのが当然じゃないですか」と言い出す。その衝突の中から、フラットになるきっかけみたいなものが出てくる。
 そうすると、古くからいる人たちも、フラットにコミュニケーションしている人たちを見て、「上下関係を気にしなくても全然平気なんだ」「何も問題は起きないんだ」ということが分かって、だんだんまねをするという現象が起きてくる。そのうち、「言わなきゃ損だ」ということになる。それがうちの現場がフラットになるルートのような気がします。」
・・この記事で初めて知りましたが、星野社長は大学時代は体育会アイスホッケー部の主将だったんですね。経営学者の野中郁次郎氏のいう「知的体育会系」を体現したような経営者です。

星野さんはホテルマネジメント分野では世界最高の教育機関である、アメリカのコーネル大学ホテル学科で修士号を取得されてますね。コーネル大学のキャンパスには大学が経営しているホテルがあって実践的な教育が行われているそうです。

「やめること」を決めることが、僕の最後の仕事 第4回 星野佳路・星野リゾート社長(下) (日経ビジネスオンライン 2013年11月13日)

現場スタッフ一人ひとりの「気づき」が最高のおもてなしを生み出す源泉に(前編) (日経BPネット 2014年1月27日)
・・「星野: リゾート施設を魅力的にするために、私が一番重要だと考えているのは、現場の最前線でお客様と接するスタッフです。いくら経営陣に素晴らしい人材がいても、お客様の要望や期待と直接向き合うのは現場のスタッフです。スタッフ一人ひとりの対応が、お客様による星野リゾート全体の評価となります。現場スタッフがその場その場で下した意思決定の質が、星野リゾート全体の業績を大きく左右することになります

星野リゾートの経営の醍醐味は、お客様満足度とコストのバランス(後編) (日経BPネット 2014年2月3日)
・・「星野: いえいえ、フラットな文化と規律の厳しさは関係ありません。うちの場合は、フラットであることが規律なんです。規律というのは「みんなでやろう」と決めたことをきちんと守ることです。星野リゾートの場合は、「フラットな文化になろう」と決めているので、これを守ることが規律なのです」


<ブログ内関連記事>

「専門家」は何も分かっていない?-いかにして 「当事者」 は 「専門家」 を使いこなすべきか

書評 『個を動かす-新浪剛史 ローソン作り直しの10年-』(池田信太郎、日経BP社、2012)-「個」が重要な時代に取り組んだ「組織変革」の軌跡

書評 『爆速経営-新生ヤフーの500日-』(蛯谷 敏、日経BP社、2013)-現在進行中の「組織変革」ドキュメント第1章とその前夜の舞台裏

書評 『経営管理』(野中郁次郎、日経文庫、1985)-日本の経営学を世界レベルにした経営学者・野中郁次郎の知られざるロングセラーの名著
・・「知的体育会系」というのは野中教授のネーミング

アムンセンが南極に到達してから100年-西堀榮三郎博士が説くアムンセンとスコットの運命を分けたチームワークとリーダーシップの違い
・・自律型人材によるチームワークとリーダーシップ

書評 『オーケストラの経営学』(大木裕子、東洋経済新報社、2008)-ビジネス以外の異分野のプロフェッショナル集団からいかに「学ぶ」かについて考えてみる
・・「(フラットな組織である)オーケストラにおいては、個々の演奏者が、いかに他の演奏者とのハーモニーをつくり出すことができるかということであり、別の表現をつかえば、いかにチームワークを作りあげるかということになる。「もともと日本には、教会の響きのなかで賛美歌を歌いながらハーモニー(調和・和声)を創っていくという習慣がない。そのため、お互いの音を聴き合ってハーモニーを創っていくという意識が、どうしても低くなっているようにみえる」(P.157~158)」 日本と西欧との大きな違い。

書評 『アマン伝説-創業者エイドリアン・ゼッカとリゾート革命-』(山口由美、文藝春秋、2013)-植民地解体後の東南アジアで生まれた「アマン」と「アジアン・リゾート」というライフスタイルとは?

(2014年3月19日、12月28日 情報追加)




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2013年9月24日火曜日

「距離感」と「パーセプション・ギャップ」-自分にとって不利となる誤解を正すためにまず認識すべきこと


2020年のオリンピック開催地が東京に決定しました。

石原慎太郎前東京知事が主導した当初は、かならずしも賛成多数というわけではありませんでしたが、決まってしまえば一件落着。これからは7年後にむけてひたすら準備に入るというステージでしょう。

決め手の一つとなったのが安倍晋三首相によるプレゼンテーション。The situation is under control. (状況はコントロールされている)と言い切ったことが大きかったようです。報道によれば、安倍首相みずからがこのフレーズをつくったのだとか。まさに自分のコトバで語ったわけですね。危機管理コミュニケーションの基本中の基本でもあります。

とはいうものの、「終わりよければすべてよし」とは言いますが、招致活動の終盤戦において日本が劣勢に立った理由を思い出してみる必要があります。

それは日本に対する質問は、直前に判明した福島原発の汚染水問題ばかりだったということです。日本サイドの甘い現状認識があらわになった瞬間でした。

日本国内、とくに関東に住んでいると、福島と東京の距離がどれくらいのものがあるか感覚的に把握できます。でも、関西や九州在住の皆さまにとっては、また距離感が異なるでしょう。

これがさらにパリやロンドンからだとすれば、福島と東京とのあいだの距離は至近距離に見えてしまうのではないでしょうか?

これは、地図の縮尺というスケール(=物差し)の問題です。距離感の問題です。

これは経営の現場に則していえば、経営者と従業員の距離でありますし、より端的にいえば人事評価などの場における、評価する側と評価される側の距離の問題でもあります。

一般的に、距離が長くなればなるほど、誤解の余地が広がります。物理法則にあてはめれば、距離の二乗に反比例して理解の度合いが小さくなると言い換えてもいいかもしれません。

しかも、距離の長い短いに関係なく、ここにパーセプション・ギャップが重なると、相互の誤解はさらに複雑化します。

パーセプション・ギャップは認識ギャップのことです。自分が無意識に前提としていることと、相手が無意識に前提していることにギャップが存在するということです。これは距離感に関係なく存在します。

誤解には二種類あります。

一般には自分にとって不利益となることをさして誤解されているといいますが、自分に有利となる誤解もあります。後者のことを、わたしは「美しき誤解」と呼んでおります。

「美しき誤解」であれば、ココロのなかで苦笑しながらもあえて否定する必要はありませんが、自分に不利になる誤解であれば、積極的に是正していかなくてはなりません。

自分に不利になる誤解を解くためには、まずは距離感とパーセプション・ギャップが存在することを認識し、それを言動によって正していかなくてなりません。

その意味では、安倍首相の発言はきわめて効果あるものであったといってよいでしょう。

もちろん、責任ある地位につく人の発言ですから、それは「公約」でもあります。公約である以上、コトバを選んで発言し、自分の発言に責任をもつことが不可欠になります。行動で示して成果を出さなくてはなりません。つまりは言行一致ということです。英語でいうインテグリティのことです。

距離感とパーセプション・ギャップを解消するには、こうしたきわめて当たり前のことを当たり前に実行していく以外に対処する方法はないのです。



<関連サイト>

「東京五輪決定」の背後であがる「フクシマ」の悲痛な叫び (『フォーサイト』 2013年9月11日)

首相の「虚言」に無批判なマスメディアの罪 (『フォーサイト』 2013年9月22日)

「汚染水」「新たな風評被害」に立ち向かう福島の浜 (『フォーサイト』 2013年9月25日)


<ブログ内関連記事>

書評 『思いが伝わる、心が動くスピーチの教科書-感動をつくる7つのプロセス-』(佐々木繁範、ダイヤモンド社、2012)-よいスピーチは事前の準備がカギ!

