買ったまま積ん読になっていた 『なぜ、社員10人でもわかり合えないのか 鏡で世界一!コミーに学ぶ少人数マネジメント-』(日経トップリーダー編、日経BP社、2011) を読みました。この本はじつに面白い!
死角をなくすためにいたるところに設置された凸面鏡、この世界的なメーカーが、なんと社員16人の中小企業コミーです。
顧客企業のその先にある個々のユーザーの声を徹底的に拾い上げるという姿勢。B2Bの法人向けビジネスの盲点をついた姿勢でもあります。B2B2Cといってもいいかもしれません。
また、消耗してしまうような無駄な競争を避け、自分の得意分野に特化するという姿勢は、そうとは書かれてませんが、「ブルーオーシャン戦略」そのものでもあります。
「なぜ?」によって社員の個人レベルでの「問題発見」を促し、文字化して「組織で共有」する。そのために「物語化」を積極的にすすめている会社。「コトバ」に徹底的にこだわり、コミュニケーションの仕掛けと仕組みをつくりあげている会社です。
タイトルにもありますが、少人数のほうがコミュニケーションがよく行き渡っているはずというのは、思い込みにもとづいた固定観念に過ぎないようですね。たしかに、二人のあいだでもわかりあえないことは、よくあることです。
むしろ、大規模組織のほうが管理技術が発達しており、社内整備が進んでいるので「共通言語」でしゃべることができるのかもしれません。すくなくともカタチとしては。
「なぜ?」を徹底的に繰り返すというとトヨタを思い出しますが、コミーにおいても教育者のような社長が、社員に対してつねに「なぜ?」を問いかけてきた結果、「自分のアタマで考える」社員が育っているようです。
わたしも、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』で強調しているように「なぜ?」という問いかけが、「自分のアタマで考える」ためのトレーニングになるのです。問題解決の前に問題発見です。
個人の能力をいかに組織力にまで高めるかという課題を考えている方には、ぜひ読んでほしい本だと思います。中小企業だけでなく、大企業のチームでも、それは同じことでしょう。
読みやすくて、内容の濃い一冊です。おすすめです。
目 次
はじめに
第1章 街中にあふれる「あの鏡」を作るのは 社員16人の世界企業
第2章 無料で貸し出し、無料で交換も 思い込みを徹底的に取り除く
第3章 コミーの歴史は「誤解」から始まった 本当の「売れた理由」を突き止める
第4章 中小企業ほど、実はわかり合えない-小さな組織をむしばむ「ヌシ化」
第5章 「社内用語集」を日々更新 言葉の定義を厳密に決める
第6章 時間がたってもわかり合える 「物語化」し、何度も追体験
第7章 「なぜ?」と問うと 人はなぜ成長するのか?
あとがき
<関連サイト>
コミー株式会社(Komy Mirror)
日経トップリーダー(旧 日経ベンチャー)
・・中堅中小企業の経営者むけの専門ビジネス誌
<ブログ内関連記事>
『また、あの人と働きたい-辞めた社員が戻ってくる! 人気レストランの奇跡の人材育成術-』(黒岩功、ナナ・コーポレート・コミュニケーション、2012)-ヒトを中心に据えた経営こそ中小企業のあるべき姿
書評 『日本企業が欲しがる「グローバル人材」の必須スキル』(内永ゆか子、朝日新聞出版社、2011)-あくまでも「個」をベースに考えるとことが英語よりも大事
(2012年7月3日発売の拙著です 電子書籍版も発売中!)
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