書評 『小泉進次郎の話す力』(佐藤綾子、幻冬舎、2010)

滝川クリステルがフランス語でプレゼンした理由

『伝え方が9割』(佐々木圭一、ダイヤモンド社、2013)-コトバのチカラだけで人を動かすには

「インテグリティ」(integrity)について考える-「ダブルスタンダード」の反対語として

2020年に東京オリンピック開催決定!-すくなくとも7年後の「目標」をもてるようになった




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2013年3月15日金曜日

書評 『MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み-リーダーはたった3つの武器があればいい-』(若林計志、PHPビジネス新書、2013)-マネージャーは「行動」「結果」「環境」の3つのポイントを押さえて行こう!



マネージャーという名称の有無にはかかわらず、ポジションとして部下のうえに立つ人は、部下を適切にコントロールすることによって成果をあげることが求められます。もちろん、組織人ではなくてもプロジェクトチームの長であれば同じことです。

帯には、「放任か、スパルタ、どちらが正解・・・・?」と書かれていますが、もちろんこれはレトリカル・クエスチョンですね。答えはそのどちらでもありません。もうそろそろ、こういう設問じたいするのは止めましょう。

 『MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み-リーダーはたった3つの武器があればいい-』(若林計志、PHPビジネス新書、2013)は、その意味では、マネジメントの世界ではあたらしい考えにもとづいた、プロフェッショナル・マネージャーのための「人を動かす方法論」といえるでしょう。

著者は、オンラインMBAプログラムの総責任者とつとめた人ですが、「マネジメント・コントロール」という授業がもっとも人気のある講座であったと本書のなかで語っています。マネジメント・コントロールというのは、わたしがアメリカのビジネススクールで学んだ1990年前後にはまだなかった概念です。それだけ、あたらしくて効果のある内容なのでしょう。

マネジメントとコントロール、そしてシステムという、いっけん似たような、でもまったく異なる意味をもつコトバが連なったマネジメント・コントロール・システム(MCS)ですが、大きくわけて以下の3つの構成要素から成り立っています。

① 行動コントロール(Action Control)
② 結果コントロール(Result Control)
③ 環境コントロール(Personnel & Cultural Control)

誰がやっても同じ結果が出せるような「行動コントロール」、これはマニュアルによる管理などが該当します。教え込む必要があるものです。最低限の仕事に手順やルールは教え込んでできるよになってもらわないといけません。

目標となる成果や結果を設定し、やり方は個人個人にまかせるのが「結果コントロール」。これはある程度まで自分をコントロールできるレベルの人に適用さfれるものですね。

しかし、そのいずれにおいても大事なのが「環境コントロール」。日本語では「環境」となっていますが、英語では分解して Personnel(人にかんするもの)と Cultural(文化)にかんするもの、つまりは組織風土や、経営理念、責任権限など経営そのものにかかわる各種ルールによるコントロールのことをさしています。

マネージャーは、まずは「行動コントロール」型の指導によって部下にやり方を教え込み、自信をつけさせることが大事ですね。結果でコントロールするのはその次の段階と考えなくてはいけません。

戦略は策定しただけでは絵に描いた餅で終わってしまうことが多いもの。戦略は実行されてこそ成果につながります。そして、その担い手はマネージャーですね。

だからこそ、マネージャーが組織の中核として部下を適切にコントロールすることが求められるわけですし、そのための方法論がきわめてスッキリした形になっていると、自分で理解してツールとして使いこなすことも容易になるわけです。

本書は構成じたいがきわめてロジカルに設計されていますので、そのままアタマから読んでいってもいいですし、ある程度まで経験をつんだマネージャーであれば、第1章と第2章を読んだうえで、第6章で3つのコントロールの組み合わせ方を押さえ、必要ならそれぞれのコントロール方法についての詳細を読むという読み方もいいかもしれません。もちろん実践編も忘れずに。

いまの時代の日本企業のマネージャーが置かれている状況を熟知したうえで書かれた実用書ですので、多くの人に参考になる良書といってよいでしょう。

できればマネジャーやマネージャー候補の人はもちろん、マネージャーをつかう立場にある経営者が読めば、マネージャー指導のうえで得るものの多い本だと思います。


P.S. この書評は、R+(レビュープラス)さまより献本をいただいて執筆したものです。







目 次

はじめに
第1部 人を動かす3つの力
 第1章 自由かスパルタか 永遠のテーマに終止符を打つ
 第2章 なぜ今、マネジメントコントロールが必要か
 第3章 行動コントロール
 第4章 結果コントロール
 第5章 環境コントロール
 第6章 プロフェッショナルマネージャーの仕事
第2部 実践編
 第7章 成功企業に学ぶマネジメントコントロール
おわりに 自分自身をコントロールする


著者プロフィール  

若林計志(わかばやし・かずし)
米・オルブライト大学卒。政策シンクタンク(ワシントンDC)のインターンを経て、日本紛争予防センターで国際地域紛争にかかわる。その後、株式会社ビジネス・ブレークスルーで、海外オンラインMBAプログラム(豪ボンド大学大学院とのパートナープログラム/Bond‐BBT MBA)の設立、大前研一教授の「経営戦略」のティーチングアシスタントなどを担当。2001年から10年以上に渡り、同MBAプログラムの総責任者を務めた後、株式会社フローワンを設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

書評 『プロフェッショナルを演じる仕事術』(若林計志、PHPビジネス新書、2011)-「学ぶとは真似ぶなり」という先人の知恵を現代風にアレンジした本

書評 『採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの-』(伊賀泰代、ダイヤモンド社、2012)-日本人に必要なものはリーダーシップの実践能力だ

『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク、大前研一訳、講談社、2010) は、「やる気=ドライブ」に着目した、「内発的動機付け」に基づく、21世紀の先進国型モチベーションのあり方を探求する本





(2012年7月3日発売の拙著です)





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2013年2月25日月曜日

書評 『採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの-』(伊賀泰代、ダイヤモンド社、2012)-日本人に必要なものはリーダーシップの実践能力だ



世間で一般的になっている見解をあっさり否定することほど気持ち良いものはないでしょう。

著者は、「採用基準」として意識されることの多い、いわゆる「地頭(じあたま)」信仰や、「ロジカルシンキング(論理的思考能力)」信仰をいともあっさり否定し去っています。そんなものは、実際のビジネスでは当たり前すぎて、わざわざ強調するまでもないのだ、と。

マッキンゼー社といえば、日本でも指折りの大学の卒業生があこがれる外資系企業として象徴的な存在となっていますが、その採用マネージャー職そのものを内部で立ち上げて12年間務めた著者自身の正直な感想だといってよいのだと思います。

これはマッキンゼー社のようなコンサル会社だけではないでしょう。アタマが良いに越したことはありませんが、知識だけなら、どんな会社であれ入社後に猛勉強すれば身につけることはできるし、また業務の必要上求められることです。

それよりも、日本人のビジネスパーソンに欠けているのはリーダーシップという指摘はきわめて重いものがあるといっていいでしょう。

そもそも日本人はリーダーやリーダーシップの意味がわかっていないと著者は本書のなかで何度も繰り返し強調しています。

日本人はリーダーが組織のなかに一人いれば、あとはすべてフォロワーでいいという認識があまりにも一般的になっているのだと。また、リーダーというものは、おのずからリーダーとしての器量を持っている人がリーダーなのであって、自分は関係ないと思っている人がビジネスパーソンのなかにすら少なくないのだと。

ところが、日本以外ではリーダーシップは学習して身につけることができるものだということが常識となっているのです。これは欧米社会だけでなく、中国や韓国でも同様で、これが日本とそれ以外の国々との大きな差となって表れてきているという危機感の表明です。

すべての人がリーダーシップを身につけよという著者の主張には、わたしは100%賛成です。これは、『国をつくるということ』の著者で元世界銀行副総裁の西水美恵子氏の説くところに同じです。

草の根レベルでのリーダーシップが、組織を国をつよくするのです。

その意味では、中小零細企業や小規模組織、また NPO などのほうがリーダーシップを身につけやすい環境であるといっていいかもしれません。自分の目が届く範囲に組織を分割して小規模化するのです。小さな組織では、一人ひとりが自分のアタマで考えリーダーシップを発揮することが求められます。

ですから、大企業や中堅企業であっても、少人数のプロジェクトチームで組織を運用することを当たり前にすれば、リーダーやリーダーシップは実践のなかで培われると考えていいでしょう。コンサルティング・ファームの仕事はプロジェクトで行われます。

「グローバル人材」ではなく「グローバルリーダー」であるべきという著者の主張にもおおいに賛同するものを感じますが、著者の議論が日本人にどこまで適用可能かは、多少の留保は必要かもしれないとは思います。

「一人でも多くの人を救うため、犠牲者がでて仕方ない」という発想と覚悟は日本人にとれるのかどうか? これは欧米社会の「常識」とは大いに異なることだと思います。リーダーシップを発揮するとは、賛同者をつくりだす一方、敵対者もつくりだすものであるということは、しっかりと認識する必要があります。

リーダーシップを一人でも多くの人に身につけてもらうことは実現可能な「目標」として、個々のビジネスパーソンだけでなく、経営者も意識すべきものであると考えます。





目 次

はじめに
序章 マッキンゼーの採用マネジャーとして
第1章 誤解される採用基準
第2章 採用したいのは将来のリーダー
第3章 さまざまな概念と混同されるリーダーシップ
第4章 リーダーがなすべき四つのタスク
第5章 マッキンゼー流リーダーシップの学び方
第6章 リーダー不足に関する認識不足
第7章 すべての人に求められるリーダーシップ
終章 リーダーシップで人生のコントロールを握る
あとがき

著者プロフィール 

伊賀泰代(いが・やすよ)
キャリア形成コンサルタント。兵庫県出身。一橋大学法学部を卒業後、日興證券引受本部(当時)を経て、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBAを取得。1993年から2010年末までマッキンゼー・アンド・カンパニー、ジャパンにて、コンサルタント(アソシエイト、エンゲージメント・マネージャー)、および、人材育成、採用マネージャーを務める。2011年より独立。キャリアインタビューサイト MY CHOICE を運営し、リーダーシップ教育やキャリア形成に関する啓蒙活動に従事する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連記事>

書評 『国をつくるという仕事』(西水美恵子、英治出版、2009)-真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本

「雷龍の国ブータンに学ぶ」に「学ぶ」こと-第3回 日経GSRシンポジウム「GSR と Social Business 企業が動けば、世界が変わる」に参加して

「地頭」(ぢあたま)について考える (1) 「地頭が良い」とはどういうことか?
「地頭」(ぢあたま)について考える (2) 「地頭の良さ」は勉強では鍛えられない・・わたしは世間一般でつかわれている「地頭」は間違いだと考えているので、上記のブログ記事を書いた。「ストリートスマートの知性」と勉強で身につける知識とはまったく異なる

映画 『インビクタス / 負けざる者たち』(米国、2009)は、真のリーダーシップとは何かを教えてくれる味わい深い人間ドラマだ

書評 『なぜ、社員10人でもわかり合えないのか-鏡で世界一!コミーに学ぶ少人数マネジメント-』(日経トップリーダー編、日経BP社、2011)コミュニケーションを徹底して、個人の問題発見を組織力にまで高める!・・ここまで考えつくすことが必要だ






(2012年7月3日発売の拙著です)





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2012年9月19日水曜日

書評 『なぜ、社員10人でもわかり合えないのか-鏡で世界一!コミーに学ぶ少人数マネジメント-』(日経トップリーダー編、日経BP社、2011)コミュニケーションを徹底して、個人の問題発見を組織力にまで高める!




買ったまま積ん読になっていた 『なぜ、社員10人でもわかり合えないのか 鏡で世界一!コミーに学ぶ少人数マネジメント-』(日経トップリーダー編、日経BP社、2011) を読みました。この本はじつに面白い!

死角をなくすためにいたるところに設置された凸面鏡、この世界的なメーカーが、なんと社員16人の中小企業コミーです。

顧客企業のその先にある個々のユーザーの声を徹底的に拾い上げるという姿勢。B2Bの法人向けビジネスの盲点をついた姿勢でもあります。B2B2Cといってもいいかもしれません。

また、消耗してしまうような無駄な競争を避け、自分の得意分野に特化するという姿勢は、そうとは書かれてませんが、「ブルーオーシャン戦略」そのものでもあります。

「なぜ?」によって社員の個人レベルでの「問題発見」を促し、文字化して「組織で共有」する。そのために「物語化」を積極的にすすめている会社。「コトバ」に徹底的にこだわり、コミュニケーションの仕掛けと仕組みをつくりあげている会社です。

タイトルにもありますが、少人数のほうがコミュニケーションがよく行き渡っているはずというのは、思い込みにもとづいた固定観念に過ぎないようですね。たしかに、二人のあいだでもわかりあえないことは、よくあることです。

むしろ、大規模組織のほうが管理技術が発達しており、社内整備が進んでいるので「共通言語」でしゃべることができるのかもしれません。すくなくともカタチとしては。

「なぜ?」を徹底的に繰り返すというとトヨタを思い出しますが、コミーにおいても教育者のような社長が、社員に対してつねに「なぜ?」を問いかけてきた結果、「自分のアタマで考える」社員が育っているようです。

わたしも、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』で強調しているように「なぜ?」という問いかけが、「自分のアタマで考える」ためのトレーニングになるのです。問題解決の前に問題発見です。

個人の能力をいかに組織力にまで高めるかという課題を考えている方には、ぜひ読んでほしい本だと思います。中小企業だけでなく、大企業のチームでも、それは同じことでしょう。

読みやすくて、内容の濃い一冊です。おすすめです。





目 次

はじめに
第1章 街中にあふれる「あの鏡」を作るのは 社員16人の世界企業
第2章 無料で貸し出し、無料で交換も 思い込みを徹底的に取り除く
第3章 コミーの歴史は「誤解」から始まった 本当の「売れた理由」を突き止める
第4章 中小企業ほど、実はわかり合えない-小さな組織をむしばむ「ヌシ化」
第5章 「社内用語集」を日々更新 言葉の定義を厳密に決める
第6章 時間がたってもわかり合える 「物語化」し、何度も追体験
第7章 「なぜ?」と問うと 人はなぜ成長するのか?
あとがき


<関連サイト>

コミー株式会社(Komy Mirror)

日経トップリーダー(旧 日経ベンチャー)
・・中堅中小企業の経営者むけの専門ビジネス誌


<ブログ内関連記事>

『また、あの人と働きたい-辞めた社員が戻ってくる! 人気レストランの奇跡の人材育成術-』(黒岩功、ナナ・コーポレート・コミュニケーション、2012)-ヒトを中心に据えた経営こそ中小企業のあるべき姿

書評 『日本企業が欲しがる「グローバル人材」の必須スキル』(内永ゆか子、朝日新聞出版社、2011)-あくまでも「個」をベースに考えるとことが英語よりも大事






(2012年7月3日発売の拙著です 電子書籍版も発売中!)






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2012年4月24日火曜日

書評 『思いが伝わる、心が動くスピーチの教科書-感動をつくる7つのプロセス-』(佐々木繁範、ダイヤモンド社、2012)-よいスピーチは事前の準備がカギ!


■実践的なスピーチの教科書。よいスピーチは事前の準備がカギである!

『スピーチの教科書』、ずばり直球勝負のタイトル。

内容はまさに「スピーチの教科書」、定本として長く使われるでしょう。

オーソドックスな構成でありながら、取り上げられたスピーチの事例も、スティーブ・ジョブズの卒業スピーチと『ハリー・ポッター』の作者ローリングの卒業スピーチ、そしてブータン国王が日本の国会で行ったスピーチなど興味深い。たいへん読みやすく、すぐ実践につかえる内容のビジネス書になっています。

福澤諭吉が『学問のすゝめ』のなかで「スピイチ」あるいは「演説」としてスピーチを日本に紹介して以来、すでに百数十年がたっていますが、スピーチは日本人にとってはまだまだ難しい課題であるようです。

ビジネスの世界ではプレゼンの重要性について語られることは多いのですが、リーダーとして行わねばならないのはスピーチのほうがはるかに多いのではないでしょうか?

スピーチといっても組織のなかで行うものもあれば、組織の外で行うものもあります。3分程度のごく短いものもあれば、90分近くの長いものもあります。著者はソニーの創業者盛田昭夫氏や出井前会長の下でスピーチライターをしていたプロフェッショナルです。

なによりも、本書じたいがスピーチの構造に基づいて作製されています。それは、オープニング(導入)、ボディ(本体)、クロージング(締め)の三段階構造のこと。

これまでもスピーチのオープニングについては「つかみ」の重要性として語られることも多かったのですが、重要なのは、なんといても本体としてのボディ。このボディをいかに構築し、聴衆に共感をもって聞いてもらうかがスピーチのカギであり、そのボディを構成し、原稿として書き上げるための方法論がくわしく解説されています。

クロージングが重要なのは営業活動でも同じですが、聞いたあとも余韻として残るスピーチは「締め」が重要ですね。本書でも徹底分析されていますが、ジョブズのスタンフォード大学の卒業式スピーチで有名になった「Stay hungry, stay foolish !」(ハングリーであれ、バカであれ!)という締めのフレーズ。これは、ジョブズ自身が考えたオリジナルではないのにかかわらず、すでにジョブズの遺訓として長く語り伝えられていくことでしょう。

オープニング・ボディ・クロージングというスピーチの三段階構造は、スピーチにかぎらず、まとまった内容の話をしたり書いたりする際にも重要です。ちょっとした文章を書いたり、ブログの文章を書く際にも応用できるものです。日本の国語教育で強調されてきた起承転結はこのい際、アタマのなかから完全に消し去ってしまいましょう。ビジネスのスピーチには起承転結は不要です。「転」抜きの起承結でよいのです。

情報収集や知識を獲得するインプットはもちろん大事ですが、ビジネスパーソンには、なによりも書いたりしゃべったりするアウトプットが重要です。そして、しゃべるためには論理的に書くことが大事だという、きわめてオーソドックスでかつ真っ当な主張に基づいた「教科書」になっています。

ビジネスパーソンに限らず、ぜひテキストとしてつかってほしい一冊として推奨します。


<初出情報>

■bk1書評「実践的なスピーチの教科書。よいスピーチは事前の準備がカギである!」投稿掲載(2012年4月23日)
■amazon書評「実践的なスピーチの教科書。よいスピーチは事前の準備がカギである!」投稿掲載(2012年4月23日)





目 次

プロローグ スティーブ・ジョブズのスピーチは、なぜ人々の心を打つのか
Part 1.  スピーチの核をつくる
-1章 相手を知る-どんな場で、聴衆は何を期待しているか
-2章 メッセージを絞る-最も伝えたいことを明確にする
Part 2. 話を効果的に組み立てる
-3章 全体構成とボディ-伝わりやすい構造、順番を考える
-4章 オープニング-導入部で聴衆の注意を引きつける
-5章 クロージング-記憶に残る終わりかた
Part 3.  原稿づくり、リハーサル、そして本番!
-1章 リハーサル-原稿づくりから前日の準備まで
デリバリー-壇上での立ち振る舞いから質疑応答まで)
エピローグ スピーチライターの仕事

著者プロフィール

佐々木繁範(ささき・しげのり)

1963年福岡県北九州市生まれ。1987年に同志社大学経済学部を卒業後、日本興業銀行に入行。1990年にソニー株式会社に入社。盛田昭夫会長の直属スタッフとして企業外交を補佐、その間にスピーチ・ライティングを学ぶ。1995年から97年までハーバード・ケネディ・スクールに留学、公共経営学修士号を取得。帰国後、2001年まで出井伸之社長の戦略スタッフ兼スピーチ・ライターを務める。ソニーでは計100本以上のスピーチ・サポートを手がけるとともに、IT戦略会議の議長補佐として、IT国家戦略の策定にも携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<書評への付記>

スピーチが難しいのは、聞く側からみれば耳から入る話はシークエンシャルであることだ。シークエンシャルとは、時間的に連続しており、テープのように巻き戻しができない不可逆的な構造をもっているということである。

もちろん、スピーチの最中で、聴衆(オーディエンス)の反応をみながら軌道修正することはあるので、まったくインタラクティブではないとは言い切れない。しかし、基本はボディの構成と内容がしっかりと構築されていないと、軌道修正やアドリブは難しいということである。テレビのお笑い番組も、じつは放送台本が作製されて、綿密に構成されているのと同じである。

本書でとくに強調されているのが、スピーチは入念に準備せよという点である。スピーチ原稿をフルテキストまで書くことが望ましいとある。自分で苦しみながら考えて書いた原稿があれば、おのずとアタマのなかに入っているので本番では原稿に頼らずにしゃべることができるし、準備した原稿はいざというときに頼りになるだけでなく、精神的にもお守りにもなるというのは大いに納得だ。

そういう意味で、本書はスピーチだけでなく、文章を書く際にも役にたつ本だと思う次第。

お笑いのたとえではないが、「つかみ」と「落ち」は不可欠。そしてもちろん話の中身(ボディ)は言うまでもなく重要!

なお、本書の著者・佐々木繁範さんとは、出版後に一度お会いして、わたしとは同じ世代で、同じような経歴と価値観の持ち主であることを確認させていただきました。


<関連サイト>

【書籍拝見】スティーブ・ジョブズのスピーチは、なぜ人々の心を打つのか 『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』第1回 (ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー 2013年12月25日)
『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』第2回 (2013年12月26日)
『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』第3回 (2013年12月27日)


 「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2013年11月号
http://courrier.jp/contents/courrier108.html

*佐々木繁範氏が、2020年のオリンピック招致における高円宮妃久子さまのスピーチについて専門家の立場から解説しているので、目を通していただければ幸いだ。書評 『思いが伝わる、心が動くスピーチの教科書-感動をつくる7つのプロセス-』(佐々木繁範、ダイヤモンド社、2012)-よいスピーチは事前の準備がカギ! も参照。



<ブログ内関連記事>

書評 『私が「白熱教室」で学んだこと-ボーディングスクールからハーバード・ビジネススクールまで-』(石角友愛、阪急コミュニケーションズ、2012)-「ハウツー」よりも「自分で考えるチカラ」こそ重要だ!

福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いまから140年前に出版された「自己啓発書」の大ベストセラーだ!

書評 『小泉進次郎の話す力』(佐藤綾子、幻冬舎、2010)




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2012年2月6日月曜日

書評 『采配』(落合博満、ダイヤモンド社、2011)-ビジネス書の域を超えた「人生の書」になっている


■実践と深い考察から生み出されたこの本は、ビジネス書の域を超えて「人生の書」になっている

人の上に立つ立場にあるリーダーだけでなく、上からどう評価されているかを知りたい人にもぜひ薦めたい一冊です。

どのような考えに基づいて選手を起用したか、その具体的な判断や意志決定の詳細だけでなく、その理由とそのときの著者の気持ちまでが書き込まれているからです。

「さいはいをふるう」という表現で耳にすることは多い「采配」。こうして漢字で書かれた「采配」という2文字を見るのはめったにないことなので、それだけでもインパクトがありますね。「采配」とは言い換えれば「指揮」のことですが、「采配」というコトバをつかうと戦国武将のような雰囲気がかもしだされるのは面白いことです。戦闘モード全開!

中日ドラゴンズのファンではないだけでなく、最近は野球をみることもあまりなくなっていたわたしですが、現役時代の落合選手の言動がじつにユニークで合理的なものであったことには、サラリーマンからみたアンチヒーローとしてひそかに喝采を送っていたものでした。

監督になってからの落合氏については、よくは知らなかったのですが、「名選手かならずしも名監督ならず」というジンクスは、この人には当てはまらなかったことは確かです。それは、本書を読むと自然に理解されることです。落合氏は、結果を出し続けた名選手ですが、野球のエリート街道をひた走ってきたサラブレッドではなかったからなのです。うまくいかない野球人生というものを、身を通じて知り尽くしているからでしょう。だからこそ、うまくいっている選手だけでなく、うまくいかない選手の気持ちも手に取るようにわかるのです。

2011年度の日本シリーズでの勝利は最終的に逃したとはいえ、中日ドラゴンズを率いて、「常勝チーム」を作り上げた実績はまさに「野球殿堂」入りにふさわしいものがあります。だが、本書を単に野球監督の「采配」論と読むには、あまりにも惜しいものがあります。ダイヤモンド社から出版されていることが示しているように、マネジメントについて書かれたビジネス書として読むべき一冊でしょう。

とはいえ、中身の薄いビジネス書とは違い、この本は活字が小さく分量が多いだけでなく、人生知がにじみ出たような記述で中身がじつに濃い。最初から最後まで読みながら、思わずチェックを入れたり線を引きながら読んでいることに気づく。それだけでなく、この本は売らずに手元に取っておこうという気持ちにさせられます。

内容については、目次を見ていただくか、直接手にとって見ていただくのが一番ですが、この本は、実績を残した野球監督が書いた「采配」論としてはもちろん、ビジネス書を超えた、それこそ「人生の書」として扱うべきでしょう。味わって熟読し、再読する価値のある一冊としてぜひおすすめします。


<初出情報>

■bk1書評「実践と深い考察から生み出されたこの本は、ビジネス書の域を超えて「人生の書」になっている」投稿掲載(2012年1月25日)
■amazon書評「実践と深い考察から生み出されたこの本は、ビジネス書の域を超えて「人生の書」になっている」投稿掲載(2012年1月25日)




目 次 
       
第1章 「自分で育つ人」になる
第2章 勝つということ
第3章 本物のリーダーとは
第4章 常勝チームの作り方
第5章 次世代リーダーの見つけ方、育て方
おわりに


著者プロフィール
    
落合博満(おちあい・ひろみつ)     

1953年生まれ。秋田県南秋田郡若美町(現:男鹿市)出身の元プロ野球選手(内野手)、プロ野球監督。1979年ドラフト3位でロッテ入団。81年打率.326で首位打者になり、以後83年まで3年連続首位打者。82年史上最年少28歳で三冠王を獲得、85年には打率.367、52本塁打、146打点という驚異的な成績で2度目の三冠王とパ・リーグの最優秀選手(MVP)に輝いた。86年には史上初の3度目、2年連続の三冠王を獲得。通算成績は2236試合、7627打数2371安打、510本塁打、1564打点、65盗塁、打率.311。
1998年現役を引退。その後、野球解説者、指導者として活動し、2004年より中日ドラゴンズ監督に就任。就任1年目から1年間の解雇・トレード凍結、一、二軍を振り分けない春季キャンプなどを行ない、チームはいきなりリーグ優勝。2007年にはチームを53年ぶりの日本一に導く。就任から8年間、2年に1回以上はリーグ優勝ないしは日本一、Aクラス入りを逃したこともない。2011年は球団史上初の2年連続リーグ優勝を果たし、「常勝チーム」を作り上げた。
2007年には、プロ野球の発展に大きく貢献した人物に贈られる正力松太郎賞を受賞。2011年には競技者として、日本の野球の発展に大きく貢献した功績を永久に讃え、顕彰する「野球殿堂」入りを果たす。
著書は、『コーチング—言葉と信念の魔術』(ダイヤモンド社)、『落合博満の超野球学1、2』『プロフェッショナル』『野球人』(ベースボール・マガジン社)、『勝負の方程式』(小学館)など多数ある(ダイヤモンド社サイトより)。


<ブログ内関連記事>


書評 『なでしこ力(ぢから)-さあ、一緒に世界一になろう!-』(佐々木則夫、講談社、2011)
・・女子サッカー日本代表チームの監督・佐々木則夫氏が、ワールドカップ優勝前に書いた本。「上から目線」でも「下から目線」でもない、「横から目線」の重要さについて説いている


書評 『負けない自分になるための 32のリーダーの習慣』(澤穂希、幻冬舎、2011)-現場リーダーのためのプレイイング・マネージャー論として





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2012年1月27日金曜日

書評 『負けない自分になるための 32のリーダーの習慣』(澤穂希、幻冬舎、2011)-現場リーダーのためのプレイイング・マネージャー論として



■現場リーダーのためのプレイイング・マネージャー論

「わたしの背中をみなさい」というワンフレーズにしびれた日本人は、男女を問わず少なくないのではないかと思います。

このセリフは、むかしはもっぱら渋めの男性が使うものでしたが、いまこのセリフがいまもっとも似合うのが本書の著者である澤穂希その人であることに意義を唱える人は多くないはずです。

そんな澤選手が、自らを語ったのがこの一冊。

執筆を依頼されて迷ったと本人が書いていますが、アドバイスを受けて背中を押された末に執筆を決意したのは、「チャンスはけっして逃さない」という生き方の反映でもあるでしょうし、「まったく別の世界の人と交友関係をもつ」、「周りの環境を変えたかったら、まず自分が動く」という「習慣」の実践でもあるのでしょう。

この本を読むにあたっては、サッカーについてある程度までは知っていることが望ましいですが、そうでなくても現場リーダーのあり方について書かれた本として読むこともできます。

日本代表チームのキャプテンとは、企業社会のコトバをつかえば、現場リーダーのことです。プレイイング・マネージャーといってもいいですね。現役の選手であり、かつ選手のとりまとめ役でもあるキャプテン。

日本代表チームの監督であった佐々木監督による著書『なでしこ力(ぢから)-さあ、一緒に世界一になろう!-』(佐々木則夫、講談社、2011)は、ワールドカップ優秀前に出版されたものでしたが、佐々木監督を女性の多い職場を統括するジェネラル・マネージャー(GM)にたとえれば、澤選手は女性だけの職場の現場マネージャーです。そういう観点からこの二冊を読んでみるのも面白いですね。

タイトルのなかに数字を入れるのはビジネス書の定石ですし、本書にあげられた「32のリーダーの習慣」の32に特別な意味があるわけでもないでしょう。また文言だけ取り出したら平凡な響きしかもたないかもしれません。

しかし、それらのコトバが澤選手のこれまでの苦労や活躍のエピソードをまじえて語られるとき、がぜん輝き出すから不思議ですね。さすがに何かをやり遂げて結果を出すリーダーの発言は違うな、と。

ややビジネスよりの読みに終始してしまいましたが、もちろん、この本は人間・澤穂希の手記として読むのがまっとうな読み方でしょう。読者も澤選手にならって「有言実行!」といきたいものですね。






<初出情報>

■bk1書評「現場リーダーのためのプレイイング・マネージャー論として」投稿掲載(2012年1月25日)
■amazon書評「現場リーダーのためのプレイイング・マネージャー論として」投稿掲載(2012年1月26日)

*再録にあたって、字句の一部を修正しました。

目 次

第1章 夢を実現するための10の習慣
第2章 理想のリーダーになるための6つの習慣
第3章 仲間との絆を深めるための7つの習慣
第4章 自分らしくあるための9つの習慣

著者プロフィール    

澤穂希(さわ・ほまれ)
1978年、東京都府中市生まれ。INAC神戸レオネッサ所属。女子サッカー日本代表(なでしこジャパン)のキャプテン。12歳で女子のトップチーム、読売ベレーザ(当時)でデビュー。日本代表としてAマッチ出場数、ゴール数で歴代1位。2011年女子ワールドカップ・ドイツ大会では優勝に貢献、得点王とMVPを獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

書評 『なでしこ力(ぢから)-さあ、一緒に世界一になろう!-』(佐々木則夫、講談社、2011)
・・女子サッカー日本代表チームの監督・佐々木則夫氏が、ワールドカップ優勝前に書いた本。「上から目線」でも「下から目線」でもない、「横から目線」の重要さについて説いている

「NHKスペシャル「なでしこ​ジャパン 世界一への道」 (2011年7月25日) を見ながら考えたこと

女子サッカー・ワールドカップで 「なでしこジャパン」 がついに世界一に!(2011年7月18日)

「サッカー日本代表チーム」を「プロジェクト・チーム」として考えてみる






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2011年12月26日月曜日

「世襲」という 「事業承継」 はけっして容易ではない ― それは「権力」をめぐる「覚悟」と「納得」と「信頼」の問題だ!




■「世襲」という事業承継のあり方について

つい先日の20111年12月19日に、北朝鮮のキム・ジョンイル総書記が死去したというニュースが全世界をかけめぐりました。

日本は、とくに朝鮮半島とは有史以来、密接な関係があることもあり、国民の関心もきわめて高いものがあります。

死因は心筋梗塞だと伝えられていますが、それが正確な情報であれば、「独裁者」とはいえ、一国の命運を背負う立場にある以上、そうとうの重圧がかかっていたのではないかと推察されます。

ただ、ひとつ気になるのは、「世襲」批判がまたやかましくなるのではないか、という気がしてならないことです。

しかし、ちょっと待てよ、という気持ちになるのを感じます。

大企業のサラリーマンは「世襲」批判の急先鋒でしょう。大手マスコミもまた大企業ですから、その意味では同じですね。

ところが、大企業以外では、世襲はけっして例外的ではありません。

経営というものは、それじたいが一つの専門職ですから、サラリーマンの出世スゴロクのあがりといったものではありません。部分最適の実務家にはできない、全体をみることが経営者には求められます。経営者と従業員は、機能という面からみれば似て非なるものだっといっていいでしょう。

話を北朝鮮に戻しましょう。

北朝鮮は社会主義を標榜(ひょうぼう)しているのにかかわらず、一族による世襲が三代目だという批判もよく聞かれます。たしかに初代のキム・イルソン、キム・ジョンイル、キム・ジョンウンと三代にわたって男子直系相続がなされることになるわけです。しかも社会主義の旗はいまだに降ろしていない。

誤解があってはいけないので、あらかじめ申しておきますが、わたしは北朝鮮の体制を肯定しているわけではありません。また、なにかのたとえとして例にだしたわけでもありません。

ただ、国家の運営もまた一つの事業と捉えれば、事業承継という観点からひじょうに興味深いものを感じながら報道を見ているわけです。体制の違いはあれ、国家経営はある意味ではマネジメントそのものですから。

安定的に運営するためのシステムは、男子直系相続であるというのが、儒教の影響の色濃い中国や韓国・朝鮮における伝統ですね。事業経営や、社会の安定装置として「世襲」を選択してきた事実はけっして無視できません。

じっさいには、子どもは男子だけとは限りませんから、女子もまた事業の一翼を担う後継者として想定されているのが現代の傾向です。たとえばタイの華僑華人の世界でも、同族の女性経営者がきわめて多いですね。

ただ日本が、中国や韓国と違うのは、世襲でありながら、かならずしも実子にこだわらないこと。見込みのある若者を養子として取り込み相続させることで「家」システムを維持してきたことは江戸時代以来の伝統です。

日本の場合は、芸事でも「世襲」はむしろ当たり前といえます。


■とはいえ、世襲による事業承継はやさしい課題ではない

とはいえ、「世襲」による事業承継は、思われているよりも、じつに難しいものがあります。ここでは企業経営に話を限定しておきましょう。

難しさは大きく分けて二つあります。事業承継する本人にとっての難しさと、それを受け入れる従業員にとっての難しさです。

経営は「覚悟」の問題です。ですから、経営を事業承継する本人にとっては覚悟の問題であり、これはある程度まで幼少期からの帝王教育によってカバーされるといっていいでしょう。あとは後天的な学習のみ。「習うより慣れよ」の世界ですね。

一方、受け入れる従業員の側からみれば、それは「納得」の問題になります。この人のリーダーシップに従って自分は幸せになれるのか、自分の家族を幸せにできるのか。これはリーダーシップというよりも、フォロワーシップの問題です。従うチカラのこと。これは意外と重要な問題です。

なぜなら、経営者と従業員のあいだには「権力」がかかわってくるからです。

事業経営には「権力」がつきまといます。組織は個人の集まりですから、人間集団のなかではかならず「権力」が発生するのです。

ただし、「権力」そのものは善でも悪でもありません。指揮命令の系統がなければ組織運営はできませんので、「権力」を行使する人と「権力」を行使される人が発生します。

「権力は行使するためにある。権力をもつ者は行使する義務がある。ただし、それは正しく行使されなければならない」。これは大学時代以来のわたしの持論ですが、体育会の主将をつとめるなかで実感し、体得したものです。

人の上にたつ人は「権力」を正しく行使することが求められ、それに従う者はそれを受け入れなければ組織は成り立たない。

そしてそのためには、組織内コミュニケーションが良好な状態になければならないのです。その要は相互の「信頼」関係です。経営者なくして従業員なし、従業員なくして経営者なし。お互いがお互いを支え合う関係にあるからですね。

株式上場している大企業では「世襲」は望ましいとはわたしも思いませんが、それ以外の中堅中小企業においては「世襲」は善でも悪でもないのです。

所有と経営の分離は近代経営の要だと経営史では教えていますが、オーナーシップがなければコミットメントの度合いも薄くなりがちなものであることは否定できません。

要は「世襲」であろうがなかろうが、正しく経営すること。カリスマは先代あるいは先々代の一代限りだと自覚しておくこと。

これが、「世襲」によってその地位につく経営者の責務であり、自分の責任範囲で自社にかかわるひとびとを幸せにすることが、大きな貢献となるのです。



<推薦書>

事業経営における「世襲」については下記の書籍を推薦します。


『世襲について-事業・経営篇-』(江坂彰=監修、日本実業出版社、2001)

目 次
序章 いま、なぜ世襲なのか-世襲は“不滅の文化”である
1章 世襲とは何か- "志" の承継で信用を未来へ
2章 世襲の強みとその必然性は-絶えざる変革こそ永続の基なり
3章 老舗企業の原点は-世紀を超えて "橋渡しの理" が
4章 世襲の難しさとは-初心を離れたとき自壊を招く
5章 継後を託す子へ親は何を-賢者は歴史に、愚者は経験に学ぶ
6章 世襲のこれからは-創業哲学の伝承は時代を超えて

著者プロフィール
江坂 彰(えさか・あきら)
経営評論家・作家。1936年、京都市生まれ。京都大学文学部卒業と同時に大手広告代理店に入社。本社マーケティング局長、名古屋支社長、関西支社長等を歴任後、作家活動に入る。





<関連サイト>

カリスマ経営者が語る事業承継の要諦~会社存続を最優先に、人間心理に精通せよ~

ファミリービジネスで気づいた日本の“偏見”-見方を変えると、異なる風景が見えてくる (御立尚資、日経ビジネスオンライン、2014年4月14日)
・・ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の日本代表による記事。日本の大企業サラリーマン諸氏は、世襲が当たり前のファミリービジネス(同族企業)として偏見をもっている人も少なくないようだが、世界的にみればそれは非常識であることが理解できるだろう

◆シリーズ 星野佳路と考えるファミリービジネス 

「家族経営」が日本を支えている (星野佳路、日経ビジネスオンライン、2014年2月13日)

後継者はどのように「生まれる」のか-日本交通の川鍋一朗社長との対談で考える (星野佳路、日経ビジネスオンライン、2014年2月20日)

社内の「予想以上」の状況を改革 日本交通の川鍋一朗社長との対談で考える(2) (星野佳路、日経ビジネスオンライン、2014年2月27日)
星野: ファミリービジネスを継いでいる若い経営者に聞くと、入ってからおとなしくなる人が意外なくらい多い。親の言うままにやっていては、「いつか変えてやろう」という気持ちもなくなります。後継者は最初からある程度リスクを取っても「変える気概」を持つべきです。そうでなければ、若い世代が入っても、新しいエネルギーになりません。
川鍋: 私のように3代目になると、創業者がつくったビジネスモデルの有効期限が切れているケースがあります。それだけに、ファミリーで培ったことを生かしながら、変革への強い意志を持って付加価値を追加することが必要になってきます。
星野: ファミリーで培ってきた強さに依存しているだけでは、事業を継ぐ立場として、責任を果たせません。大事なのはやはり、「自分の代で何を変えてやろうか」ということだと思います。そうした意識があれば環境をうまく生かせるし、世襲に対して、周りの納得感は高まります。変革マインドは大事だと思います。
同族経営の承継ではハードな世代交代を恐れてはいけない (星野佳路・星野リゾート代表、習慣ダイヤモンドオンライン、2015年12月28日)




<ブログ内関連記事>

書評 『跡取り娘の経営学 (NB online books)』(白河桃子、日経BP社、2008)

書評 『ホッピーで HAPPY ! -ヤンチャ娘が跡取り社長になるまで-』(石渡美奈、文春文庫、2010 単行本初版 2007)

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)

書評 『挫折力-一流になれる50の思考・行動術-』(冨山和彦、PHPビジネス新書、2011)

「絶対権力は絶対に腐敗する」-リビアの独裁者カダフィ大佐の末路に思うこと

書評 『叙情と闘争-辻井喬*堤清二回顧録-』(辻井 喬、中央公論新社、2009)-経営者と詩人のあいだにある"職業と感性の同一性障害とでも指摘すべきズレ"

「人間尊重」という理念、そして「士魂商才」-"民族系" 石油会社・出光興産の創業者・出光佐三という日本人

書評 『日本の血脈』(石井妙子、文春文庫、2013)-「血脈」には明治維新以来の日本近代史が凝縮

600年ぶりのローマ法王退位と巨大組織の後継者選びについて-21世紀の「神の代理人」は激務である

書評 『富の王国 ロスチャイルド』(池内 紀、東洋経済新報社、2008)-エッセイストでドイツ文学者による『物語 ロスチャイルド家の歴史』

(2014年2月13日 情報追加)


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2011年12月14日水曜日

アムンセンが南極に到達してから100年-西堀榮三郎博士が説くアムンセンとスコットの運命を分けたチームワークとリーダーシップの違い


 本日(2011年12月14日は)、ノルウェーの探検家アムンセンが人類史上はじめて南極点に到達した日から100年にあたります。 
    
 そのアムンセンといえば必ず引き合いに出されるのが英国人のスコット海軍大佐。先陣争いを演じた宿命のライバルでしたが、スコットはアムンセンに一ヶ月遅れをとっただけでなく、南極点に到達した帰途に全員が凍死するという悲劇の主人公にもなりました。

 アムンセンとスコットの二人を比較したらチームワークの点でもリーダーシップの点でも、アムンセンは成功するべく成功し、スコットは失敗するべく失敗したと断じているのが、日本初の南極越冬隊長を務めた西堀榮三郎博士です。

 1957年に実行された、初代の南極越冬隊の隊長をつとめあげた西堀博士だけに、おなじく南極点の探検を行った先行者であるアムンセンとスコットのリーダーシップについての見方はきわめて的確であるというべきでしょう。

 しかも、西堀博士は統計的品質管理の専門家でもあっただけに、QCサークルという小集団活動にも通じており、チームワークについて述べているところにはきわめて説得力があるといってよいでしょう。

 西堀榮三郎の解説する「未知の世界を手探りで進むプロジェクトを成功させるチームのリーダーシップの極意」といった文章の要点をかいつまんで述べると以下のようになります。

●運と不運を分けるのは、ほんのちょっとした分岐点の決断である
●アムンセン隊とスコット隊の運命を分けることになった隊長の決断の背景には、隊長自身の性格と過去の経験の差がある
●まず最初に「情熱の差」。アムンセンが少年の頃から極地探検家になることを夢見て必要となる準備を進めてきたのに対し、スコットの極地探検は、いわばマーカム卿によりお膳立てされていたものであった。このことから、南極行きを志した時点で既に両者の間に「心構え」の差ができていた
●「よく人はリーダーの素質は生まれながらのものであるというが、けっしてそれだけではなく、目的に向かっての日常のたゆまない努力がリーダーとしての性格をつくりあげる」
●両隊長の性格の違いがもっともよく表れているのは隊の「運営の仕方」である
●両隊の運命を分けた運営の差が「隊長のリーダーシップ」にあり、それが「隊全体の士気」につながった
●隊の運命は隊長だけで決まるものではなく、隊長を含めた全隊員の一挙手一投足が小さな分岐点で運命を左右して決まる
●そのため、隊長は運営のうえで、つねに隊員をして打てば響くような、そして「細心の注意」を払って事に当たれるような教育を普段からしておかなければならない。その点で、スコット隊の敗北はスコット隊長に全責任があった
●アムンセンは隊員の自主性を尊重するチームワークで運営したことに対し、スコットの場合は、自分が海軍軍人であったこともあり、階級制度による上意下達的な隊の運営が隊員の士気にも影響し、細心の注意を払うことができなかった
●アムンセンの場合は、たとえば雪めがねといった装備品の改良に際して、隊員の提案を募集するなどし、隊員全員が参画意識を持って自主的に一つの目的に向かえるよう配慮した
●「すべての隊員が自主的に仕事をやるようになれば、隊長がいちいち指示しなくても隊は動く。全員が参画精神をもってひとつの目的に向かったとき、すばらしい力を発揮することができる」。
●アムンセンはチームリーダーとして、こうした人間の心理をよくつかみ、それを隊の運営に活かしていた
●スコットは「あわて者の誤り」を計画段階で犯しており、万事が中途半端であった
●アムンセンは、リーダー自らがつねに「平常心」をもって決断し行動できるよう「行ってみて、無理ならば引き返せばいい」というような「楽観的態度」を心がけていた
●スコットの場合は、極点到達がアムンセンに先を越されたときに「極点、・・・神よ、ここは恐ろしい土地だ」と日記に書き記し、帰途の不安をのぞかせている。リーダーが少しでも顔に不安をのぞかせたことが影響し、全員の不安と恐れが行動の判断を狂わせ、全員死亡という最悪の結果を招いた
●アムンセン隊の行動を見ていると、全員が「平常心」をもって一丸となり、極点到達という目的のもとに嬉々として行動していた様子がうかがわれる

 詳しくは、西堀博士の文章や言行録をまとめた『技士道一五ヵ条-ものづくりを極める-』(西堀榮三郎、清澤達夫=構成、朝日文庫、2008、初版単行本タイトル『想像力』1990)の「第5章 組織を考える」の「アムンセンとスコットのリーダーシップ」(P.269~280)をご覧いただきたいと思います。

 もともとは、『アムンセンとスコット-南極点への到達に賭ける-』(本多勝一、教育社、1986)の解説として執筆されたものです。ジャーナリストの本多勝一氏もまた、京大山岳部のOBで、西堀博士の後輩にあたる人でした。

 アムンセンの南極点到達をビジネスの世界にあてはめて考えれば、未知の領域を切り開いたプロジェクトであったと言うこともできるでしょう。

未来に何が起こるかは誰も分からない。ましてや神でもない人間のリーダーに分かるわけがない。けれども未来がわからないといって、リーダーが少しでも不安顔をすれば隊員の不安をますますつのらせることになる。(P.277)

 また西堀博士は、別の箇所ではこのようにも言っています。

未来というものは論理的背景がないものだとしかいいようがない。直感的な、主観的な、独断的な判断でしか考えられないのではないだろうかと思われてくる。(P.287)

 まさに実践の裏付けをもって語られたコトバですね。アムンセンの南極点到達の成功は、未知の領域を開発するプロジェクトを率いるリーダーやメンバーがよく知っておきたい重要な事例であると言うべきでしょう。




<参考文献>


『技士道一五ヵ条-ものづくりを極める-』(西堀榮三郎、清澤達夫=構成、朝日文庫、2008、初版単行本タイトル『想像力』1990)

目 次

まえがき
技士道一五ヵ条 
第1章 自然を考える
 自然に学ぶ
 私の自然観
 未知の大陸
 体験から学ぶ
第2章 技術を考える
 科学と技術
 技術の功罪
 技術のあるべき姿
 技術を志す
第3章 品質を考える
 事実からの出発
 品質管理とは何か
 統計的品質管理の方法
 日本的品質管理
第4章 創造性を考える
 創造の現場
 創造の芽を伸ばす
 研究開発の進め方
 創造性が未来をつくる
第5章 組織を考える
 個人を活かして組織が生きる
 組織を運営する
 真のチームワークとは
 優れたリーダーシップとは

第6章 技術を極める
 日本の進むべき道
 企業のあり方、技術者のあり方
 未来に向けて


著者プロフィール

西堀榮三郎(にしぼり・えいざぶろう)

1903年京都市生まれ。理学博士。京都大学理学部卒業。京都大学講師・助教授を経て、1936年東京電気(現・東芝)入社。1949年退社し、統計的品質管理の普及に努める。1954年デミング賞受賞。1957年第一次南極観測越冬隊長として越冬。以後、日本原子力研究所理事、日本原子力船開発事業団理事、日本生産本部理事など歴任。1973年ヤルン・カン遠征隊隊長、1980年チョモランマ登山隊総隊長を務めるなど、登山家、探検家としても知られる。1989年死去、享年86歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






<関連サイト>

Ben Saunders: To the South Pole and back — the hardest 105 days of my life (TED TALK Filmed March 2014 at TED 2014)
・・二人でみずからソリをひいて南極点まで到達した1977年生まれの英国人冒険家の語り(This year, explorer Ben Saunders attempted his most ambitious trek yet. He set out to complete Captain Robert Falcon Scott’s failed 1912 polar expedition — a four-month, 1,800-mile round trip journey from the edge of Antarctica to the South Pole and back. In the first talk given after his adventure, just five weeks after his return, Saunders offers a raw, honest look at this “hubris”-tinged mission that brought him to the most difficult decision of his life.)

(2015年7月8日 項目新設)



<ブログ内関連記事>

映画 『加藤隼戦闘隊』(1944年)にみる現場リーダーとチームワーク、そして糸川英夫博士
・・「必ず勝つの信念と 死なば共にと団結の 心で握る操縦桿」!

南極観測船しらせ(現在は SHIRASE 5002 船橋港)に乗船-社会貢献としてのただしいカネの使い方とは?

コロンビア大学ビジネススクールの心理学者シーナ・アイエンガー教授の「白熱教室」(NHK・Eテレ)が始まりました

映画 『コン・ティキ』(2012年 ノルウェー他)をみてきた-ヴァイキングの末裔たちの海洋学術探検から得ることのできる教訓はじつに多い

(2014年2月24日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)










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